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ドイツで手術 [文化の違い]

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今日のお話は、タイトル通り、めぎがドイツで手術した顛末について。いきなりびっくりしたかも知れないけど、もう遠出してもOKなほど元気なのでどうぞご安心を。

めぎが婦人科に予約を入れたのは冬休み明けのことだった。ドイツには職場や学校に定期健康診断という制度がない。健康診断のような極めてプライベートなことは、自分で医者に予約を取って行うものというのがこの国の考え方なのだ。だから、めぎもできるだけ気をつけて一年に一回は内科や歯科、そして婦人科に予約を入れて健康診断を行うことにしている。しかし今回は、自覚症状があったので予約を入れた・・・どうも出血が続くのだ。その所為で疲れやすいし、これはやはり行かねば・・・と思ったのである。予約のとれた1月22日の朝9時15分に行くと、まずアシスタントの問診。定期診断ですか、と聞かれ、ええ、乳ガン検診の方はそうなんですが、子宮の方は、実はどうも出血が続くので来たんです・・・と言うと、それなら乳ガン検診(超音波検診)の方は35ユーロ(約4千円)かかるけど、子宮の方は先生の判断を仰ぎましょう、とのこと。その後医者は話を聞いて当然子宮も超音波検診をし、その費用はかからなかった。結果、乳ガンはなかったが、子宮にポリープがあるという。これは除去しなければなりませんが、ここでは手術できませんから、ドクター○○への紹介状を書きますね、と言われた。げげげげげ。手術?入院?どのくらい?と聞いたら、アンビュランツだという。ええ?ポリープの除去手術が外来?とにもかくにもいろんな意味でショックを抱えながら帰宅し、もらった紹介状のクリニックへ電話。すると、最短で取れる予約は2月12日だという。その日に手術をするのではなく、医師とのBesprechung(これをなんと訳していいか分からない・・・問診?面談?)になるのだとか。それじゃ手術はいったいいつになるのかしら・・・と思いながらももちろんその日に予約を入れた。残念ながらその紹介状を写すのを忘れてしまったので、これはWikipediaから。紹介状というのはこういう伝票である。
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実際の紹介状には、Uterus myomatosus V. a. Endometriumpolypと書かれていたと記憶している。V. a. というのがなんの略か分からなくてネットで調べたら、医学用語略語でVerdacht aufなのだそう。なるほどね。そんなわけで、訳すと「子宮筋腫、子宮内膜ポリープの疑いあり」という感じだろうか。しかしこれだけだとポリープと筋腫がどう違うのかすら分からない。ネットで色々見たけど、やっぱりどうにも分からない。しかも、どこに筋腫があってどこにポリープがあって、どう外来で手術するのか、皆目見当がつかなかった。つまりはめぎが婦人科の先生のところできちんと全部聞いてこなかったからなのだが、そんなわけで病気の人間というのは気が動転しがちで質問項目すら気づかない可能性があると感じ、2月12日の予約にはうちのドイツ人にもついてきてもらうことにした。そうすれば、分からない医学用語は説明してもらえるし、落ち着いて質問項目も浮かぶだろう。
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というわけで、予約した2月12日17時に行くと、非常に感じのいいドクターが待っていた。丁寧で、物腰が柔らかく、イケメンで細く、人当たりがいい。話を聞き、もう一度超音波検診してどこに何があるか教えてくれた・・・5センチほどの筋腫が複数子宮の外側についていて、内部に5ミリ程度のポリープがあるのだとか。出血はその所為で、それを取らなければならないらしい。ポリープがあるのは内部なので、おなかは切らずに済むのだとか。外側にある筋腫の方は急を要する訳ではない、とのこと。手術日は3月15日と決まった。最初8日と言われたが、めぎの仕事の都合で15日にしてもらったのだった。本当に日帰りだという。どのように手術するかも詳しく説明してくれた(子宮鏡で見ながら切っていくようだ)。そして、手術日までの注意事項が書かれた紙をくれた。
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手術前6時間はnüchternにと書かれている。これはドクターにも言われたのだが、そこですかさずうちのドイツ人が「食べちゃいけないということだよ」と。ああ、酔っぱらっちゃいけないという意味じゃなくて、飲食するなということなのね。タバコを吸う人は喫煙も6時間前から禁止だそうで、それはそういう人には辛いだろうなあ。また、4~6日前からアスピリンなどの痛み止めを飲んではいけない。血液が薄くなるからなのだろう。

