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バルトリとカウフマン [ザルツブルク]

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現在、昨年夏のザルツブルクの話を連載中。

うちのドイツ人が来るまでカウントダウンとなってきた頃、めぎはオペラを立て続けに鑑賞。昨日ご紹介したフィガロに続き、この日は・・・
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ベッリーニの「ノルマ」。
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ノルマと言っても仕事のノルマではなく、古代ローマ帝国時代のケルト系ドルイド教の巫女の名前。その頃ケルト人たちはローマからの解放を目指して闘おうとしていたが、巫女のノルマは実はローマ総督と密通し、秘かに子どもも儲けていて、ところがそのローマ総督が別の若い巫女に心変わりをし・・・といったお話なのだが、例によってザルツブルク音楽祭での演出は、ナチス占領下のフランスのレジスタンス運動に置き換えて現代風にアレンジされていた。そのノルマを演じたのが、今をときめくバルトリ。
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ときめくと言ってもオペラファンじゃなければバルトリの名前など知らないと思うし、オペラファンの間でも好き嫌いの極端に別れる歌手なのだが、演出には初演の年にブーイングの嵐だったらしい。とにかくこのバルトリがノルマを歌うというので、めぎはバルトリが生で聞けるのを、そして曰く付きの演出を見るのをとても楽しみにしていた。

幕間の休憩時間に撮影。フィガロと比べるとみなさんちょっと地味目ね。フィガロの演出は今年の新作だけど、ノルマは2年目だからかな。
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お着物の方がいらした。やっぱり素敵ね~
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さて、賛否の分かれる現代演出だが、この演出はめぎ的には全く持って悪くなかった。かつて見たロマンチックな伝統的演出のノルマも素敵だったけど、これも違和感なく楽しめる。人によっては、もうこの演出を見るのが嫌で目を瞑ってバルトリの声だけ聞いた、音楽だけは素晴らしかった、などと言う人もいるのだが、めぎは声よりも演出を楽しんだという感じかな。もちろんバルトリは素晴らしかったけど、めぎの好きなタイプではなかったな・・・
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歌声の様子はこちらをどうぞ。



やっぱりなんでも自分の目で見聞きしてみるものだわね。
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さて、その次の日には、またオペラ。会場にはこんな車で乗り付けるVIPさんたちも。咄嗟だったのでこんな写りになっちゃったけど。
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会場にはカメラマンがいっぱい待ちかまえていた。
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というのも、この日は今回のザルツブルク音楽祭の目玉中の目玉のプルミエなのだ。中には、素晴らしいドレスのVIP様方が集まっていた。
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背中をどーんと出したドレスの多いこと・・・しかし、こう言っては申し訳ないけど、その見えているお背中が美しいとは限らないのだけど。
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この日の演目はベートーベンのフィデリオ。オペラ好きでもフィデリオと聞いてすぐにあああれねと分かる人は少ないかも・・・ベートーベンってオペラ書いていたんだっけ?と思う人も多いかも。でも、序曲だけは日本でも有名だ・・・レオノーレ序曲である。
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この日のこのマイナーなフィデリオが目玉中の目玉になったのは、この一番上のヨーナス・カウフマンが出るからである。何を隠そう、めぎも、カウフマンを見るために大枚はたいたミーハーの一人である。
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この演目だけは正規のチケットが手に入らず、めぎは「正規のダフ屋」なるチケット屋を利用した。ザルツブルク音楽祭のチケットは、音楽祭事務局が直接売るチケットの他に、ザルツブルクの正規のチケット・サービスセンターがいくつかあって、そのチケット・センターが音楽祭事務局から結構大量にチケットを仕入れてあり、それを割増料金でこれまた「正規に」売るのである。その販売方法がオフィシャルに認可されているという訳だ。それは日本からツアーで手配してザルツブルク音楽祭を見に行く場合にエージェントを通して手数料込みでチケットを買うのと全く同じ論理で、それにザルツブルク市が認可しているチケット販売方法なのだから、ダフ屋などという言葉を使うのは間違っているかも知れない。日本のエージェントにとんでもない割増料金を払うのと比べたらこのザルツブルクの正規のチケット・センターはずいぶんお安い(どうやら日本のエージェントはこのチケット・センターからチケットを購入して売ることもあるようだ)。さらなるダフ屋もあるようだし、ホテルのコンシェルジュなどのツテを頼むというやり方もあるし、たぶん完売演目をどうしても見たいと思ったら、お値段に限りはないだろう。とにかく、どうしても見たかっためぎは、音楽祭から直接買えたら178ユーロ(約2万4千円)の席を246ユーロ(約3万3千円)で購入した。愛は盲目である。ついでに言えば、春以降めぎがレンズを購入しなかったのは、このチケット代の所為である。堅実なうちのドイツ人なら絶対にそんなことはしないだろう。彼は正規の178ユーロだってぼったくりだと言ってやめるだろうし、この正規のダフ屋システムに関してはインチキオー○トリアと蔑んでもいた。まあつまりは、うちのドイツ人がいなければめぎは箍が外れるという訳だ。

