叔父の誕生日 [シュヴァルツヴァルト]
現在7月中旬のシュヴァルツヴァルトの話を連載中。今日はここへ向かった目的、叔父の70歳誕生日パーティーのお話を。
注:日本だったら大人になると喜寿や米寿を祝うことはあっても誕生日を祝うことってほとんど無い。あっても、内々の家族でだけで、姪や甥を招くことなんてほとんど無いだろう。ドイツの習慣では、いくつになっても誕生祝いをするし、端数のない年齢になったときには大きなパーティーを開いて親戚や友人たちを招いてお祝いする。あくまでも誕生日の本人がパーティーを開いて他の人たちをお招きするのであって、つまりパーティーの費用(場所代や飲食費)は本人が負担する。その辺りも、日本とはまるで逆だ。
誕生日パーティーをしたのはこちらのレストラン。Adler(アードラー)といい、鷲という意味。
上の写真を前日に写しておいて良かった・・・というのも、誕生日当日は雨で、カメラを構えるという雰囲気ではなかったのだ。これは店の中から写したのでガラスに照明が反射しているけれど、建物の外観。
中はこんな感じ。これもガラス越しの撮影。
このレストランはかなり奥行きがあって、どんどん進むとまた違う空間が広がる。ここからは室内の撮影。
お昼にはここが満席状態だった。この田舎のどこからこんなにたくさんの人がここへお昼を食べに来るのだろう?と思うほど。
さて、誕生日パーティーといっても、未婚で家族がいなくて、パートナーも20年くらい前に亡くなって、今は病気でホーム暮らしの70歳男性の誕生会だから、実はお客がほとんどいないし、自分で招いたり主催したりもできない。それで、めぎたちが泊めてもらった叔母、つまり叔父の姉が、今回誕生会を世話していた。しかし主な血縁関係の人はほとんど亡くなっていて、叔母の娘家族は子供の学校の都合がつかなくて来られず、異父姉のうちのドイツ人の母親は彼女の現在の連れあいが病気で来られず、うちのドイツ人の妹は犬が病気で来られず、結局叔父と血のつながりのある人は叔母とうちのドイツ人の二人のみ。あとは、遠縁の現在90歳のおばあさんと、遠い従兄弟の夫婦の3人で、総勢7人の誕生日パーティー。去年の暮れにうちのドイツ人の父親が80歳のお祝いを家族や友人たちとずいぶん豪華に祝ったことを思うと、とても寂しい誕生日。だから、うちのドイツ人がほぼ半世紀ぶりにこの叔父に会ってみようと思い立って参加したのは、非常に喜ばれた。
料理はアラカルトで。好みも分からないし老人ばかりで食事制限などもあったりするから、各自好きなものを食べてもらおうと予め用意させなかったそうだ。何を食べるか話し合う姉弟。
叔父の手には三つの指輪。一つは母親の遺品、一つは若かりし頃自分で買ったもの、そしてもう一つは亡くなったパートナーの遺品だとか。パートナーが亡くなったのはもう20年以上前のことらしいが、「つい最近亡くなった連れ合いの・・・」と叔父は言う。この時間感覚がなくなってしまったところが叔父がホームに入っている理由である。彼は若い頃フランスで暮らしていたのだが、その20歳前後の頃の話も「つい先日」である。
めぎは呆けたらドイツ暮らしのことを忘れるかしら。それともつい昨日のこととして話すのかしら。なんの話を繰り返し、なんのことを忘れるのかしら。
民族衣装を着たウエイトレスさんにそれぞれ注文。
スパークリングワインで乾杯し、ワインもいただいた。
そうそう、ここは結構立派な伝統あるレストランだけど、フォークとナイフはテーブルクロスの上に直に置かれ、箸置きのようなものはない。でも、伝統的には実はフォークとナイフには箸置きみたいな台があって、マイセンなどでは今もそれが売られている。昨日の叔母の家のテーブルセッティングに写っていたのは、フォークなどとセットの銀製のもの。レストランでそういう台を見かけないのは、伝統が失われていっているからか、もともとそういう伝統は上流社会だけのものだったからか、めぎにはよく分からない。
スープはうちのドイツ人はレバー団子スープ。
めぎはシュヴァルツヴァルトの鱒のクリームスープ。
海の遠いこの辺の魚は川で捕れる鱒くらい。
メインディッシュは、めぎはシュヴァーベン風あぶり焼き。
その他の皆さんの様子。90歳の女性は料理を半分の量にしてもらっていたし、誕生日の伯父は温野菜のみ。その他の人たちはいかにもドイツというこってりどっさりの食事。
たぶんめぎたちがこの叔父に会うのはこれが最後になるだろう。次の日の朝早くから仕事だったのでこの食事が済んだところですぐにお暇せざるを得なかったし、往復1000キロ近いの道程を土日で行き帰りするのはとても大変だったけど、行ってよかった。人生は素敵なことばかりじゃない。でも、生ききらなければならない。そんなことを学んだめぎだった。
2011-07-29 02:00
