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めぎのフィギュアスケート観戦記 プロローグ [2017年春 ヘルシンキ]

イースター休みに入り、ようやく時間ができて、まずはやっぱりこのお話から。さっさと書かないと、次の試合になっちゃうしね。
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めぎのフィギュアスケートとのつきあいは長い。それはジャネット・リンからなのだ。なにしろ札幌の出身だしね。小さい頃はなんとマイ・スケート靴を所有し、ジャネット・リンの真似事をして遊んでいた。



その後心を奪われたのは、ペアのゴルデーワ。彼女はあまりにも美しく軽やかで、少しずつ大人になっていく様子も美しく、いつもいつも楽しみにしていた。




ところで同じ頃、伊藤みどりとカタリーナ・ヴィットもいて、日本では女子シングルが特に注目されていたけど、めぎはその頃から男子シングルが好きだった。この頃二人のブライアンが金メダルを奪い合っていた時期で、これがブライアン・オーサーの若かりし頃である。結果は銀メダルだったけれど。




そのようなわけで、ずっとずっと世界選手権かオリンピックのフィギュアスケートを見に行くことがめぎにとっては夢だった。その夢を最初に叶えたのが2002年の長野での世界選手権。オリンピックイヤーの世界選手権で、めぎのお目当てはプルシェンコだったのだが、彼が来なかったにもかかわらずこのヤグディンを見ることができて感動的だった。つまり、この映像の大観衆の中にめぎもいるということね。ちなみにこの頃、日本でもチケットは簡単に買えた。まあ女子シングルじゃなかったからかも知れないが。



そしてその年の秋からめぎはドイツへ。その頃ふと気がついたのだった・・・2004年の世界選手権がドルトムントで開かれると言うことに。ドルトムントはデュッセルドルフから電車で1時間くらい。うちからアリーナまでだと待ち時間など入れて2時間くらいかかるが、通えない距離ではない。で、一年前に通しチケット(予選からエキシビションまでのチケット)を購入。カテゴリー1の通し券が当時392ユーロ。そうして2004年3月終わり頃、デュッセルドルフから一週間ほど毎日電車でドルトムントへ通って世界選手権を一から百まで堪能した。これは男子シングルの予選の日。これからリンクに上がろうとしているのがプルシェンコである。
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そのときのめぎの席はジャッジ側。プルシェンコがジャンプしたところ。予選だから観客も少なかったわね。
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この頃は世界選手権に予選というのがあったのだった。予選は前の年のプログラムを滑ってくれて、めぎは大好きだった「サンクト・ペテルブルク300」というのとその衣装を見ることができてとても嬉しかった。その演技は前の年の映像だけどこちら。



2004年の世界選手権では荒川静香さんが優勝して、同じく通し券で一週間隣同士だったイギリス人たちにおめでとう~!とめぎまで祝われたのだが、めぎにとってはこのプルシェンコの演技が何より記憶に残っている。転んでもぶっちぎりで優勝だった。そうそう、これが6点満点制の最後の年。



このときのドルトムントの会場では演技前の選手たちを垣間見ることもできた。このときのめぎのカメラではこんなブレブレ写真しか撮れなかったけど、その分心の中に彼の集中する姿が焼き付いている。
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思えばその2004年の世界選手権がめぎにとってフィギュアスケート観戦と一つ区切りがついたときであった。なぜなんだろう・・・美しさと技の局地を見尽くしたという気がしたからか、金まみれのスポーツにちょっと嫌気がさしたからか、一週間朝から晩まで堪能することで現実を知り、子どもの頃からの憧れに終止符が打たれたというか・・・とにかくその後のオリンピックでプルシェンコが優勝した後、めぎは急速にフィギュアスケートへの興味を失った。だから、ダイちゃんやマオちゃんと呼ばれる人たちが大活躍していた時期、めぎは全くフィギュアスケートを見ていない。オリンピックさえも見なかった。プルシェンコはさらに現役で居続けたけれど、それもあまり見なかった。それほどまでに、めぎはすっかりフィギュアを卒業していたのである。

