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ニュルンベルクのマイスタージンガー [2021年夏 バイロイト・ザルツブルク音楽祭]

現在、2021年の音楽祭の話を連載中。今日はバイロイト音楽祭の3つめの演目「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のお話を。
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「マイスタージンガー」というのはドイツの14~16世紀の職匠歌人のことである。ドイツには12世紀ごろから騎士階級の間でミンネザングという愛の歌の嗜みがあり(源氏物語の頃の貴族の短歌の嗜みと似てるわね)、ミンネザングのシンガーソングライターをミンネゼンガーと呼んだのだが、それに対しドイツ諸都市の靴屋,仕立屋,織匠,金細工師等が組合を組織して芸術活動も担い、作詞・作曲・歌の活動もマイスター制度とし、そのシンガーソングライターをマイスタージンガー(職匠歌人)と呼んだのである。
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先日書いたタンホイザーは騎士の歌合戦を題材にしたものだが、マイスタージンガーは靴職人とか金細工師とかのマイスターが歌のマイスターでもあって、修行をした弟子がマイスターになるべく歌合戦をする。と言ってもオペラでは、修行した弟子たちの歌合戦ではなく、そこに騎士のヴァルターという青年が金細工師マイスターの娘に恋して彼女の夫を決める歌合戦にほぼ飛び入り参加し、修行を重ね作法を重んじるばかりの伝統に対し、感性に基づいた歌詞をマイスターの歌の規則に当てはめたヴァルターが優勝し、それを後押しした靴職人マイスターのハンス・ザックスがドイツ芸術を讃えるというストーリーになっている。そこには反ユダヤ主義とかナチスの利用とか色々な問題が絡み、説明するととんでもなく長くなるので興味のある方はこちらをどうぞ。
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さて、この日の午前中は雨で、めぎたちはどこにもでかけずホテルの部屋でゆっくりしてオペラに備えていた。というのも「マイスタージンガー」は長いのだ。16時に始まって、2回のそれぞれ1時間ずつの休憩をはさみ終演予定は22時半である。例によってワクチン接種完了証明など登録チェックインを15時までに済ませなければならないので、その前から行く必要があり、足かけ8時間の長丁場。午後には晴れたがまた雨になるかもしれない予報だったので、この日めぎたちはホテルから車で現地入り。そうすれば休憩時間中に雨が降っても車に避難できるし(バイロイトは休憩中に建物から追い出され、中にいられないので)。5ユーロの駐車場代を払い、そのすぐそばのテントで登録チェックインをし、緑の公演の中でのんびりして、やっと開幕15分前。あ、あのお一人の女性、日本人かも知れないな。
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開演前のファンファーレ。



一幕目は、ニュルンベルクの舞台がバイロイトのワーグナーの邸宅に配置換えになっていて、ワーグナーと友人たちが劇をやっているという設定。ワーグナーが靴職人ハンス・ザックスと若き騎士ヴァルターの二役、リストは金細工師、ワーグナーのオペラの指揮をしたことがあるユダヤ人指揮者のヘルマン・レーヴィがベックメッサー…という風にキャスティングされていた。今回の演出による読み替えの内容は、こちらの後半に日本語で書かれているのでどうぞ。残念だったのは、ベックメッサー役のヨハネス・マルティン・クレンツレという歌手が急病で代役になってしまったことだが、その代役の人も嘲笑の的という役回りをうまくやっていて満足できた。これは2017年の映像。ちょうど写っている髭を生やした人がクレンツレ。



さて、一幕目を無事に終え、一息。めぎたちは長丁場な今後に備え、屋台のソーセージを食べてみた。ぷりぷりの粗挽きソーセージでとても美味しい。
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この右側の奥の芝生に座っているブロンドの女性…
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写真ではよく見えないけどとっても素敵なゴージャスなドレスで、でも芝生にそのまま座って、屋台のパスタを一人で食べていた。気になってこうして撮ったのだけど、よく見たら、手前の男性の…じゃなくて…靴にオーストリアの国旗。凄いナショナリストなのね。
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さて、そろそろまた15分前。
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一幕目のあとの休憩の終わりのファンファーレ。



続きは明日。
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