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森の幼稚園を訪ねる [北ドイツの森の幼稚園]

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めぎの風邪はとうとう結膜炎を引き起こし、観念して医者へ。医者へ行くと本格的に一週間休まなければならなくなるのでなんとか避けたかったが、目が真っ赤で声も出ないとなるともはや無理・・・処方された抗生物質は普通一日2回服用するものだが、医者は3回服用するようにと。速効で効くといいなあ。

さて、今日から北ドイツのお話を。今回の北ドイツ訪問の目玉は二つ。一つは既に「めぎはいまここ」で連日ご紹介した子猫たち。生まれてから5週間で、引き取られていなくなる前に是非是非戯れてのんびりしたかった。もう一つは森の幼稚園の訪問。日本から半年間の予定で今ドイツに滞在している友人の研究者さんをお招きし、義妹の森の幼稚園を見学に行った。今日からまずこの森の幼稚園の話を書くことにする。
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森の幼稚園とは・・・幼稚園の建て屋がなく、森が幼稚園となっているところ。森のたくさんあるドイツならではのシステムだが、地理的に森があるのはドイツ南部。北部は真っ平らで森がほとんどない。しかし、義妹の住むところの近くには、小さいながらに森がある。それは氷河時代にモレーンという氷堆石が堆積してできたという。その森の中で、自然に触れながら幼稚園生活を送る。そう書くと簡単だし、素敵!と思う方もいらっしゃるかも知れない。しかし、自分の子どもをそこに通わせるとしたら・・・雨の日も風の日も雪の日も吹雪の日も、どんなに暑くてもどんなに凍える寒さでも、幼稚園には建て屋がない。外で過ごすのだ。森の中だからお手洗いもない。そんな野生児の集まりみたいな幼稚園に本当に我が子を行かせる親は、ドイツと言えどもやはり少ない。
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めぎたちは早朝から幼稚園が終わるまで、最初から最後まで約6時間をそこで一緒に過ごした。見学したと言うよりは、一緒に体験したという感じだ。その様子をできるだけ思い出して書き留めようと思う(だんだん忘れてきた!早く書かなきゃ~)。尚、当日子どもたちを連れてきた親御さん一人一人と挨拶し、写真撮影と掲載の許可をいただいているが、念のため顔の一部にモザイクを入れることとする。
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朝7時、義妹の家を出発。彼女の車で約20分ほど走り、幼稚園に到着。走りながら、森の幼稚園に子どもを通わせる親御さんの職業を聞いてみた。特に偏りはないようだ。サラリーマン、学校の先生、学校の校長、ソーシャルワーカー(正確に訳すと社会教育士で、社会福祉士ではない)、芸術家、医者、看護師等々。そのソーシャルワーカーの方(男性)は腕いっぱいすごい入れ墨で、すっかり慣れためぎでもびっくりするほど。日本だったらそんな人に社会教育士として指導はされたくないだろうな、と言うか、誰も言うこと聞かないだろうな、いや、そもそもその職業には就けないだろうな。
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幼稚園自体は8時45分からだが、7時半過ぎ、既に何人か登園してきている。ドイツの仕事は朝早いので、出勤に合わせると7時半頃の登園になるのだとか。通園鞄はこういうリュック。
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時々は植物を植えて育てたりするらしい。
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8時45分まで、例えばこの事務所の中でお絵かき。
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小さなプレハブの建物で、事務机もこれだけ。
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外では子どもたちが絵本を見ながらあーだこーだと話している。
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ぼく、こことここにもう行ったことあるんだよ、ぼくも!ぼくも!ぼくなんか、こことこことここにも!ぼくも!(絵本は南欧の地図。義妹があとでめぎと研究者さんの来た国を教えるためにこの子供用の地図絵本を出しておいたようだ。)
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そのうちには座っていることに飽きて外で遊び始めた。
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全部で3歳から6歳まで17人園児がいるそうだが、今日は13人しか来ないようだ。イチゴ模様の可愛い服を着た園児がお友達と到着。
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それから鐘というか鈴というかをちりんちりんと鳴らし、外で遊んでいた子どもたちを呼び寄せて・・・
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みんなどやどやと一度中に入り・・・
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座布団ならぬ小さく切ったスポンジのようなマットを持って出てきて・・・
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座った。
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ここでしばらく座って歌を歌ったりお話をしたり。まず「おはよう」の歌を歌うのだが、それは英語、ドイツ語、インドネシア語、フランス語、デンマーク語で。今回せっかくなので日本語も教えてきた。英語で言えば「Good morning, good morning, good morning to you, good morning, good morning and how are you?」だったと思うのだが、to youのところが日本語って困るわよね・・・そんな風に絶対に言わないから、「みんな」と訳したけど。ホント、日本語ってある意味特殊な言葉だなあ。