それが3年前、ソチでユッツール・ハーニュという日本人が金メダルをとったというニュースをドイツのラジオで聞いて、ハーニュ?どういう字?と思って確認したのがめぎの第2のスケート観戦人生の始まりである。何この美少年!マンガから出てきたみたいな美しい男の子。脚が長く顔が小さく華奢。ひゃ~これ、ホントに日本人!?それがあのパリの散歩道でやんちゃそうな表情を見せ、ロミオとジュリエットで儚げな美しさを見せ、スポーツである前に役者演技であるような、でも2種類の4回転を飛んで立派にスポーツでもあって、よく見ればあのブライアン・オーサーも横に控えてて、へ~~~と突然興味を持ったのだ。オリンピックで金メダルを取ったからかも知れないが、なんというか、ハーニュ君には特別なオーラが感じられた。それから毎年、グランプリシリーズから世界選手権までテレビ観戦し、全てのプログラムと彼の成長の変遷を観察してきた。同じオーサーコーチのハビさんもめぎは気に入って、二人の戦いの様子も面白かった。とは言え、正直、試合観戦に行くほどではなかった。バルセロナでグランプリファイナルがあったときも昨年のマルセイユも、週末だけなら行けなくもなかったのだが・・・以前のプルシェンコと違ってどうしても生で見たいと思うほどではなかったし、どうせ見るなら通し券でないと面白くないとも思っていたのだ。だって、あそこで毎日毎日、試合期間中日々盛り上がっていくのを感じるのが素敵だったから。その日の分しか見られないのならテレビで観ても同じこと、と。

だからチケットも買わずにいたのだが、今年の2月の四大陸をテレビで観て、突然意識が変わった。うーんわたし、この4回転の戦いを見たい。4回転を飛ぶときの音を聞きたい。来年、オリンピックは遠すぎて行けないし、世界選手権はミラノだけどハーニュ君はひょっとすると次のオリンピックで引退するのかも知れないし、ハビさんも引退だろうし、今回はウノ君やらボーヤン君やらもいるし、さらにネイサン君も出てきたし、こんなに種類の増えたみんなの4回転を一度自分の目で見てみたい!そう思って公式サイトのチケットを見てみたら、あらまだカテゴリー1の席があるじゃない!プレミアム席はもう無かったけど、前から13列目なら悪くない。同じ日のアイスダンスはプレミアム席もある!エキシビションも前から6列目がある!!飛行機もまだ往復200ユーロで買える!!!買っちゃう?

というわけで、さくっと買っちゃってここに来たのだった。もちろんうちのドイツ人は来ていない。彼は多くのドイツ人と同様、フィギュアスケートには微塵も興味がない。で、残念だけどめぎ一人旅。でも、一人だからこそ、自分の好きなことに没頭できる。ああ、いよいよだわ~~
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おお~リンクに入ったわ~~~
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テレビで観ているのと全く同じ入り方。当たり前だけど、なんだか感動。
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そうそう、チケットを買ったあとで真っ先にチェックしたのが写真撮影ポリシー。フィギュアスケートに関しては4回転の音を聞きたくて行くので写真を撮りに行くつもりではなかったのだが、公式サイトによると、写真撮影は許可。フラッシュ禁止、撮った写真を売買してはいけない、三脚禁止、他の観客に迷惑になるような大きな望遠レンズは禁止、ビデオ撮影禁止とのこと。まあサンニッパみたいなレンズを持っている訳じゃないからそれほど大きくもないが、70-300mmはOKかしら・・・とずいぶん迷ったのだが、ダメと言われたら58mm単焦点で写そうと決心し、両方持ち込んだ。席が意外とゆったりしてて前との距離も十分にあり、70-300mmのレンズでなんの問題もなかったが、ISOを思いっきり上げたものの重い所為かちょっと手振れが多かったように思う。

