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ツリー、ありがとう、さようなら [文化の違い]

以前にも書いたが、キリスト教圏では1月6日までクリスマス。
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それは、聖書によると、キリストの誕生を知った東方の三人の王様(日本では三人の賢者、または博士と訳されている)が1月6日に贈り物を携えてベツレヘムの星(これが惑星習合かハレー彗星か何かと議論されている)の導きにしたがってキリストの元へやってきたから。
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だから、ドイツでは、家の中に飾ったクリスマスツリーは1月6日までそのまま。7日以降になってようやく片付ける。ツリーの回収は分別ゴミの一つとしてだいたい1月8日以降一週間にわたっており、どの町にいつ回収車が来るかお知らせがある。めぎの住むところでは1月12日。で、この週末にようやくツリーやその他のクリスマスの飾りの片付けを。人形さんたちも、箱詰めして地下室へ。12月までさようなら。

ツリーさん、あたたかくて幸せな時間をありがとう。
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よく見ると、枝がかなり乾いてきていて、飾りを取り、外へ運ぶ際に針葉がいっぱい落ちて、掃除が大変だった。
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そして・・・

ああ・・・

そして・・・

あああああ!

こんな・・・!!!!

寒いところへ!!!!!!!
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可哀想でなかなか去りがたかっためぎ。写真を写していたら、通りがかった人たちに笑われてしまった・・・

昨日の「クリスマスツリーの行く末」のコメント欄で色々ご質問やご意見があったので、いくつかまとめて簡単に知っている範囲でお答えを。

1.ツリーの回収は分別ゴミの一貫。市がゴミ収集業者に委託して処理をお願いしている。各家庭は、ゴミ回収用の費用を家賃と共に毎月払っている。

2.ツリーを売っている業者のところで売り切れずに余った分の木に関しては、その処理の分を含めてツリーを売る値段を決めているだろうと思われる。花屋さんなどと同じ理屈。分別ゴミとして回収するのは、あくまでも一般家庭からのツリー。

3.クリスマスツリーは、今までも何度も書いてきたが、宗教的なシンボル。したがって、あまり合理性を追求するものではないし、理屈が通るものでもない。ツリーを捨てるときには心の痛い思いをするけれど、だからと言ってクリスマスにツリーを買わないことにする人はいないし、毎年同じプラスチックのを使おうという意識は今後も少ないだろうと思われる。生木に蝋燭。それが、クリスマス=宗教儀式の「匂い」なのだ。

4.ドイツの集合住宅の多くにはエレベーターがない。2メートルもの鉢植えのツリーを5階まで運び上げることは、ドイツの大男でもかなり困難。ツリーはあたたかい居間に置かれて急激な温度変化で傷むし、鉢植えにするときに根を切られてもいるため、あとから外に植え替えてもうまく育たないことが多い。また、ツリーには飾りをつけ、蝋燭などで焦げたりもするから、生木レンタルはかなり困難であろう。

5.昔はツリーをそのまま庭などに置いておき、春になってイースターの時に近所の人と一緒に燃やしていたそうだ。それはツリーに限らず、古くなっていらなくなったものを整理し、まとめて燃やしていたらしい。

6.飾りがついたツリーは回収されない。12日、バスで20分の道程に5メートルおきくらいに捨てられているツリーを眺めて出勤したが、飾りがついているツリーはなんと皆無であった。規則はかなり忠実に守られているという印象である。


めぎの個人的な見解としては、築100年以上のエレベーターもない家に住み、30年も40年もストーブやオーブンや洗濯機や冷蔵庫などを修理しながら使い続け、着る物にもお金をかけず、車も20年くらい乗り続けることも珍しくないドイツ人たちだから、一年で最も大切な文化のシンボルを一回きりの使い捨てにすることは、モミの木を作った神様も許してくれるのではないかという気がする。それも、使い捨てではなくお金をかけて堆肥としてリサイクルするのだから。

