トルコ北東部旅行記 序章 [トルコ北東部]
これはトルコの地図。日本の倍以上の面積があるとか。
めぎたちが行ったのは、上の地図のホンのこの部分だけ。
と言ってもこの地図は実はこの時代のもの。
その当時と今はトルコはどの程度変わったのか。どの程度変わっていないのか。そんなことに漠然と興味を持っていたのは、10年くらい前に村上春樹のある旅行記を読んでから。村上春樹は1988年に21日間かけて車でトルコ一周旅行をして、なかなかとんでもない目にあった非常に興味深い旅行記を書いていて、その記憶から特に黒海沿岸から東の国境地帯にかけての地域に対し心のどこかに興味があったのだった。
でも、そんなことはすっかり忘れていたのだけど、この冬ボルネオから戻ってくるときにヴァン湖の上を通り、うちのドイツ人がここへ行きたいと言い出して、その村上春樹の旅行記を思い出したのだった。
数年前のだけどトルコの「地球の歩き方」で地図をもう一度。
↑普通トルコを旅するときに最初に行くであろうイスタンブールは、左から2番目の矢印のところ。位置的にほとんどヨーロッパである。次に有名なカッパドキアは地図の真ん中の矢印のところ。一番左の矢印のところはトロイの木馬のトロイ。その辺りからエーゲ海沿岸にかけては昔からドイツ人観光客がよく行く地帯で、うちのドイツ人ももう40年も前に旅をしている。今回めぎたちが行ったのは、右上の黒海沿岸部分。黒海沿岸を旅する人も最近は多いけど、たいていカッパドキアのちょうど真上に当たるスィノップかサムスン辺りまでで、この東の果てまで来る人はあまりいない。
その辺りを少し拡大して見よう。めぎたちの行き先は上の赤い矢印のところ。うちのドイツ人が行きたかった右端のアール山(ノアの方舟が降りたという伝説の山)とその左下の大きな湖ヴァンは、遠過ぎてとても到達できなかった。アウトバーンが整備されればいけるだろうが、まだそんな状況ではないのである。その下の青い矢印の辺りはその昔村上春樹が一周旅行の中でもかなりしんどい思いをしたらしいところ。ここまで行きたいと思ったら、それこそ21日間かけないとダメね。
で、めぎたちが4泊5日間で回ったのは、こんなちょっと。それでもほとんどずっと車で移動していたハードな旅だった。
この地域、地球に歩き方ではほんの数ページとは言え4つの町について説明が載っている。しかし、ドイツの「東トルコ」というガイドブックには、玄関口のトラブゾンという町以外全く何も載っていなかった。つまり、普通東トルコに行く人はトラブゾンからノアの方舟の山やらヴァン湖やらずっと南のイラク・シリア国境地帯を回るのだろう。まあシリア国境地帯は今は情勢が危ないので普通に旅行するべきではないが、見所はそちらにあると言うことであって、めぎたちが回った部分は真っ白・・・つまり、何も見所がないと考えられている地域なのである。
そんなところへ行って何を見てきたか・・・今日はダイジェストでどうぞ。
まずデュッセルドルフから飛行機に乗って、アルプスの東の端っこを通過し・・・
たぶんオーストリアとハンガリーとルーマニアとブルガリアを越えてイスタンブールで乗り換え、トラブゾンへ。見えてきた黒海沿岸地域は山が続き、山の上に道や家があるのが見えた。
この辺りは海岸線が狭いのね。すぐに切り立った崖というか山になっていて、ちょっと日本みたいだなあ。
トラブゾンには夕方に到着し、夕飯を食べてからちょっと町中を散歩して一泊しただけで・・・
次の日にはすぐに黒海へ。東へ向かう。
そこから南の山の方へ。チャイの茶の山地で、あちこちに茶畑が。
海岸から1時間くらいでちょっとした景勝地の湖へ。
それからまるでスイスかと思うような観光地化した温泉地へ。この温泉地、黒海沿岸からしか行けない・・・つまり、別の内陸の村から回っていく道がない。だから、上の景勝地の湖からはまた1時間くらいかけて黒海沿岸へ戻り、そこから1時間くらい黒海沿岸を走ったあとまた山へ向かって1時間くらいかけてここへ来たのだった。
そこから内陸のある村へ抜けようと試みたが、やはり道が消えてしまった。
そんな不便なところにも生活があり、ピントが合っていないけど、道路際の小さな畑を耕している女性を撮った。たいていこんな恰好で、こんな道具で女性が耕しているのだった。
それから目指す内陸の村に行くために大回りをさせられ、道無き道というか、道路建設中のそばを通って旅を続けた。
このあたりは一つの村から一つの村まで上のような道を3時間くらいかけて走る。辿り着いたところで入った小さな食堂の食事がたまらなく美味しかった。東アジア人女性は相当珍しかったらしく、めぎはどこに行っても大注目を浴びた。
そんなものすごく不便な地域にもこうして畑があることに驚いたり・・・
落石が起こりそうなところを駆け抜け・・・
村に入ると死んだようにぺったんこになっている野犬をたくさん見かけ・・・
こんなところをひたすらに走ったのだった。