歌のあとで、子どもたちの日直を決めた。立候補制。その二人はその日一日色々なことをする・・・ここではまず、蝋燭に火をつける。補助をしつつも、子どもたちに自分でマッチを擦らせ、自分で蝋燭を灯させる。次に子どもたちの数を数えさせる。ここにいる子どもは何人?女の子は何人?髪にゴムをつけている子は何人?靴紐がある子は何人?などと。なるほど、簡単とは言え外国語もあれば数の練習もあるのね。週に一日は森へ行かずにこの空間で工作をしたり何かの練習をしたりして、幼稚園として小学校に上がる園児の準備をするそうだ。

いよいよ森へ出発・・・9時頃。
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幼稚園の先生は二人・・・二人でいつもは17人を引率するのか・・・大変だなあ。先生方はかなり大荷物。ここは車が滅多に来ないけど、森の中で誰かがどこかへ消えてしまわないよう、常に気を配る。
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なにしろ途中に魅力的なものがいっぱいあるのだ・・・ここは牧場。特に何も見えなかったけど、この子はしばらく眺めていた。
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50メートルも行かなかったくらいのところで、早くも休憩。休憩のシステムは、先生が「さあ、ここで休憩ですよ」と音頭を取るのではなく、誰かが暑くて上着を脱ぎたくなったら、誰かが喉が渇いて水を飲みたくなったら、その都度休憩するという感じだ。極めてドイツ的だなあと思う・・・いつ暑くなるか、いつ何かを飲みたくなるか、それはその人にしか分からない、と考えるのがドイツ。
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イチゴちゃんが早くもイチゴの上着を脱いじゃった。みんなで手伝い合って上着をリュックに収納・・・いや、収納ではなく、挟んで止める。そのために誰もがそういう形のリュックを持っている。
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待っている子どもたちはその辺りの植物で遊んでいる。
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さあ、また出発!
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つづく。
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森の幼稚園 その2 ~森の奥へ~ [北ドイツの森の幼稚園]

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おかげさまで抗生物質は非常によく効き、今日はかすれた声だけど少し出るようになった(しかし少ししゃべると痛くなるので、基本的に黙っている・・・うちのドイツ人は、静かになったと喜んでいる!治ったら弾丸のようにしゃべりかけてやる~~!)。唾を飲み込むのでも痛かった喉もずいぶん改善。安静に過ごし、身体がずいぶん楽になった。結局休んでしまったが、大学の方は代講してもらえたし、高校の方はめぎのクラスは既に学年末試験を終えていたので特に大きな影響は無かった。来週は面接試験があるので、どうしても行かなきゃ。

現在北ドイツの森の幼稚園の話を連載中。森の奥へみんなで向かっているところ。
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またもや途中に牧場が。でも、みんなの関心はこの水槽の中・・・Schwimmkäferがいるよ!と。訳すと「泳ぐ甲虫」・・・ゲンゴロウ。ちなみにKäferは英語でbeetleだが、これ、どちらもカブトムシではない。もっと正確に言うと、カブトムシ「だけ」ではない。クワガタもテントウムシも、そしてゲンゴロウもKäferの仲間。
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その向こうに広がる牧場には・・・
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子馬がいた!
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↑この日、森の中を歩くに向けてD600に24-70mmレンズをつけて首から提げ、70-300mmのレンズは後ろのリュックに入れた。適宜付け替えられるように70-300mmレンズを取り出しやすい袋に入れる準備もした。しかし、結局は24-70mmレンズだけで通して過ごした・・・子どもたちと話しながら歩いたり遊んだりして付け替える暇はなかったのだ。正直、例えばこういう場所で、もうちょっと望遠側ズームが欲しいなと思うこともあったが、明るいレンズとフルサイズの解像度を信頼して、あとでトリミングすることにした。上の子馬の写真を見ると、ああやっぱり望遠で写していればなあと思うが、今回は子どもたちの様子を撮るのが優先で、それには70mmまでで十分でもあった。

