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イースターの礼拝と洗礼式 [文化の違い]

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ドイツは本日4月9日もイースターの祝日でお休み。学校はイースターの前後2週間がイースター休みなので、会社に勤める方々も子どもの休みに合わせてこの2週間休暇を取る人が多い。子どものいない人はこの時期はカレンダー通りに休み、別の空いている時期に休暇を取るのが普通。うちのドイツ人は自営業なので自由に休みを設定しているが、やはりこの時期は休暇を取る人が多いので仕事にならないようだ。めぎは学校は2週間休み中なのに対し、大学は2~3月の春休みが終わって始まってしまったところ。めぎは授業の時だけ行けばいいからまあいいけど、大学の事務職員だって子どもがいる人はこの2週間休みたいだろうにねえ・・・学生だって、イースターの前後は落ち着かないしね。

さてさて、今年のイースターはめぎ家にとってちょっと特別なものになった。こんな催しに参加したのである。
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↑真っ暗で何が何だか分からないわね・・・実は、友人に頼まれてうちのドイツ人がPate(パーテと読む・・・パテじゃないよ)になったのだ。Pateとは、名付け親とか教父とか代父とか後見人とか。つまり、友人の息子の洗礼の際に、代父を務めたのである。洗礼と言ってもその息子は既に13歳で、名付け親になったわけではない。ただ、儀式上、洗礼の際に実の父親ではなく別の男性が代父を務めるということに過ぎないのだけど。ドイツのプロテスタントでは、子どもが自分で分別のつく歳になってから洗礼をする例が多い。

Pateを引き受けたのはいいけれど、洗礼の日時はイースターの朝5時ですって・・・えええ、あさ、ごじぃ?場所はケルン。デュッセルドルフからケルンまで、車で20~30分くらい。つまり、めぎ家はイースターの日曜日、朝3時半起きし、4時半にはアウトバーンを走っていたのだった・・・現在の日の出は6時50分頃。4時半は当然真っ暗で、しかもプロテスタントの教会だから非常に質素で中には明かりが全くなく、席に着くのに蝋燭を手にした係員の指示に従い、ほとんど手探り状態。その後5時に礼拝が始まると、係員の蝋燭もなくなって、あるのはPfarrerin(プファーレリン=牧師)が手にしている蝋燭一本の光のみ。そして、礼拝は創世記を読み上げることから始まった・・・うん、たしかに、Es werde Licht!(光あれ)という気がするわ。

写真撮っていいと予め言われていたのだけど、真っ暗だし、やっぱり儀式中にカシャッという音を立てるのも気が引けて、写真は撮らなかった。5時に始まった礼拝は聖書の朗読とクラリネットの独奏が交互に進み、その後外に出ろ、と言われた。外にはいつの間にか大きな焚き火(Osterfeuer)がたかれてて、そのまわりで牧師の話を聞き、賛美歌を歌ったりした。クロウタちゃんがすぐそばの木の上から囀りまくっていた。気温は0℃、真っ暗な中で焚き火の真っ赤な炎が力強く、暖かく、ものすごいエネルギーを感じた。そのあと、全員が小さな蝋燭を持ち、焚き火から蝋燭へ、蝋燭から蝋燭へと灯していき、みんなでFrohe Ostern! (フローエ・オースターン=イースターおめでとう!)と抱き合ったり握手したりした。

