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新しい古い机 [文化の違い]

今日はめぎの近況を。

めぎは長いことこの机を愛用してきた。
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↑この机は今から約30年前に東京で買ったもの。それは、当時勤めていたある一部上場企業での総合職の仕事をやめてもう一度大学に行き、新たな勉強をして全く別の道に進もうと決心した頃。当時のパートナーと日本橋三越デパートに机を見に行き、8万円ぐらいで購入。木のように見えるが木製ではなく、非常にスタイリッシュで、新しく勉強を始めためぎにぴったり、と当時のパートナーがとても気に入って勧めたので選んだものだ。

そのパートナーとは日本にいる間に離婚に至り、その後めぎはドイツに留学し、さらに就職。ドイツ在住2年目に意を決して日本から他の荷物とともにこの机をドイツに運び、ずっと使ってきた。アンティークの天然の素材の家具を揃えているうちのドイツ人は、この人工的なスタイリッシュさを最初から好まなかったが、めぎの物だからとそれ以上は追及せず、めぎとしても思い出のあるこの机を手放すつもりはなかった。しかし、25年ほど使い込んだところで表面の化学塗料が劣化して汚くなってきて、木製ならそれをやすり掛けしてまたニスを塗って…などと蘇らせることもできるのだがこういう人工物はそうはいかず、そろそろお役御免かな、と思うようになった。それでもそう思い始めてからも5年ほど使い続けていたのだが、先日キッチンのかどの戸棚を買い替えたときに、こういうアンティークっていいなって素直に思い、ネットで検索して1830年もののビーダーマイヤー様式の机を見つけ、589ユーロとそれほど高くもなく、思い切って購入。

こうして古い机が新しくめぎの部屋にやってきた。
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古い机だから傷なんかもあるんだけど、それも新しい工業製品の劣化とは全く違って1830年からの歴史が感じられて嬉しい。これを使っていた人はどんな人だったのかな…などと想像したりして、ロマンを感じる。
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引き出しもあって…
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中にはこんな鍵が。
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同時に今まで使っていた机は解体して外に運び出し、粗大ゴミに出した。運ぶのを同じアパートの人たちが手伝ってくれたのだが、誰も欲しいとは言わなかった。よく、粗大ごみを外に出していると回収前にめぼしいものを集めて行く人がいるのだが、その人たちもその机には手を出さなかった。そうなんだな…ここでは本当にこういう工業製品って何の価値も無いのね。30年前に8万円もしたいい机なんだけどなぁ…そんな現実を改めて感じつつ、自分で解体して外に運び出したので、なんというか、その長年愛着を持って思い出とともに使い続けてきた机とキッパリすっきり、机さんありがとうってお別れすることができた。

この新しい古い机はめぎが死ぬまで使い続けることになるだろうと思う。その後はこんな古いものとは言えこの価値の分かる人に引き取ってもらえるように、遺言書を作っておこう。
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そんなことを考えるようになった昨今。新しい古い机。めぎもこの形と雰囲気が素敵だと思ったが、何よりうちのドイツ人がとても気に入って、非常に満足している。
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一方、前のパートナーと一緒にいるときに買ってドイツまで持ってきた家具はもう一つ。机と並んで毎日必ず使う鏡台だ。たぶんそれは、めぎの最期まで使い続けるものと思う。そちらの方はエレガントなデザインなのでうちのドイツ人も何も言わないが、でもやっぱりアンティーク風に作った工業製品に過ぎないので、めぎの死後はたぶんゴミに出されるのではないかな。寂しいことだけど、それはめぎとともに終わりを迎えるというのが正しいのだろう。この機会に、もう連絡も途絶えた日本の前のパートナーが元気で活躍してくれていることを心から願う。
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