森の幼稚園 その2 ~森の奥へ~ [北ドイツの森の幼稚園]
おかげさまで抗生物質は非常によく効き、今日はかすれた声だけど少し出るようになった(しかし少ししゃべると痛くなるので、基本的に黙っている・・・うちのドイツ人は、静かになったと喜んでいる!治ったら弾丸のようにしゃべりかけてやる~~!)。唾を飲み込むのでも痛かった喉もずいぶん改善。安静に過ごし、身体がずいぶん楽になった。結局休んでしまったが、大学の方は代講してもらえたし、高校の方はめぎのクラスは既に学年末試験を終えていたので特に大きな影響は無かった。来週は面接試験があるので、どうしても行かなきゃ。
現在北ドイツの森の幼稚園の話を連載中。森の奥へみんなで向かっているところ。
またもや途中に牧場が。でも、みんなの関心はこの水槽の中・・・Schwimmkäferがいるよ!と。訳すと「泳ぐ甲虫」・・・ゲンゴロウ。ちなみにKäferは英語でbeetleだが、これ、どちらもカブトムシではない。もっと正確に言うと、カブトムシ「だけ」ではない。クワガタもテントウムシも、そしてゲンゴロウもKäferの仲間。
その向こうに広がる牧場には・・・
子馬がいた!
↑この日、森の中を歩くに向けてD600に24-70mmレンズをつけて首から提げ、70-300mmのレンズは後ろのリュックに入れた。適宜付け替えられるように70-300mmレンズを取り出しやすい袋に入れる準備もした。しかし、結局は24-70mmレンズだけで通して過ごした・・・子どもたちと話しながら歩いたり遊んだりして付け替える暇はなかったのだ。正直、例えばこういう場所で、もうちょっと望遠側ズームが欲しいなと思うこともあったが、明るいレンズとフルサイズの解像度を信頼して、あとでトリミングすることにした。上の子馬の写真を見ると、ああやっぱり望遠で写していればなあと思うが、今回は子どもたちの様子を撮るのが優先で、それには70mmまでで十分でもあった。
ここで、もし28-300mmの超望遠ズームレンズを持っていたら本当に便利だっただろうなあとも思う。でも、その場合、F値が3.5以上となってしまい、暗い森の中でこんなに明るい写真が撮れたかしら。または、望遠側は別のカメラにつけて2台体制で行けたら完璧だろう。実はその可能性も考えてD40xを北ドイツへ持ってきてもいた。しかし、雨上がり後の滑りやすい森の中で重いカメラ2台も下げて歩くのはキツイと思ってやめた(この幼稚園に毎日通って、もっと体力つけたらできるかしら~)。これがミラーレスならそれほど重さがしんどくなくて可能だったかも知れない。尚、10倍ズームコンデジは携帯しなかった。望遠で何か撮りたい場合は鳥かな、子どもたちが走るところかな、と思っていたので、それにはオートフォーカスが間に合わず、また森は暗すぎて、ピントが合わないだろうとこれまでの経験から予測できたから。D600と24-70mmレンズで撮れるものを撮る、ということに全力で集中したことは、結果的には写真のよい勉強になったし、自己満足だけど良い写真を撮ることができたように感じる。ここで「良い写真」とは、めぎが撮りたい写真が撮れた、という意味だけど。
さてさて・・・こんな道を歩いていくうちに・・・
一人、ガン泣き。
どうしたの?どこか痛い?誰かとケンカ?