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コメント(19)
カカの誕生日は私からは「現生」です^^
些少ですが・・・。
by Baldhead1010 (2011-07-29 05:14)
何を食べるか話し合う叔父さまと叔母さまの写真、いいですね♪
by hatsu (2011-07-29 05:53)
いつまでも皆で誕生日を祝うのっていいですよね。
日本だとサッパリしたお料理になりそうだけれど、ドイツの方々って、
高齢になっても、こってりどっさりのお料理大丈夫とは。
実は、ここ・・・Adler に泊ったことがあります♪ 7年くらい前。
手元の写真見たら、同じ柄の食器で食事してました~。
by Inatimy (2011-07-29 06:14)
日本人のめぎさんが、
ドイツの田舎で、こうして誕生日会に参加され、
その様子を自分は眺めている、なんだか感慨深いです。
by manamana (2011-07-29 06:30)
昨日、義母の誕生日を祝ったのですが、集まったのは息子と嫁(わたし)と孫1人。ちんまりですね。
by HIROMI (2011-07-29 07:05)
縁あって関わり合ういろんな人の人生。いいですね。
「自分の人生の中では誰もが皆主人公」はさだまさしの歌の歌詞。
それぞれの物語がどれも捨てがたい。静かな誕生日もいいかと。
by 春分 (2011-07-29 07:31)
7人でも、遠くからお誕生日会に集まってくれて、食事をするなんて、
幸せだと思いました。
遠くて、疎遠になっている親戚も居るので、ちょっと反省です。
めぎさんも、僕も、そろそろ老後の過ごし方を考える年齢ですかね(^^)
by くっさん。 (2011-07-29 08:11)
美味しそうな料理、人気があるのも分かります。
こういうところで、親しい人と会食は素敵な思い出になりますね。
時間が経つと、思い出はまろやかなものになりますから。
by ナツパパ (2011-07-29 08:39)
本日の文中で私へのご回答をいただき本当にありがとうございました。
何度も申してきましが、沢山勉強させてもらっています。
by 塩 (2011-07-29 09:14)
素敵な温かいバースディパーティーですね^^
お料理も美味しそう!
by Ranger (2011-07-29 14:01)
「人生は素敵なことばかりじゃない」ほんとにそうだと思います。
ヨーロッパの人は、それがわかっているから、元気でいる間の人生を思いっきり楽しもうとするんでしょうね。
それに比べて日本人は、働きすぎて疲れることばかりを選んでいるようで...
by YAP (2011-07-29 14:56)
ドイツ・・うーん;やっぱり行ってみたい国です。
一人暮らしだという叔母様のテーブルセッティングに驚きました!
それまでの叔母様の生き方が現れてる気がして素敵ですね。
お誕生日会はいくつになっても嬉しいし、お祝いしてくれる方が一人でも多いということは
本当に嬉しいことです。
人生素敵なことばかりじゃないけど、素敵にするかしないかは自分次第ってことですね(^^)
by のの (2011-07-29 16:30)
いくつになってもこうして身近な人たちにお誕生日を祝ってもらえるって
素敵なことですね♪
このレストランもとても素敵な雰囲気ですね~^^
by MOCOMOCO (2011-07-29 19:25)
人生って長いようで短いもんですよね。いずこも同じ・・・・私もいろいろ考えさせられましたよ(^_^;)でもちょっと映画のワンシーンのよう。
by マリエ (2011-07-29 21:35)
遠い血縁者が数十年ぶりに会うという、このような誕生会のしきたりり(伝統)はいいですね。
by たいちさん (2011-07-29 23:02)
いつも以上に、考えさせられました。
ちょっとしんみり・・・。
叔父さまの爪がきれいに整っていて、いいな、と思いました。
それにしても、あぶり焼き!大きいですね。
by rossignol (2011-07-29 23:51)
往復1000キロお疲れさま。こっちだと福岡から岡山ぐらいかな。^^;
by あかえび (2011-07-30 00:05)
素晴らしいレストランでの、素敵なひとときですね^^。
by krause (2011-07-30 08:47)
知らない小さな町へ行くと、ここの人達の暮らしはどんなだろう・・とか、それぞれどんな人生を送ってきたのだろう・・とか、思いますよね。
何と言ったらいいか・・、自分が今ぽつんと見知らぬ地へ訪問してきた偶然がとても貴重で愛おしく思えるというか。めぎさんのブログを通して、またそんな訪問をしているような感覚で読ませていただきました(^^)
by rinochi (2011-07-30 13:20)