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うちのドイツ人の思い出の地2 [シュヴァルツヴァルト]

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夏休み二日目は寒くて寒くて暖房つけようかと思うほど。セーター着てフリース羽織って首にストールぐるぐる巻いて温かいお茶を用意してブログを書いているめぎ。鍋とか熱燗とかが恋しく感じるほど。

現在7月中旬のシュヴァルツヴァルトの話を連載中。うちのドイツ人の思い出の地を訪ねているところ。ナーゴルトに半年住んでいたところを訪ねた後、車で20~30分ほど走って(途中で寄り道したので正確な時間は分からず)、昔母方の祖母が住んでいた家を訪ねてみた。
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うちのドイツ人は、ここに3歳くらいから6歳くらいまでの間何度か来たことがあるという。母方の祖母のうちだから来たことがあるのは当然だが、事情はちょっと複雑だ。6歳でハンブルクに引っ越した後、両親が離婚して彼は父親に引き取られ、母親はイギリスに渡ってそこで再婚してしまったため母方の親戚とはその後長いこと全く縁が切れてしまったのだ。さらに、ここは母方の祖母の家と言っても、その祖母は再婚してここに住んでいたため、最初の夫の娘であるうちのドイツ人の母親にとっては継父の家であって、うちのドイツ人にとっては全くもって接触しやすい環境ではなかったものと思われる。ちなみに祖母の一人目の夫(この人がザクセン出身の貴族なのだが・・・ああややこし)、つまりうちのドイツ人の母方の祖父は、ドイツの東西分裂時に北ドイツに移り住んだそうだ。
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そんなわけで、うちのドイツ人がここに住んでいた祖母に最後に会ったのは6歳の時。その当時のおぼろげな記憶では、ここに以前はテラスへの階段があったという。
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テラスの壁のこの馬車の絵には見覚えがあるんですって。
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今は全く見ず知らずの人がここに住んでいる。ここに50年前には、戦争と東西分裂の様々な混乱の中で離婚し再婚し、ザクセンつまり東から西へ逃れ、ここにようやく落ち着いて暮らした人がいたんだな、と思うとなんだか不思議だ。人の人生とは、その人自身にとっては波瀾万丈で劇的で何物にも代え難いのに、今やその人のことはすっかり忘れ去られて全く違う人が全く別の人生をここに刻んでいて、それもいつかはまた忘れ去られていくと思うと、なんと儚いものだろう。そして、かつても今も壁に残る馬車の絵と、無造作に生える植物たち。
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この家がいつ建てられたのかは分からないけれど、石造りの家は100年も200年も300年も改装しつつ使われる。今までにどれだけの人生がここで営まれたのかしら。
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たぶんそれほど古くはないと思うけど、50年以上経っていることは確かなのよね。
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7月中旬だというのに、もう秋の色。うちのドイツ人にはこの木の記憶はなかった。
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祖父母が住んでいた町はNeubulach(ノイブーラハ)という人口5500人程度の小さな町。ここが旧市街の入り口。
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場所はこちら。




ああ、この市門だ~!
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・・・と喜ぶうちのドイツ人。彼のおぼろげな記憶の中で、幼い頃この市門を通って街中へパンを買いに行ったことがあるという。でも、それがナーゴルトだったのか、別の町だったのか、どこだったのか、全く記憶がなかった。今回叔母に、それが祖母の家の町にあって、その町がノイブーラハというのだと教えてもらい、ようやく訪ねることができた。この叔母は祖母の再婚相手の娘だから、そういう事情を訊きやすかったのである。
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ノイブーラハは古くは銀鉱の町。だから、こんなに小さい町なのになかなかに豪華。
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ちゃんと立派な城壁まであったのね。
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古い記憶の糸がようやくつながって感慨深そうだったうちのドイツ人。叔母と叔父が元気なうちに訪ねることができて良かったね。長い時を経て、母親と半分しか血がつながっていない妹弟に招かれてそこへ行くことができるなんて、とってもとっても幸せなこと。
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明日は旧市街に入ってみましょ。
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Baldhead1010

おはようさん^^
ナナカマドがもう色づくんですか!!
by Baldhead1010 (2011-07-25 05:00) 

manamana

石造りの街は、何十年経っても風景が大きく変わらないのが
いいですね。
日本だと、林はマンションになり、
団地は建て替えられ高層になり、
駅は高架になり、すっかり風景が変わってしまいますから。
by manamana (2011-07-25 06:26) 

YAP

この旅はノスタルジックな思いに浸る旅になりましたね。
めぎさんにとっても、大切な人のルーツを巡るということで、特別な思いもあったのではないでしょうか。
by YAP (2011-07-25 08:11) 

ナツパパ

ドイツの小さな町って本当に素敵。
そういう街を歩いてみたいなあ、とかねがね思っていましたが、
めぎさんのブログで拝見でき、とても嬉しいです。
次回がとても楽しみです。
by ナツパパ (2011-07-25 08:31) 

Bonheur

やっぱりドイツ!緑が沢山で癒されます。寝転がって緑に顔をうずめたい~。
市門の塔の窓の両脇にある雨戸(?何て言うのかしら?)が、「ここ危険!」って示しているような柄ですね。門の重厚さとアンマッチで、面白いです。
by Bonheur (2011-07-25 09:43) 

マリエ

昔の記憶をたどって、懐かしいでしょうねぇ~でもちゃんと残っているのが凄いと思います。日本だときっと壊されて新しくなっているんだろうな
それにしても壁がうろこみたいですよね。
by マリエ (2011-07-25 11:18) 

ネム

50年前の家をたどれるということに驚きます。
私にはたくさん暮らしたことのある家がありますが
自分がいなくなった後、他の家族の歴史があるって不思議です。
コッソリ見に行くとお気に入りの木が切られてたり
逆にいたずらで植えた木が大きく育ってたり・・・^^
家だけが知っているんですよね、全ての家族を。

by ネム (2011-07-25 15:06) 

あかえび

最近は疎遠になった親戚と会うことは無いなぁ~^_^;
by あかえび (2011-07-25 19:02) 

rossignol

じっくり読んじゃいました。
ドラマですね。
色々と考えて、途中ぼーっとしたり。
私は、自分や身近な人の人生を振り返るのが
なんだか恐いきがします。
今、気づいたんですけれど。なぜかなぁ・・・
by rossignol (2011-07-25 20:46) 

たいちさん

いろいろな人生がありますね。鱗のような壁の家は、素敵ですね。
by たいちさん (2011-07-25 22:10) 

ぽりぽり

いや~行ってみたいですねぇ。観光地化されたドイツの有名な古都より、素朴で美しい感じがします。鱗の壁は、光を反射して凄いですねぇ。
by ぽりぽり (2011-07-25 22:36) 

テリー

幼い頃育った場所に行くのも、面白いですね。60才を過ぎてから、田舎にある自分が通った小学校がある街を歩いて、あまりの変化に愕然とした記憶があります。
by テリー (2011-07-25 22:40) 

Inatimy

再婚って、ある意味、親戚が増えるんだなぁ・・・ってなんだか不思議な感じ。
糸が1本につながって、スッキリしてヨカッタ♪ 
by Inatimy (2011-07-26 05:24)