当日はあたたかいソックスと替えのショーツとナプキンを持ってくるようにとのこと。メイクやマニキュアが禁止で、高価な貴重品も持ってこないようにとのこと。クリニック側で手術服やスリッパ、シーツや布団・枕カバー、コーヒー、紅茶、水、ラスクやパンを用意してくれるとのこと。
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そして、裏側に当日の流れが説明されてあった。
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さらに、手術では全身麻酔をするとのことで、それに関する書類も渡された。いくつかの質問に答え、万一に備えサインをし、さらに当日手術後どうやって帰宅するか、誰が24時間面倒を見るかなどを提出する。全身麻酔の手術後24時間は、車の運転禁止、公共交通機関で帰るのも禁止、車で迎えに来てもらうかタクシーを使うようにとのことで、どのように帰宅するかを記入してサインをして提出するのである。
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この辺りでめぎはドイツの医療システムと日本との違いを色々感じた。今回の手術に当たり、めぎはもちろん病名を日本語でネット検索して、手術方法や入院期間、そしてかかる費用などについてたくさん読んだ。一般的にはめぎの手術を日本で行った場合、2泊3日の入院手術となる。1泊目には何か点滴を行い、飲食も病院で管理される。手術後ももう1泊して、24時間しっかり管理される。健康保険が適用され、実際に患者が自己負担する手術料と入院費用の合計が約10万円という相場だった。日帰り手術をしているところもあるが、その場合は局部麻酔での手術だった。この場合の費用は自己負担分が約2万円ぐらいのようである。さて、ドイツでも健康保険が適用される。それも、全額適用され、自己負担はない。めぎは検査も手術も麻酔も何もかもひっくるめ、一銭も払っていない。払ったのは最初の個人でエキストラに行った乳ガン検診35ユーロ(約4千円)だけである。ドイツでは、公的保険に入っている限り、病気の場合必要な手術や入院に一銭も払う必要がない。それだけ保険料が高いという事情もあるが(収入の15.5%、雇用者と被雇用者とで折半、日本の約2倍)、できるだけコスト削減しているということでもあるのだろう。余計な点滴をせず、余計な検査もせず、血液検査も最初に検査した医者が持っているデータを使い回しし(めぎがその医者に結果を取りに行って、スキャンして手術するドクターにメールするという形)、手術前後の管理も本人と家族に委ね、入院させずに終える。その背景には、たとえ車がなくとも迎えがなくともタクシーで余裕で帰れるところにみんなが住んでいるという現実もあるし、術後必要な静養日数分医師が診断書を書けば、仕事も全く問題なく休めるというシステムもある。そしてなんと言っても個人に任せる範疇が非常に多い・・・自己責任の国らしいというか、麻酔後の帰りのことや24時間面倒を見る人を自分でオーガナイズせよということなのだ。十中八九は何事もない訳で、そのために入院して管理するのはナンセンス、ということなのかも知れない。
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全身麻酔に関する様々な質問事項の中に、Patientenverfügung(リビング・ウィル)を作ってあるかどうかという項目もあった(12番)。尊厳死を望むかどうかを書面で残しているか否かという質問である。そうだ、義父が亡くなったときに、そういうのを全て整えようと思っていたのに、うちのドイツ人のは遺言書まで全てできあがったけど、めぎのはまだだった・・・ドイツでの無期限滞在許可が下りてから作ろうと思ってて、忘れてた。とっくに無期限許可をもらったのにね。今回はもう間に合わないわ。
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それから手術まで、とにかく仕事を片付けた。完璧とはいかなかったが、予定していた授業進度や試験や成績付けなど重要な部分は問題なく終えることができた。イースター休み前は年度末でも学期末でもないため、昨日ご紹介した最終学年の授業と成績判定以外特に何かを終わらせる必要がなかったのも幸いだった。予めこの手術日が分かっていたので、ずいぶん早くから準備を始め、ブログの作り置きまで終わらせた。たいした手術ではないと分かっていても、全身麻酔でもしものことが起こる可能性もあるし、手術というのは非常に大きな節目であって、いくつか自分にとって大事なことを整理するよい機会にもなった。それから、途中で一度陽気が暖かくなり、花粉症が一気に始まったが、その薬を飲んでもいいかとメールで問い合わせたところ、2時間くらいでドクターから返事が来た。前日までOKとのことで安心して服用。その後また一気に気温が下がって雪となり、結局直前は薬が必要なかったが、迅速かつ親切な対応は非常に好ましかった。そして手術の前日、食べたいものを食べようと日本食材店で鉄火巻きと豆腐を買ってきて、巻き寿司をつまみながら湯豆腐にした。

