ダチアと自動車インフラのあれこれ [ルーマニア]
ルーマニアでは2日前にご紹介したように、小さな村の一般道をロバか馬に引かせた荷車に乗って人々が移動しているのだが、もちろん車も走っている。フロントグラス越しでひどい写りだけど、地方都市の道はこんな感じ。
非常に目についた車がこちら。
ルノー系のルーマニア車、ダチア。
この車の名前は、古代ローマ帝国時代のルーマニア、Daciaに由来する。ダキア、と言えば世界史で習った記憶が蘇る方も多いはず。
40年くらい前の車のようだが、穴ぼこぼこの道を元気に走っていた。
こうして見ると、道路の質の悪さが少しは伝わるかしら。これはかなり良い方。
舗装してあっても穴ぼこだらけの道が多く、穴に落ちるのを避けるためにハンドル操作やブレーキなどが頻繁で乗っていると助手席ではねるような感じ。うちのドイツ人は自分の車ではルーマニアで運転したくない、と言っていた。
ちなみに、めぎたちが借りたレンタカーはこちらの車。
3日間で100ユーロ=13000円くらい。冷房完備だし、見た目のこの新しさ。首都ブカレストでは大きな立派な車や新しい車も多数走っていて目立たなかったけど、古いダチアとロバと馬だらけのドブロジャ地方でめぎたちが如何に浮いていたか想像できます?
道路にはたまにバイクや自転車も走っていたが、スポーツやレジャーで乗っているような雰囲気はなく、後ろに乗っている子どもが手に鎌を握りしめていたりなど、畑に行く途中らしいのが多かった。6~10歳くらいの子どもが一人で歩いているのも目についた。ルーマニアでは、子どもはかなり小さいうちから一人の労働力として頼りにされ、精神的に自立しているのだろう。もちろん学校もあるが、放課後や週末は畑仕事や道端での物売りを担当しているようだった。赤ちゃんから3歳くらいの兄弟を負ぶったり面倒見たりしながら一人で果物を売っている子どももいて、何度も同じことを書くけれど、これがEUに所属する国であるということに愕然とした。
ドイツに戻ってきてから、日曜日の夕方に、同じ年頃の子どもの兄弟がヘルメットをして楽しそうにそれぞれ真新しい自転車に乗って遊んでいて、それを近くでお母さんがしっかり見守っていて、しっかり自転車専用道路が整っているのが目に入り、なんて恵まれた裕福な国なんだろう、と実感した。
ルーマニアの一般道には、自転車専用道路どころか歩道もほとんど無い。
村と村の間には時折警察の姿が目についた。
黒海沿岸最大の都市コンスタンツァの郊外では、中古の車や部品のフリーマーケットがあったようで、ものすごい人出だった。いつかはロバや馬の荷車も車に取って代わるのかしら。それとも、格差は開いていく一方なのかしら。
ルーマニアのガソリンはドイツと比べると非常に安い。1リットル当たり3.73レイ=90セント程度=120円程度。安いと言っても、それはドイツと比べてめぎがそう感じるのであって、このガソリン代を払える人はルーマニアではある程度裕福な層に入るのではないだろうか。ちなみにドイツのガソリンは2009年6月2日現在、1.3ユーロ程度=177円くらい。ドイツはガソリン税が非常に高いのだ。
バスも走っているが、たいていベンツ。ドイツの古いバスが今ルーマニアで使われているようだった。
さて、コンスタンツァからブカレストへ向かうと、まだ完全ではないがブカレストまで立派な高速道路がほぼ出来上がっている。EUの援助で作られたこの高速道路、走っているのはごくわずか。
160キロの道程中、車は数えるほどしか見かけなかった。一般幹線道路をたくさんトラックが走っていたのと対照的だ。高速道路は有料なので、みんな避けているのかも知れない。何台かダチアを見かけたが、性能上か古い所為かあまりスピードが出ないようで、高速を走る意味がないのかも知れない。こんな閑散とした高速道路にEUが投資して、一般道の穴ぼこは誰も埋めていないというのはなんともやるせない気分。
ブカレストからドブロジャ地方を観光しようとすると、恐らくこの高速を使ってコンスタンツァまで行き、そこから南下して黒海沿岸のリゾートに行くか、北上してドナウデルタに行くかのどちらかだろう。コンスタンツァを中心として南北に延びる幹線道路はそれほど状態が悪くない。日本からのツアーはたぶんそのルートを使っているのではないかと思われる。黒海沿岸はいかにもリゾートという感じだし、ドナウデルタの方は自然が非常に美しく、そこに至る道も完備、というわけで、旅行の仕方によっては全く違った印象を受けるのかも知れない。
2009-06-03 02:00
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コメント(23)
欧州の景色なのにどこなアジアの雰囲気が感じられます。
by Krause (2009-06-03 04:09)
日本車ならおなかを擦りますか?