いや、この子はいつも泣くのだとか。それも、特定の先生が引率担当の時は常に泣くのだとか。それは、その先生の注意を惹きたいから、その先生はいつもやさしく「どうしたの?」とかまってくれるから・・・この子のうちは姉妹4人で、この子は母親にあまりかまってもらえずいつも寂しくて、この秋から小学校に上がるという年長さんなのに指しゃぶりしてて、いつも「私が私が私が」と自我が強くみんなと協調できなくて・・・という説明を義妹から聞いた。彼女の考えでは、泣けばかまってもらえる、という図式は既に家で学んだものだろう、それを幼稚園という社会でも繰り返し、その学んだことが正しいと裏付けしているのだろう、そういう解決策を学ばせると常に泣いて注意を惹くようになり、それでは結局なんの解決にもならない、だから幼稚園の先生としては、なんでもかんでも「どうしたの」とかまってやるのはナンセンス・・・うーん、ガン泣きも奥が深いわねえ。幼稚園の先生同士でも、教育的な考え方の違いがあって、結構葛藤があるのかな。
この子は森中に響き渡るような雄叫びを上げながら上着を脱ぎ・・・
畳んで・・・
時々泣いているポーズを取りながらちらちらとその優しい先生の方を見て・・・
そして脱いだ上着をしっかりリュックに固定した。ガン泣きしつつしっかり体温調節し、非常に冷静だ。子どもってすごい。雄叫びにだまされてはいけない。しかし、あれだけの雄叫びをしなければならない彼女の事情も大人の誰かが分かってあげなければならないと思う。
この日、彼女は行き帰りで計5回ガン泣きを繰り返した。感情をコントロールできず、また言葉で表すこともできず、苦しいだろうな。
園児たち一人一人に人生があるのだな。
子どもの一人一人が何をしているか、どこにいるか、先生は全てを把握している。前にいる先生と後ろにいる先生とがうまく連携を取ってもいる。ぼんやりただついていくと、先頭からしんがりまで良く把握できるなあと思うし、あそこにまだ子どもいるよ、分かってる?などと心配になったりする。しかし、教師の目で見ると、めぎもここにいた初対面の13名を全て把握できたし、二人の先生方が全てを把握しているのがよく分かる。全神経を研ぎ澄まして仕事をしている。これがプロというものなのだろう。(しかし、あとで疲れがドッと来る。)
森がその一つ一つの人生を包んでくれている。
この仲良し二人組はいつも一緒。イチゴちゃんの手を引いて、ちょっと大きい女の子が道をかき分けていく。姉妹ではないが、まるで姉妹のよう。
暑くなって上着を脱いで・・・
その二人をこうしてちょっと休憩して待って・・・(先発隊もずっと向こうで休憩中)
そしてまた駆け出していった。
しばらく歩くと先発隊に追いつき、その先発隊の一人が休憩中。
彼も暑くなってフリースを脱ぎ(上着は既に出発時から脱いであった)・・・
出発。
一人一人、興味を持つところも立ち止まるところも違う。13人分、それぞれテンポが違う。それは高校でも大学でも感じることだが、幼稚園はその比ではない。幼稚園の先生って、重労働だなあ。
いや、たぶん、ある程度統率して、あまり早く行かせないように、またはどこかで飽きるまで何かを見ていたりしないように躾けることは可能ではと思う。この辺は、子どもの無限の可能性や興味を妨げないようにする配慮も必要で、対応の難しい部分ではあるが。しかし、何度も何度も誰かが脱いだり水を飲んだりする度に歩くのを中断するのではなく、休憩場所を決めてそこまでは暑くても歩き、そこで水を飲む、という風にすることはできないものかとちょっと思う。なにしろたいして遠くまで歩いている訳ではなく、休憩場所を2カ所くらいに限定しても汗だくになってあとで冷えて風邪を引くほどではあるまい・・・この個人主義というか、個を大事にしすぎるドイツの教育が、後々良い面も多々あるけれど、規律のないだらだらとした学生を育てることにつながっているのだよなあ・・・と思う。あと100メートルだけ頑張ろう、そこまで行ったら脱いで水が飲める、というような小さなことから、目標を定めてそこまで頑張る、やり遂げたらご褒美がある、ということを学べるはずなのだ。いつでも好きなときにだらだら休んだり水を飲んだりできるというのでは、勉強していてもいつもだらだらし、ここまで頑張ってやり遂げてから、というのを学べない。その結果(ちょっと飛躍するけど)いつまでも試験を先延ばしする学生を生み出すことになる・・・ドイツの大学では、試験は3回まで受けられるという決まりがあるだけで、いつ受けるかは自分で決められるのだ。今年は見送って来年受ける、と言い出す学生が毎年必ずいる。他の試験もあって大変だから、と言うのだ。そういう学生が次の年に思うような成績を取れることはほとんど無い。卒業試験だって、先延ばしできる。だから、卒業する時期もそれぞれバラバラだ。もちろん一人一人のリズムを尊重することは素晴らしいと思うけど、大学なんだから好きなリズムで勉強するのが正しいのかも知れないけれど、だらだらとした結果としての差違は「個性」と言えるのか。