しかし、カウフマンには、そうしてしまうだけの魅力があるのだ・・・せっかくここまで来ているのにカウフマンを見ずに帰るなんてことはできない。3週間の中でこの日がめぎにはハイライト中のハイライトだった。(ちなみに2番目のハイライトは以前に書いたドミンゴのガラ・コンサートで、3番目はめぎの滞在初日のアーノンクールのコンサート、昨日書いたフィガロは4番目かな。)
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さて、演目はフィデリオなのだが、フィデリオをご存じの方はお分かりのように、第一幕にはカウフマンの出番はない。しかも演出はこれまた凄い現代読替で、賛否の差も前日のノルマどころではないほど億万キロ隔たりがあるという感じ。この演出が好きじゃなかったら、第一幕をひたすら耐えてカウフマンの登場を待つしかない。しかも、幕間の休憩時間は土砂降りだった。
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あちらのお店も閑古鳥。
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中はすし詰め状態で・・・
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外は煙草休憩の方々ばかり。雨でもやむなく、とはこのことね。
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で、第2幕にようやく登場したヨーナス・カウフマン。
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ああ、なんて素敵な歌声なの、なんて素敵な人なの・・・♡ 雰囲気をご覧になりたい方はこちらをどうぞ。3分50秒くらいのところからたっぷりと。舞台の雰囲気もよく分かる。



こちらだったらダイジェストで他の場面も見られるし、カウフマンの普通の会話のときの声も聞ける♡ ミュンヘン訛りだって、彼の声なら許せちゃう♡♡ 恋はホント盲目♡♡♡



演出はめぎ的には別に悪くなかったが、しかしヨーナス・カウフマンを見に行った者としては、物足りないことこの上ない。だって、第2幕しか出ないし、その第2幕も第1幕と比べるとずっと短いし、それにカウフマンの訳はこの演出ではちっとも格好良くないし、暗闇にいてばかりでよく見えないし、レオノーレの手話みたいなのに気を取られるし・・・ブツブツブツブツ。
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カウフマンは本当に素晴らしかった。もっともっと見たかったし聞きたかった。そんなわけで、めぎはこのカーテンコールの凄いブーイングを聞きながら(初演でこんなにブーイングされると凹むわよねえ・・・ま、カウフマンには割れんばかりの拍手とブラボーだったけどね)、近いうちに必ずカウフマンのオペラをもう一度見に行こう、と心に決めたのだった。
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終わった後も、観客たちは意見をぶつけ合っていた。こういうところ、やっぱりヨーロッパだなあ。
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帰りには有り難いことに雨が上がっていた。人々は場所をレストランやバーに移してさらにディスカッションするのだろう。めぎも話し相手が欲しかったな。
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こうしてめぎ一人の夜は最後を迎えた。ここまで約2週間、なんて自由で楽しかったことかしら。同時に、感動やら何やらを話し合えなくて、なんてつまらなかったことかしら。自由も謳歌して大満足したし、そろそろめぎはうちのドイツ人が恋しかった(これ以上一人だとチケット買いすぎて破産しそうだし♪)。たまには一人旅も良いものだわね。

撮影: Nikon 1 V3 + 18.5mm(F1.8)
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Baldhead1010

外国で見る着物姿、見直しますね^^

髪型もそれなりにアップの方がいい。
by Baldhead1010 (2016-05-30 04:21) 

Inatimy

普段見慣れないから、人々の服装に目がいきますね^^。
カラフルなものもあればシックなものも。
私もこういう場では、着物を着てみたいなぁ。
by Inatimy (2016-05-30 06:16) 

YAP

こんなクラシックカーが現役とは、すごすぎます。

by YAP (2016-05-30 07:39) 

ナツパパ

なんとまあ、オールスターそろい踏みじゃないですか。
これはダフ屋でもなんでも、買ってしまうなあ、きっと。
だって、生で聞けるんですよ...やっぱり音楽は生で聴かなきゃね。
わたしも破産確実だなあ、これは。
by ナツパパ (2016-05-30 08:27) 

sheri

大昔の夏にアメリカへ行った時にお肌の違いを目の当たりにし、その後何かで聞いたのは、日本には梅雨があるからお肌がキレイ?っていうお話。

本当かどうかは定かでないけれど、梅雨の季節に思い出しては、つらい時期を乗り越えることにしていますです。
by sheri (2016-05-30 11:31) 

ふーみん

素晴らしい歌声 生で聞いたのはカンツオ―レ素晴らしかった
オペラの生だったら震えがくるでしょうね。
皆さん正装でめぎさんはどんなドレス?見たかったなー
一人旅はやっぱり寂しいですね。

by ふーみん (2016-05-30 11:41) 

mimimomo

めぎさんは才能がおありだからこう言うのを観ても(聴いても)面白いでしょうね~ わたくしも数度は経験ありますが、豚に真珠、猫に小判のよう(__;
by mimimomo (2016-05-30 17:52) 

engrid

正規のダフ屋でも、恋は盲目、、そうここに来て
聞かないで帰れないわ、このために、いろいろ節約も
素晴らしいですね、、しかも目の前で生で、!
皆さん正装、ゴージャスに,、敬意を表して見えますのね
お着物、やはりいいわ、しっとり美しい姿ですもの
by engrid (2016-05-30 18:13)