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イェーダーマンという演劇 [ザルツブルク]

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今日は再び昨年のザルツブルクのお話を。

うちのドイツ人がザルツブルクに到着した日、めぎたちが鑑賞しに出かけたのはこちら。
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そう、野外劇である。場所はザルツブルクの大聖堂前。

めぎ一人でいた約2週間、ほぼ毎日この会場の横を通っていたのだが、その度に、うちのドイツ人が来たらここで見るんだな~と思いながらあれこれその場所の写真を撮っていた。めぎたちの席は、あの照明の前あたり。
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↑上の写真で真ん中右に写っている銅像の前から。後ろに見えている大聖堂の鐘が、この演劇には重要なポイント。
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本物の教会をバックにした舞台。
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その他、あちらこちらから撮り溜めた写真はパラパラで。この広場はぐるりと建物に囲まれているのだが、その建物は博物館で、めぎは博物館見学の折にも窓からこの広場を写した。あそこに座るのね~と思いながら見下ろして写したのは2週間も前のことで、その日がやってくるのは遠い先のような気がしていたのだが。
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でも、遂にその日が来たのよね。
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その演目はJedermann、イェーダーマンと読む。英語にすると、anyoneとかanybodyとかeverybodyとか。つまり、誰でもみんな、という意味である。副題には、「金持ち男の死の劇」とある。フーゴ・フォン・ホーフマンスタールの作品である。
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ホーフマンスタールは、マックス・ラインハルトとリヒャルト・シュトラウスとともに、ドイツのバイロイト音楽祭に対抗してザルツブルク音楽祭を始めた人物である。このイェーダーマンは、そのこけら落としの作品。バイロイトもザルツブルクも日本語では「音楽祭」と呼ばれているが、ドイツ語の原語ではFestspielといい、訳すと「祝祭劇」という意味。もちろん今のザルツブルク音楽祭はオペラやコンサートがメインだが、音楽だけの催しではないのだ。このザルツブルク音楽祭発祥の演劇イェーダーマンを見るのはめぎの長年の夢だった。うちのドイツ人と一緒に行ける日程を組んだのは、彼もこの演劇をこの場で見ることに大きな関心を持っていたからである。コンサートやオペラの演目は毎年変わるが、このイェーダーマンだけは毎年必ず上演されている。雨の日は祝祭劇場で上演されるようにプログラムが組まれているそうだが、めぎたちは運良く良い天気に恵まれて、雨の心配もなければ暑過ぎも寒過ぎもせず、夜風に涼みながら楽しむことができた。

日本では宗教劇などと紹介されているが、それほど堅苦しくも胡散臭くもない。簡単に言えば、金持ちで毎晩パーティーで羽目を外しまくって遊んでいたドケチな男が、ある日突然死に神に取り憑かれその晩死ぬと言い渡され、ドタバタもがくがもちろん逃げられず、最後には自分の過ちを悔い改めて死んでいく、という内容である。どんな金持ちでも貧乏人でも等しく誰も死を免れない、という話なのだ。
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もちろん上演中は撮影などできないのでその写真はないが、少しずつ暮れていくザルツブルクの光そのものがこの舞台の照明になっていて、大聖堂の鐘ががらんがらんと鳴り響くのもこの舞台の音響と大道具と小道具の一つになっていて、非常に印象深かった。ドイツ語が分かる方には大いにお薦めする素晴らしい演劇である。綺麗な標準ドイツ語で話す劇で、オーストリア方言や訛りもないし、宗教色などほとんど感じずに楽しめる。なにしろ、みんな、誰しも、宗教が違っても、宗教を信じていなくても、死は必ず訪れるのだ。そのテーマに関しては大いに共感できる。
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カーテンコールが終わると・・・
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みんな揃ってはけていくのだが・・・
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その列はそのまま観客席の中を練り歩き・・・
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めぎのすぐそばを通って消えていった。
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今はまだ、死はめぎの前を素通りしていってくれる。でもいつかは、その日が来るのよね・・・だから今を謳歌しておこうと思うのがやっぱりめぎで、行いを悔い改めて信心深く生きよう、などとはならないのだけどね。

撮影: Nikon 1 V3 + 18.5mm(F1.8)
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コメント 8

Baldhead1010

昨夜はお天気が悪そうなので窓を閉め切って寝ましたが、暑くて何度も目が覚めました。

そろそろエアコンの点け時かな?
by Baldhead1010 (2016-06-22 04:36) 

mimimomo

確かに市は平等に訪れますからね~わたくしも今を謳歌しなくちゃ^^
by mimimomo (2016-06-22 06:28) 

YAP

そうか、野外だと時間の変化というか、暮れていく空の変化もあって雰囲気がずいぶん違いそうですね。
私も今を楽しんでいきたいです。
by YAP (2016-06-22 08:14) 

ナツパパ

ザルツブルク音楽祭の由来とその創始者の物語、
とても興味深く拝見しました。
そういうことが分かると、劇も一層愉しめますね。
...ドイツ語かぁ...日常の挨拶程度なのでねえ、わたし。
でも、劇場の空気感を感じて愉しみたいです。

by ナツパパ (2016-06-22 08:32) 

テリー

今日、鳩山邦夫という少し名の知れた政治家の死亡が報じられました。67歳だったそうです。
私より1歳年下ですので、私もいつ死んでもおかしくないかもしれません。やりたいことは、やって、死にたいものです。

by テリー (2016-06-22 15:46) 

engrid

野外劇,鐘の音も暮れゆく光も、ないもかもが舞台に欠かせない効果に  お天気に恵まれて良かったですね、待ちに待った、しかもドイツ人さんとともに、お二人の絆の確かさと深さも感じています、退場の仕方も、また素晴らしいな、思い出に鮮明に残りますね
by engrid (2016-06-22 17:18) 

Inatimy

退場しつつも死神が手をあげていたり、ポーズが変わってるところを見ると、
ちゃんと最後まで死神として退場するところがすごいな^^。
悔い改めないで済むように、日々、大事に過ごしたいです。
by Inatimy (2016-06-22 19:01) 

mimimomo

ありゃ、市? 「死」でしょ(><;
by mimimomo (2016-06-23 06:23)