ワクワクドキドキ~~~~~やっぱりこういう緊張感ある試合っていいわ~~めぎは試合が好きなのだ。綺麗な演技を見ることよりも、素敵な演出を見ることよりも、美しさと技の極みの戦いを、意地と誇りのぶつかり合いの試合を観ることにワクワクする。今やどんなスポーツもどれほどの裏があるかということをよく分かってはいるけれど、それでも試合はものすごく緊張感があって、最高のショーだと思う。3年前のサッカーのワールドカップのドイツ対アルゼンチンの時のように、去年のヨーロッパ選手権のドイツ対イタリアのPK戦の時のように、久々にワクワクドキドキした。なにしろこれは世界選手権。一年で最も緊張感のある張り詰めた空気。これで優勝できなければ世界一にあらず。ここにピークを合わせられなければ、どんな世界記録を持っていても、どんなに他の大会で優勝していても、やっぱり世界一ではない。この6人はこの瞬間に人生を懸けているのだ。
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さて、これは2004年にはなかったと思うのだが、各グループの6分間練習の前に選手の紹介があった。一列に並んで、滑走順に紹介される。もちろんまずハーニュ君から。
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他の選手たちはこの各選手紹介の間はそこに立って他の選手にイチイチ拍手していたのだが、ハーニュ君だけは自分が紹介された後誰に拍手することもなく一人ちょっと滑って円を描いてジャンプのタイミングの練習をしていた。
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どうなのそれって?よくあることなの?でも、ここまでのグループにはそんな選手はいなかったし、この後のアイスダンスでもいなかったけどなあ・・・

長くなったので、続きは明日。

撮影: D600 + 70-300mm(F4.5-5.6)、FinePix 50i、Xperia Z1
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めぎのフィギュアスケート観戦記 そのとき [2017年春 ヘルシンキ]

現在、4月始めのヘルシンキでの歴史的瞬間の話を連載中。
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今回フルサイズに70-300mmレンズで臨んだめぎ。ハーニュ君のグループになるまでに何度か試みてISOやF値やシャッタースピードを調整し、いざここからが本番。ちなみに昨日も書いたが、この大会は撮影OK。フラッシュや三脚は禁止である。

6分間練習中のハーニュ君のジャンプ。
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望遠でオーサーコーチとハビさんと。
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再びジャンプ。これは手振れしちゃったな・・・
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5位からどこまで這い上がれるのか、3位くらいにでも入れればいいなあ・・・などと思いながら見ていたこのとき。
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生ハーニュ君はこの時点でも美しく神々しかったけど、あまり覇気が感じられなかった。だから、あまり調子よくないのかも知れないな、四大陸の時のような追い上げが見られるといいけど、どうかな・・・というような気分だった。滑走順も一番手だし、なんだか5位からの追い上げともなるとこれからの優勝争いの前座の位置みたい。鬼門の後半4回転+3回転のところでうまくいっていい終わり方をして欲しいな、と思っていた。

そして演技が始まった。始まってから最初の2つめのジャンプまでは演技に見入ってて、2つの4回転が決まって、そのシュッという音を聞いてそれがとってもクールで、大満足。そうよ、この音が聞きたかったのよ~ループとサルコーでは音が微妙に違うような気がする。基本演技中に撮る気はなかったのだが(撮ること自体はOKなのだが、せっかくのハーニュ君の生演技、それも世界選手権だからこの目で見たい)、ジャンプが決まって滑り出しよくてちょっとホッとして唯一演技中に撮影したのがこのビールマンスピン。美しいわねえ・・・
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そこからは演技にぐいぐい惹き込まれていって、あまりの素晴らしさに写真どころではなく。まさか、まさか、もしやこれ、凄いことになってない?もしやドリームパフォーマンス?もしかしてパーフェクト??そんな瞬間がこの目の前に!?と思いながら、でも息をつく暇もなく、その4分半は美しく凄まじく神々しく流れていったのだった。余計な解説など要らない。自分の感性だけで見るべき4分半。



演技を終えた直後のハーニュ君。めぎの方は感動で涙拭きながらの撮影だったし、まわり中が・・・めぎのまわりは日本人はほとんどいなくてホント世界中の国の人だったのだが、そのまわり中がスタンディングオベーションで感動の渦だったのだが、当の本人はやった~!でもなく、ホッとしたようでもなく、非常に険しい表情で、不思議な雰囲気だった。
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迎えるコーチたちの大喜びの様子が印象的。
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そして、まだ何を成し遂げたか分からない感じの頃の放心状態のハーニュ君の様子も印象的。その前でウォームアップしているネイサン君。しかしこのとき、たぶんアメリカ人以外彼のことなんて見てもいない。
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そして点数がアナウンスされて、もうもうまわり中凄いことに。写真など撮ってる場合ではなく、めぎもいっぱいいっぱい拍手した。本当に凄い瞬間だった。おおおこれからどうなるんだろう・・・こんな人を涙させるような演技を上回るのが出てくるんだろうか?あと5人もいるのよ~