by Baldhead1010 (2009-06-03 05:54)
なんだかフィリピンとかインドネシアの田舎を見ているよう。
埃っぽい道とか、
歩いている人の後ろ姿とか、
バスが中古というのも似ていますね。
by manamana (2009-06-03 07:34)
走っているクルマを見ても、この国の経済水準がわかりますね。
EU圏ということは、それなりに厳しい排ガス基準があって、それを満足しないクルマは新車販売できないのですが、そもそも新車が売れるというような状況ではないんでしょうね。
by YAP (2009-06-03 08:18)
初めての国へ行った時に、車って、ひとつの指標になりますね。
新型か旧型とか、洗ってもなくてボコボコかピカピカかとか…
興味深いです。
by くっさん。 (2009-06-03 08:19)
長閑な景色に見えますが、道路はほとんど片側一車線のようですね。
移動にも時間がかかりそうです。
トラックやバスは別として、自動車は近くの移動手段なのでしょうか。
by ナツパパ (2009-06-03 08:39)
フリーマーケット、もの凄い人出ですね!!
みんな真剣に吟味してるんだろうなぁ。
めぎさんは恐らく、一般の観光客はあまり使わないようなルートを通られたのでしょうね。
日本から遊び目的で行ったら、きちんと整備された高速と幹線道路だけを
使って目的地に一直線!になると思います(苦笑)
そしたら、ルーマニアの端々の現状は知る由もなし、ですもんね。。。
by ひろころ (2009-06-03 10:30)
ホントアジアのよう感じですねぇ
車も今では全く見ないような形してるし。
レンタカーがホント浮いて見えますね!
ヨーロッパはガソリン高いんだなぁ~
by いとお (2009-06-03 11:24)
先ず空が広いなぁ~と思ったのですが、高層ビルがないですもんね、車も60年代?とか思いましたし、貧しいとか遅れているとか、何かそういう言葉では一言では語れないものがあるようですね、豊かさが当たり前で発展も進化も当たり前で、近未来のようなテクノロジーを毎日目の当たりにしている私たち、めぎさんが借りたレンタカーと地元の方の車との比較を見ても、何でかな?どうしたのかな?くらいにしか頭の中で理解できない、つまり戦後西側になったか東側になったかの違い?私たちなんてすっかりアメリカですものね。でもここの国の人達の心はどうなんでしょうね精神的には幸せならいいのですが、やはり気になります。
by マリエ (2009-06-03 11:44)
ルーマニアの道路事情や車事情が、よく分かりました。
by たいちさん (2009-06-03 13:07)
こんにちは^^
立派なレンタカーを使っていると、傷つけられたりしないかと、わたくしなどは心配になります。そんなことはないですかね~ 皆が同じ都会なら大丈夫でしょうが。
EUになってヨーロッパも均一化されてきたのでしょうね。このところ3回かしらヨーロッパに行ったの・・・昔と雲泥の差がありますものね~
そんな近代的生活をしている人たちが遅れたところに行くとやはりビックリですよね^^
そう言う意味ではひょっとしてアメリカも似ているかも・・・
道路の穴ポコ酷いですよ。車もボコボコのが沢山走っています。
by mimimomo (2009-06-03 15:52)
デザインも、多分性能面でも30年以上前の日本車以下なのが想像出来ますね。 ドイツや日本の道は、世界的にみても凄く綺麗で走り易いですね。ルーマニア・レベルの状況の方が多いような気がします。
by ぽりぽり (2009-06-03 17:09)
以前、世界のストリートチルドレンを取り上げた特集番組を見たとき、そういう番組ではたいていアジアやアフリカの国の子供達が出てくるのですが、そのうちのひとつに、今日、明日のパンを買うお金もない少女の話が出てきました。母は町に出稼ぎで家には病気の父と少女だけ。近所のパン屋さんに借金をしてパンをもらっていた映像は痛ましく心にのこっています。それを良く覚えているのは、その国が「え、ヨーロッパなのに・・。今でも!??」っていう驚きがあったから。周辺の様子はめぎさんの記事ドブロジャ地方2で出てくる家、風景そのものでした。確かその国はルーマニアだったのではと今思い出しました。こういう現実を目の当たりにするにつけ心が痛むと同時に自分達の置かれた環境を感謝することになります。・・そしてまたそんなことも次第に忘れてのんきな生活をしているわけなんですが。。
日本も昨日今日でこの発展が出来上がったわけではないのですが、なぜ国によっては発展が遅れているのかということはその国へ行って目の当たりにしたとき私も考え込んでしまうときがありました。自分にはどうにもできないことなんですが。
でも現実を知るということは大切なことですね。めぎさんのルーマニアで感じられたこを通して、またEUの現状などこのように少しでも知る・・ということがとても大切なことだと思い、じっくり読ませていただきました。
まとめてコメントで長くなってしまいました(^^;)
by rino (2009-06-03 17:43)
型の古い「ダチア」これでは高速道路は怖くて
走れそうもないですね、
レンタカーの料金は、安いですね、ガソリンも
東京では、120円前後ですょ。
by wakatate (2009-06-03 17:46)
いかに自分が、ヨーロッパ(EU)でイメージを一括りにしているか実感しました。
古いダチアは、乗ってる人たちが大切に乗り継いでるのでしょうか?