そして手術当日。朝8時にクリニックに来るようにと言われた。着くと10分くらいでこの部屋に通された。クリニックが建物の一番上にあることもあって見晴らしがよく、天気もよくていい気持ち。それに、写真ではイマイチよく分からないがシーツとかカバーが綺麗な空色で、真っ白じゃないというのが斬新に感じた。ちょっと小綺麗なユースホステルみたい。部屋にお手洗いも付いている。
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これは二人部屋で、驚いたことに朝8時半前に既に手術を終えた人が運ばれてきた。その人が麻酔から覚醒している横で、めぎは執刀医のドクターと麻酔医から最後の説明を受け、いくつかサインをし、握手をし、手術服に着替えた。麻酔で冷えるから靴下をはくようにとのこと。手術室に入ったのは9時半近くだったと思う。入っていくと、ハイここに座ってください、足はここへ、右腕をここへ、枕の位置は自分で調節してね、生年月日は?あら血管細いわねえ、ちょっとポンプして(手を握ったり開いたりしろという意味)、はい、もういいですよ、手を開いたままにして、左手はお尻の下に置いて、そうすれば落ちないから・・・と矢継ぎ早にことが進み、すると麻酔医がやってきて、それでは麻酔を始めますよ、ずっとちゃんとそばで私が管理しているから大丈夫ですよ、心配しないで深呼吸して、はい、ゆっくり眠ってくださ~い・・・と言った辺りで目と鼻と口の辺りにシュワッというかムワッというか何かが来たのを感じ、次の瞬間には眠っていた。思えば、割烹着みたいな手術服で心電図などつけた形跡もなく、どうやって管理していたのかな・・・めぎにはWir achten auf Sie, atmen Sie bitte tief, holen Sie viel Luft, schlafen Sie schön... (我々が注意していますよ~、深呼吸してたくさん空気を取り込んでくださ~い、ゆっくり寝てくださ~い)という麻酔医の最後の言葉だけが耳に残っている。


目覚めたのはベッドの上だった。事前に、全身麻酔したことのある友人から「覚醒するときにびっくりする」とか、うちのドイツ人から「麻酔から覚めたら悪酔いしたみたいになる」とか色々聞かされていたのだが、麻酔の技術が進歩したからなのか、麻酔していた時間が短いからか、目覚めは極めて気持ちよく、全く酔った感じもなく、ああよく寝た、という感じだった。子宮の辺りが鈍く重い感じがするだけで、どこも痛くない。喉も痛くないし、頭痛もない。しばらくなんとなくぼんやりしていたらうちのドイツ人がやってきて、時間を聞いたら10時だった。えんじ色のシックなポロシャツにぴっちりした白いパンツをはいている看護婦さんが(ここのスタッフは医師以外みなその恰好だった)、コーヒーは?パンは?と聞いてきた。お茶がいいというと種類を聞かれ、パンにはチーズがいいかジャムがいいかなどと聞かれ、ペパーミントティーとジャム付きパンをお願いした。
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つまり、全身麻酔手術後30分程度で上のような食事をしたという訳だ。写っている水とタッパーはうちのドイツ人が自分用に持ってきた朝ご飯。そういえば既に隣のベッドの人はいなくなっていて(あとで見たら別の休憩室のソファーでゆっくり寛いでいた)、めぎがこれを食べている間にシーツとカバーが替えられ(食事中だから埃を立てないといったことは考えないようだ)、次の患者さんがやってきて、同じくドクターと麻酔医がやってきてお話ししてサインして握手して、その人が着替えて手術室に向かい、めぎが食べ終わって少しした頃に麻酔医と看護婦さんが様子を見に来て、そしてそろそろゆっくり起きて、目眩がしないようだったらゆっくり着替えて、着替え終わったら別の休憩室に移動してください、と言われた。休憩室の寝椅子で20分くらい寛ぎ、すると執刀医のドクターがやってきて、彼のオフィスに向かい、手術の結果に関する説明を受けた。
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どこからポリープをとり、どこの子宮内膜を搔爬したかを簡単に聞いたが、渡されたA4の紙(写真左側)にはぎっしりと、どんな風に何を使って何を見つけどのように手術したか全て詳細に書かれていた。読むと非常におもしろい。めぎの子宮の入り口から内部にわたり、どの器官がどのくらいの大きさでどのようであるか克明に書かれてある。なんとまあ(読みようによっては大いに想像をかき立てられる)。めぎは日本で手術したことがないので分からないのだが、こういう手術レポートを文書でもらったりするのだろうか?