もし21日間あったら、めぎも間違いなくヴァン湖やら南のイラク近くの辺りまで行っただろうな。次回はぜひそこまで行く計画を立てようと思ったほど、非常に魅力的なところだった。しかし、日本からトルコへ旅に来ようという人には、またはドイツでトルコに行ってみたいと思っている人には、めぎもうちのドイツ人もこの地域を勧めたりはしないだろうな。なにしろ、何もないのだ。この、何もないというところが、こんなに苦労して走って向かったのにそこには何もないというその事実こそが、めぎとうちのドイツ人にはたまらなく魅力的だったのだが、限られたお休みに何かを見たくて旅をする人にはとても勧められない。道路が建設中のところがほとんどで、砂利道を旅したようなもの。しかし、いつかはそれが完成するのかと思うと、それはそれでなんとなく末恐ろしい。こんな立派な道路を建設する費用はどこから出ているのかしら。なんのために建設しているのかしら。これが出来上がったら、この辺りの暮らしや人々はどう変化するかしら。
4泊5日間で見た見所らしい見所と言えば、トラブゾン近くのこの修道院のみ。最終日の飛行機が早かったため、またトラブゾンに戻ってきたのだった。
そして、もう一度トラブゾン。
どこにいてもチャイが美味しかった。
そんな何もない旅行記をこれから始める。何もないとは言え撮った写真は1000枚程度。その半分以上が車の中から撮った写真である。つまり、素晴らしい景色や見所を構図を考えて美しく撮った写真ではない。人に見られることを全く考えていない景色の荒々しさを目につく限り写真に収めたという代物だ。車は埃だらけになり、その汚れも共に写っている。久々のルポルタージュ的写真撮影の醍醐味を快くまで味わってきた。それにはオートフォーカスの早い24-70mmレンズが最高に役に立った。
撮影: D600 + 24-70mm(F2.8), 飛行機からの撮影および初日のトラブゾンの町の写真はNikon 1 V1 + 10mm(F2.8)
2014-05-07 02:00
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コメント(10)
これはゾクゾクする旅。トルコはスルタンの財宝や舞踏を含めたハーレムの遺産を見ても何も分からない国。幼稚園や学校をついぞ知らずブルースモックを着て親の店を手伝う幼児、妹弟の面倒を見ながら行商する小学生位の女の子、葡萄畑で剪定後の枝を拾う未就学児達。体が動くうちにもう一度行きたいと思っていましたが。とにもかくにもご無事でヨカッタ。楽しみにしています。
by もんとれ (2014-05-07 03:19)
何かがある魅力と、何もないという魅力、どちらもそれぞれいいものですよね。
道のない不便さのままだからこそ、この風景が変わらず残っているのかな。
便利だったら、どんどん開発されてしまってるのかもしれませんね。
この先、めぎさんが見られた風景がどんなものだったのか、楽しみです。
by Inatimy (2014-05-07 04:12)
トルコは親日国の一つですので是非訪れてみたい国です^^
by Baldhead1010 (2014-05-07 05:13)
わー、楽しみです。
一度行ってみたいと思っている国ですが、実際訪れることはできないのではないか、と思ってもいます。
何もないということが今どれほど貴重なことか。
by ちばおハム (2014-05-07 07:31)
クルマで移動しながらとは、今回の私たちの旅のようです。
私の知らない国ですので、楽しみにしています。
by YAP (2014-05-07 08:18)
此れは楽しみに、読まさせていただきます
何もない、そこがいいのですね
by engrid (2014-05-07 08:35)
このように地図で詳しく説明していただくと、分かり易いですね。
これからの詳細ルポを楽しみに待っています。
by たいちさん (2014-05-07 10:57)
山の中腹にある家々の写真を見ると、スイスのようでもあり(行ったことないけど、イメージで)、その下の畑仕事をしている女性の服装を見るとやっぱりトルコって感じで面白いですね。
そうそう、全然関係ないけど、W杯の日本代表の選出日は、日本時間で5月12日の14:00だそうです。
ウシダ選手、選ばれるといいですね♫
by sheri (2014-05-07 12:08)
トルコ、観光旅行でお気楽に訪れたことがありますが、
これらの写真は
それを覆す力があります。
事実だからこそなのでしょう。
by らしゅえいむ (2014-05-07 20:19)
日本からもトラブゾンへのツアーは結構あります。
ヴァン湖に行きたいとトルコの友達に言ったら危ないから
止めときなさいと言われました。
ヴァン猫に会いに行きたいんですよね~
by miffy (2014-05-07 23:41)