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森の幼稚園 その3 ~お弁当休憩~ [北ドイツの森の幼稚園]

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ようやく声が出るようになった!ひどい声でも意思疎通できるというのはとても嬉しい。それに、結膜炎も改善されてきた・・・これが一番嬉しいかな。

現在、北ドイツの森の幼稚園の話を連載中。

ようやく目的地に到着。これは、以前に作ってあったもの・・・木の実や枝などで円形が作られている。
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先生方は、一人は子どもたちを集め、一人は蝋燭を灯して円形の中心に据え・・・
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日直さんにある場所を決めさせる。他の子どもたちは一列になってそれについていく。
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決めたのは、この日にタオルを掛ける木。
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先生は、園児たちにブラシを渡し、持ってきた水筒の水を少しずつ園児たちの手にかけて・・・
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手を洗わせる!
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なるほど、水道のない森の中で手を洗わせるために、水を入れた水筒をいくつか持ってきているのね。それぞれ一人ずつ、最初に少し水をかけてもらい、ブラシでこすって洗い、濯ぎ用にもう一度少し水をかけてもらい、タオルで手を拭く。
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石鹸をつけてしっかり洗い、じゃあじゃあ水を流してすすぐ日本とのなんという違い・・・ドイツは元々あまり水を使わず食器なども溜め洗い&溜め濯ぎが多いし、ほんの30年ほど前までは毎日シャワーを浴びるのも珍しく毎朝洗面台の前で濡らしたタオルで身体を拭くのが普通だったし、今でも赤ちゃんは硬水が肌に悪いからという理由で一週間に一度しかお風呂に入れないのが一般的だし(日本じゃ考えられないでしょ)、湿度が低いのでばい菌やらバクテリアやらがあまり繁殖しないし・・・という事情を思えばあまり驚くことでもないのだが、この辺の現実が子どもをここに通わせるか否かの一つの指針になるのだろうな。こういう事情なら濡れタオルを持参させるとか、日本なら除菌ウェットティッシュとかを使いそうだが、そういうゴミを出さないというのもドイツならではかも知れない。除菌ばかりしていると抗体が育たない、とも。

それからあの円形のところを中心に輪になって座り、前に持ってきたお弁当を並べさせ・・・
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それから目を閉じて静かにさせ、「鳥さんたちのコンサートを聴きましょう!」と。(目を閉じていない子どもが半数くらいいたけど。)
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それからちょっとお話を。今日の話題は鳥たちの囀り。「鳥たちが啼くのはどうしてですか?」
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「春になったから」
「食べ物を探しているから」
「鳥さんたちは結婚式をしてその結婚式のお祝いの歌を歌っているから」
「普通、雄と雌のどちらが歌っていますか?」
「雄!」
「そうですね~雄がお嫁さんを探して歌っているんですね。結婚式をしたあとどうしますか?」
「巣を作る」
「卵を産む」
「雛を育てる」
「あのね、うちにね、鳥の巣があってね・・・」
「あのね、ぼくのおばあちゃんのうちにね、こおおおおおおんな大きな鳥の巣があってね・・・」


生きた生物の授業であり、ちょっとした性教育でもありますわねえ。しかし最後は子どもならではの自慢合戦に♪

ドイツの子どもたちはこんな風に手を挙げる。まっすぐではないし(まっすぐ手を挙げなさいとは言われない)、手を開かずに人差し指を一本上げる。そして、「Ja(ヤー・・・はい)!」ではなく、「Ich(イッヒ・・・わたし・ぼく)!」と言うか、黙って手を挙げるか、指を鳴らす。誰かが発言している間もずっと手を挙げ続けている。先生が説明している矢先から既に手を挙げている。これは高校でも大学でもそうだが、幼稚園の時からそうなのね。
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そして、ようやく、いただきまーす!
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お弁当の中身はこんな感じ。
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みんなサンドイッチだが、野菜を挟んでいる例は少ない。パンにチーズかハムが挟まっているだけというのが一般的だ。そして、そのパンがかなり大きい。一口大に綺麗に切って見栄え良く、という感覚はないようだ。果物も多くがそのまま持ってきている・・・バナナ一本、りんご丸ごと一個、というように。このお弁当は中ではずいぶん綺麗に食べやすく用意されていたもの。
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長いソーセージもそのまま入れられている。これ、大好きなんだって・・・この子のお母さん、ちゃんと好きなものを知っていて入れてくれているのね。
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この男の子はとってもマイペース。まだ小さいからか、動作もゆっくり。ぶどうを一粒一粒眺めたりして。
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こんなふうに別々に詰めたり、サンドイッチがバラバラにならないよう一つ一つ包まれていたのはこの子だけ。
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食べ物の入った弁当箱の下に何かを敷くか否かはそれぞれの感覚に任されているらしい・・・お弁当を包んできた布をテーブルクロスのように敷く子もいれば、直置きの子(そもそもお弁当箱を直にそのままリュックに入れている)、脱いだ服を敷いている子など、様々。こういう細かいところまで至れり尽くせり教育し、持ち物としてランチョンマットなりテーブルクロスなりを持たせたりしている日本とは大きな違いだ。そういう躾は家庭でするべきもの、という切り分けがドイツではかなりハッキリしているというか。