それから、今後3週間の注意事項について説明され、書かれた紙もくれた。
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感染症を防ぐため3週間はお風呂禁止、温泉やサウナやプールも禁止。性交渉も禁止(このGeschlechtsverkehrというドイツ語がいいなあ♪)。タンポンも禁止。痛み止めはこれこれのみOKと明記されている。この他、湯たんぽはダメ、3週間スポーツもダメ等々。

そして、月曜日まで病欠するという診断書(労働不能証明書)をくれた。2枚綴りになっていて、1枚目は公的健康保険会社に提出する。それにはどういう病気でどんな治療をしたかなどが記号で記されている。
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2枚目はその病気に関する記述が無く、いつからいつまで病欠が必要という上の部分だけである。それを勤め先に提出する。この病欠はもちろん有給で、しかも有給休暇からは引かれない。光り輝くような「労働不能証明書」である。
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それらをもらってドクターとお別れの握手をしてクリニックを出てうちのドイツ人の運転で帰宅したのはお昼12時前だった。それからまずいつものカフェオレを入れてくれて、それを飲んでから昼寝。おなかは鈍い重みが続いているが痛みはなく。眠いのだが、寝ると眠りが浅いうちにすぐ起こされるような夢を見て目が醒める。無意識が麻酔の覚醒を再現しているのだろうか。見る夢は、カメラのフレームのような四角いところに原っぱと一本の大きな木があって、カメラのホワイトバランスをいじって金色に輝くように光を調節しているような像。あのポプラの木の幻影なのかしら。

4時頃うちのドイツ人が様子を見に来て、おなかがすいためぎにライ麦パンにのせたローストビーフを持ってきた。これがうちに帰ってから最初に食べたもの。
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めぎが寝ている間にうちのドイツ人が「めぎはだいじょうぶ、オペレーションはおわりました、うちへかえりました、いまねています」みたいな簡単な日本語のメールを母と妹に送ってくれたそうだ。その10分後には母からメールの返事が来たのだが、それには難しい漢字があって読めないという・・・でも自分で解読したいというので、漢字事典のひき方を教えてあげた・・・月曜日になってからだったけど。一番難しかったのは「付いていて下さり、とても心づよいです」というくだり。まず、「付」というのをドイツ人初級学習者用の漢字事典で引くと「くっつく」という糊でくっつくようなイメージの訳と「属する」「固定する」という意味しか載ってなくて、どこにくっつくの?と。手術について行ったということなのかなあ、などと全く別の方向に想像したり(ドイツ人には「いて」と「いって」の区別も難しい)。「下さり」は「したさり」と読んで、意味が分からない・・・とお悩み。「心」は「小」と勘違いし、ちいさいづよい?ちいづよい?しょうづよい?と。

