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2023年夏 ザルツブルク ブログトップ
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2023年夏のザルツブルク音楽祭 7月21日のこと [2023年夏 ザルツブルク]

突然だが、今年もザルツブルクにやってきた。
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日本へ行って帰ってきたばかりなのにまた旅ですかという感じだが、ザルツブルクは昨年夏からの計画で、日本は今年になってから決めた計画。ザルツブルクの方が先に決まっていたのである。ブログではめぎの近況を載せていたが、実は21日から既にザルツブルクに来ていた。音楽祭が始まったのは20日。めぎの取ったチケットは21日から。で、21日に現地入り。

ザルツブルク音楽祭というのは6週間にわたって開かれるのだが、毎年最初の10日間ぐらいOuverture spirituelleという冠タイトルの付いた教会コンサートが行われる。訳すと心霊的序幕という感じだろうか。毎年決まったテーマがあって、ここ数年世界のいろいろな宗教音楽を扱うテーマが多かったのだが、今年のテーマはLux aeterna「永遠の光」。
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Lux aeternaはレクイエムやミサにおける聖歌なのだが、メディアに載った関係者の言葉によると、このテーマ「永遠の光」は、コロナで亡くなった方々を普通に弔うことも許されなかったここ数年を踏まえ、宗教音楽を奏でて弔いの儀式の代わりにする、という意味もあれば、このバラバラになって混とんとした現代の世界情勢に光を、という意味もあるようだ。

21日、そんな祈りの宗教音楽のコンサートの一つをKollegienkircheという教会で見た。始まるのは21時で、すでに薄暗い。
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休憩時間にはすっかり闇。
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この日持って行ったのはニコンの昔のコンデジ、Coolpix A。暗いのに結構頑張っていい写りしてる。
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この日、雨も降ってかなり寒かった。外にいると寒すぎて、30分の休憩時間の真ん中ぐらいにもう中に入っためぎ。ちょうど舞台の設営が終わったところ。
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ここがぎっしり満席。宗教音楽でもこんなに人気があるなんて。
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こんな格好をしている程度に寒いということ。
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コンサートの内容についてはこちら(ドイツ語)。1曲目はSofia GubaidulinaのSonnengesang für Violoncello, Chor und Schlagzeug「チェロと合唱と打楽器のための太陽の歌」で、2曲目はHeinrich SchützのMusikalische Exequien SWV 279—281「埋葬音楽」。21時から23時50分までという夜遅いコンサート。
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興味のある方のために、1曲目はこんな曲。



2曲目。



この2曲目は本当は30分ちょっとの曲なのだが、それをPeter Sellarsという演出家がストーリーと振り付けを考えて80分の舞台にしていた。演出家の言葉はこちら(英語)。彼の演出のオペラをザルツブルクで以前2つ見たが(モーツァルトの「皇帝ティトス」と「イドメネオ」)、演出自体はいろいろ工夫しているのはよくわかるのだが失礼ながらめぎはあまりその意義を感じない。今回もやはり意味はよく分かるが意義はあまり感じなかったが、彼の意図はよくわかったし、音楽自体とその演奏自体は素晴らしかった。

かつてPeter Sellarsと「皇帝ティトス」と「イドメネオ」をやった指揮者のクルレンツィスが聴衆として来ていた。これはPeter Sellarsと抱き合って挨拶した直後。こんな風に、有名な音楽家(特に別の日の出演者)が聞きに来ていたりするのも音楽祭ならでは。
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こうしてめぎは一気にザルツブルク音楽祭の世界に引き込まれた。何もかも、仕事も日本も、今夏休みの終わり近くであることさえもすっかり忘れて音楽に没頭。ああ、来てよかった。
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2023年7月22日ザルツブルク音楽祭の無料イベント [2023年夏 ザルツブルク]

