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ルーベンスの絵 [ベルギー]

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現在、10月中旬のアントワープ2時間立ち寄りの話を連載中。

アントワープの聖母大聖堂の真ん中奥に掲げられているのは、もちろん聖母の絵。
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もらったパンフレットによると、オランダ語(フラマン語)でDe hemelvaart van Maria、ドイツ語でMaria Himmelfahrt(普通ドイツ語ではMariäと2格になるけれど、パンフレットではMariaだった)、日本語で聖母被昇天。オランダ語やドイツ語だと、マリア様が天国へ行くというニュアンスだけど、日本語の方は「被」が入っているから天に召されるという受け身の感じで、こういう翻訳にも世界観が表れるのかな、などと思っためぎ。
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めぎはこの金ピカ十字架に巻き付いている蛇さんに大注目。なんて美しい曲線美。
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上の方は真っ白で、本当に昇天していく感じがする。
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ここは入るのに大人一人5ユーロも払うだけあって、なかなかのサービス。内陣に踏み込めることって、なかなか無いこと。おかげでこの細工をじっくり拝見できた。
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この内陣に向かって左側に、ネロが見たルーベンスの一枚目がある。オランダ語(フラマン語)でDe kruisoprichting、ドイツ語でDie Kreuzaufrichtung、日本語でキリストの昇架。昇架って書かれてるけど、キリストが自ら昇ったわけじゃないと思うんだけどな。この絵は、絵を見ても、オランダ語とドイツ語を訳しても、地面におかれた十字架にキリストが両手両足杭を打たれ、その十字架を人々が建てたという意味のはずだ。
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ルーベンスってイタリア人?と錯覚するほどイタリアっぽい絵ですわね。ちなみにルーベンスはイタリアのマントヴァで8年も宮廷画家をしていたとか。両親がアントワープからきたからアントワープ人と言われているけれど、生まれはなんとドイツのジーゲン。ええっ!?あの坂の多い小さな町、ジーゲンで生まれたの?ちょっとびっくり。(ジーゲンはデュッセルドルフから電車で2~3時間の小さな大学町で、めぎは一度シンポジウムで訪れたことがある。)
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このワンちゃん、パトラッシュと比べてずいぶん西洋的な顔立ちですわね。
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この絵があるのはちょうどこの大聖堂の十字(通路)の左側。そこからまっすぐ向こうを見ると、左側に内陣が、右側に出入り口がある位置関係。
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英語版で見つけたこの映像の8分30秒目くらいから見ると、この大聖堂の広さが分かるし、9分25秒くらいから見ると、内陣とルーベンスの左右2つの絵との距離感がよく分かる。ちょっと誇張されている気もするけれど、こんな感じに非常に広い教会だ。


↑この映像では教会の十字の横線に当たる通路ががらんどうだけど、実際は一つ上の写真のように、いっぱい椅子やらものやらが置かれている。

それから、右側の絵の方へ。この絵の前でネロとパトラッシュが深い眠りに入っていったのだけど、実際はそんな隙間がないほどものがびっしり。昔は何も置かれてなかったのかな。
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オランダ語(フラマン語)でDe Kruisafneming、ドイツ語ではDie Kreuzabnahme、日本語ではキリストの降架。これもやっぱり、降架と言われると自ら降りたような気がしません?Abnahmeって取り外すイメージで、人々が死んだキリストを十字架から降ろすわけで、降りるって感じじゃないよな~降架という文字から降ろされることだとはめぎは想像できないんだけど。
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貧しくてひもじくて冷え切って死を目の前にした少年が、この絵に救いを感じた気持ちはよく分かる。たしかに、ものすごく美しい。劇的でダイナミックでエネルギッシュで、絵の向こうには素晴らしい光が満ちあふれているような気がする。
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ちなみにさっきの英語版の続きの映像は、日本のエンディングとかなり違う(と思う・・・めぎの記憶では、日本のアニメではネロたちが天使たちに連れられて天国に昇っていって終わるような気がするのだけど、みなさん、どうでしたっけ?)。



こうしてじっくり見て感じたけど、めぎはやっぱりルーベンスはあんまり好みじゃない(ネロ、ごめんね)。あまりにもドラマチック過ぎて、舞台上の演劇を見ているようで、色彩も美しすぎて、ちらっと見るのは素晴らしいのだけど、ずっと見ているとそのパワーに疲れちゃうの。この劇的な描き方は、本当にイタリア風だなあ・・・ここがアントワープだということを一瞬忘れそう。

以上がこの聖母大聖堂のルーベンスの作品。明日は大聖堂のそれ以外の様子を。
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コメント 20

Baldhead1010

ああ、自分もお腹からあんなふうに血を出すのか・・・^^;
by Baldhead1010 (2010-11-05 05:36) 

母ちゃん

ネロとパトラッシュを本放送で見ていた世代なので、この絵を実際に見た時、「あの絵なんだ」って感激しちゃいました。
by 母ちゃん (2010-11-05 05:46) 

春分

乱視のため、最初の格の違いがわかりませんでした。
そして、あの絵であることはすぐわかりました。
海外ではエンディングが違う話もテレビで観ていましたが、あらためて
そうなのかと。
by 春分 (2010-11-05 06:03) 

manamana

大きな絵画、迫力ありますね。
by manamana (2010-11-05 06:27) 