さてさて、手術当日に戻りましょ・・・夜になって、夕飯のお時間に。手術後お酒禁止などとは全く言われてないし書かれてもいないが、飲みたい気分でもなくめぎはお茶を用意。
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この日の夕飯を何にするか・・・それについて、一か月も前から色々と話し合ってきた。日本の友人は「そういうときこそ和食が食べたいだろう」と言ってうちのドイツ人にも分かる出汁の取り方のサイトを送ってくれたりしたし、ケルンにいる日本人の友人も日本食が欲しかったら声をかけてねと言ってくれた。でも、手術の日は麻酔で悪酔いする可能性もあったし、うちのドイツ人も妻の手術ということで心配して気を遣って疲れているだろうから、誰かに来ていただくよりはうちのドイツ人に何か一人で気楽に用意してもらうのがベストだという結論に至った訳だが、どんなに簡単でも慣れない和食を作るのは負担が重すぎるだろう。何かめぎも大好きでうちのドイツ人に朝飯前で作れるものはないかしら・・・と考え、トマトソースのパスタに決定。それなら夏に作り置きしたトマトソースがまだあるしね。麺に関しては、うちのドイツ人が知り合いのイタリア人に聞いてドイツのスーパーで手に入る2番目に美味しいイタリアのメーカーのパスタを購入(1番美味しいのはスーパーにはなく、イタリア食材専門店に買いに行かないとならないらしい)。そのイタリア人のお薦めはこのメーカー。
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スパゲティもあったけど、このパスタに惹かれてこれを選んだめぎ。
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美味しかった♪
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もしパスタも食べられないほど調子が悪く食欲もなかったら、ご飯を炊いてもらって(それはうちのドイツ人にも練習なしでできる)、梅干しで食べようと思っていたのだけど、杞憂に終わってよかったわ。それでも麻酔の所為なのかだんだんと腕がしびれてきたので、この日はこれで就寝。

これは次の日のお昼。
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土曜日も一日中寝ていたが、食べるときだけは着替えてテーブルに座った。土曜日だから夕飯はサッカーニュースを見ながら。この日のめぎの飲み物は林檎のフレッシュジュース。カブの漬け物はめぎが事前に作っておいたもの。
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これはうちのドイツ人が作った林檎と根セロリのサラダで(赤っぽくなったのはバルサミコのため)・・・
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色が似ているけどこれはもう一度昨日のパスタ。もちろん麺は新しく茹でたもの。
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食欲もあって、順調に快復しているように感じる。うちのドイツ人には本当によく面倒見てもらい、心から感謝。

そして日曜日ものんびりと。とにかく静養して、月曜日の病欠が過ぎたら職場復帰しようと思っていたのだ。この週末は何もしないでひたすら静養できるように準備していたため(この期間はブログも見なかったしメールも読まなかった。なによりコンピューターのスイッチを全く入れなかった)、本当に暇だった。このときのために日本から取り寄せたマンガを読んだりして過ごした。そう、まさに、こういう感じだった。
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このマンガ↑、秋に日本へ行ったときに泊めてもらった友人が持ってて勧めてくれたもので、北海道が舞台になっている所為もあってとてもおもしろく、そのときに出ていた3巻までを買って帰り、その後の4巻と5巻を手術に合わせて日本から取り寄せたのだった。

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そして、月曜日になり、執刀医のドクターに言われた通りいつも検査に通っている婦人科の医者に術後検診の予約を入れた。すると、電話の人が今日か水曜日かが空いている、というので、それじゃ今日行きます、と。それで月曜日の昼過ぎにゆっくり歩いて婦人科に行ってきたのだが(うちから歩いて10分くらい)、超音波で中の様子を見るにはまだ早すぎるのでイースター明けにもう一度予約を、と医者に言われ、さらに金曜日まで病欠の手続きが取られた・・・あらら、火曜日から仕事をしてもいいんじゃなかったの?いや、万一の際に備えて準備はしてあったから、一週間休んでも問題はないのだけど、あらら、生徒たちがびっくりするだろうなあ・・・先生が一週間も病欠しちゃ・・・
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というわけで、めぎは↑のように19日から22日までも労働不能証明書が出され、さらに25日からは2週間のイースター休暇に突入したため、なんと3週間もお休みをいただいたのであった。休みと言っても22日までは静養してなきゃいけないからただうちにいただけだけど・・・霙の降る外を眺めながら、めぎがその間うちで何をしていたかはまた明日以降に。これはうちのドイツ人の母親からのお見舞いカード。
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以上がめぎのドイツ滞在初手術の顛末。今はもう仕事しても遠出してもOKで、それこそ日本へ行ってもいいらしい(温泉はまだ禁止だから行こうという気にはならないけど)。なにはともあれ、イースター休暇明けからは大学も始まるし、仕事になんの支障も出ない時期に手術できてよかった。常々、どうしてこの国ではガン保険とか入院保険とかの宣伝がないのかなあ・・・と思っていたナゾが解けた経験だった。公的健康保険で全てが賄われるのなら、そういう保険は必要ない。ドイツには高額所得者向けのプライベート保険があって、そういうひとたちは公的保険に加入していないのだが、そういうプライベート保険の人のみを相手にしているクリニックもあるようだ。その場合、その道の権威に執刀医になってもらうという付加価値などもあるようだ。もしかしたら予約が取れるのももっと早いのかも知れない。しかし、めぎは完全に一般庶民として、紹介状を書いてもらった医者に言われた期日でベルトコンベヤーに載っているかのような流れ作業で無料で手術してもらったが、待ち時間もなく、清潔で、応対もよく、説明もよく、技術も確かで(全く痛みもなく麻酔酔いもなく終えることができて)、なにより自宅に前後ずっといることができて、とても快適だった。この経験で、めぎはもう日本へ帰ることはできないかも知れないなあ・・・とも漠然と感じた。ドイツの健康保険制度に生きるめぎは、将来高齢になってから日本へ帰っても、医療保険にも入ってないし、病院代などを払う財力がない。ドイツでなら一銭もかからずに死を全うすることができるだろう。それが現実なのだな、と改めて感じた次第であった。
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Baldhead1010

