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20年目に入って [文化の違い]

今日は、新しく買ったZマウントの40㎜単焦点レンズでの写真を見ながら、つれづれと。
これはAlpenveilchen(アルペンファイルヒェン)で、シクラメンの仲間。秋休み最後の金曜日にマルクト市場の花屋スタンドで購入。
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秋休み2週目、日本の選挙の投票を済ませた。
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と言っても郵便投票だけどね。いつもは領事館に在外投票に行っていたのだが、ずいぶん前からコロナ対策として郵便投票を促すメールが届いていたので、それじゃやってみましょと。早くからちゃんと申し込めば海外からでも郵便投票できる。

めぎの選管事務局は、杉並区。ドイツに渡る前に住んでいたのが杉並区だったので。もう20年も前のこと。
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そう、2021年秋になり、めぎのドイツ在住歴は20年目に入った。2002年秋からドイツに住民登録して住んでいるのだ。2002年って何があったかというと、めぎ的に最も記憶に残っているのは日韓共催のサッカー・ワールドカップ。決勝でカーンのドイツがブラジルに敗れたのだった。日本大好きドイツ人がよく話題にするNARUTOのアニメが始まったのが2002年秋で、めぎとはすれ違い。小澤征爾がウィーンフィルのニューイヤーコンサートを振ったのはこの年のお正月で、その時はまだ日本にいた。大河ドラマは「利家とまつ」。首相は小泉さんで、ドイツの首相は社会民主党のシュレーダー氏。ちなみに小泉さんがシュレーダー氏の計らいでバイロイト音楽祭を見たのは2003年のこと。
話は遡るが、秋休みの中ごろ、秋らしいものを飾ろうとこのカボチャを買ってきた。並んでいる栗は秋旅で拾ってきたもの。
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最初は1年の滞在予定だったのを自費で半年伸ばし、うちのドイツ人に出会ってさらに数年伸ばし、今の高校に就職してずっとドイツにいる決心をして結婚したのが2007年大晦日。その最初の5年間って、どこでどうやって生きていこうかと模索して悩んでものすごく一生懸命でものすごくいろんなことがあって長かった思い出なのだが、たったの5年間のことだったのよね…それから今まで、あっという間。ちなみにブログを始めたのは2006年の夏。気が付かないうちに15年を過ぎていた…
これは秋旅で拾ってきた胡桃。
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2021年の今、日本のことがいろいろと分からなくなってきている。日本語教師だから日本の時事には精通しようとかなり頑張っていて、複数のメディアに定期的に目を通し、ブログでみなさんの記事から流行とかも学ばせてもらっている。でも、やっぱり掴み切れていないみたいで、最近の日本のニュースで「ええっ!そうなの!?」と思ったのが、日本の年収が30年間横ばいしているという話。例えば日経のこちらに。ほんと?このグラフもそこからの引用。
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グラフを見ると、日本の平均年収が30年前も20年前もドイツより低い。しかも今は差が広がっている。うーん、そうなの…?めぎの経験による感覚では、日本人の方がずっと高収入。まあめぎがまだ日本にいた30年前から20年前までは、大卒で就職して総合職でそれなりに収入があった時代から仕事を辞めて二度目の学生時代に戻ってバイト代&奨学金で生きていた時期で、その後のドイツでの5年間は非常勤職でギリギリ食いつなぐどん底貧乏で、日本人の友だちはみんなちゃんと定職についてきちんと収入があったから、その感覚が今も抜けないのかもしれないが…でも、めぎの日本の家族や親戚だって、特別なお金持ちでは決してないのだが、今もめぎ家よりずっといい車に乗っていいブランドの服を着て趣味にお金をかけて持ち家に暮らしている。みなさんも、ブログで拝見する限り、めぎ家よりずっといい車に乗っていたり、めぎ家よりずっと広い家だったり持ち家で庭もあったりしてて、その上めぎ家が日本に遊びに行ってもそんなこと絶対できませんというような高級レストランでの食事や高級温泉旅館旅行を楽しんでおられるのだ。外食の頻度もめぎ家とは全く違う(めぎ家は誕生日と旅行以外は一年に1度あるか否か)。それが実現できる給料で、さらにボーナスもあって、日本っていいなあって何度も思ったものである(ドイツにはボーナスが無いので…クリスマス手当も給料半月分!とかだし)。それなのに、↑このグラフはいったい…?「購買力平価実質ベース」という言葉がキーワードかも知れないけど…
ここからは10月半ばの日曜日の散歩から。
