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さようなら… [文化の違い]

今日のお話は、うちのドイツ人の母方の叔父のこと。
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先日も書いたように、うちのドイツ人の叔父が2021年の年末に亡くなった。そして先週、叔母から叔父の訃報のお知らせが届いた。叔母と義母とうちのドイツ人の従妹の連名で。つまり彼にはそれしか近親者というのがいないのだ。
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叔父は長いこと病気でホーム住まいで、最も近い家族である姉で、近くに住む叔母が後見人となっていた。一番上の姉であるうちのドイツ人の母親は、血のつながりが半分だけだし、遠くに住んでいてあまり接触が無かったが、一応姉だから連名になったらしい。叔母の娘である従妹は、叔父との血のつながりという目で見るとうちのドイツ人と大差ないが、長いこと同じ町に住んでいたので、関りはずっと深かった。それで連名としたのだろう。

それに対し、うちのドイツ人は叔父に人生で3~4回会ったか無いかで、ほとんど知らない人である。そのうちの2回はめぎと一緒だったのだから、しかもめぎの1回目はうちのドイツ人にとってほぼ半世紀ぶりの再会だったのだから、関わり具合はほぼめぎレベル。めぎがその叔父に初めて会ったのは2011年7月。そのことはこちらに書いてある。そして2回目は2018年2月で、こちらに書いてある。どちらも叔父や叔母の誕生日パーティーに招かれたときのもので、今となっては本当に貴重な体験だったと思う。2011年夏にみんなで70歳の誕生日を祝った叔父は、2021年夏の80歳の誕生日は叔母と二人だけで祝ったそうだし、そしてもう今はいないのだ。

先日も書いたように、叔父は亡くなってからしばらく葬儀屋の冷蔵倉庫に保管され、荼毘に付され、1月14日、こんな姿で叔母たちを待っていた。
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先日も書いたように、亡くなってから遺体を自宅に引き取らないのはドイツでは普通のことで、ちゃんと確かめてはいないがたぶん衛生観念上、遺体を住宅に安置することは禁じられているのではと思う。そして、叔父の場合は事故だったが、喩え病院などで亡くなっても1日以内ぐらいに病院に行けない場合は、遺族が遺体に対面することのないまま葬儀屋の冷蔵倉庫に運ばれるのもドイツでは極めて普通のことである。そして、荼毘に付すのは葬儀屋のやることで、遺族が同行しないのも普通である。たぶん、同行することは想定外で、遺族がそこに来ても待つ場所もないだろう。うちのドイツ人の父親のときもそうだったが、焼き場の順番が来るまでに2~3週間待ち、骨壺に入った姿でお墓で再開するのが普通なのである。ちなみに、棺桶に入れたまま埋める形のお葬式ならば、1週間以内(義母のパートナーの場合は死後数日後だった記憶…その埋葬式の様子はこちら)。また、ドイツのお葬式は埋葬式(教会式なら埋葬に先立つ礼拝がお葬式)で、四十九日経ってから埋葬する仏教とは全く異なる。

上の写真で骨壺の置かれた台の後ろに緑色の敷物が見えるのだが、そこは予め穴が掘られていて、骨壺をそこに埋葬する。その写真はない。これは、埋葬し終わってからの写真。
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叔父は長いこと、30年ぐらい叔母の住む町のすぐ近くのホームに暮らしていたのだが、つい最近(去年の初め頃)、そのホームが車で1時間半ぐらいかかるところに移転してしまった。それまでは叔父も自分で電車を乗り継いで叔母の家に遊びに来られるぐらい馴染みの場所だったし、叔母も車で迎えに行ける勝手知ったる道だったのだが、知らない遠くの場所に移転して、そうはいかなくなった。去年の夏に80歳を迎えた叔父には、もう新たな電車の駅を覚えたり乗換したりを一人ではできなかったし、80を超えた叔母も、知らない道を遠くまで車を運転していくことはできなかった(彼女はスマホも使えないし、ナビも使っていない)。それで去年の夏は叔母が電車で迎えに行ってまた送っていったそうなのだが、それが非常に大変だったので、もう頻繁にはできないな、と言ってたし、クリスマスに叔父を叔母の家に招かなかったのはそういう事情もあったのだ。で、めぎたちは思うのだ…叔父は、ひょっとして、こんな知らないところで一人ぼっちで余生を過ごしたくはないと思ったのではないのだろうかと。慣れ親しんだ元のホームでならもうちょっと長生きしたかもしれないな、と。

実は、めぎもうちのドイツ人も埋葬式には立ち会っていない。義母も行っていない。行ったのは叔母と従妹の二人だけ。ここはデュッセルドルフからも3時間半ぐらいかかるところで、恐らくもう誰もここに行くことはないのではと思う。お墓はドイツの場合、家のお墓ではなく個人個人のお墓なので、遺族が一括していくばくかを払って名前の掘られた石のプレートが置かれ、15年間掃除とかお花を供えるとかを定期的にしてくれるというものにしてあって(値段によってはその年数が長くなる)、その後は別の知らない人に場所が引き継がれる。こうして本当に土に還っていくのだ。
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今日の写真は従妹が撮って送ってくれたもの。おかげでめぎも叔父ときちんとお別れすることができた。どうぞ安らかに。お仲間さんたち、叔父をどうぞよろしくね。
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この日、晴れててよかった。語弊はあるが、光のおかげでみんなにとって清々しい思い出になったから。叔父も今、若いころからの病から解き放たれて、きっと清々しい思いだろう。さようなら…
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