今日は2023年夏のザルツブルク音楽祭7月22日のお話を。

この日は音楽祭は無料イベントの日。土日にかけてのべ90ぐらいのイベントが行われた。半分ぐらいが音楽祭に関連のある場所のガイドツアーや講演で、あとの半分ぐらいがミニコンサートや路上コンサート。本来の有料のコンサートも2つあったのだが、めぎはそれを購入しておらず、無料イベントに参加することにしていた。まず1つめはこの祝祭劇場の5階が会場で10時から。
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それはÖ1というオーストリアの公共ラジオ放送局の音楽トーク番組の公開ライブ放送で、ゲストは音楽祭の音楽部門総支配人のマルクス・ヒンターホイザーと、ザルツブルク音楽祭の初回1920年のこけら落としからずっと今まで毎回上演され続けてきている「イェーダーマン」という演劇の主役イェーダーマンを演じる俳優ミヒャエル・メルテンス。内容についてはこちら(ドイツ語)。
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場所は祝祭劇場の中だが一般には公演の時も行けないようになっているところで、ザルツブルクの教会がいくつか見渡せる素晴らしい立地。
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めぎはこのヒンターホイザーに興味があって…と言うのは、彼が総支配人になってから音楽祭のコンサートやオペラの質がググっと上がったと感じているので…正直に言えば生ヒンターホイザーが見たいというミーハーな気分でこの催しに申し込んで行ったのだが、話を聞いていてこの人とにかく音楽が好きなんだなあということがよくわかった。でも、総支配人ともなると色々と政治的にもあれこれ発言を求められたりするわけで、うまくいっているときはいいけど今はあれこれ意に沿わないことも多いようで(ウクライナ戦争中にクルレンツィスというロシアの指揮者を出演させることについて去年からずっとあれこれ言われてるし、つい最近ザルツブルク州議会選挙で右寄りの結果になったのに対し文化関係者がみんな遺憾の意を表明しているのに総支配人が何も言わずにいるのは、いくら州が音楽祭のパトロンの一つだからと言っても意気地なしだ、というのがちょうどこの日の新聞のトップになっていたし)、具体的にそれに言及することはなかったが、言葉尻や話題の選び方からなかなか大変なんだろうなあと感じる時間だった。女性はこのトーク番組の司会者。
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この場でめぎは初めて知ったのだが、この前日夜に今年の初日だった「イェーダーマン」の舞台に地球温暖化防止を訴えるラスト・ジェネレーションの環境保護団体の3人が乗りこみ、抗議行動を行ったとのこと。イェーダーマンが恋人とキスをするシーンを合図に客席から叫び始めて前へ行こうとしたところですぐに警察に逮捕され、舞台は中断されることもなくそのまま続いたらしいが、見ている側は初演の初日だから訳が分からず、これも演出の一つなのか?とざわめく事態だったらしい。というのも、公演の最初に環境保護団体が金持ちイェーダーマンの家にオレンジ色のペンキを塗るという演出が盛り込まれていたからだ。でもこの3人は本物の抗議行動で、チケットを買って中に入って行為に及んだというのだから、そして、警察にマークされないよう今までデモに参加したことのない人が選ばれて頼まれてやったというのだから、テロ対策もまた次のステージに入ったという感じだわね。それ、オペラでも起こるかもしれないわねぇ…

イェーダーマンさんは、自分の俳優人生でいかに今まで移動でCO2をまき散らしてきたか、というような話もしていた。
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そんな事件がなければもっと違う話をしたはずだったんだろうに、環境保護団体の事件で音楽の話とずいぶんかけ離れた内容の話が多かった。しかも、どうも最後にまとまりがなかったというか、話が中途半端で終わってしまったようなトーク番組だったのだが、それもまた生番組ということで興味深かった。とにもかくにもめぎはこの普段公開されていない5階に入ることができて、ヒンターホイザーの生の声を聞くことができて楽しかった。1時間半もあったので、ちょうどインタビューを受けていない間の様子とかちょっと素の状態も見えるし、そういうのって面白いわね。
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楽しい1時間半が過ぎ、次の12時からのイベントはこちら、シュテファン・ツヴァイク記念館。さっきの祝祭劇場の裏、岩山を上ったところにある。30分でお手洗いに行って裏に回って長い階段を上がってハアハアゼイゼイ言いながら受付を済ませてやっと到着。
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そこで、2つのテーマについての1時間のガイドツアーに参加した。シュテファン・ツヴァイクというのはザルツブルクに住んでいたユダヤ人作家なのだが、1つめのテーマは、同じくユダヤ人で同じくザルツブルクに住んでザルツブルク音楽祭の創始者となった当時の超売れっ子の舞台演出家のマックス・ラインハルトに自分の書いた演劇を演出してほしかったのだがついに実現しなかった、という話。もう1つは、マックス・ラインハルトは1937年のザルツブルク音楽祭にドイツを代表するゲーテの演劇「ファウスト」を演出したのだが、それはちょうどナチスがオーストリアを征服した頃で、この最もドイツ的な戯曲ファウストの上演についてシュテファン・ツヴァイクは反対の意見だった、という話。
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偉大な頭脳が同時期に同じ場所に集っていたのに、ずっと相容れないままだったのね。
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この2つに参加して13時となり、いったん宿へ。お昼を食べて本当は15時に2030年完成に向けた音楽祭会場の新設プロジェクトについての講演に行くつもりだったのだが、なんだか疲れ果ててしまい、会場がちょっと遠いということもあって行く元気を失い、オンラインでギリギリだけどキャンセル。2時間ほど昼寝して復活し、18時半に今度は大聖堂へ。
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ここでパイプオルガンのコンサートを聞いた。大聖堂には7つのパイプオルガンがあるそうだが、この日はそのうちの5つの音色を聞くことができた。そういえばモーツァルトが弾いた事のあるというパイプオルガン、どれだったっけ。
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6曲披露されたのだが、16~17世紀の曲はYouTubeでは見つからず。見つかったのを張り付けておく。映像には広告が最初に入る可能性があるが、そのあと綺麗な音色と弾く様子が見られる。まず、César Franck(1822‐1890)の Choral no. 3 a Mollという曲