Inatimy

フランドル画とは全く違った雰囲気ですものね、このルーベンスの絵。
ネロにとっては、とっても斬新な感じがして惹かれたのかも♪
by Inatimy (2010-11-05 06:36) 

krause

素晴らしい絵画と教会の雰囲気、キリスト教徒でなくとも感激してしまいます。
by krause (2010-11-05 07:53) 

ナツパパ

ドラマティック、というかんじですが、今見ると若干くどいようにも思えます。
それはきっと、わたしが日本人だからかも。
テレビなどがない時代の人々には、この写実的な空間が印象的でしょうね。
by ナツパパ (2010-11-05 08:51) 

laf

懐かしいですね。
英語に少し違和感がありますが、
こうして、世界中の子供たちが楽しんだのですね。

素晴らしい雰囲気の教会に行けるのはいいな~。

by laf (2010-11-05 09:54) 

dora

日本版の放送があったのが、1975年だそうで、
おいら、生まれた年なので、本放送は見ていませんが
のちの再放送で、幾度となくみました。
数年前に、白耳義へ行った際には、日本語でかかれた
「ふらんだーすの犬」の看板は、まだあるのだろうか!?
「僕は見たんだよ、あれだけ見たかったルーベンスの2枚の絵を・・・」
は、今でも、台詞で覚えています(苦笑

by dora (2010-11-05 11:13) 

勇者カカキキ

これがあのルーベンスの絵なんですねぇ!圧巻ですねぇ(・x・)
by 勇者カカキキ (2010-11-05 13:44) 

ネム

絵というより教会の一部なのですね。
日本の障壁画も、建っている状態で…その場の光とか高さとかで観るとすごく違って見えます。
ぜひ一度現地で…!(なかなか叶いませんが…)


by ネム (2010-11-05 14:23) 

MOCOMOCO

英語バージョンで見直してみても、またウルウルしてしまいました^^;
めぎさんの仰るとおり、このエンディングは私が記憶しているのとちょっと違いますね~。(加筆されてる感じ?)ネロとパトラッシュが天使たちに連れられて空へ登っていくシーンで終わったという記憶があります。
by MOCOMOCO (2010-11-05 16:42) 

あかえび

建物や絵に圧倒されますなぁ。
あかえびは圧倒されて建物の中に入ってもすぐに出口に向かうかもしれません。^^;

by あかえび (2010-11-05 17:31) 

miffy

もう1枚のルーベンスの絵キリストの復活はご覧にならなかったのでしょうか・・・
by miffy (2010-11-05 21:02) 

夢空

あのね~めぎさん、コメントしたくなる記事を書かないでくださいっっ^^;
もう、ほら、キーボード叩いてるでしょ~~。
みなさん、おっしゃってますラストシーンですよね。


by 夢空 (2010-11-05 21:41) 

マリエ

感動の解説に感動でした。ホントに一緒に訪れたように思えました。
ラストは天使が連れて行ったんですよね天国へ・・・・(´_`。)グスン
迫力の絵はまるで舞台を見ているようですね。(*^-^)
by マリエ (2010-11-05 22:34) 

HIROMI

こうやって実物写真とともに解説していただけて、感動です。
いつか自分も本物を見に行きたいです。
by HIROMI (2010-11-05 23:31) 

のの

おぉぉぉ(@@)ネロのあの絵ですね!!
すごいーーーホンモノだぁ・・・。
フランダースの犬の最終シーンは
天使が舞い降りてきて、パトラッシュが牛乳の車を引き
ネロがそれに乗ってるか、一緒に空へニコニコと駆けていくという終わり方だった記憶があります。
この影像だと天使が降りてくるシーンが3Dっぽくて
すごく最新式という感じです。
by のの (2010-11-07 09:09) 

YAP

日本人にとって思い入れのある(であろう?)絵の本物を見られるというのはすばらしいです。
けっこう内側のほうを見ることができるというのも、観光客には嬉しいですね。
by YAP (2010-11-07 18:42) 

もんとれ

友人達がパリに来た時も、最初に観たいものは「ルーヴルのルーベンス!」でした。色んな意味でこれはすごいことだと思ったわ。ルーベンスというより、当時の世界名作劇場のもたらしたものが。
この方は超がいくつつくか分からないスーパーマルチタレント&ビジネスマンでしたからねぇ。背徳感も貧困も屈折も、いずれの悲壮感も持ちあわせない絵描きであり、自身が画商さん。裕福な家庭に生まれ育ち、七カ国語を操り弁舌センスに非常に長け、そのため貴族社交界のご贔屓にあずかってネーデルランドの宮廷画家になって、同国の外交通商役と八面六臂で、ネーデルランドの自治領をもたらし、ナイト称号と屋敷を七軒だか八軒だか持っても余りある巨万の富を「生きてる間に」稼いだオヒトですよね。
その絵を観るたびに、どこまでがお弟子さんたちの作だろうとかついつい思ってしまうのは庶民根性なのかな。「うーむ・・情念が足りん」とどうしても思っちゃうのだ。他の方の折角の感動を冷めさせてしまうかと、そろそろとお尻にコメントいたします・・。
by もんとれ (2010-11-08 06:52)