そして、ドイツという国が、キリスト教民主同盟という政党を政権政党としていることも忘れてはならない。この国は、キリスト教国家なのである。そのシンボルのツリーの意味は、究極を言えば非キリスト教徒には分からない世界。ドイツの人たちには、クリスマスという言葉を聞いただけで心に沸き上がる、あったかくて幸せで切ない感情があるのだ。その中心には必ず、蝋燭の灯ったツリーがある。その図は、合理的にあっさりと説明することのできない、深い深い心の奥底に巣くうもの。その図を想像しただけでホームシックになって泣けてくるもの。日本語でそれに当たるものはなんだろう。

日曜日の夕方は美しい夕焼けだった。
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来年のクリスマスも健康で幸せに迎えられますように。
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どらっち

うちもツリーをやっと土曜日に片付けました。
キリスト教徒でもなんでもない私たちは、クリスマスは
ただのイベントでフェイクで何も問題ないので、やっぱり
フェイクを買いました(^^;
フレッシュに憧れるけど、霧吹きで水やりはちょっと
面倒そうなので・・・へへへ。
それにしてもドイツのシステムってすごいですね。感心です。
いくつになってもどこにいても思うのは、やっぱり日本の
お正月かな。大晦日と元旦を思うと、寂しくなります。
by どらっち (2009-01-13 04:23) 

tanpopo

めぎさんって、本当に優しいですね。めぎさんのツリーに対する思いからは、生き物すべてに対する愛情や、自分のそばにいてくれた愛しいものへの哀惜の念が伝わってきます(違ったら、ごめんなさい)。こちらではどんど焼きが行われ、ドイツとは好対照だなあ…と感じているところです。ドイツ人にとってのツリーに当たるもの、日本では、何でしょうね…?
by tanpopo (2009-01-13 05:18) 

のび太

ツリーの話が参考になりました。
ドイツの一面を知ることができました。
by のび太 (2009-01-13 06:05) 

Baldhead1010

きれいな夕焼けだ!

日本では杉や檜の梢で代用できますよ^^
by Baldhead1010 (2009-01-13 06:13) 

manamana

神棚の榊をプラスチックにしないのと同じですね。
by manamana (2009-01-13 06:40) 

YAP

ドイツの人にとってクリスマスの重さがどれほどであるかということがよくわかりました。
それに比べて日本のクリスマスって...
ま、その代わりに日本にはお正月を祝う風習があるか。
by YAP (2009-01-13 08:12) 

アヨアン・イゴカー

詳しい説明、勉強になりました。
by アヨアン・イゴカー (2009-01-13 09:00) 

whitesox

ドイツではそうなっているのですね。1月6日までですか。また、回収とリサイクルのシステムがあって素晴らしいですね。昔ですがニューヨークに住んでいた時は正月前に、普通のゴミとして捨てていたと思います。
by whitesox (2009-01-13 09:09) 

ナツパパ

家族で一緒に祝う行事があることは素晴らしいと思います。
日本でもお正月を大切にしなければなりませんね。
by ナツパパ (2009-01-13 09:14) 

やよい

生活の基本がキリスト教なのですね、私たち日本人のクリスマスは
宗教心の欠けた単なるイベントですね。
夕焼けがとてもきれいです、何かを祈りたくなります。
by やよい (2009-01-13 09:48) 

きこじじ

郷愁かなあ。

美しい夕焼けですね。
日本も、日曜の夕方 彩雲というのか・・・美しい夕日に染まった雲を見ました。
時差はあるけれど、つながっているのだなと思いました。
by きこじじ (2009-01-13 11:11) 

いとお

なるほど、勉強になります。
宗教心のないクリスマスばかり経験してるもので(^^;;
夕焼け、とっても綺麗ですねぇ~(^^)!
by いとお (2009-01-13 11:16) 

