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オペラ「薔薇の騎士」を見る [2022年春 ウィーン~シュプロン]

現在、一日おきに2022年春旅の話を連載中。旅の2日目、ウィーンにてオペラ座に来たところ。
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この日の席は真正面、ミッテルロージェという正面2階席の4列目。お値段は一人141ユーロだった。
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ミッテルロージェの場合、そこ専用のクロークがある。つまり、帰りにあまり混まずにコートを受け取ることができ、とても良かった。でも、ちょっと閉塞感があったな…4列目でも舞台はよく見えるが、左右に壁があるので篭った感じが否めず、最前列以外はあまりお勧めしないかも。 各席にモニターがついていて、ドイツ語の歌詞も見られるし、英訳も選べるようになっている。昔はそこに日本語訳もあったように記憶しているのだが、今回はドイツ語と英語しかなかった。コロナで日本人が来なくなったからか、スポンサーが降りたのか。
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↑めぎの隣には小さな子供連れの3人が座っていた。お父さんらしき人の咳がひどくて、この人コロナだったらどうしよう、とめぎはちょっと気になっちゃって。めぎもその人もFFP2マスクをしているとはいえ(このときマスク着用は義務だった)、すぐ隣だものね…さらに、子どもはオペラには小さすぎてすっかり飽きた様子で…それもこの日のオペラは魔笛とかの分かりやすいのでもイタリア物の短めのでもなく、大人でもなかなか内容をつかむのが難しいアイロニーたっぷりの長丁場ものである「薔薇の騎士」。3幕目には帰宅してしまい、めぎはやっと隣の咳を気にせずオペラに集中できた。

「薔薇の騎士」は、2019年にも見に来たオペラで、めぎ家の大好物。初演はドレスデンだし、作曲家はリヒャルト・シュトラウス、つまりドイツ人だが、ウィーンを舞台にしているしウィーンのオペラ座の演出は1968年のオットー・シェンクのが未だにそのまま再演されていてレジェンドのような存在だし、その演出が素敵なので、何度見ても楽しい。これは1979年の同じオットー・シェンクの演出でバイエルンで上演されたもの。めぎ一番のお勧めのオクタヴィアン。オーケストラの演奏も、このクライバーの指揮がダントツ。日本語字幕付き。



同じクライバーの指揮で、同じオットー・シェンクの演出で、ウィーン上演のこちらは、1994年のもので日本語字幕付き。めぎが見たのはこれとほぼ同じ。それにしても、クライバーの指揮の演奏、一度見てみたかったな…



めぎたちはほぼ毎週末、主にYouTubeでオペラやコンサートを見たり聞いたりしているのだが、その演目と言えば実は、モーツァルトの曲か「薔薇の騎士」かのほぼ2択である。その中にたまに別の曲…その場合はベートーベンかバッハかワーグナーが多い…が入る程度である。昔は色々聞いたけど、歳をとってきて好みがモーツァルトと「薔薇の騎士」に集約されたというか、モーツァルトはオペラはもちろん交響曲とか室内楽とかまだまだ知らない曲がいっぱいあって色々聞いてみたいという興味があるのだが、それ以外はこの「薔薇の騎士」を極めたいという欲求が強くて。歌詞(ドイツ語)はいくら読んでも読み足りないほど新たな発見のある劇作家ホーフマンスタールのだし、シュトラウスの作曲も、ものすごく複雑なのが一つにまとまっていていくら聞いても新たな発見が絶えず、最近の新しい演出にも興味あるし、昔の素晴らしい歌手のにも惹かれるし、普遍的でありつつ今でも斬新であり、アイロニーが哲学的だったり哲学的なのが皮肉だったり、いろんなことが2重にも3重にも錦絵のように組み合わさっていて、そのテーマが深くてめぎにはまだまだ追いきれないのだ…子どもの頃このオペラに子役で出演していて、大人になってからもアルバイトで歌のない役で出続け、つまり55年以上の付き合いであるうちのドイツ人も、未だ新たな発見があるという。

これはカラヤン指揮の1960年ザルツブルク音楽祭ので、キャストがそうそうたる顔ぶれで凄い。衣装も素晴らしい。これぞ薔薇の騎士、これぞ貴族の世界という感じ。これが上演されていたのはこの曲ができてから50年後のことで、その時こんなに素晴らしくて、それから今60年がたったのに、これ以上の出来のものが未だどこにも無いなんて、どういうことなの…とちょっと思う。



2008年のドレスデン歌劇場が日本で公演した時のこちらは、日本人ソプラノ歌手森麻季が出ているもの。この森さんの歌唱力、素晴らしい。うちのドイツ人も脱帽。なぜその後ヨーロッパで活躍しなかったのか、凄く残念。貼り付けられないようになっているようなので、リンクのみ。