大変でしたね。

自分も2010年でしたか、全身麻酔で手術したのを思い出しました。
by Baldhead1010 (2013-03-26 04:54) 

hatsu

めぎさん、手術が無事におわって良かった^^
お大事にしてくださいね。
by hatsu (2013-03-26 06:07) 

ちばおハム

めぎさん、お大事に。

ドイツの医療制度についてもとても興味深かったです。
無駄な診察や診療がないというところは日本にもぜひ取り入れてもらいたいです。
by ちばおハム (2013-03-26 06:08) 

駅員3

お疲れ様でした。
ところ変われば・・・といか日本とは大違いのような気がします。
と言っても、私は入院したことがないので、なんとも言えませんまが。
ともあれ、お身体ご自愛下さい(^_-)/
by 駅員3 (2013-03-26 06:55) 

uminokajin

大変でしたね。めぎさんの事に対する姿勢には驚嘆します。私も頸椎ヘルニアの手術 脊椎管狭窄症の手術 吐血してスイスのインターラーケンの救急病院への入院など体験していますが、みんな朧になっています。
by uminokajin (2013-03-26 07:22) 

Inatimy

いきなり手術へと話が流れては動揺しますよねぇ。 何が何だか、何をどうすればいいのか、この記事を読み始めた私ですら一瞬動転しました・・・。 手術の詳細報告書にも驚きですが、体験談をきちんとまとめあげられためぎさんもスゴイです。 術後なのに食べ物の写真をちゃんと撮って記録されてるし。 スペインでは学校の先生から手術は半年待ちだったと聞いたことがあります。 
どうかお大事に。 仕事始まっても無理なさいませんように。
by Inatimy (2013-03-26 07:32) 

ナツパパ

題名でビックリ、その後記事を読み進めて、ホッとしました。
なにはともあれ、お元気のご様子に安堵しましたよ。
ドイツの病院は行き届いていますね。
それだけ患者からの要求も日本に比べ高いのでしょう。
by ナツパパ (2013-03-26 08:26) 

YAP

大変でしたねえ。
少しどきどきしながら記事を読ませていただきました。
今は落ち着いていらっしゃるようで安心しました。
しばらくはお大事になさってください。

宿河原の話なのですが、日本の日本テレビ系で放送されていた「すいか」というドラマの舞台がこのあたりだったそうです。
ドラマ内では「三軒茶屋」という設定だったようですが。
by YAP (2013-03-26 08:33) 

アールグレイ

手術が無事に終わって良かったですね。
お大事になさっってください。
冷静に受け止められ、その詳細もしっかり記録されているので
さすがと思うことです。
国によって、医療の実態もいろいろ違うのですね。
ドイツは、無駄のない的確な治療という感じがしました。
by アールグレイ (2013-03-26 09:56) 

塩

私には大変、大変勉強になり読み返しました。日本との違いも、似たところも、いろいろと感じたり、教えられたりです。
勿論病気は違いますが、5か月間入院治療を受けたときのことも思いだし、めぎ様のお気持ちはよく分かったような気がいたします。
生意気ですが、医学用語などはある程度理解しやすかったです。これからもますますお元気でお過ごしください。
by (2013-03-26 09:57) 

