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叔母のホーム入り+ドイツの年金のこと [文化の違い]

今日はうちのドイツ人の叔母の引越先ホームでのお話を。ドイツのシュヴァルツヴァルト地方のナーゴルトに住んでいた伯母が今年の6月に娘の住むデュッセルドルフの老人ホームへ引っ越して来た話の続き。

老人ホームと言ってもここは、要介護の人が入居者のほとんどではあるものの、介護がまだ必要のない人もワンルームマンションへの引っ越しのように移り住み、連携の医者に定期的に検診を受けたりしながら過ごし、介護が必要になったらそこに住みながら介護してもらえて亡くなるまでずっとそこに住み続けられるというタイプのところ。だから、脚が痛くてあまりたくさんは歩けないけど一人ですべての用を足せて念のために杖を突きながら歩いているというだけでまだ特に介護の必要のない叔母の場合、介護保険はもちろん使えないし、月々はともかく最初の入居金もそれなりにかかるところ。高級ホテルのようなエントランスや立派なレストランの話は前回こちらに書いた。

非常に大規模なホームで建屋が複数あるし、めぎたちはこんな廊下をしばらく歩き、階も変わってもうエントランスがどこだか分からなくなりそうな迷路に入ったかのような気分になったあたりでやっと叔母の部屋に到着。
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6月4日だったか6日だったかに引っ越してきて、めぎたちが行ったのは6月10日。部屋はまだこんな状況だった。
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日本のワンルームマンションと同じような間取りなのだが、入口から部屋までの廊下にもまだ色々置かれている。入り口を入るとまず、すぐ左(写真では右)にクローゼットがあり(下駄箱&服をしまったりかけたりするところ&雑貨収納)、続いて食器棚と冷蔵庫と小さなキッチン(小さいと言ってもちゃんとオーブン付き)が続く。入居者は普通に自炊でき、叔母は叔母の足で歩いて20分のスーパーに自分で買い物に行っているそうだ。申し込めば送迎バスもあるし、お金を払えば介護の一環として買ってきてもらうこともできるし、ネットなどで申し込んでお届けしてもらうこともできる(叔母はPCを持っておらず全くインターネットをしないのでその可能性は無いが)。右側(写真では左)にはバスルーム。そのバスルームには洗濯機も置けるようになっていた(新しく購入したのがまだ届いていなかったが)。
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この日のめぎたちの任務は、叔母がこの週末からここで寝れるようにすること。この日までは叔母は娘のうちに泊まっていたのだ。娘は一週間休みを取って引っ越しを手伝ってきたわけだが、次の週からは仕事に復帰するので、どうしても叔母がここに住めるようにしなければ。
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で、まずは「大きな古時計」のような時計を段ボールから出して…
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あそこにかけることにした。大きな鏡もそのすぐ近くに設置。
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↑この大きな戸棚と、↓この大きな本棚、両方とも持って来たのね~
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この大きな食卓テーブルも。
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この丸テーブルも無事にここに。
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そして小物、いっぱい持ってきたわね~やっぱり捨てられなかったのね。
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さて、前回叔母のホームの話を書いた時、ドイツの年金についての質問コメントがあったのでちょっと簡単に。と言ってもかなり長くなっちゃったけど。
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日本はものすごくざっくり言うと、国民全員が入らなければならない国民年金と、サラリーマンが入る厚生年金と、さらに企業年金や個人年金がある。それに対し、ドイツには国民年金がない。あるのは、ざっくり言うと、厚生年金と企業年金と個人年金の3つである。(今回、企業勤め以外の仕事(農業とか公務員とか)の例は割愛する。)