バイエルンは2021年にオットー・シェンクの演出をやめて新しい演出を発表した。それは全曲のビデオがYouTubeにないのだが、結構面白かったし、マリアンデルがなかなかいいので貼っておく。でも、オックスがあまりにもバカ過ぎてちょっと残念。オックスはただのエロおやじではなく、彼にも彼の美学・哲学があるのだというところが重要だと思うので。



このゾフィーいいねえ、この元帥夫人いいねえ、このオックスいいねえ、この演出も悪くないねえ、と話したのがベルリンの新しいこちら。残念ながら全曲のビデオはYouTubeには無いのだが、雰囲気だけでも。



で、上の2つの新しいオックスが実は同じ歌手なのだが、その歌手が今回ウィーンでも歌うというので、とても楽しみにしていた。彼は本当に歌が上手い。身のこなしも上手い。オットー・シェンクの伝統的演出のオックスも巧みにこなしていた。雰囲気はこちらの写真をどうぞ。

見所や新たな発見のことなど書き始めたら365日分のブログが必要となるのでやめておく。一つだけ書くなら…と言ってもかなり長くマニアックな話になるのだが…めぎはいつも、一幕目に出てくる「イタリア人歌手」の歌をとても楽しみにしている。それは、イタリアオペラをものすごく皮肉った役回りなのだが、かつてはその役のためにパバロッティが起用されていたほどの難役で、つまり歌うのが非常に難しく、でもいかにもというイタリアオペラテノール歌手が必要で、そのほんの数分だけの出番のためにパバロッティを呼ぶほどの大事な役なのだ。そのメロディは名だたるイタリア人オペラ作曲家の素晴らしく有名なメロディ(蝶々夫人とかトゥーランドットとか)に負けないほど美しく、それをドイツ人作曲家が書いたというだけでイタリアオペラへの挑戦であると同時に大いなる皮肉であるのだが、そんなことはさておき、その歌がどう歌われるかはめぎにとってとても重要なチェックポイント。

しかしめぎは、長いことその「イタリア人歌手」の役は、他の物売りの役などと同様に元帥夫人にお金の普請に来た旅人歌手なのだろうと勝手に思い込んでいた。中世のミンネゼンガーのような人なんだろう、と想像していたのだ。が、なんとその歌手は、元帥夫人に恋したイタリア人貴族か将校かが愛の告白の歌を贈るためによこした歌手なのだということを割と最近になって知り(シルヴァ閣下から送られてきた歌手、という歌詞であることに気がつき、シルヴァって誰?と不思議に思ってうちのドイツ人に聞いてようやくわかったのだった)、あっそうなのか~!と。だから元帥夫人は恍惚とした表情をするのだ…イタリアオペラ風の調べに酔っているだけではなかったのだ!つまり、元帥夫人もオックスほどではないにしろそれなりに色恋沙汰の経験をしているということがそこでも表現されていたのだ(例えばオクタヴィアンに「いつかだって…」と昔の愛人との話をうっかりしそうになって慌てる場面以外にもという意味で)。

と言っても演出によっては、その歌の披露中に元帥夫人が帽子を選んだりペットの物売りから猫を飼っていたりするシーンがある。つまり歌はただの余興でその最中に元帥夫人が歌を聞いてはおらずにいろんなことをしているわけで、シルヴァ閣下が愛人とは限らないようだ。その場合の演出家の解釈は例えば、イタリア人と言うのは女性には愛の歌を贈ることしかしない、という皮肉で、その小貴族イタリア人はずっと高い位の元帥に取り入るために姑息に元帥夫人に歌を贈り、シルヴァってなかなかの文化人よと推薦してもらおうという魂胆だったのでは、というものらしい。どっちにしても全て茶番なのだ。ホーフマンスタールがどういう意図で台本を書いたかは知らないが、いろんな解釈が成り立つなんて、どこまで周到なの…ともかくその歌詞は愛に真剣であり、歌も真剣であり、本当にイタリアオペラ顔負けの美しく情熱的な調べで、思わずうっとり聞き入ってしまうのだ…そこだけ、4時間ほどのオペラの中で全く異色に輝いている。

参考に、ヨナス・カウフマンの「イタリア人歌手」を貼っておく。この演出、さらにイタリア人を茶化したものとなっているが、残念ながらカウフマンではイタリア人になり切れていない。彼の声はソフト過ぎて、ここで期待するイタリア人の声とは違うように思う。しかし、ものすごく上手いことは確かであるし、カウフマンをこの役に使うということの贅沢さがよく分かる。彼の1回目の歌はビデオの1分ぐらいから始まって2分58秒ぐらいで終わり、本当に歌を聞かせられるのはその2分間だけだ。2回目の歌は5分23秒ぐらいから始まるが、演出で邪魔が入ってまともに聞けないし、6分20秒でおしまいになる(それはホーフマンスタールとシュトラウスのオリジナルの演出)。カウフマンのファンとしては、この3時間半もかかるオペラの中でたった2分(プラス1分)しか聞けないということ。