その時の感動をもう一度、と何度も何度もあとで映像を見た。ドイツ語での放送は面白かった・・・YouTubeに出ているこちらのドイツ語バージョンは総集編のもので、生中継の時のではない。生中継の時はEUROSPORT2だったのだが(めぎは契約者が見られるサイトで試合後一週間だけ公開されていたものを見た・・・ドイツではフィギュアスケートは人気無くてほとんど普通のメディアに載らないので、めぎはフィギュアの試合を観るためだけにEUROSPORTと契約したのだ)、ドイツのアナウンサーと解説者は6分間練習の時はハビさんとパトリックさんの比較ばかりしてて、ウノ君も付け足しって感じだったし、ハーニュウ(最近はニューと伸ばして発音してくれるようになったが、アクセントは依然として最初の「ハー」である)はこの6人の中で唯一の技術も表現も両方兼ね備えたタイプだけど今回の優勝はまず無理だろう、まあ今までと違って下からの追い上げで、明日君はチャンピオンになると言う人はもう誰もいなくてまた来年があるよと言うだろうからそれが意外とチャンスかも知れない、でも彼はここ2年の世界選手権ではいずれもショートのリードを守れないほど緊張に弱く、今回はアウェイだし(つまり開催国が日本ではないということ・・・前回世界選手権で優勝したのは埼玉だったからね)、今のフェルナンデスの状態では10点の差を取り返すのはまず無理じゃないか、というようなことを言っていた。そしてハーニュ君の演技が始まってから技術点が105点になるまで・・・つまり、ほとんど終わり頃のトリプルアクセルに1ループにトリプルサルコーが決まるまで一言も発さず、その時点になって「これはワールドレコードが出そうだ」と初めて音声が。終わったときには、いったいこれは何だったんだろう、鳥肌が立つような素晴らしい演技だった、未来のフィギュアスケートが現実になった、などと絶賛していたが。

これはYouTubeで見つけたビデオ。めぎが見た目線と比較的近い。でも、あれれ、ビデオ撮影は禁止のはずじゃ・・・?しかし、YouTubeにはごまんとあちこちからのが載ってるわね。まあそれはさておき、この角度からだと、左奥にコーチたちが見える。最後のルッツが決まったときにオーサーコーチは飛び上がり、最後のスピンの最中に(まだ終わっていないのに!)既にコーチたちは喜びのハグをしている。そういうのが現場の面白いところ。



それから時は流れ、みんなが完璧ではなかったのが残念だったけど、めぎは本当に心ゆくまで4回転を堪能した。ネイサン君はジャンプが決まらなくて空回りという残念な結果だったが、17才の青年(彼はまだ少年という感じだったが)の必死さがよく分かった。この大きな負けできっと来年は大きく羽ばたくことだろう(昨年の失敗から今年へ大きく成長したウノ君のように)。ボーヤン君の4回転は本当に素晴らしかった。あのようにジャンプに徹するプログラムも潔く、かえって素敵。なかなかチャーミングで、好印象。テレビだとただただジャンプのために準備している演技に見えるが、いやいやどうして、ここまでジャンプが安定しているとつなぎも上手く見える。パトリックさんは、表現に徹する意志が感じられ、これまた好印象。めぎは正直彼の表現があまり好きではないのだが、リンクの使い方が上手く、スケーティングの美しさはよく分かった。ウノ君も素晴らしかった。技術もあり表現力もあり、フィギュアスケートの優等生という感じの演技だった。あれがもう一歩殻を破って自我が出て男になったら迫力だと思う。なんと言っても選曲は6人の中では抜群のセンス。そして最後に、普通に演技すれば総合で優勝したかも知れなかったハビさんはとっても残念だったが、それでも素敵だった。あの負けを認める潔さが、それで観客を味方につける雰囲気が、大人だなあと思う。しかし、全てを見て、この凄い技術の6人を見て、やはり思うのだ・・・なんというか、ハーニュ君はやっぱり何か違うオーラがあって、神々しかったな、と。それは完璧な演技だったからとかワールドレコードだったからではなく、持って生まれた何かなのか、存在から生まれ出る光というか。震災が与えた影響なのかも知れないし、外国でトレーニングする孤独さから来ているのかも知れないが、上手いとか成功したとか勝ったとか世界最高得点とかという次元ではなく、伝説的な存在というのはこういうものなのだろうと思わせる何かがあった。