歩いたのは1キロくらいだろうか。40分ほどかかって、目的地に到着。ここから道を逸れて森の中へ。
つづく。
2013-06-13 02:00
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コメント(13)
すごーくするどいめぎさんの指摘。
とても興味深いです。
幼児教育は文化を思いっきり反映しています。
日本の幼児教育は日本文化を作っているといってもいいかもしれません。同じようにドイツでもなんですね。
協調を教える日本の教育では水を飲むタイミングもできる限りの協調を求めている、マナーとして教えています。日々…
by ちばおハム (2013-06-13 06:00)
春風邪?は辛いですね。
こちらは森や山に毒蛇(まむし)がいるから、かなり気をつけないと小さな子供達を自由にできません。
by Baldhead1010 (2013-06-13 07:31)
こういう年齢から、ドイツ人の人格形成が始まっているわけですね。
めぎさんが書かれている通り、「個性」というには行き過ぎの感じもしますね。
物事を理由をつけて先延ばししがちな人はいますが、そういう人は次の期限が来ても先延ばしを考えているようなので、そういう思考になってしまっているんだろうと思います。
あ、それは日本人でも同じような人は多いか。
by YAP (2013-06-13 07:47)
お風邪早く治ると良いですね。
抗生物質が効いているということで、来週は大丈夫でしょうね^^
お大事に。
教育は難しいですよね。日本は左右のブレが大きいから、戦前は統率一本。
いまや個性という名のもとに、自由奔放。これが行き過ぎて教室などでもクラス崩壊なんてね~
by mimimomo (2013-06-13 08:52)
そう云えば、私も「森と田畑の幼稚園」でした。スズメバチやマムシ、毒毛虫、急な流れで深い川、など多くの危険に怯えながらも、楽しく過ごしました。
by krause (2013-06-13 11:46)
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by takemovies (2013-06-13 13:31)
体調が悪いのですか。
お大事になさってください。
緑豊かな森林、歩くのも気持ち良さそうです^^
by アールグレイ (2013-06-13 14:03)
緑がきれいですね。
幼児期のしつけ・教育は、大人になってからの行動パターン・考え方に大きく影響するでしょうね。ドイツが、自由にまかせるというのは、意外でした。ナチス全体主義の反動のようなものでしょうか。
by テリー (2013-06-13 14:46)
こんな林間コースをメルと散歩したいなぁ〜って思いました。日本人って虫の鳴き声にも注意を払って、子供でも、それぞれの個体名を言うし、聞き分けますよね。決してグラスホッパーや甲虫でひとくくりにしたりしないですね。そして晩秋の虫の鳴き声に侘び寂びを感じるんですよねぇ。
by ぽりぽり (2013-06-13 21:35)
一長一短、なんですねえ。
これが一番という方法はないと思った方がいいのでしょうね。
ベストよりベター...なのかなあ。
by ナツパパ (2013-06-13 21:54)
とても考えさせられます…親としても、保育学を学んだものとしても、かつて大学生と(少しですが)かかわる仕事をしていたものとしても。
by stellaria (2013-06-13 22:08)
個性を大事にするドイツの方法と、協調性を重んじる日本の方法の
中間あたりにならないものかしら・・・。
by Inatimy (2013-06-14 06:02)
楽器演奏とかお遊戯とかリトミックとかは知らなくても、この子たちは木漏れ日も、大人には見えないけれど子供には何か感じる牧場の光景も、雨露後の緑の匂いや光線が違うことも、体温調節を間違うと自分が風邪をひくことも、全部知っているんだなぁ。
小学校にあがってから、通常の幼稚園に通った子らと合わない、追いつけなかったり馴染めない部分はあったりするのかしら。
うちの界隈ではビル一階テナントに認可外保育施設が増えていますが、商業エリアで人の往来や車の交通量が多いので、三歳までは大きくて深いバスケット式カートに一度に10人までのせ、保母さんたちが押したり引いたりしてお散歩(?)するの。ちょっとシュールよ。
by もんとれ (2013-06-14 06:19)