フリードリヒの絵とドイツの空 [プチ教養]
前回に引き続き、フリードリヒの絵について。
と言っても、私は専門家じゃないし、彼の絵については既にたくさん紹介されてもいるから、絵の解説はそちらにお譲りするとして、私が言いたいのは、空のこと。
まずはこの絵をご覧頂きたい。ドレスデンにある「山上の十字架」と訳されているものだ。
この絵は、うちにあるフリードリヒの画集5冊の中から、最もオリジナルの色に近いと思われるのを写したものである。
これでも、絵の空のピンクはオリジナルと程遠い。なにしろオリジナルの色は、こんなピンクの空ってうそっぽーい!と思いかねないくらい激しいのだ。
しかし、ドイツには本当にこういう色の空がある。次の写真は、うちのベランダから写したある日の夕暮れである。
フリードリヒの絵の空は、このくらいのピンクなのだ。そして、このような空の色は、毎日ではないけれど、夏から秋にかけて結構頻繁に見ることができる。高い緯度と乾いた湿度がこのような直接的な色を生み出すのだろう。
そしてもう一つ。
上のフリードリヒの空には、太陽光線が縞々に描かれているのが分かるだろうか。
赤白ではないけれど、どこかの国のかつての旗みたいな縞々が。
この縞々太陽光線の所為で、ドレスデンでこの絵を見たときの私の感想は、ポスターみたい!だったものだ。
この縞々太陽光線も、現実に見ることができる。次の写真がその証拠だ。
ドイツに住んで、ヨーロッパ絵画の光の描き方をめぐる様式の変遷はこのような空の様相によるものだろうか、と感じている。
そして、かつてヴィーラントという作家(ゲーテよりも古い作家)の『アーガトン』という作品を大学院の有志が集まって読書会を開いて読んでいたときに、恋人に会う約束をしたアーガトンが海に沈む太陽を眺めながらその太陽光線の一本一本を数えて待ちきれないときを過ごした、という記述があったことを思い出した。
それは、あり得ないことではない。ドイツの空では、太陽光線を一本一本数えることが、視覚的に可能なのである。
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