次にバッハ(1685‐1750)のTrio Allein Gott in der Höh sei Ehr, BWV 664という曲。



最後にMax Roger(1873‐1916)のPhantasie und Fuge über BACH (op. 46)という曲。



オルガンの曲って、圧倒的で、1時間聞いただけでかなり疲れ切る…

終わったらすぐ近くでこのアルペンホルンの路上コンサート中だった。
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そのまたすぐ近くを、まもなく別の広場で剣の舞を披露するらしい人たちがパレードしていった。
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そこから宿へ向かうと、次の広場ではサックスのライブが行われていた。
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このあと夜中の松明の舞とやらまで無料のイベントが目白押しなのだが、めぎはこれで終了とした。ご紹介したかったのは、ザルツブルク音楽祭にはこういう一面もあるということ。高級ドレスを着た社交界の集いばかりではないのだ。折しもウクライナの文化大臣が戦争の時期に文化どころではないということで退任したというニュースが流れる中、ここではみんなが平和に文化に酔い痴れている。いつ誰がテロ行為をするかもしれない危険も孕みながら。
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2023年7月23日のザルツブルク音楽祭 [2023年夏 ザルツブルク]

今日はザルツブルク音楽祭の7月23日のお話を。

23日の朝は快晴だった。
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この日は11時に教会コンサート。
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先日夜に来たKollegienkircheである。
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今日も人がいっぱい来ているな~
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…と思って写していたら…
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ヒンターホイザー(ザルツブルク音楽祭の音楽部門の総支配人=芸術総監督)がいた。
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中は光が入って美しかった。
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この日の演目もOuverture spirituelleの枠組みの中のコンサートで、内容についてはこちら(ドイツ語)。1時間ほどの時間に次の4曲が演奏された。まず、モンテヴェルディのLaetaniae della Beata Vergine für sechs Stimmen SV 204。同じ曲を張り付けておく。



次に、Agostino SteffaniのStabat Materという曲。



次に、Heinrich Ignaz Franz von BiberのRosenkranzsonatenの中から、Sonate Nr 10 für Violine und Basso continuo in g mollという曲。



最後に、同じBiberのRequiem f-Moll。




終わったら拍手大喝采だった。上のリンクを今聞くと、めぎにはザルツブルク音楽祭の質の高さがよくわかる。教会での生コンサートという臨場感のせいもあるのかも知れないが、まさに天使が歌っているようだったり、天国から聞こえてくるような音色だったりしたのだ。存在すれば、の話だが。
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かつて、今のようなエンターテインメントが何もなかった時代、働いて働いて、唯一のエンターテインメントは日曜日の教会のこの音楽だけだった時代、この整った美しい歌声・音色を聞けば人々が天国を信じたのは当然だったと思う。思えば西洋音楽は宗教音楽から発展したのであり、その後音楽はどんどんテーマも作曲法も自由になって行って、つまり羽目を外していって今に至っているわけだが、ひょっとしてそれは堕落したってことかも知れないな、と思った。規則に従って作られている昔の音楽の方が、心にすんなり響くように感じたのだ。規則というのは、人が安らかでいられるように作られたものだともいえるのかも。もちろん悪政のための規則もあるけど、普遍的な規則においては、ね。

この日の午後はずっと宿でゆっくりと過ごし、ブログを書いたりしていた。これは籠るつもりで予めカフェに寄って買ってきたアプリコットのシュトゥルデルというケーキ。
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夕方には曇って来て雨が降ったが、その後持ち直していた。
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この日までどこにも行かず、ブログを書いたほかは宿で音楽のことだけ考えて調べて聞いて、次の公演の予習をしたりして過ごしていた。最後には予習しながら(つまり音楽聞きながら)寝落ち。うーん、最高の夏休み。
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