製本とできあがり [うちのドイツ人のDIY]
今日の話は昨日の続き。傘寿になる父親へのプレゼントに父親の言葉を綴って写真集を作っているところ。昨日は印刷した紙を綴じた話で、本日は製本編。
表紙の一部に使う皮をのばしているところ。
これは四隅に使う部分。
こんな風に貼り付ける。貼り付けるときもヘラみたいなので皮を丁寧にのばしていた。そういうのは動画にでもしないとなかなか伝わらないけれど、この一つ一つの作業をそこまで丁寧にするのかと思うほどで、でもそのおかげで試作品と本番とでは仕上がりにずいぶん差が出ていた。
そして、いちいちしっかりプレス。
四隅が終わったところで背表紙を貼り付け、真ん中を細い棒をつけてプレスして丸くしていた。これはできあがったところ。
裏側はこうなっている。ここに本のガーゼを貼り付けた背をくっつける仕組み。
くっつける前に、表紙を完成させる。表紙は全部が皮ではなく、布も使用。
これに本の中身を挟み・・・
ガーゼを表紙の裏にくっつけて・・・
本の中身が本に固定されたところで・・・
もう一度プレスして表紙が開いた状態なのを閉じる。
こうしてできあがった本は、作家が父親名になっている。父親の言葉を綴ったものだから。
裏表紙も綺麗に貼り付けられていて・・・
最初にショーペンハウアーの引用が。ショーペンハウアーは19世紀前半の思想家で、ニーチェやトーマス・マンやフロイトやユングなど著名な思想家や作家に多大な影響を与えた人物。うちのドイツ人はショーペンハウアーの思想はともかくその言葉の巧みさ・すばらしさに心酔している。学者でもないのにショーペンハウアーがさらっと読めちゃって、その言葉のおもしろさを話題にできちゃうところが、うちのドイツ人一家の奥深さ。ショーペンハウアーに興味のある方はこちらをどうぞ。
本の中身をちょこっとご紹介。これはうちのドイツ人の祖父母と父親兄弟。祖父に抱かれているのが父親。
父親の子供の頃。
1946年ってことは、16歳ね。
うちのドイツ人が子供の時。
うちのドイツ人がオペラ座で子役で歌っていたとき。そう、彼も子供の頃は教会の聖歌隊に属し、オペラにも出ていたのだ。カルメンや魔笛などは100回以上は舞台を踏んでいるそうで、歌詞などすっかり暗記している。これは1968年のトスカ公演の時の写真。めぎもこの頃にはもう生まれていたんだけど・・・まったくもって、育った環境の何という大きな違いかしら。「セロリ」どころじゃないわね。
そして、めぎが写した写真も使ってくれたの♪
一緒に写っているドイツ語は、ただ訳しただけでは何が何だかわからない。これを理解するにはそのお話を知っていたり、そのオペラを知っていたり、その文化的背景を知っていたり、その方言を話す地域を知っていたり・・・と様々な知識や経験が必要で、めぎが読んでも説明を受けない限り何が面白いのか何がどう皮肉なのかちんぷんかんぷんだ。
この全行程を見ているうちに、めぎが一枚添えるものを思いついた。めぎの言葉で歌を詠み、習ったこともないので自己流で思いっきりへたくそだけど筆で書き、たまたま知人にいただいた紋切り型で松ぼっくりの切り絵を作って貼り付け、めぎのはんこを押したもの。これを本に合わせてうちのドイツ人に切ってもらって、栞のように挟み込んだ。
父来ぬる 跡をたどりつ 言の葉に 想ひ重ねむ 傘寿の宴
全身全霊を込めて作り上げた本は、これを手に取る人の涙を誘わずにはいられない。試作品をあとから見せてもらった元学生さんもページをめくりながら泣いてたし、元旦にお招きしためぎの大学の後輩もじっと見入っていた。なにより、父親自身が涙を見せた瞬間を、めぎは一生忘れないだろう。
2011-01-05 02:00
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コメント(35)
素敵な素敵なプレゼントですね(^u^)
なんだか、作る過程を説明してくださるめぎさん、
そして実際に制作されている独逸人様の温かいお心が
沁み入りました(^u^)
ほんと、素敵でございますヽ(^o^)丿
by dora (2011-01-05 02:35)
世界に一冊しかない本、いいですね^^
by Baldhead1010 (2011-01-05 05:05)
心にジーンときますね。
最後の一枚、
お父さんのお顔は見えないけど、感動が伝わってきます。
素敵なお話を、どうもありがとうございます。
たしかに、セロリどころじゃないですね^^
by hatsu (2011-01-05 05:26)
本を手にするお父さまのすぐそば、テーブルの上に、
めぎさんの撮られた写真のパイプがあるのが、また、何ともいえず。
家族それぞれの思いのいっぱい詰まったお手製の本に胸がいっぱいにまりました。
私自身は、父親に何ができるかなぁ・・・なんて考えたりして。
by Inatimy (2011-01-05 05:59)
本当にお父様の感動が伝わってきます。大変な作業、ご苦労様でした(^^)
by 母ちゃん (2011-01-05 06:01)
お父様にこんなに喜んでいただけて、
作った甲斐がありましたね。
自分も感動して目頭が熱くなりました。
by manamana (2011-01-05 07:32)
心がこもったプレゼントとは、このようにしてつくられるのですね。
寒い冬ですが、心からあたたかくなれました♪
by soraaane (2011-01-05 08:25)
素晴らしい、の一言しか出てきません。
by ナツパパ (2011-01-05 08:47)
素晴らしいですね。
1頁1頁に、感謝と感動があふれていますね。
by laf (2011-01-05 08:48)
素晴らしいですね~
記事を読ませていただいても、鼻の奥がツーーーンと(__
by mimimomo (2011-01-05 09:20)
そうそ、ショーペンハウアーって、ショーペンハウエルって習った《若いころね》人の事ですよね?