そんな外の寒さの中での荒行のような儀式の間に、礼拝堂の中は綺麗に蝋燭が灯されていた。めぎたちは各自手にしていた蝋燭を窓辺に置くようにいわれた。その後、ようやく洗礼が始まった。たぶん6時過ぎだったと思う。子どもから大人まで10人くらいの洗礼が順次行われた。友人の息子の洗礼だけは撮りたいと思ったし、うちのドイツ人にも撮れと言われたけれど、やはりカシャッという音は避けて無音にしたコンデジで撮影したし、家族が取り囲むので蝋燭の光も届かず、上のような真っ暗な写真が一枚撮れただけだった。ちょっと明るくして雰囲気だけでもどうぞ。
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家族の少ない人の例は全部見えたのだけど、知らない人の宗教儀式の写真を撮るのは気が引けるしね・・・めぎは洗礼を初めて見たのだけど、本当に頭の上にぴちゃぴちゃ水をかけるのね。全てが終わったあとで洗礼盤を撮影。この上に頭を突き出し、牧師さんが3回くらい水をぴしゃぴしゃってかけて、一応ちょこっと拭いてくれる。
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全員の洗礼が終わったら、聖餐の儀式が続いた。聖餐というのは非常に簡単に言うと、キリストの肉のシンボルであるパンと、キリストの血のシンボルであるワインをいただく儀式。でも、今回は子どもたちが多いのでワインじゃなくて葡萄ジュースにしたとのことで、あららら、ちょっとがっかり。めぎは今まで何度もミサや礼拝に参加してきたが、聖餐の儀式はいつも遠慮していたのだけど・・・というのは、やっぱりキリスト教徒じゃないからどうも肉と血のシンボルを口にするのは躊躇われたし信者に失礼な気もして・・・でも今回は代父の妻だし(つまり代母ってことですわね)、招かれた以上は信者じゃなくても全てご一緒するのがやはり礼儀なのだろうと思って参加させていただいた。パンはなぜかトルコ風の柔らかいパンだった。葡萄ジュースはなかなか美味しかった。パンの入った籠を次の人に渡すときにBrot vom Leib Gottesと言わなければならないとか(聖杯の時はなんだったかしら・・・Wasser ewigen Lebensだったかしら)、初参加は手順がよく分からなくて色々難しかったし、最後にみんなで手をつないでお祈りしてアーメンと言ったりするのは真剣な信者に対して申し訳ない気もしたが、経験という意味では非常にいい経験をした。日本で初詣に行ったり、どんと焼きをしたり、お祓いをしてもらったり、仏壇にお線香を供えたりするのと並ぶ経験であることは間違いない。
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全て終わったときには7時くらいで既に明るくなっていた。めぎたちがイースターの大きな焚き火の火を灯して運んできた蝋燭はこちら。
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洗礼証明書のようなものを見せてもらった。一番下にTaufpate(洗礼の代父)としてうちのドイツ人の名前が記されていた。息子さん、洗礼おめでとう。
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ところで、最初の方でPfarrerin(プファーレリン=牧師)と書いたが、ドイツ語の分かる方はそこであれ?と思ったはず・・・そう、牧師さんは女性だったのだ。カトリックの地域であるケルンでプロテスタントの牧師さんを務めるのって、色々苦労も多いんだろうなあ・・・と、非常に質素な小さな礼拝堂を眺めて思った。きっとケルン大聖堂でのイースターの儀式はまばゆい光で満ちているのだろうな。

このあと教会の別室で朝食会があるようだったが、めぎたちはこれでお暇した。なにしろ3週間後にもう一度堅信礼という別の儀式が控えていて、また来なきゃならないし。でも、次回は11時ですって・・・よかった。
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イースターの焚き火はずいぶん小さくなっていた。
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クロウタちゃんたちのさえずりは今も尚響き渡っていた。
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駐車場の方へ行くと、日の出が見えた。
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イースターにこんなに早起きして日の出を見たのは初めて。起きるのはつらかったけど、清々しくて気分は意外と悪くないわねえ。
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帰りのアウトバーンから見えたお日様。
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お日様の力は偉大だわね・・・外の気温は、0℃だったのが3℃になり、5℃になり、とあがっていった。
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緯度の高いドイツの夜明けはゆっくり。デュッセルドルフに着いたのは7時半くらいだが、まだ夜明けという感じの光の色。
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実はこのあともう一つ用事が。そのお話はまた明日。
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Baldhead1010

