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2023年7月22日ザルツブルク音楽祭の無料イベント [2023年夏 ザルツブルク]

今日は2023年夏のザルツブルク音楽祭7月22日のお話を。

この日は音楽祭は無料イベントの日。土日にかけてのべ90ぐらいのイベントが行われた。半分ぐらいが音楽祭に関連のある場所のガイドツアーや講演で、あとの半分ぐらいがミニコンサートや路上コンサート。本来の有料のコンサートも2つあったのだが、めぎはそれを購入しておらず、無料イベントに参加することにしていた。まず1つめはこの祝祭劇場の5階が会場で10時から。
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それはÖ1というオーストリアの公共ラジオ放送局の音楽トーク番組の公開ライブ放送で、ゲストは音楽祭の音楽部門総支配人のマルクス・ヒンターホイザーと、ザルツブルク音楽祭の初回1920年のこけら落としからずっと今まで毎回上演され続けてきている「イェーダーマン」という演劇の主役イェーダーマンを演じる俳優ミヒャエル・メルテンス。内容についてはこちら(ドイツ語)。
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場所は祝祭劇場の中だが一般には公演の時も行けないようになっているところで、ザルツブルクの教会がいくつか見渡せる素晴らしい立地。
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めぎはこのヒンターホイザーに興味があって…と言うのは、彼が総支配人になってから音楽祭のコンサートやオペラの質がググっと上がったと感じているので…正直に言えば生ヒンターホイザーが見たいというミーハーな気分でこの催しに申し込んで行ったのだが、話を聞いていてこの人とにかく音楽が好きなんだなあということがよくわかった。でも、総支配人ともなると色々と政治的にもあれこれ発言を求められたりするわけで、うまくいっているときはいいけど今はあれこれ意に沿わないことも多いようで(ウクライナ戦争中にクルレンツィスというロシアの指揮者を出演させることについて去年からずっとあれこれ言われてるし、つい最近ザルツブルク州議会選挙で右寄りの結果になったのに対し文化関係者がみんな遺憾の意を表明しているのに総支配人が何も言わずにいるのは、いくら州が音楽祭のパトロンの一つだからと言っても意気地なしだ、というのがちょうどこの日の新聞のトップになっていたし)、具体的にそれに言及することはなかったが、言葉尻や話題の選び方からなかなか大変なんだろうなあと感じる時間だった。女性はこのトーク番組の司会者。
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この場でめぎは初めて知ったのだが、この前日夜に今年の初日だった「イェーダーマン」の舞台に地球温暖化防止を訴えるラスト・ジェネレーションの環境保護団体の3人が乗りこみ、抗議行動を行ったとのこと。イェーダーマンが恋人とキスをするシーンを合図に客席から叫び始めて前へ行こうとしたところですぐに警察に逮捕され、舞台は中断されることもなくそのまま続いたらしいが、見ている側は初演の初日だから訳が分からず、これも演出の一つなのか?とざわめく事態だったらしい。というのも、公演の最初に環境保護団体が金持ちイェーダーマンの家にオレンジ色のペンキを塗るという演出が盛り込まれていたからだ。でもこの3人は本物の抗議行動で、チケットを買って中に入って行為に及んだというのだから、そして、警察にマークされないよう今までデモに参加したことのない人が選ばれて頼まれてやったというのだから、テロ対策もまた次のステージに入ったという感じだわね。それ、オペラでも起こるかもしれないわねぇ…