デカンショの最後のショの人^^
by mimimomo (2011-01-05 09:23)
もらい泣きする程の素晴らしいプレゼントですね。
by たいちさん (2011-01-05 09:52)
すばらしいプレゼントですね。
愛情がこちらにも伝わります。
by luces (2011-01-05 10:16)
外装も中身も素晴らしい本ですね。
by krause (2011-01-05 12:33)
すばらしい贈り物になりましたね。
出来映えだけがすべてではありませんが、このすばらしいつくりの手作りの本には、魂が注がれていると思います。
by YAP (2011-01-05 13:47)
本当にすばらしい贈り物…!
うちも両家親が古希を迎えるので何を贈ろうか悩ましいのですが
とてもとてもこんなに素敵な贈り物を用意できそうもありません。
ドイツ人さん、めぎさんのお二人に、
子として、配偶者として、頭が下がります。
by ネム (2011-01-05 14:10)
これは素晴らしいですねぇ。昔ながらの製本なのでしょうか? 手の込んだ作業の様子。。 めぎさんはどんな歌を読まれたのでしょう。。
by ぽりぽり (2011-01-05 14:14)
またしても素晴らしい写真を拝見させていただいて本当にありがとうございます。
by 塩 (2011-01-05 16:16)
本当に感動します!作っている作業も凄いですがやはり涙が出ました。こんな感動をありがとうございました。
by マリエ (2011-01-05 16:23)
素晴らしい贈り物…。丁寧な作業を見ているだけで胸が躍ります。息子が心を込めて選んだ言葉や写真を美しくちりばめ、手作業で作り上げた本をプレゼントされて、お父様も感激ですね。なんと、ドイツ人さんご自身もオペラで歌っていらしたとは! そして、家族内での話題がショーペンハウアーとは! 教養の厚みが違うというか、なんというか…。さらっと短歌を詠めちゃうめぎさんもすごいです。心のこもった美しい栞になりましたね。
by tanpopo (2011-01-05 19:09)
素晴らしいですね!
やっぱり手作りが一番でしょう♪
by ふくちょ〜 (2011-01-05 19:11)
わたしも泣けます。こんなプレゼントをもらったら、どんなに幸せになるでしょう。
by HIROMI (2011-01-05 21:17)
本を手にしたお父様の喜びが画面から滲み出てくるような気がします。
心のこもった贈り物素晴らしいですね。
by miffy (2011-01-05 21:43)
これはもう、贈り物の原点ですね。
こんなに温かく歴史の詰まった本は、涙無しに読めないです。
思いついたとしても、作り上げることが出来る人は、そうは
いないでしょう。愛の深い方ですね。
by nachic (2011-01-05 22:33)
粋な贈りのもですねえ~さすがです!
by HAZUMI (2011-01-05 23:11)
ほんとに素晴らしいですね。
家族の心の通った、かけがえのない
プレゼントですね。
by ケイクス (2011-01-05 23:14)
こんな贈り物を頂いたら泣く。絶対に泣く。(T_T)
めぎ家のドイツ人さんは素晴らしい。そのめぎ家のドイツ人さんを支えるめぎさんも素晴らしい。(^。^)
by あかえび (2011-01-05 23:39)
これはこれは素晴らしい仕上がりですね!
私も絶対に真似してやってみようと思います。
by アヨアン・イゴカー (2011-01-06 00:47)
夜中にボロ泣き。
by もんとれ (2011-01-06 03:20)
すばらしいほんですね。世界に1冊しかない気持ちがこもった本。
本になるって、それだけいろんな事があったのですね。
そして、私は私の親の歴史って知らないな、って思いました。
いつも子供ばかりにスポットが当たってしまってますが、たまには
送る人、その人にスポットを当ててみるっていうのもいいですね。
by どらっち (2011-01-06 05:08)
あれ~niceも押したつもりが・・・
読んで感動してコメントしたつもりになっていたかも、、、
よくやっちゃう(^_^;)
世界に一冊だけの本(花じゃなく・・・)
素晴らしいですね。製本興味あります☆
by 夢空 (2011-01-06 20:29)
すばらしい贈り物でしたね。
by テリー (2011-01-06 21:57)
何でもつくれてしまうのだなぁ。
by 春分 (2011-01-06 22:06)
こんな風に親を大切に思いやること、自分にできているか自問自答してしまいました。本当に素晴らしい贈り物をしましたね。
by rinochi (2011-01-06 22:46)
心のこもった、全てが手作りの贈り物。
私も目頭が熱くなりました。
めぎさんのドイツ人お父様、これからも長生きして欲しいですね。
2巻目の製本を期待してます。
by いさ (2011-01-08 17:16)