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それぞれの道 [仕事風景]

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ドイツ在住も15年となり、今の高校に勤めてからも10年となり、もうそんなに目新しいこともなくなったとは言え、改めてああここはそういう国なのだなあと思わされることが起こる。それは、それぞれがそれぞれの道をそれぞれのテンポとやり方で歩むことが出来ると言うことだ。
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今週はドイツの学校の学期末。ドイツは2学期制を取っていて、1月末~2月初め頃に1学期が終わり、6月末~7月中旬頃に年度末というシステムである。だから、冬休み明けは成績付け期間。成績判定の締め切りも近いのにまだ定期試験や追試やらもあって、それを採点しないと成績もつけられなくて、結構数が膨大で(それは日本語を選択する生徒が多いという有り難いことであるのだが、試験採点は本当に辛い)、ほとんど泣きそうになりながら土日も仕事をしていたのが1月中旬からの2週間。いつのまにか朝が少し明るくなっていた。現在の日の出は8時10分頃。
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成績をつけ終わり、生徒たちと一通り個人面談をし、成績会議を終えると、めぎの仕事は一段落である。ふーーーっと深く息を吐き、すーっと心が晴れていく解放感。
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しかしその時期、えええっ!?と思うことが起こったりするのだ。いや、もうそれほど驚きはしないのだが、でもやっぱり、えぇ~そうなの?・・・と思うようなことが。
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それは、「落第」である。
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ドイツの場合、今は学年の真ん中なので、留年ではない。落第なのだ。つまり、例えば、高校2年生に在籍している生徒が、その高2の半ばまで来た時点で高1の半期が終わったところに落第するのである。
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その理由はもちろん、成績不振。もともと、赤点がいくつになると留年・落第すると決まっていて、その場合は進級できないし、落第させられるという訳だ。しかし話はそれで終わらない。めぎがへぇぇ~と思うのは、赤点の数がその落第の基準に達していなくても、それに限りなく近い場合、生徒の方から落第を申請することがあるということ。
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ある二人の高2の生徒が、高1に落第を申請した。一人は何か事情があって全く学校に来なくなった生徒で、でも登校拒否ではなく家庭の方に事情があってやる気を無くしたようなのだが、とにかくずっと来ていないのでもう授業についていけないから高1に戻ってやり直したいとのこと。それは理に適っているように感じた。

もう一人は、休んでないのだが、このままではどうせ留年しそうだから、今のうちに落第して全てやり直して良い成績を取りたい、というもの。でもそれって、あと半年頑張ってみればもしかしたら留年しないで済むかも知れないんじゃないの?同じ学年に彼女だっているんだし、一緒に頑張って一緒に卒業したいと思わないの?というのがめぎの素朴な疑問なのだが、彼は、一年戻って選択科目も選び直しして、とにかく一から良い成績を取りたいのだそうだ。

16~17歳の若者が落第を自ら選ぶなんて・・・うーん、凄いなあ。自分の人生に真剣に向き合っているという感じがするわねえ。方や日本では、中学レベルのことが身についていなくても入れる高校があり、如何に赤点取っててもどれほど休んでいても卒業できちゃったりするし、それでは自分の人生を真剣に考えようなどとは思わないまま大人になるのも仕方ないことで、もし日本でも留年や落第の制度が中学・高校レベルでもちゃんと機能しているなら、もしかしたらどこかの息子もあんなに無気力&他人任せにはならなかったんじゃないのかな・・・などとふと思う。もちろん、日本の制度の中でも立派に育つ人はたくさんいるし、ドイツの制度の中でこんな風にリセットしても結局ものにならず、高校卒業(=大学入学資格)は諦めて職業教育に切り替える、なんてこともたくさんあるのだが。でもでも、赤点取り続けて、やり直してもやっぱり赤点なら、卒業できないのがあるべき姿なんじゃないかしら。何も出来ないのに、何もしなかったのに、それなのに卒業証書がもらえて、それで大学入試を受けられて、どこかに入ってまた勉強しないで適当に学士になるというのは、然るべき状態ではないと思うのだが。それがニートが増える一因なんじゃないのかしら(もちろんそればかりではないけれど)。

とにかく、昨日まで高2だったその生徒たちは来週から高1の授業に参加する。それぞれが自分の判断で選んだ道で、着実な一歩を踏み出せますように。
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撮影: Nikon 1 V3 + 18.5mm(F1.8)
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Baldhead1010

日本の進学は階段を歩くのじゃなくて、エスカレーターに乗っかる感じですね。
大学生でも、1/2÷1/3=が分からない、程度の低い連中がわんさかといます。
by Baldhead1010 (2017-02-04 04:50) 

YAP

自分だけの一度きりの人生ですから、後悔することなく自分で道を作っていきたいものです。
高校生という若さで、いや、そういう若さだからこそ、真剣に考えているドイツの生徒がまぶしいですね。
そう思うと、日本はぬるま湯というか、大切な決断を先に延ばしているだけのような気がします。
自分の過去を振り返ってどうだろう?
一生懸命考えて生きてきたつもりではいますが。
by YAP (2017-02-04 18:50) 

mimimomo

今の日本の状況は知らないけれど、わたくしが高校生だったころ、自ら落第した人がいましたよ。わたくしたちは「へーそんなに成績悪くないのに」って思いました。でも残念なことにその方交通事故で亡くなられたの。
また中学生の時にはよその学校から「素行が悪い」という理由で一年落第させられて転校してきた子もいましたし、息子の(私立の高校でしたが)学年にはやはり成績が良くても素行が悪いと退学させられて子がいました。結構昔は厳しかったのではないかしら。このところ、モンスターペアレンツなどと言われるような親が出てきて、学校も厳しくできなくなったかな?
by mimimomo (2017-02-04 19:14) 

momo

しっかりと自分で自分の人生考えてるあたり素晴らしいです。
日本だとそのまま学校退学しちゃいますね。
で、たいてい後から後悔する・・・・と。
過去記事の叔母様からの贈り物もなるほどな~と
いろいろ考えさせられました。


by momo (2017-02-04 23:06) 

Inatimy

落第を選べる自由もあるというのがいいですよね^^。
日本だと、学生がもしそういうことを言い出したら、
学校側が面倒で嫌がりそうだもの・・・。
by Inatimy (2017-02-05 06:57) 

engrid

しっかり見据えて、そうなんでしょうね
此方では考えられないことですもの、、
どうにかして救済を考えるのが、普通かなって気がします
by engrid (2017-02-05 10:28)