結果が出て優勝インタビュー。観客のビデオ撮影の様子も含め撮影。ハーニュ君の英語の受け答えがとてもチャーミングで可愛い。
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そして、表彰式へ。楽しそうな二人。ここにハビさんもいたらもっと楽しそうだったんだろうな。
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今回めぎが座った席はジャッジと反対側で、演技中は常に背中を向けられているという感じなのだが、こういう舞台裏を正面から撮影できたという意味ではよかった。

そして名前がコールされて嬉しそうに飛び出してくるハーニュ君。
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さっきの顔とは別人だわね。
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そして喜びいっぱいのこの飛び乗り。
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このような場でこのような歴史的な快挙で君が代を聴くというのはなんともいい気分。
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それにしても、めぎもあそこの仲間入りしたいな~いいないいな、あの大きなレンズ。いいないいな、あの場所。競技中も彼らのシャッターの音がダダダダダッとまるで撃つかのように鳴り響いていた。その音を聞きながら、ああこういうポーズの時に、こういう演技の時に撮るものなのね、と非常に参考になった。
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でも、めぎもこれだけの写真を撮ることが出来て大満足。フィギュアスケートで写真を撮ろうという方、フルサイズに70-300mmならかなりいい線行けると思う。ここに載せたのはブログ用にサイズを落としているのでかなり不鮮明でノイズも多いが、オリジナルはずいぶんクッキリとしていてノイズも少ない。フラッシュ無しで薄暗い中1.5kg級のを手持ちでどこまでできるか、一例になったかしら。あ、だけど、日本だと撮影は全面禁止のようね。世界はOKなのに日本はダメって、不思議よね。

撮影: D600 + 70-300mm(F4.5-5.6)、Xperia Z1
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めぎのフィギュアスケート観戦記 選手の人生・その後の人生 [2017年春 ヘルシンキ]

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現在、4月はじめのフィギュアスケート世界選手権の観戦記を連載中。

ここは会場のヘルシンキのハートウォール・アリーナ。4月1日は雪のちらつく寒い一日だった。
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男子シングルはフィリピンの選手から始まり、マレーシアとかオーストラリアとかの選手もいて、温かい国の選手の今期最高の晴れ舞台に臨む緊張感ややり遂げたという空気感はとても素敵だった。優勝などとても望めないレベルだけど、彼らも人生を懸けてここに来ているという意味でハーニュ君やウノ君と何ら違いがない。若い彼らが全力で演技する姿は感動的で、めぎは最初のフィリピン人の時点でじーんと涙が浮かんだほどだった。