ここで、もし28-300mmの超望遠ズームレンズを持っていたら本当に便利だっただろうなあとも思う。でも、その場合、F値が3.5以上となってしまい、暗い森の中でこんなに明るい写真が撮れたかしら。または、望遠側は別のカメラにつけて2台体制で行けたら完璧だろう。実はその可能性も考えてD40xを北ドイツへ持ってきてもいた。しかし、雨上がり後の滑りやすい森の中で重いカメラ2台も下げて歩くのはキツイと思ってやめた(この幼稚園に毎日通って、もっと体力つけたらできるかしら~)。これがミラーレスならそれほど重さがしんどくなくて可能だったかも知れない。尚、10倍ズームコンデジは携帯しなかった。望遠で何か撮りたい場合は鳥かな、子どもたちが走るところかな、と思っていたので、それにはオートフォーカスが間に合わず、また森は暗すぎて、ピントが合わないだろうとこれまでの経験から予測できたから。D600と24-70mmレンズで撮れるものを撮る、ということに全力で集中したことは、結果的には写真のよい勉強になったし、自己満足だけど良い写真を撮ることができたように感じる。ここで「良い写真」とは、めぎが撮りたい写真が撮れた、という意味だけど。

さてさて・・・こんな道を歩いていくうちに・・・
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一人、ガン泣き。
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どうしたの?どこか痛い?誰かとケンカ?
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いや、この子はいつも泣くのだとか。それも、特定の先生が引率担当の時は常に泣くのだとか。それは、その先生の注意を惹きたいから、その先生はいつもやさしく「どうしたの?」とかまってくれるから・・・この子のうちは姉妹4人で、この子は母親にあまりかまってもらえずいつも寂しくて、この秋から小学校に上がるという年長さんなのに指しゃぶりしてて、いつも「私が私が私が」と自我が強くみんなと協調できなくて・・・という説明を義妹から聞いた。彼女の考えでは、泣けばかまってもらえる、という図式は既に家で学んだものだろう、それを幼稚園という社会でも繰り返し、その学んだことが正しいと裏付けしているのだろう、そういう解決策を学ばせると常に泣いて注意を惹くようになり、それでは結局なんの解決にもならない、だから幼稚園の先生としては、なんでもかんでも「どうしたの」とかまってやるのはナンセンス・・・うーん、ガン泣きも奥が深いわねえ。幼稚園の先生同士でも、教育的な考え方の違いがあって、結構葛藤があるのかな。

この子は森中に響き渡るような雄叫びを上げながら上着を脱ぎ・・・
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畳んで・・・
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時々泣いているポーズを取りながらちらちらとその優しい先生の方を見て・・・
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そして脱いだ上着をしっかりリュックに固定した。ガン泣きしつつしっかり体温調節し、非常に冷静だ。子どもってすごい。雄叫びにだまされてはいけない。しかし、あれだけの雄叫びをしなければならない彼女の事情も大人の誰かが分かってあげなければならないと思う。