ところで、このお弁当を食べたのは10時10分頃から40分頃にかけて。日本的に言えばおやつの時間のようだが、ここでは「朝食」の時間と呼ばれている。朝が早いドイツでは、朝ごはんをうちで食べる習慣がない。多少つまんだりはするが、しっかり朝を食べましょう、という考え方はない。朝ごはんは10時頃に出先で食べるものなのだ。話は逸れるが、学校でも10時頃20分くらいの比較的長めの休み時間があってそのときにみんなお弁当をつまんでいる。いや、8時台でも9時台でも、5分休みに何かつまんでもかまわない。おなかがすく時間は個人個人違っているので、みんなで一斉に食べるという考え方はないのだ。教師もみんなお弁当にパンなど持参してきて、休み時間か授業のない時間に適宜つまんでいる。(学校では教師が生徒たちと一緒に教室で食べるという習慣はない。ただし、最近全日制の学校が少しずつ増えてきていて、学食制度が採り入れられてきているようだ。教師たちは交代で学食の監督をしているらしい。その場合も、みんなで一斉に食べるという訳ではなく、教師が一緒に食べるという訳でもなく、大学の学食のようなイメージだ。)知り合いのドイツ人たちによると、会社でも朝食を持参し(または出勤途中にパン屋などで買って)、事務所で食べているという。そのようなわけで、これは朝食休みであり、このお弁当は朝食である。(ちなみに幼稚園は12時半で終わり、昼食は自宅で食べる。ドイツの伝統は昼食の時に温かい料理を食べ、朝食は火を使わない・・・したがって、喩えうちで食べるとしても、スープなどはなく、ほぼ同じような内容である。)このお弁当の準備として幼稚園が親にお願いしているのは、できるだけ白いパンなどを使わず健康によい黒パンなどの食材を使うことと、手で食べられるものを用意すること(つまりフォークやスプーンを使わないもの)。


みんながまだほとんど食べていないうちに、緑の男の子はもうパッキング。うちで少し食べてきたのかな。
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いや、そうではなくて、彼は遊びたかったのだ・・・いや、それより先に、彼は、トイレに行きたかったのだ・・・しかし、ここにはもちろんトイレはない。彼は、パッキングするや否やIch muss pischern!(しっこ!)と叫び、同時にズボンをバンと下げた!慌てて先生が、ここじゃなくてあっちでしなさい!と叫び、彼はとっさにぴょんぴょんと跳びはねてちょっと遠くへ行って、じゃ~~~~!(聞こえる!)

衛生的にどうなのよ、と顔をしかめる親が必ずいることと思う。そもそも、森にとっても環境保護の点から言ってこれは良くない、という指摘をする親もいるそうだ(そういう人はそもそもここに入園はさせないが)。しかし、この広い森で、毎日場所を変えて17人の園児が多少pischern(これはpissenという単語の子ども言葉かつ北ドイツ方言)しても、たいした話ではないのだろう・・・ちなみにこのあと女の子もこれに続き、やはりその辺でしゃがんでいた。紙で拭くという感覚は持ち合わせておらず、そのままズボンを上げていた(大の方ははどうするのだろう?聞き忘れちゃった)。性別による恥じらいというものも特になかった。ドイツの大学寮や安いユースホステルのような宿でシャワールームが男女共同だったりするが、それはこういう文化に因るのかな、とふと思った。日本ではかなり小さいうちから男女別々をたたき込むように思う。たたき込んでいるつもりはなくとも、男女別のお風呂、トイレ、食器などの色で、男女別がインプットされる。しかし、こうあけすけの方が、丸見えの分余計に男女の差をしっかり学習できるかも知れない。

その後、次々と食べ終わってパッキングしてみんな遊びに出て行った。
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友達の歓声が気になりつつ食べ続けている子。
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パッキングするときに気がついたこと・・・みんなこのお尻に敷く座布団マットを自分で持ってきていたのね。(ちなみにめぎには義妹がマットを運んでくれていた。)
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お弁当のあとは子どもたちの自由時間。みんな森の中で思い思いに遊んでいる。その様子は明日ご紹介する予定。
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ようやく最後に残っていた子も食べ終わり・・・
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パッキング。
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このように、みんな食べ終わるまで待ちましょう、というシステムではない。時間内に食べ終わりましょう、最後まで残さず食べましょう、という教育もない。みんながもう遊んでいても自分のペースを守れるし、遅いなあ早くおいでよ、と急かせる人もいない。それぞれのリズムで生きられる社会・・・ドイツのそういう社会のあり方は、こんな小さいうちから培われてきているのね。