しばらくして、ドイツの選手の番が来た。彼もそこそこ満足できる演技だったようで、よかったよかった。
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偶然、めぎの斜め前にドイツ人夫婦がいた。ドイツの選手の時だけこうやって応援していた。ドイツにもフィギュアファンっているんだ!なんだかちょっと嬉しかった。
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選手の数だけドラマのある舞台。なかでもやっぱり、この選手の時は前半のハイライトだったというか、ハーニュ君の歴史的瞬間に負けないほどの感動が会場全体に沸き起こった。恐らくこの世界選手権を最後に選手引退するのではということだったが、その最後の大舞台で人生最高の演技をし、本人も感極まって大満足で、観客のこちらも大感動のスタンディングオベーション。なんて素敵な花道だったことかしら。
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彼はウズベキスタンの選手だが、ロシア系の母親と中国系の父親のおかげでロシア語と中国語ができ、さらにアメリカでトレーニングしたおかげで素晴らしいアメリカ訛りの完璧な英語を話す。これは次の日のスモールメダル授与式の様子なのだが、3位のボーヤン・ジン選手の通訳をしたのは彼だった。凄い、ホント中国語ぺらぺらで、完璧なアメリカ英語。
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彼はこの語学力を活かしてフィギュアスケート界で日本以外のどこででも生きていけるだろう、とドイツの解説者が言っていたが、ホントその通りだわね。既に振付の仕事をしているそうで(自分のショートやフリーも自分の振付だったらしい)、今後が期待できる。これは彼のエキシビション。
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こうやって次の仕事を選手生命を終えた後すぐに自ら切り開いていけるというのは素晴らしいし、選手は誰もがいつかそうしなければならない時を迎えるのだが、それぞれみんな自分にあった仕事を見つけられるといいわね。でも、それってきっとホント大変なことなのだろうな。華やかな舞台にいたことがあればあるほど、引退後の身の振り方は難しい。めぎだって15才までかなり華やかな世界にいたので(ヤマハのコンサートで春夏冬と定期的に舞台に立って常に注目を浴びる人生を送っていたのだ)、その後地に足をつけて普通に生きていくのって慣れなくてとても苦労したのだ。同じくオペラの舞台に立っていたうちのドイツ人もそうだけど、エンターテイメントの世界にいた人間ってやっぱりどこか自意識過剰で、群衆に埋もれるのは苦手のはず。世界選手権に出るような選手はその分野ではその国のトップなのであって、引退後もどこかで誰かが観察してるし、普通に生活すること自体どれほど大変なことかしら。

そういう意味で、今回この人のことが非常に心に残った。
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シュテファン・ランビエールである。
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彼のインタビューがネットに出ている。コーチとしてここに来た感想などを言っているのだが、世界選手権で優勝したことのある人がこうして選手の縁の下の力持ちになって現れるというのは、これまたなかなかできることではない。下手するとこのランビエールのように選手よりコーチの方が注目される訳だし、彼だってかつては花形だった訳だから注目されるのはまんざらでもないはずだ。そして何よりも、花形選手だった人が必ずしも良い師になれるとは限らない。だから良い選手が師事してくれるとも限らない。しかしこのランビエールはコーチとしても非常に良いスタートを切っている様子が伺えた。



選手との様子を観察していると、絆が感じられる。絆は深く強いけど、そしてとても似た二人だけど、でも別々の二人で、そこに太い架け橋があって共通の目標が見えているという感じ。それは見ていてとても美しかった。分野も立場も全く違うけれど、めぎもああありたいなと思わされた。
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彼ら師弟は、お互いにお互いが似ていることを相当に意識しているだろう。これは今回の世界選手権とは全く関係のないアイスショーの映像だけど、これを見ると、美しいこのショーの裏にどれほどの葛藤があり得ることだろうかと色々と想像してしまう。だって、この音楽は、選手のフリープログラムの音楽なのだ。それを師の方がこんなにも美しく滑ってしまうのだから、そしてたぶん観客の方もどっちかといえば師の方を見に来たのだろうから、若い選手の方は立場がない。でもきっと、それを乗り越えたからこそ二人に絆があるのかも知れない。今後のこの二人には大注目である。



さて、コーチとどのような関係を築くかが成功の鍵なのではないかと思わされたのはこの選手の時も。
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なんというか、彼らは親友同士のようで、それがこの選手に非常によく作用してて、彼の思いきったプログラム構成も全員の納得の上であることがよく分かり、その結果も全員で受け入れる用意と覚悟ができていて、なんとも清々しかった。フィギュアって、想像以上にコーチと選手の関係が大きく左右する競技のように感じられた。
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そして、何と言ってもこの選手の時、コーチと選手の関係を大いに色々考えさせられた。
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彼は次の日のスモールメダルセレモニーの時に、来シーズンの音楽については自分ではよく分からない、コーチがいいのを選んでくれるだろう、と断言していたが、それを聞いてめぎは、彼にはまだ自我が全く無く(または自我を出さないようにしっかり訓練されていて、発言にも決して自我を出さないようにしているのかも知れないが、喩えそうだとしても)、この上なく優等生なのだなと感じた。師にとっては完璧な愛弟子である。それが今のところここまで良い結果を出している訳で、今後彼が大人になって行くにつれてどうなるのか、めぎは非常に興味がある。師としては、もちろんその分野での成功へ(学校なら入試に受かるとか良い成績をとれるように、フィギュアスケートなら大会で優勝できるように)弟子を導くのが最大の仕事だが、同時に弟子の人間としての成長にも寄与しなければならないとめぎは思うのだけど、この選手の場合は少年であり続けることで、言い換えれば手塩にかけて育ててきた子どものような存在であり続けることで成功しているようにめぎには見える。もし本当にそうだとしても、あの音楽をコーチが選び、その選曲は見事で、トレーニング法も完璧であそこまで見事に成長し、それであれだけの成績につながったのだから、現時点では文句のつけようがない。