この日、彼女は行き帰りで計5回ガン泣きを繰り返した。感情をコントロールできず、また言葉で表すこともできず、苦しいだろうな。
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園児たち一人一人に人生があるのだな。
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子どもの一人一人が何をしているか、どこにいるか、先生は全てを把握している。前にいる先生と後ろにいる先生とがうまく連携を取ってもいる。ぼんやりただついていくと、先頭からしんがりまで良く把握できるなあと思うし、あそこにまだ子どもいるよ、分かってる?などと心配になったりする。しかし、教師の目で見ると、めぎもここにいた初対面の13名を全て把握できたし、二人の先生方が全てを把握しているのがよく分かる。全神経を研ぎ澄まして仕事をしている。これがプロというものなのだろう。(しかし、あとで疲れがドッと来る。)
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森がその一つ一つの人生を包んでくれている。
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この仲良し二人組はいつも一緒。イチゴちゃんの手を引いて、ちょっと大きい女の子が道をかき分けていく。姉妹ではないが、まるで姉妹のよう。
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暑くなって上着を脱いで・・・
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その二人をこうしてちょっと休憩して待って・・・(先発隊もずっと向こうで休憩中)
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そしてまた駆け出していった。
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しばらく歩くと先発隊に追いつき、その先発隊の一人が休憩中。
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彼も暑くなってフリースを脱ぎ(上着は既に出発時から脱いであった)・・・
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出発。
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一人一人、興味を持つところも立ち止まるところも違う。13人分、それぞれテンポが違う。それは高校でも大学でも感じることだが、幼稚園はその比ではない。幼稚園の先生って、重労働だなあ。
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いや、たぶん、ある程度統率して、あまり早く行かせないように、またはどこかで飽きるまで何かを見ていたりしないように躾けることは可能ではと思う。この辺は、子どもの無限の可能性や興味を妨げないようにする配慮も必要で、対応の難しい部分ではあるが。しかし、何度も何度も誰かが脱いだり水を飲んだりする度に歩くのを中断するのではなく、休憩場所を決めてそこまでは暑くても歩き、そこで水を飲む、という風にすることはできないものかとちょっと思う。なにしろたいして遠くまで歩いている訳ではなく、休憩場所を2カ所くらいに限定しても汗だくになってあとで冷えて風邪を引くほどではあるまい・・・この個人主義というか、個を大事にしすぎるドイツの教育が、後々良い面も多々あるけれど、規律のないだらだらとした学生を育てることにつながっているのだよなあ・・・と思う。あと100メートルだけ頑張ろう、そこまで行ったら脱いで水が飲める、というような小さなことから、目標を定めてそこまで頑張る、やり遂げたらご褒美がある、ということを学べるはずなのだ。いつでも好きなときにだらだら休んだり水を飲んだりできるというのでは、勉強していてもいつもだらだらし、ここまで頑張ってやり遂げてから、というのを学べない。その結果(ちょっと飛躍するけど)いつまでも試験を先延ばしする学生を生み出すことになる・・・ドイツの大学では、試験は3回まで受けられるという決まりがあるだけで、いつ受けるかは自分で決められるのだ。今年は見送って来年受ける、と言い出す学生が毎年必ずいる。他の試験もあって大変だから、と言うのだ。そういう学生が次の年に思うような成績を取れることはほとんど無い。卒業試験だって、先延ばしできる。だから、卒業する時期もそれぞれバラバラだ。もちろん一人一人のリズムを尊重することは素晴らしいと思うけど、大学なんだから好きなリズムで勉強するのが正しいのかも知れないけれど、だらだらとした結果としての差違は「個性」と言えるのか。

歩いたのは1キロくらいだろうか。40分ほどかかって、目的地に到着。ここから道を逸れて森の中へ。
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つづく。
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森の幼稚園 その3 ~お弁当休憩~ [北ドイツの森の幼稚園]

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ようやく声が出るようになった!ひどい声でも意思疎通できるというのはとても嬉しい。それに、結膜炎も改善されてきた・・・これが一番嬉しいかな。

現在、北ドイツの森の幼稚園の話を連載中。

ようやく目的地に到着。これは、以前に作ってあったもの・・・木の実や枝などで円形が作られている。
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先生方は、一人は子どもたちを集め、一人は蝋燭を灯して円形の中心に据え・・・
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日直さんにある場所を決めさせる。他の子どもたちは一列になってそれについていく。
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決めたのは、この日にタオルを掛ける木。
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先生は、園児たちにブラシを渡し、持ってきた水筒の水を少しずつ園児たちの手にかけて・・・
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手を洗わせる!
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なるほど、水道のない森の中で手を洗わせるために、水を入れた水筒をいくつか持ってきているのね。それぞれ一人ずつ、最初に少し水をかけてもらい、ブラシでこすって洗い、濯ぎ用にもう一度少し水をかけてもらい、タオルで手を拭く。
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石鹸をつけてしっかり洗い、じゃあじゃあ水を流してすすぐ日本とのなんという違い・・・ドイツは元々あまり水を使わず食器なども溜め洗い&溜め濯ぎが多いし、ほんの30年ほど前までは毎日シャワーを浴びるのも珍しく毎朝洗面台の前で濡らしたタオルで身体を拭くのが普通だったし、今でも赤ちゃんは硬水が肌に悪いからという理由で一週間に一度しかお風呂に入れないのが一般的だし(日本じゃ考えられないでしょ)、湿度が低いのでばい菌やらバクテリアやらがあまり繁殖しないし・・・という事情を思えばあまり驚くことでもないのだが、この辺の現実が子どもをここに通わせるか否かの一つの指針になるのだろうな。こういう事情なら濡れタオルを持参させるとか、日本なら除菌ウェットティッシュとかを使いそうだが、そういうゴミを出さないというのもドイツならではかも知れない。除菌ばかりしていると抗体が育たない、とも。

