ギュンター・グラス [プチ教養]
ギュンター・グラスって知ってますか?
これは、私が独文学の大学院の面接入試を受けたときにドイツ人の教授から聞かれた質問である。
そりゃー知ってるでしょう!彼を知らないでドイツ文学の大学院を受けるなんて、日本人が夏目漱石を知らないようなものだ。
しかし、質問の意図は違った。その面接の前日に、彼がノーベル賞を受賞することが明らかになっていたのである。そのドイツ人の教授は、嬉しさはちきれんばかりの表情で私を試したのだ。
そのギュンター・グラスが、1999年のノーベル文学賞受賞から7年も経った今、そして戦後61年も経った今、ナチのSSに自ら志願して所属していたことを告白した。もうすぐ発売される自伝にその経緯が詳しく描かれているらしいのだが、それに先立って、ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ新聞(こちらではFAZと略される)とのインタビューに答え、明らかになったのである。この写真は、そのインタビューのときの写真。
ナチのSS?
日本のメディアには、ナチス親衛隊、と訳されている。それは、ヒットラー率いるナチ党がドイツ政権を担う以前に、特にヒットラーを警護するために、反対政党及びナチ党内の不平分子を諜報・摘発する部門として組織された。政権を担ってから、そして開戦後は、特にユダヤ人絶滅収容所の看視部隊としての役割を果たすなど、当時のエリート集団組織として知られている。
そこに、自ら志願して入っていたと言うのだ。
どうして今?
これが、たいていのドイツ人の反応である。どうして彼はノーベル賞受賞前に明らかにしなかったのか。どうして今まで、誰もその事実を発見できなかったのか。
彼は今までにも、戦争中はナショナリズムに心酔していたと告白している。そこまで言っておきながら、どうしてSS所属の事実は隠していたのだろう?彼も人間なのだ、と一言で済ませるのは簡単だけど。
上の写真はFAZのネットから引用したもの。ドイツ語の読める方はぜひこちらへ。
http://www.faz.net/s/Rub28FC768942F34C5B8297CC6E16FFC8B4/Doc~E4E61DA913E954EAEA41518E564AD5375~ATpl~Ecommon~Scontent.html
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