でも、人の心に残る演技という意味でいえば、やっぱり自我のある方が、喩え失敗してメダルを逃しても訴える物があるようにも感じるなあ・・・今回のハビさんの演技のように。めぎには正直なところ、ボーヤン君の演技の方が、表現力の点数はウノ君よりずっと下だったしその理由もよく分かるけど、それなのにずっと心に訴えてきたように感じたのだ。それは、ボーヤン君に明確な自我があるから。フィギュアスケートで表現力という言葉がよく使われるしそれが点数化もされるのだけど、確かにネイサン君はバレエのポーズが決まってて表現力があるし、ウノ君のダンス力は定評があって確かに凄く上手いのだが、そして何といってもめぎは今までテレビで観てきてウノ君の表現力に脱帽してて実は高く買っていたのだが、生で見てみると、不思議なほどこの二人からはまだ魂が感じられなかった。一つ一つの動作は優雅で決まっているのだが、彼らの魂というか、表現したいことの意図が少なくともめぎには伝わってこない。それは大きな発見だった。

選手生命という短い期間でいえば、自我を持たずに極めることも可能だろう。ネイサン君やウノ君が来年優勝する可能性は非常に高い。でも長い人生でいえば、思う存分自分の人生を生きなければ、そしてそこで一人とことん苦労しなければ、このコーチのような幸せは生まれないのではとも思う。それは何も弟子を優勝させることではない。結果は残念でもハビさんとも彼は幸せそうだった。選手を支え、そのそばにいることに本当に幸せを感じているようだった。でもそれは、自分の育てた手中の子どもと一心同体で得られるような幸せではなく、個人と個人が長い人生の中の一瞬の喜びや悲しみを分かち合えるという幸せであるように見えた。たぶんこのコーチは自分の人生を思う存分生ききって、だから今こうしてプーさんを持って後進のために力を注げるのではないかと感じる。彼の人生があるのとパラレルに弟子にも弟子の別の人生があるというスタンスは、見ていて気持ちが良い。めぎも、斯くありたいな。そんなことを見ていて思った。
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なにはともあれ、ハーニュ君にもウノ君にも10年後20年後にまた別の何かを見つけて50年後にも自分の人生を謳歌して生ききって欲しいし、引退したというマオちゃんという人にも、30年後40年後に笑っていて欲しいと思う。最近はどうしているか全く耳にしないけれど、かつて日本のフィギュアスケート界を牽引し、まだ何もなかったところに道を切り開いた渡部絵美さんや伊藤みどりさんに幸多かれと願う。若さを失い、力も失い、人から忘れられていったときに何ができるか、それが人生の勝負なのだ。

さて、付け足しだが、アリーナ会場の様子を少し。ここは報道陣か関係者席だと思うのだが、前半は非常にまばらで後半はぎっしり。
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日本人が非常に多かった一角。ツアーできているのをたくさん見かけた。
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上まで写さなかったが、2階席までぎっしり。
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1階席と2階席の間に家族席のような空間があった。
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それから2階席の一角に、レストラン席もあった。チケットにはVIP席というカテゴリーもあって、その席の人は会場を眺めるレストランでの食事つきとのことで、たぶんそのチケットの人たちなのだろう。
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めぎは男子シングルの後、アイスダンスも鑑賞。その時の席はジャッジ側。近くにポーランドの人や・・・
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フランスの人がいた。
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これは帰りに駅までの道で振り返ってアリーナを写したもの。
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なんだか長くなっちゃったわね~まだエキシビションもあるんだけどな・・・

撮影: Xperia Z1、D600 + 70-300mm(F4.5-5.6)、Nikon 1 V3 + 18.5mm(F1.8)
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