それからあの円形のところを中心に輪になって座り、前に持ってきたお弁当を並べさせ・・・
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それから目を閉じて静かにさせ、「鳥さんたちのコンサートを聴きましょう!」と。(目を閉じていない子どもが半数くらいいたけど。)
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それからちょっとお話を。今日の話題は鳥たちの囀り。「鳥たちが啼くのはどうしてですか?」
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「春になったから」
「食べ物を探しているから」
「鳥さんたちは結婚式をしてその結婚式のお祝いの歌を歌っているから」
「普通、雄と雌のどちらが歌っていますか?」
「雄!」
「そうですね~雄がお嫁さんを探して歌っているんですね。結婚式をしたあとどうしますか?」
「巣を作る」
「卵を産む」
「雛を育てる」
「あのね、うちにね、鳥の巣があってね・・・」
「あのね、ぼくのおばあちゃんのうちにね、こおおおおおおんな大きな鳥の巣があってね・・・」


生きた生物の授業であり、ちょっとした性教育でもありますわねえ。しかし最後は子どもならではの自慢合戦に♪

ドイツの子どもたちはこんな風に手を挙げる。まっすぐではないし(まっすぐ手を挙げなさいとは言われない)、手を開かずに人差し指を一本上げる。そして、「Ja(ヤー・・・はい)!」ではなく、「Ich(イッヒ・・・わたし・ぼく)!」と言うか、黙って手を挙げるか、指を鳴らす。誰かが発言している間もずっと手を挙げ続けている。先生が説明している矢先から既に手を挙げている。これは高校でも大学でもそうだが、幼稚園の時からそうなのね。
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そして、ようやく、いただきまーす!
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お弁当の中身はこんな感じ。
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みんなサンドイッチだが、野菜を挟んでいる例は少ない。パンにチーズかハムが挟まっているだけというのが一般的だ。そして、そのパンがかなり大きい。一口大に綺麗に切って見栄え良く、という感覚はないようだ。果物も多くがそのまま持ってきている・・・バナナ一本、りんご丸ごと一個、というように。このお弁当は中ではずいぶん綺麗に食べやすく用意されていたもの。
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長いソーセージもそのまま入れられている。これ、大好きなんだって・・・この子のお母さん、ちゃんと好きなものを知っていて入れてくれているのね。
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この男の子はとってもマイペース。まだ小さいからか、動作もゆっくり。ぶどうを一粒一粒眺めたりして。
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こんなふうに別々に詰めたり、サンドイッチがバラバラにならないよう一つ一つ包まれていたのはこの子だけ。
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食べ物の入った弁当箱の下に何かを敷くか否かはそれぞれの感覚に任されているらしい・・・お弁当を包んできた布をテーブルクロスのように敷く子もいれば、直置きの子(そもそもお弁当箱を直にそのままリュックに入れている)、脱いだ服を敷いている子など、様々。こういう細かいところまで至れり尽くせり教育し、持ち物としてランチョンマットなりテーブルクロスなりを持たせたりしている日本とは大きな違いだ。そういう躾は家庭でするべきもの、という切り分けがドイツではかなりハッキリしているというか。