で、厚生年金はサラリーマンが入るものなので、主婦や自営業者は入る義務がない。自営業の場合は自分で希望して公的年金に入るか(その場合サラリーマンのように保険料を雇い主と折半ではないので満額自分で払う)、個人年金に入るかするしかない。サラリーマンの妻で専業主婦の人は、やはり自分で希望して満額払って年金に入らない限り、基礎年金(国民年金)が無いので年金はもらえない(ご主人が先に亡くなったら、遺族年金はもらえるけど)。ただ、ドイツの女性の場合、専業主婦がほとんどいないので(子供ができたら3年ぐらい育児休職し、その後復帰する)、そしてもし子供が小さいときに仕事をセーブして働いたとしても日本と違ってパートタイムも正規の採用扱いなので、ちゃんと厚生年金に入り続けるわけで、フルタイムで働いた人より金額は少ないとは言え、自分の年金がもらえるというわけである。

で、財源はその保険料と国庫負担で賄われてて、保険料は収入の2023年現在18.6%(労使折半)、国庫負担は財源全体の24%程度。ミニジョブと呼ばれる低所得の場合(2023年現在月収520ユーロ以下)、3.6%が保険料。こちらに出ている2022年のデータによると、年金保険の総収入が約3630億ユーロ(保険料2756億+国庫874億ユーロ)で、当時の為替レート(1ユーロ約130円)で日本円にすると約47兆円(2023年が同じような額だと想定して今の為替レート1ユーロ158円で計算すると57兆円!)。ちなみにドイツは完全賦課方式で基金運用がなく、持続可能性積立金が月額年金給付額の1.5倍超となると保険料率の引き下げ,0.2倍未満となると保険料率の引き上げが行われるそうだ。それに対し日本の方はこちらによると、令和4年度の国民年金と厚生年金を合わせた総収入が約53兆円(国民年金約1.4兆円+厚生年金保険料約34兆円+国庫約12兆円など)とのこと。為替レートで変動するが、財源の額はまあまあ同じ程度と言えるかもしれない。

それに対し、実際にもらう年金の額について。こちらのニュースによると、ドイツの公的年金(つまり厚生年金)は、平均1543ユーロ(今の為替レートで約24万円、2年前のレートなら約20万円)。それに対し、日本は国民年金を含む厚生年金が令和3年の平均で14万5千円ぐらい。どうして…?財源収入はほぼ同じなのに、いったいどうしてこの差が…?

いずれにしても、ドイツだって公的年金がそう多いわけではない。一般的にそれまでの収入の55%ぐらいと言われている(2030年までは43%を下らないようにすると法律で決まっている。ちなみに隣国オーストリアは90%ぐらいもらえるそうだ。いいな~)。だから企業年金や個人年金加入が推奨されている。めぎももちろんそれらに入っている。ちなみにドイツの場合、日本と大きく違う点は、年金をもらい始める年齢が67歳なのに対し、その67歳が定年であること。日本みたいに60歳で一度定年し、その後無職または安い給料で再雇用、というようなことは全くなく、定年までずっと同じ収入で同じ仕事を続けられる。だから、年金が少ないから貯蓄や運用をしておこう、とは考えるけど、無収入または収入減額の時間のために自分で2000万円貯めておかなきゃ、という理不尽なことは全く無い。

ちなみに現在85歳の叔母の場合、事情はかなり異なる。というのは、彼女の亡くなった夫がかなり地位の高い公務員だったからだ。その年金はかなり高く(推定5000ユーロ)、その遺族年金がもらえてるし、自分でも働いていたので自分の年金もあり、彼女は一般平均よりずっとお金持ち。その上、もともとかなりのしまり屋でブランド物を全く買わなかったし、休暇もほとんど遠出をせずいつもドイツ国内であったし、ナーゴルトという田舎でほとんどお金をかけない生活をしてきたので、ホームへの高い入居金もサクッと払えたというわけである。本当はそのお金を娘や孫のために残しておきたかったそうだが、介護が必要になったときや病気になった際に500㎞離れたデュッセルドルフから娘を通わせて迷惑をかけることを避けたくて、娘の住む町のホーム入りを決心したということなのだ。

ネットをしない叔母にとって、テレビはまだ必需品。ニュースのほか、ドキュメンタリーをよく見ているようだ。
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ここの話はあともう一回続く。
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