遊びに行ってらっしゃ~い!
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つづく。
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もんとれ

緑が目に優しい。
抗菌、除菌グッズも一時期のような加熱市場からは薄れましたが、そもそも人間自体が菌の集まりなのに、敢えて不要な病原菌や雑菌が活躍しやすい環境にして、皮膚や体を弱体化させてどうするんだろうね。お弁当もいいですね。わざわざ着色したオカズや専用カッターで整えた食材でキャラ弁とか、冷食で見目だけは良く整えるとか、日本の「食」の傾きはとても不思議な傾向。友人が通わせている園では園児の持参弁当を保母さんらが撮って壁に貼りだすので、それで保護者たちもキャラ弁教室とかサークルに入るそうで・・。人の目を意識して人とあまり差がないように周りと歩調をあわせなきゃならない社会や病巣は大変だ。子供たちくらい、好きに手を挙げて「Ja!」とアピールするのがいいよ、うん。
by もんとれ (2013-06-14 05:04) 

ちばおハム

今日はうちの園もお弁当会。
さーなに作ろうかな。
(私が食べるものでした!あと旦那さんね。)
手の挙げ方面白いですね。
by ちばおハム (2013-06-14 06:04) 

Inatimy

あら、意外・・・と思ったのは、子供たちの座り方。 
脚を伸ばしたり、あぐらをかくでもなく、正座やそれに近い座り方なんですね~。
私も人差し指一本あげて「Ik!(イック)」って言ってます・・・
・・・マルクトで、次は誰の番?って聞かれる時♪
そして我が家のお弁当も、黒パンにチーズとハムやサラミのサンド、
ピーナッツバターのサンド、プチトマト、ナッツやドライフルーツです。
日本式のお弁当から解放されてすごい楽。
by Inatimy (2013-06-14 06:24) 

駅員3

またまだ気温が低いのでしょうか?
子供たちは結構な厚着ですね(^^)
靴を脱がせて、素足で土の感覚を楽しんでほしいです♪
by 駅員3 (2013-06-14 06:59) 

Baldhead1010

やっぱり落葉広葉樹はいいですね。
by Baldhead1010 (2013-06-14 07:28) 

laf

自然の中で、自分の時間で・・・。
先生は、黙ってみてるだけ。
日本の幼稚園では、先生の怒鳴り声が・・・。
お弁当も、親が頑張ってブログに載せるようなのもなく、シンプルですね。
by laf (2013-06-14 07:51) 

YAP

そういえば、私の勤務先のドイツのオフィスも、9時頃に朝食?の休憩時間、というか、皆さん好きなように休憩を取っています。
by YAP (2013-06-14 08:11) 

ナツパパ

質実剛健、という言葉が浮かんできました。
華美に走らず自分の価値観で、というのは子どもの頃から、
いえいえ、社会の伝統なんですね。
by ナツパパ (2013-06-14 08:39) 

塩

ドイツの子どもたちが屋外で正座しているのも可愛いですね。
by (2013-06-14 09:19) 

たいちさん

ドイツでは個人主義が尊重され、徹底されているのですね。人間(園児)観察は、面白いですね。
by たいちさん (2013-06-14 10:09) 

テリー

ドイツの小さな子供達のしつけ、行動が、日本人の子供のそれらとの違いが、生き生きと描かれていて、面白いですね。
子供のこうした行動パターンは、大人の行動パターンの基になるでしょう。ドイツ、日本、どちらがいいかは、難しいところです。
by テリー (2013-06-14 11:05) 

ぽりぽり

日本の衛生観念の高さは、色々な利点も多いですよ。高温多湿の気候で食中毒菌が繁殖しやすい環境ですから合理性がありますね。日本人の几帳面なもの作り精神にも反映していると思っています。楽しそうな子供達のお弁当風景ですね。昔からドイツやフランスの人々は森を愛してきたのでしょうねぇ。その意味で文化継承の一つですね。
by ぽりぽり (2013-06-14 20:02) 

HIROMI

ドイツの方達が、日本の幼稚園児のお弁当や、キャラ弁を観たらどう思うのかしら…興味があります。
by HIROMI (2013-06-14 22:59) 

mimimomo

なるほど、なるほど・・・
自宅でもそうですが、幼稚園でも学校でも、結局常識といわれることって、子供の頃から
刷り込み教育するのですものね。
by mimimomo (2013-06-15 15:35)