暖かくなったり寒くなったり野繰り返しですが、振幅の中心はだんだん上を向いています。
昨夜、蛙の鳴き声を聞いたような・・・。
by Baldhead1010 (2012-04-09 04:51) 

ちばおハム

イースターおめでとうございます。それから洗礼もおめでとうございます。
5時の洗礼式とは恐れ入りました。

by ちばおハム (2012-04-09 05:42) 

YAP

私の知っていることとは異なる文化、それも歴史と伝統のある宗教的儀式というと非常に興味深いです。
厳かな雰囲気の中で執り行われるのですね。
by YAP (2012-04-09 07:31) 

ナツパパ

厳粛な儀式なのですね。
ヨーロッパでは、キリスト教が生活の基盤になっていることを実感しました。
そういう儀式に対する、めぎさんの敬虔な気持ちや配慮も素敵です。
by ナツパパ (2012-04-09 08:49) 

塩

洗礼の撮影を躊躇されたお気持ちは大変よく分かります。
私もクリスチャンではありませんが、何となく気持ちが落ち着きますので、ドイツの教会にはあちらこちらと立ち寄らせてもらいました。・・かといって知識はありません。
今日の洗礼のお話も私には勉強になりました。いつもありがとうございます。
by (2012-04-09 10:05) 

mimimomo

お疲れ様でした。
でも素晴らしい経験でしたね。わたくしは観光客として
見せていただいたことはありますが《チラッとね》
やはり写真は失礼な気がして写せなかったです。
by mimimomo (2012-04-09 10:22) 

たいちさん

洗礼の儀式を興味深く読ませていただきました。複数の人を纏めてするのですね。武士の烏帽子親に似ていますね。
by たいちさん (2012-04-09 12:49) 

ふーみん

キリスト教は洗礼 日本は生まれて1ヶ月でお宮参りお祓いを受けてからおでこに男の子は朱で「大」 女の子は「小」と書いて下さる。
そこから 差別ですね。
敬虔な儀式で身の締まるおもいで読ませていただきました。
by ふーみん (2012-04-09 13:29) 

テリー

プロテスタントの洗礼の儀式、初めてです。

by テリー (2012-04-09 18:40) 

マリエ

カトリックの洗礼の儀式に参加したことがあります。緊張しながら読みました(*^-^) 宗教の儀式って身が引き締まります。
by マリエ (2012-04-09 19:05) 

あかえび

仏教徒が生前に戒名を頂戴する事と似ているのかな。(^^ )
by あかえび (2012-04-09 19:33) 

くっさん。

早起き、お疲れさまでした。
洗礼って馴染みがないから興味深いです。

イースターの手作りの卵、素敵ですね。
僕も学生時代の美術は、楽しめませんでしたが、
最近、美術作品に下手は無いと教わって、
無茶苦茶でも楽しめるようになりましたよ(^^)
by くっさん。 (2012-04-09 20:11) 

HIROMI

寒いし暗いのに、こんな早朝からやらなきゃならないのですか?つらいですねえ。

でも、蝋燭の明かりっていいものですね。わたしも1日の内10分でいいので蝋燭を灯したい…と家族に言えば、絶対に仏壇に蝋燭の火をつけろと言われると思うけど。(なんで、仏壇の蝋燭はあんなにロマンチックじゃないんでしょうね)
by HIROMI (2012-04-09 23:05) 

stellaria

これはまた興味深い体験をなさいましたね!暗い中でやる、というのはやはり意味があるんでしょうね。でも、朝早くから大変でしたね…。お疲れさまでした。
by stellaria (2012-04-10 00:37) 

Inatimy

宗教が異なると儀式も勝手が分からず戸惑いますよね。
日本の葬式に出た外国の方が、
お焼香をあげるのがよく分からず困ったって聞きました・・・。
背後から見ると、食べてるみたいに見えた、って・・・。
by Inatimy (2012-04-10 18:32)