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で、実際どのぐらい違うのかな、とちょっと自分でも調べてみた。2020年の平均年収(税込み)は、日本436万円、ドイツ47700ユーロだという。これではどう違うのか分からないので、まず2020年の為替レート(1ユーロ=平均約123円)で計算し直すと、ドイツは587万円となる。へえええ!2020年購買力平価実質ベースでは、日本は42248ドルで、ドイツは54076ドル。たしかにかなり差が大きい。(これらの数値はWikipediaなどを参照。)また、めぎ的にもっと具体性が増して想像しやすいように、教師の収入を調べてみた。日本の東京の都立高校教師の初任給はこちらによると平成29年で24万7500円、平均年収は747万円(諸手当やボーナス込み)で、ドイツのめぎの住むNRW州の高校教師の初任給は4074ユーロ、平均年収は分からないので、日本の東京の教員の平均年齢が44歳ぐらいだとのことだったので40代の人がドイツで多分到達するであろう年収71072ユーロを挙げておく。換算すると、初任給は倍の50万円、40代での年収は874万円ぐらいということになる。この初任給の差だが、それには大いなる理由がある。ドイツの高校教師は修士卒以上でなければならない上に、専門科目2教科で修士号を取らなければならない。だから日本の1科目だけの学士号で教師になる人の2倍以上の時間をかけて修士を卒業し、さらに1年半の教育実習をしなければならない。そんなわけで、教師として就職するのは若くても既に30歳ぐらいで、日本の学卒で教師になる人とはかなり事情が違うのである。ドイツはその後の給料の伸びがあまりないわねえ…ただ、2021年は為替レートが1ユーロ130円ぐらいなので、40代の年収は924万円ぐらいという計算になる。為替のマジック。あらまあ。
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次に、ネットでニュースを見ていて、へ?ホント?と思ったのが、日本では物が安すぎる、物の値段がずっと変わっていない、という話。めぎ的には日本は物が高いと思っていた。野菜とか果物とか肉とかお米とか、ドイツでは考えられないほど高いという印象。でもそう言えば、めぎ家は15年前はマルクト市場に行く前に50ユーロ用意していたのが、今は念のため100ユーロ用意するようになったよなあ…ドイツではこの20年間にそれなりに物価が上がっているのだろう。そう言えばいつも買うパンも、以前は1.5ユーロぐらいだったのが今は2.1ユーロだしなあ…その一方で日本で食パンの値段が完全に据え置かれているのだとしたら、確かにそれは、物が安いままだと言えるのかもしれない。
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日本とドイツの経費という目で暮らしを見て今も変わらず絶対的に言えることは、日本では食費以外にお金がかかるものがドイツよりずっと多いということ。子どもがいれば習い事や塾や予備校、高校から授業料もかかるし大学に至っては受験料入学料授業料とかかりっぱなし。家賃や住宅も都市部ではドイツよりずっと高い(ドイツでもミュンヘン・ハンブルク・デュッセルドルフは非常に高くなってさらに上がる一方で、日本の都市部に匹敵しつつあるが)。コロナでかなり減ったのかもしれないが、日本は飲み会などの交際費も多い。その点、ドイツでは塾も予備校も受験料も入学金も授業料もないし、職場の人と飲み会なんてものもほとんど無いしあっても料理持ち寄りパーティーだったりしてお金かからないし、健康保険料は高いけど病気になっても入院しても手術しても薬代も治療費もかからないし、もらった給料から出ていくお金が日本より少ないような気がする。ドイツでは長期休暇に出すお金が結構なウェイトを占めるけど、日本の人も旅行はするし、週末の一泊旅行の頻度はドイツよりずっと多いし、たぶん出ていく金額は同じぐらいじゃないかな。
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この辺り、本当のところはどうなんだろう…日本に20年もいないと、やっぱり実情が分からなくなるんだなあと思い知った次第。ずいぶん頑張って日本事情について行っているつもりだったけど、限界かな。
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さて、ドイツの総選挙が終わってもう1か月過ぎ、まだ連立の組を作る交渉が続いていて政権は誕生していない。クリスマスまでに決まるか、来年になるか、と言われている。先週EUサミットが開かれていたのだけど、メルケルさんが未だ現首相として出席していた。まあこれから何か月連立交渉してても、その間ずっとメルケルさんが首相であり続けるわけで、特に問題はないのだ。
ここからはめぎ家のバルコニー。
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そんなドイツにいて20年目。ここの時間のゆったりとした流れに身を任せ、すっかり居心地よくなった。日曜日に店が開いていないことも、それが普通でそれが快適に感じるようにさえなった。20年前はドイツにはまだ白黒画面の携帯しかなかったし(日本では既にカラーが主流だった)、携帯でネットもメールもできなくて(日本では写メールもできたしインターネットも見ることができた)、なんて後進国なんだ!と憤慨していたものだが、10年ぐらい前からスマートフォン普及で世界中全く差がなくなった。ドイツのPCでどうやって日本語を打てるようにするか、携帯でどうやって日本語を打つか、なんていう問題も、OSの技術進歩でもうすっかり忘れ去られていった。ここ数年はアマゾンでほぼ何でも日本から取り寄せられるようになった(本や雑誌はもちろん事務用品や食べ物やウォシュレットまで)。

そういう意味で、今はドイツにいようと日本にいようとあまり差が無く、やろうと思えば同じような生活ができるようになったのだが、しかしやっぱりそれぞれの空気は違ってて、めぎには日本のことがいろいろわからなくなったんだなあと思った次第。次の20年はどんな世界になるのだろう。20年後には確実にめぎは年金生活者だ。ここで、どんな老後が待っているのだろう。ドイツは、日本は、その頃どうなっているのだろうね。
この花が今もたくさん咲いている。結構寒さに強いのね。
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