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30年 [小さな出来事]

10月3日はドイツ統一の日。めぎにとって在独19回目の今年は30周年だった。
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だからと言ってめぎもうちのドイツ人も何をするわけでもなく、祝日なので床の張替えもできなければ買い物もできないわけで、しかも雨で、ただうちで仕事していた…めぎは膨大な採点があって、何時間やっても終わらない。何しろ試験自体が短いので90分、長いので135分の試験で、答案は作文なので、採点にもそれなりの時間がかかるのだ。それに、採点というのはめぎにとって、ただ合っている間違っているだけではなく、一人一人の顔を思い浮かべ、その生徒が一生懸命考えてこの作文を書いたその努力に思いを寄せる時間。
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昨日のコメントで、日曜日に音を立ててはいけないのはキリスト教の安息日のためか、という質問があったが、もともとはそこからこの決まりがあるのは確かだろう。でも現在は、習慣というわけでも宗教的にみんなが従っているわけでも無くて、法律で定められている。何しろ今やドイツにはキリスト教信者以外の人口も非常に多いわけで、宗教だけではそんな統率は取れない。今の決まりは、仕事の効率のためには休みが必要だ、という既に1927年にある法律家によって記された考えから来ているようであり、全ての人が十分に睡眠をとってリフレッシュして英気を養えるよう、その日には煩い音を立ててはいけない、という考えになったようである。法律だからこそ日曜日や祝日はどこもかしこも工事がストップしているし、スーパーやデパートや商店も全て閉店である。個人領域の自宅での日曜大工に警察が取り締まりをするわけではないが、日曜日に音を立てて工事どころか洗濯や掃除をしていたら、近所の人に注意されたり、通報されたりする可能性は否定できない(古い建物が多いので、アパートなどでは洗濯をしていたら水の音や振動が聞こえるのだ)。日曜に限らず、夜10時を過ぎたらシャワーはダメ、という決まりもあったりする。ドイツ人は音に敏感なのだ。都市部ではかなり緩くなってて、夜10時過ぎにシャワーを浴びる人は若者を中心にいくらでもいるし、日曜に洗濯している人もごまんといるし、ちょっと壁に穴をあけている音が聞こえることもあるが、それは外国人が多くなったからだとも言われている。
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話が逸れたけど、ドイツ統一の日でしみじみ思うのは、30年前と今の世界の違いである。30年前は、世界が一つになっていく動きがあって、自由が広がり、みんなが権利を持ち、羽ばたいていくダイナミックな解放感に満ち溢れていた。そう感じたのは、めぎがその頃まだ若く、大人になったばかりでチャンスがまだまだいっぱいあるところだったからかもしれないが、確かにあの頃は世界が開かれていたのだ。そして、さらに開かれていく途中だったのだ。30年前には、旧体制や宗教や保守的な習慣に縛られる生き方からの解放感が、日本にも世界にもいっぱいだったように思う。
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でも今は、先端技術だけでなくモラルやドリームの第一人者であったアメリカがあんな罵声を浴びせ合う状況だし、自由と権利を求めて塀を乗り越えた東ドイツの人たちは外国人や難民の自由と権利を排除したがっているし、とにかくみんな自分の既得権を守り他を排除して己を肥やしていくことにばっかり夢中であるというか、メルケルさんの後を継ぐらしい政治家たちも自らの金策ばかりだし、コロナとは言えどこもかしこも国も閉ざしていく一方だし、どうなんだろう、この先。
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これを引き継ぐ次世代の若者は、この状況をどう捉え、我々大人の世代をどう見て、次の30年をどう生きていくのかな。
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この30年のうちの18年をめぎはドイツで暮らした。次の30年も生き続ける可能性は平均寿命から見ると大いにある。これからどうなっていくのかあまり見たくない気もするが、見続けなければならないのかもしれない。長生きすることって、そんなにいいことでもないのかもしれないな。30年後、生きててよかったなと思えるような世界だったらいいのだけど。
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めぎはその昔西側から東ベルリンに入ったことがあるし、ベルリンの壁も見たことがあるし、それが崩壊した日のこともよく覚えているし、18年前にはまだまだ復興中という感じの街中大工事中のベルリンを訪ねたこともある。そして今、ドイツが再統一された頃どころか、めぎがドイツで暮らし始めたときにもまだ生まれていなかったドイツの若者たちに教えている。この仕事ができる時間は、今後67歳の定年まで働いたとしても、これまでの18年より短い。まあまだまだあるとは言え、残りの時間、まだ柔らかい心の若者たちに何を伝えられるか、何を伝えなければならないのか、もっと真剣に考えて行かなければならないと思っている。
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