ところで、このお弁当を食べたのは10時10分頃から40分頃にかけて。日本的に言えばおやつの時間のようだが、ここでは「朝食」の時間と呼ばれている。朝が早いドイツでは、朝ごはんをうちで食べる習慣がない。多少つまんだりはするが、しっかり朝を食べましょう、という考え方はない。朝ごはんは10時頃に出先で食べるものなのだ。話は逸れるが、学校でも10時頃20分くらいの比較的長めの休み時間があってそのときにみんなお弁当をつまんでいる。いや、8時台でも9時台でも、5分休みに何かつまんでもかまわない。おなかがすく時間は個人個人違っているので、みんなで一斉に食べるという考え方はないのだ。教師もみんなお弁当にパンなど持参してきて、休み時間か授業のない時間に適宜つまんでいる。(学校では教師が生徒たちと一緒に教室で食べるという習慣はない。ただし、最近全日制の学校が少しずつ増えてきていて、学食制度が採り入れられてきているようだ。教師たちは交代で学食の監督をしているらしい。その場合も、みんなで一斉に食べるという訳ではなく、教師が一緒に食べるという訳でもなく、大学の学食のようなイメージだ。)知り合いのドイツ人たちによると、会社でも朝食を持参し(または出勤途中にパン屋などで買って)、事務所で食べているという。そのようなわけで、これは朝食休みであり、このお弁当は朝食である。(ちなみに幼稚園は12時半で終わり、昼食は自宅で食べる。ドイツの伝統は昼食の時に温かい料理を食べ、朝食は火を使わない・・・したがって、喩えうちで食べるとしても、スープなどはなく、ほぼ同じような内容である。)このお弁当の準備として幼稚園が親にお願いしているのは、できるだけ白いパンなどを使わず健康によい黒パンなどの食材を使うことと、手で食べられるものを用意すること(つまりフォークやスプーンを使わないもの)。


みんながまだほとんど食べていないうちに、緑の男の子はもうパッキング。うちで少し食べてきたのかな。
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いや、そうではなくて、彼は遊びたかったのだ・・・いや、それより先に、彼は、トイレに行きたかったのだ・・・しかし、ここにはもちろんトイレはない。彼は、パッキングするや否やIch muss pischern!(しっこ!)と叫び、同時にズボンをバンと下げた!慌てて先生が、ここじゃなくてあっちでしなさい!と叫び、彼はとっさにぴょんぴょんと跳びはねてちょっと遠くへ行って、じゃ~~~~!(聞こえる!)

衛生的にどうなのよ、と顔をしかめる親が必ずいることと思う。そもそも、森にとっても環境保護の点から言ってこれは良くない、という指摘をする親もいるそうだ(そういう人はそもそもここに入園はさせないが)。しかし、この広い森で、毎日場所を変えて17人の園児が多少pischern(これはpissenという単語の子ども言葉かつ北ドイツ方言)しても、たいした話ではないのだろう・・・ちなみにこのあと女の子もこれに続き、やはりその辺でしゃがんでいた。紙で拭くという感覚は持ち合わせておらず、そのままズボンを上げていた(大の方ははどうするのだろう?聞き忘れちゃった)。性別による恥じらいというものも特になかった。ドイツの大学寮や安いユースホステルのような宿でシャワールームが男女共同だったりするが、それはこういう文化に因るのかな、とふと思った。日本ではかなり小さいうちから男女別々をたたき込むように思う。たたき込んでいるつもりはなくとも、男女別のお風呂、トイレ、食器などの色で、男女別がインプットされる。しかし、こうあけすけの方が、丸見えの分余計に男女の差をしっかり学習できるかも知れない。

その後、次々と食べ終わってパッキングしてみんな遊びに出て行った。
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友達の歓声が気になりつつ食べ続けている子。
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パッキングするときに気がついたこと・・・みんなこのお尻に敷く座布団マットを自分で持ってきていたのね。(ちなみにめぎには義妹がマットを運んでくれていた。)
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お弁当のあとは子どもたちの自由時間。みんな森の中で思い思いに遊んでいる。その様子は明日ご紹介する予定。
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ようやく最後に残っていた子も食べ終わり・・・
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パッキング。
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このように、みんな食べ終わるまで待ちましょう、というシステムではない。時間内に食べ終わりましょう、最後まで残さず食べましょう、という教育もない。みんながもう遊んでいても自分のペースを守れるし、遅いなあ早くおいでよ、と急かせる人もいない。それぞれのリズムで生きられる社会・・・ドイツのそういう社会のあり方は、こんな小さいうちから培われてきているのね。

遊びに行ってらっしゃ~い!
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つづく。
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