のの

家族の元を離れて自分で家庭を持っても
同じようにクリスマスの伝統行事を続けているというのも
めぎさんがおっしゃるように、深い深い心の奥底に巣くう
説明しがたいセツナイ、いろんな感情があるからこそなんでしょね。
お正月が明けた初ゴミ出しの日、ゴミ置き場には門松やらお飾りが
出ていました。
地域によっては「どんど焼き」というお祭りにして一気に燃やしちゃう
行事もありますけどね。
横浜のど真ん中だと、そういう伝統行事もなくて、
少々残念です;


by のの (2009-01-13 11:20) 

take

クリスマスはドイツの年越しでしょうから、やはり日本でそれに当たるのは「大晦日&正月」でしょうね。
除夜の鐘を聞きながら、家族揃っておこたに入って年越しソバをすする。雪道を晴れ着着て初詣行ったり、お節やお雑煮を食べる。
そういう風習も今では廃れてきてるけど、想像すると あったかくて幸せな感じがするように思うのです。
外の寒さと家の中の暖かさの対比から生じる言いようの無い幸福感は、宗教に関係なく、人間に共通する感情ではないか… なんて考えてみたりしました。
by take (2009-01-13 11:42) 

夢空

めぎさんの個人的見解におおいに納得です☆
こちらでは、どんど焼き行事で燃やすというのがありますし、
堆肥にしてリサイクルするって徹底してますよね。
ゴミ袋に名前を書かなければならなくなったのは、マナー違反をする人がいるからということで恥ずかしいことですね。
詳しい説明をありがとうございました(^-^)
by 夢空 (2009-01-13 11:55) 

aru

なるほど!
所変われば、国が変われば・・・ですね。
めぎさんの説明大変わかりやすく、勉強になりました。
有り難うございます。
ドイツ人にとってのクリスマス。
大切なものなんですね。
また来年、素敵なクリスマスを迎えられると良いですね。


by aru (2009-01-13 12:11) 

MANICAT

日本では、当家もそうですが子供が大きくなると
クリスマスつりーは飾らなくなると思います
私も幼少のころは教会の日曜学校に皆勤賞もので通いましたが
めぎさんのレポートでクリスマスの奥深いところがわかった気がします。
by MANICAT (2009-01-13 12:23) 

くっさん。

年末旅行の時に、ドイツやオーストリアで、
綺麗に飾りつけされたクリスマスツリーを見ることが出来ました。
めぎさんから1月6日までと聞いていなかったら、
“???”の状態でしたよ(^^)
by くっさん。 (2009-01-13 14:32) 

ぽりぽり

水彩絵の具で書いた画のような夕焼けの写真ですねぇ。 日本では絶対知りえないドイツ情報です。なるほどの解説、興味深く読ませてもらいました。
by ぽりぽり (2009-01-13 15:20) 

misaboo

ふむふむ。大変お勉強になりました。
子どもの頃、生の木に飾っていました。
鉢ごと庭に埋めていた木を、クリスマスシーズンに土から出して。。。
でも、写真のようなとんがりのかたちじゃなかったのが
すごくやだった。。。あぁ、遠い昔の懐かしいできごと。
by misaboo (2009-01-13 15:49) 

母ちゃん

ゴミ収集されてしまうツリーは郷愁をさそいますね~。
by 母ちゃん (2009-01-13 16:01) 

チバップリン&マリエ

夕焼けがすごくキレイ!(^^♪
文化の違いわかりやすかったです。
やはり、日本は反省点がいっぱいありますね。^_^;
by チバップリン&マリエ (2009-01-13 16:19) 

ファジー

ドイツのクリスマスツリーの処分方法とても勉強になりました。
「一膳一膳自分で使ったお箸を使い捨てにする国民より」
by ファジー (2009-01-13 16:36) 