パバロッティのも見つけたので貼っておく。残念ながら映像が悪いし音も小さいが。音量を上げれば一応聞ける。これが、本来求められている「イタリア人歌手」なのだ。素晴らしい。流石である。1回目は2分から3分56秒ぐらいまで、2回目は6分ぐらいから。しかし、この全部でたった3分足らずの出演料はいったいいくらなんだろう。



お時間と興味のある方は、「イタリア人歌手」聞き比べをどうぞ。79年のバイエルン・クライバーのは36分55秒ぐらいから、94年ウィーン・クライバーのは39分5秒ぐらいから、カラヤンの1960年ザルツブルクのは37分50秒ぐらいから、ドレスデン日本公演のは39分40秒ぐらいから、ベルリンのは0分36秒ぐらいから。新しいバイエルンのは残念ながら無い。ちなみに今回のウィーンでの「イタリア人歌手」は代役で、残念ながらちょっと…だった。

さて、これは1幕目のあとの幕間にオペラ座のテラスに出て撮影。19時20分頃。
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ちょっとアンバランスな格好のお二人…それよりなにより、その格好で外は寒すぎる…このとき3℃ぐらいだったと思う。
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夕陽の色が綺麗だった。明日は天気になるかな…
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5月中旬の金曜日のマルクト広場 [食べ物・飲み物]

これは先週の金曜日。
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今年の新じゃがが登場。
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日本人が新米に心躍るように、ドイツ人は新じゃがに心を躍らせる。新じゃがを待ちわびる心やそれを目にしたときの目の輝きには、食事をフランス人や日本人ほど重要視しないドイツ人も美味しいものへの憧れがあるんだなあと気付かされる。

そして今は白アスパラ最盛期。めぎたちがいつも買うのは最高級品で、今は1キロが12ユーロ。
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その後等級分けされて並んでいて、11ユーロのは数が多い。
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それから6ユーロとか7ユーロとかがあり…
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一番下は2ユーロ。写真の右上の折れたのがいくらだったかは未確認。
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緑が濃くなった。
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その下で立ち話する人たちと…
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スマホでゲームしながら親の買い物が終わるのを待つ子どもたち。
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金曜日の午前中になぜ子供たちがこんなところにいるのかと言えば、この日は午後に暴風雨の予報だったので、学校によっては一日休講にしたのだろう。または、この日が卒業試験の口頭試験日で、他の学年は休講になっていたのかもしれない。

ワンちゃんが肉屋さんに集中していた。
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さて、その日のぼくたち。
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付け合わせの生ハム。
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細めのを1皿目。白アスパラも味が最高潮に達したし、新じゃがが嬉しい。
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太いのを2皿目。
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白アスパラの日はそれをメインに味わうため、これ以外のメニューは無し。

最後にデザート。うちのドイツ人が作ったグリースブライ(粗挽き穀物粉を牛乳で煮てココアで色を付けたプディング状の物)に、うちのドイツ人の叔母の2019年お手製のアプリコットジャム。
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そう言えば、ドイツ人って、季節の果物で手作りジャムを作る人はものすごく多い。そういう意味では、ドイツ人って季節をものすごく大事にして人たちと言えるかも。買ってきて済ますのではなく、調理を儀式として楽しむというか。

予報通り凄い雨になったことは既に書いたが、食事の頃には雨も上がり、光も射し、ドラマチックな空だった。
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オペラ座へ [2022年春 ウィーン~シュプロン]

現在、一日おきに2022年春旅の話を連載中。

旅の2日目のお昼過ぎにウィーン入りしためぎたちは、18時からのオペラに備え、特にどこにも行かずに過ごした。つまり宿でまったりとし、17時ごろに持参して来たものの残りをつまんで軽く夕食とし、17時半頃出発。
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雨は上がり、日も差していたが、風が冷たかった。
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シュテファン大聖堂のところで右に曲がり、ケルントナー通りを行く。
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するとリングに突き当たるのだが、ここはその一歩手前。
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そこにウィーン国立オペラ座がある。好きな人にはお馴染みの場所。
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その前はカラヤン広場。奥に見えているのはホテル・ザッハー。あのザッハートルテのザッハーで、そこにカフェ・ザッハーもある。
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振り返ると遠くにシュテファン大聖堂が見える。
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オペラ座の向かいはホテル・ブリストル。
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ホント、どう撮ったらいいか分からないほどゴージャスな建物ばかり。
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この日、めぎはオペラにAPS-CのZ50に28㎜単焦点をつけて持参(35㎜換算42㎜)。スマホでも今時は結構綺麗に撮れるが、トリミング耐性となるとまだよくないし、カーテンコール時の強い光では白飛びし過ぎるので、思い切ってカメラにした。Z50と28㎜単焦点は小さくて、オペラにも持ち込みやすい。

さて、入りましょ…
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