イェーダーマンさんは、自分の俳優人生でいかに今まで移動でCO2をまき散らしてきたか、というような話もしていた。
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そんな事件がなければもっと違う話をしたはずだったんだろうに、環境保護団体の事件で音楽の話とずいぶんかけ離れた内容の話が多かった。しかも、どうも最後にまとまりがなかったというか、話が中途半端で終わってしまったようなトーク番組だったのだが、それもまた生番組ということで興味深かった。とにもかくにもめぎはこの普段公開されていない5階に入ることができて、ヒンターホイザーの生の声を聞くことができて楽しかった。1時間半もあったので、ちょうどインタビューを受けていない間の様子とかちょっと素の状態も見えるし、そういうのって面白いわね。
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楽しい1時間半が過ぎ、次の12時からのイベントはこちら、シュテファン・ツヴァイク記念館。さっきの祝祭劇場の裏、岩山を上ったところにある。30分でお手洗いに行って裏に回って長い階段を上がってハアハアゼイゼイ言いながら受付を済ませてやっと到着。
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そこで、2つのテーマについての1時間のガイドツアーに参加した。シュテファン・ツヴァイクというのはザルツブルクに住んでいたユダヤ人作家なのだが、1つめのテーマは、同じくユダヤ人で同じくザルツブルクに住んでザルツブルク音楽祭の創始者となった当時の超売れっ子の舞台演出家のマックス・ラインハルトに自分の書いた演劇を演出してほしかったのだがついに実現しなかった、という話。もう1つは、マックス・ラインハルトは1937年のザルツブルク音楽祭にドイツを代表するゲーテの演劇「ファウスト」を演出したのだが、それはちょうどナチスがオーストリアを征服した頃で、この最もドイツ的な戯曲ファウストの上演についてシュテファン・ツヴァイクは反対の意見だった、という話。
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偉大な頭脳が同時期に同じ場所に集っていたのに、ずっと相容れないままだったのね。
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この2つに参加して13時となり、いったん宿へ。お昼を食べて本当は15時に2030年完成に向けた音楽祭会場の新設プロジェクトについての講演に行くつもりだったのだが、なんだか疲れ果ててしまい、会場がちょっと遠いということもあって行く元気を失い、オンラインでギリギリだけどキャンセル。2時間ほど昼寝して復活し、18時半に今度は大聖堂へ。
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ここでパイプオルガンのコンサートを聞いた。大聖堂には7つのパイプオルガンがあるそうだが、この日はそのうちの5つの音色を聞くことができた。そういえばモーツァルトが弾いた事のあるというパイプオルガン、どれだったっけ。
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6曲披露されたのだが、16~17世紀の曲はYouTubeでは見つからず。見つかったのを張り付けておく。映像には広告が最初に入る可能性があるが、そのあと綺麗な音色と弾く様子が見られる。まず、César Franck(1822‐1890)の Choral no. 3 a Mollという曲



次にバッハ(1685‐1750)のTrio Allein Gott in der Höh sei Ehr, BWV 664という曲。



最後にMax Roger(1873‐1916)のPhantasie und Fuge über BACH (op. 46)という曲。



オルガンの曲って、圧倒的で、1時間聞いただけでかなり疲れ切る…

終わったらすぐ近くでこのアルペンホルンの路上コンサート中だった。
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そのまたすぐ近くを、まもなく別の広場で剣の舞を披露するらしい人たちがパレードしていった。
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そこから宿へ向かうと、次の広場ではサックスのライブが行われていた。
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このあと夜中の松明の舞とやらまで無料のイベントが目白押しなのだが、めぎはこれで終了とした。ご紹介したかったのは、ザルツブルク音楽祭にはこういう一面もあるということ。高級ドレスを着た社交界の集いばかりではないのだ。折しもウクライナの文化大臣が戦争の時期に文化どころではないということで退任したというニュースが流れる中、ここではみんなが平和に文化に酔い痴れている。いつ誰がテロ行為をするかもしれない危険も孕みながら。
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Baldhead1010

CO2も、なければ困るのだけれど・・・。
by Baldhead1010 (2023-07-25 05:47) 

mm

植物には絶対必需品ですよね。
by mm (2023-07-25 06:25) 

テリー

地球温暖化、予想より20年早く進んでいるという説もあります。
ギリシアのように、山火事が起きているところ、気温が40数度になっているところ、深刻な国もあれば、そうでないところもありますね。日本は、周りの海水温度が上がり、線状降水帯が発生しやすくなり、各地で、土砂崩れが起きています。洪水や土砂崩れの被害の割に、幸い死者数が多くない。
ロシア、ウクライナの戦争も、お互いにクラスター爆弾を使用を始め、穀物輸出を認めなくなりましたので、戦いは、一段上のレベルに進みました。
by テリー (2023-07-25 10:01) 

(。・_・。)2k

毎回 YouTube貼られていると見るんですが
毎回思うのは別世界の音楽で感動します
by (。・_・。)2k (2023-07-25 14:32) 

おと

過激な環境保護団体の事件、こちらでも、とても多いです。注目度が高くなるからかアート系を狙うことも多く、的が外れているように思います。
音楽祭の盛りだくさんの講演やイベント、こうやって深く理解できるのは、めぎさんの知識と語学力あってのことですね^^

by おと (2023-07-25 21:32) 

Inatimy

無料のイベントがいくつもあるというのはありがたいですね。
お試しに触れる音楽で気に入って、夢中になるものに変わって行く可能性もあるし^^。
起伏がある街だから、場所を考えないと、移動が大変なんですね・・・。
すっかり上りの階段は自信がなく^^;。
by Inatimy (2023-07-25 23:28)