HAZUMI

遅ればせながら、今年もよろしくお願いします。

30年も40年もストーブやオーブンや洗濯機や冷蔵庫などを修理しながら使い続け、着る物にもお金をかけず、車も20年くらい乗り続けることも珍しくないドイツ人、、、、、その昔、日本人も同じ文化があったような、、、、、でも、日本の電化製品は、寿命があるように作られてるとか、、、、、、
by HAZUMI (2009-01-13 16:43) 

wakatate

三人の賢者は、王様なんですね、とても立派ですね、
クリスマスツリーを飾るのは、やはり夢があって
素晴らしいですね、これを捨てるのは
可哀想な感じ、同感ですね。
夕焼けの写真が素晴らしいですね。
by wakatate (2009-01-13 17:19) 

くりっぴ

もみの木って生のほうが断然素敵ですね。(*^_^*)
生木をレンタルって難しいのですね。
やっぱり痛むのかあ・・・
寿命があっては、どうしようもないし、使い捨てではなくお金をかけて堆肥としてリサイクルするのが、とてもいい方法なのでしょうね。
長年かけて考えてきたものなのでしょうし。

日本でもみの木が捨てられる光景を見たことがなかったし、短い期間の飾りだから、ついついもったいないと思ってしまいました。
失礼しました。

by くりっぴ (2009-01-13 21:01) 

春分

なんだかプラスチックのお供え餅(中には個装の切り餅入り)を飾った事を
反省してしまう話です。
でも、正月飾りは信仰ではないのかな。
by 春分 (2009-01-13 22:43) 

ララアント

昨夜は 腰痛悪化のため コメントが出来ず 失礼しました。
ツリーの行く末を読んで 今朝の新聞記事に目が留まりました。
「ドイツでは宅地を造成しても表土を保存し 後で地面に敷きなおす。
日本の場合 そんな事考えずに街を造っているから 表土を削った
造成地の土は痩せすぎている」と。
80歳を過ぎたご夫婦の話題なのですが ドイツの市民農園
「クラインガルテン」をモデルにしたいと。。。
昨日・今日のめぎさんのブログに通じるように思いました。
by ララアント (2009-01-13 23:14) 

Jalana

オランダで一度だけ生木のツリーを買ったことがあります。
人工にはない良さがあると思います。
でもだんだん葉っぱが落ちてきて、カーペットに入り込み掃除機で
吸い取るのも困難。妻には不評でした。

by Jalana (2009-01-14 01:08) 

めぎ

>みなさま
ツリーの最後の話にコメントとniceをありがとうございました。
12日、夜にうちに戻ってきたときにはもうツリーは回収されたあとでした。ああ、可哀想なツリー・・・心が痛みます。神棚の榊が枯れたり、生け花が萎れたりするのと同じことなんですが、そこそこの大きさの木が枯れて捨てられていくのを見るのはインパクトがありますね。

by めぎ (2009-01-14 05:52) 

ちみる

めぎさん、はじめまして。
ツリー用の樅の木に関して蛇足かもしれませんが...
ツリー用の木は山に生えているのを切ってくるのではなく、それ専用に畑で栽培されているのを郊外でよく見かけます。 アルテンアールに行く途中やウチの会社の近くの農場の畑でも見ることが出来ます。
こういうところに、自然と生きるドイツ人の気概を感じることが出来ますね。

by ちみる (2009-01-14 06:32) 

めぎ

>ちみるさま
ようこそ。コメントありがとうございました。
ツリー用の畑のこと、補足いただきありがとうございます。以前の記事に書いたのでここでは省略しましたが、やはり書いた方がよかったかも知れません。その方がもっとハッキリしますものね。
あの葡萄畑のアルテンアールのお近くにお住まいなのでしょうか。ドイツにいらっしゃる方に見ていただけるのはとても嬉しいです。またよろしかったらいらしてくださいね。
by めぎ (2009-01-15 03:43) 

nao

夕焼けの美しさに圧倒されました!!
by nao (2009-01-15 11:13)