by てんとら (2009-06-03 18:11)
ウズベキスタンの田舎を見てるような気がしました。
旧ソ連の国々も似たような感じです。
同じヨーロッパでも旧西欧と旧東欧ではかなり違うみたいですね。
by miffy (2009-06-03 19:18)
道路事情がかなりすごいですね。
「ドイツ人さん」がご自分の車では通りたくないのが理解できます。
by やよい (2009-06-03 21:06)
前記事のバスも、この記事の車も、
バイクのお兄さんのシャツも、緑が鮮やかですね。
チェコでも、高速道路も、一般道路も、穴あきだらけのボコボコでした。
by Inatimy (2009-06-03 21:37)
めぎさん 語彙力のなさ 表現力になさを嘆いておられましたが
とんでもないと思いました。
すっかり 画像と記事とに取り込まれて 最後の最後まで
一気に読みきりました。
胸がいっぱいになっています。
地球儀をもってきて ルーマニアを確認したり ちょっと勉強した
気分です。
長男のお嫁さんのお父さんがカンボジアでお仕事をしていて
埃っぽいと聞いて・・・ さもありなんと想像は付きましたが
ルーマニアは想像もしてませんので ショックを受けています。
by ララアント (2009-06-03 22:49)
>みなさま
ダチアの話にコメントとniceをありがとうございました。
ちょっとダチアに乗ってみたかったなあと感じているめぎです。相当古そうでしたね。みなさんこういう車なので、その隣に車駐めたりするのがなんとも居心地悪かったです。
レンタカーは、悪戯されることも考慮して保険をしっかりかけました。夜間は外の駐車場に止めたままですから、朝出発するときにちょっとドキドキしました。何もなくてラッキーでした。
でも、もしかしたら、地方の村の方が治安がいいのかも知れません。首都ブカレストでは車に防犯上の仕掛けをつけているのをたくさん見かけました。そういうのは地方では見かけませんでしたから、ブカレストが最も治安が悪いのかも知れませんね。
去年の夏にポーランドとチェコを車で旅した際に、やはり道路事情が良くないのを実感し、その点について記事にいたしました。ルーマニアの一般道はそれよりずっとひどかったです。ただ、運転マナーについては、まあまあかな、という印象です。ブカレストを中心に町ではかなり交通量が多い上に非常に無秩序に見えるんですが(1車線の所を2車線風に走って追い越していくのが普通で、慣れないとかなり怖いです)、実は微妙な秩序の上でみなさん運転しており、コツをつかむとなんとかなるようでした。と言っても、めぎには一生コツがつかめない気がしましたが。ドブロジャ地方の田舎では、なにしろ車自体が少なくてロバが走っているくらいですから結構長閑で、ポーランドの追い越しのような無鉄砲なことは起こりませんでした。
by めぎ (2009-06-04 05:33)
車が走らない高速道路・・・(ーー;)
日本にも同じような道が沢山あります。
by あかえび (2009-06-04 19:01)
>あかえびさま
勿体ないですよね~
by めぎ (2009-06-05 05:18)
なるほど、その車なら浮きますね〜。
その勇気を讃えたくなります!
私は地元の車に乗っていましたが、馬車ではないです、一応。(笑)
by Tytto (2009-06-05 07:17)