かずのこ

安心できる健保制度と自己責任
日本で構築するのは難しいでしょうね。
いろいろ考えさせられます。
by かずのこ (2013-03-26 10:42) 

のび太

どうぞお大事になさってください。
妻にも今回の内容を伝えました。
by のび太 (2013-03-26 12:33) 

rino

ドイツ人さんの献身ぶりに感動です。本当にご心配だったでしょうね。日本のお母さん、妹さんにメールを入れてくださったり、帰宅後何を食事に作ろうかなんて、、本当によく気がつかれて素晴らしいです!ドイツ人さんがいれば家でゆっくり静養できますね。日本のお母様もドイツ人さんがいてくれて、心強いと思われたのでしょうね(^^)
by rino (2013-03-26 18:14) 

ぽりぽり

全麻の手術ですから、大変でしたね。でも大病にならずに早めの決断、処置が出来て良かったです。 ドイツだから、安心感がありますよね。
by ぽりぽり (2013-03-26 18:54) 

Bonheur

手術、お疲れ様でした。突然のことで大変だったと思いますが、これで心配の種が取り除かれて良かったですね。
ご病気のことにも驚きましたが、さらに驚いたのは、めぎさんの文章の客観性と冷静さです。病名も包み隠さず、またドイツの病院や保険制度について淡々とした説明。まるで他の方のことを書かれているような、そんな印象も受けます。

とにもかくにも、ご無理をなさらず、引き続きご自愛くださいね。
by Bonheur (2013-03-26 20:56) 

母ちゃん

本当に大変でしたね~。ご苦労様でした! 無理せずゆっくり過ごして下さいね~。
by 母ちゃん (2013-03-26 22:17) 

stellaria

私も、タイトルにドキッとしました…。無事に終わってよかったですね。すべて周到に準備をすませ、ブログの記事まで全部用意しておいて手術に臨み、無事に退院してから、こんなに詳しくその体験を記事になさっているのがすごいのですが、なんだかそれもとてもめぎさんらしい気がしました。どうか、くれぐれもご無理なさいませんように。引き続き、お体を大切になさってくださいね。
自然分娩、帝王切開、流産の後の処置と、産婦人科にはずいぶんお世話になりましたが、手術の細かい内容や、子宮の形状まで書かれた文書はもらったことがありません。術後の生活の注意点などの文書はもらったような気がします。流産の時には全身麻酔で(掻爬術だったと思います)、目覚めたら意識はあるのに体が動かないのが不安で、一人でもがいていたのを覚えています。
by stellaria (2013-03-26 22:39) 

miffy

全身麻酔での手術でも日帰りが可能なのですね。
術後、1ヶ月以上経ちましたがその後お加減いかがですか?
無理せずお大事になさってくださいね。
by miffy (2013-03-26 23:19) 

ふくちょ〜

お大事にしてください!
ドイツの医療体制は、見習うところが多いですね。
というか、日本の医療はドイツを手本にしてきたはずですが・・・。
by ふくちょ〜 (2013-03-27 08:04) 

coo

医療体制がきちんとしていて安心ですね。
お身体大切に、お大事になさってください。
by coo (2013-03-27 08:41) 

テリー

手術大変でしたね。私も、4月末に、左肩の腱板断裂の手術が待っています。もう、覚悟を決めましたがーー。
by テリー (2013-03-27 11:15) 

krause

手術、無事に終えられて良かったです。どうぞ、無理なさらぬようしばらくはお大事にして下さい。
by krause (2013-03-27 17:16) 

MOCOMOCO

私も以前は医療従事者でしたので、ドイツ医療の無駄のなさにただただ感心しました。もし今後また医者にかかるようなことがあっても安心して任せられますね^^
そしてめぎさんの冷静かつ明確な手術レポートに感心するとともに、
自分自身も億劫がらずにきちんと定期健診など受けなければ・・と大いに反省いたしました。
by MOCOMOCO (2013-03-27 20:16) 

yutakami

ご無事で何よりでした。術後もお大事に。
by yutakami (2013-03-28 21:25) 

たいちさん

医療制度の違いがよく分かりました。めぎさんの手術が無事成功したことが嬉しいですね。これからも体に気を付けて下さいね。
by たいちさん (2013-03-28 23:20)