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英語の時間 [文化の違い]

今年度から仕事上の立場が変わってあれこれ新しくしなければならないことが増えためぎ。その一つが中等部の授業で(めぎの勤務先は中高一貫校)、それに付随して学校内の代講もしなければならなくなった。というのは、中等部というのは高等部と違って休講にすることができないので(というか、反対に言えば、ドイツの高等部は教師が急病や出張の場合などは休講になる)、代わりの先生がその時間に授業、というかお守りをするわけだ。今週は修学旅行やら見学旅行やらがあって、該当学年の担任をしている先生方はみな引率で行ってしまい、残った教師たちがその先生方の別の学年の担当科目の代講をしなければならなくて、めぎもそれに割り当てられた。そんなわけでめぎは先日畑違いの科目の代講デビューとなったのだ。まあそれは、あらかじめその先生方から教科書の何ページのこの問題をやらせる、というような指示があって、自分で全部考えるわけではないのだが、ドイツの教育のやり方を垣間見る面白い時間となった。今日はその中から日本と比較しやすい英語の教科書をご紹介。

これは日本で言えば中2にあたる学年の英語の教科書。ドイツの生徒たちは小学校3年の時から英語が必修で、まずはブリティッシュイングリッシュを習う。英語を習い始めて6年目にしてはじめてアメリカ英語を習うわけで、まずはマンハッタンの地図が目に入った。
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目次を見ると、アメリカの様々な地域と文化を学びつつ英語表現を広げていくようだ。
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そして見開きの写真。「アメリカに到着。これからアメリカを巡る旅に出ることを想像しよう。この町で何を見て何をしたい?アメリカについて他にどんなイメージを持っている?それを説明しよう。そして、ほかにどこに行きたいか言ってみよう。」と英語で書いてある。英語の教科書は最初から最後まで英語しか書いていない。英語は英語で授業するわけだ。
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最初はニューヨークについて。
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サンタフェへの道・・・
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これって英語の教科書?地理じゃないの?歴史じゃないの?と思うような感じ。
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めぎはある読み物を読ませてその問題をやらせるというとっても簡単な授業を仰せつかって、クラス全体でディスカッションさせるというようなことはせずに済んだのだが、↑こんな感じのページを4ページ分読んで、内容についての3択質問(質問も選択肢もすべて英語)を一応自分でも準備していって生徒の質問に答えられるようにした(久々に英語のテキストを読んで問題に答えるという経験は楽しかった)。引き続き、登場人物の一人になって英語でテキストの内容を自分が経験したこととして再現する会話を作るとか、その続きのストーリーを書くとかという問題もあって、45分の授業でそこまで終えてしまう生徒たちの英語力にはまったくもって感心してしまった…私の中2の頃のレベルとはホント雲泥の違いだわ…生徒たちは英語を母国語のドイツ語に訳すなんてことはせず、読んでそのまま英語で答えられ、英語ですらすらと作文できるのだ。授業中見ていたら、生徒同士で英語で会話したりもしていたし。英語という外国語は中2にもなるともうすっかりバイリンガル並みなのね。

生徒たちは上にも書いたようにまずはブリティッシュを習っているので、こんな問題もあった。あ、でも、pantsってアメリカ英語側に載せるべきよね…これ、ミスプリだわね。
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ドイツではアメリカ英語とブリティッシュをきっちり別物と分けていて、先日10月6日のマウスの番組でも、冒頭の今日の話題を紹介する部分で(いつもまずドイツ語で、そのあと同じのを外国語で紹介する)、アメリカ英語だと紹介されていた。見たい方はこちらをクリックし、左側のAkutuelle Sendungをクリックして3.33分から4.04分までの30秒をどうぞ。あ、でも、見られるのは10月12日まで。そのあとは次の週の映像に切り替わってしまうので。

バイリンガル並みになるためにどんな風に授業をしているのかといえば、こんな感じ。クラスで2週間アメリカ南西部に行くと仮定して旅行プランを立てるという課題。1週目はアメリカの学校に留学し、2週目は観光。ステップ1から5までの課題を経て、インターネットで情報を集めたりもして最後には自分の2週間の旅行プランを完成させ、クラスでプレゼンテーションし(PowerPointなどを使って)、生徒たちはチェックシートで一つ一つのプレゼンを評価し、一番いいプランを決定するというもの。なんて実際的なのかしら。それに、楽しいわよね…
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また、こんなのも。これはハリウッドやシリコンバレーの歴史的説明があるページで…
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例えばシリコンバレーだとこんなテキストを読み、このテキストの見出しを考え、その時代にそこにいたとイメージし、友達に手紙を書いてどうしてカリフォルニアに行きたいか説明しろという課題。
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やっぱり英語は使えてなんぼなのだ。言葉なんだから。難しいテキストが読めるかどうかは英文学でも読むなら必要だが、まずは必要な情報を見つけて発信できるようにならないと、という教育の仕方が教科書からも垣間見えた。日本も今は英語教育を変えていこうとあれこれしているところだと聞く。入試のやり方も変わってきてて、リスニング重視になっているとか。生徒たち、昔より話せるようになっているかしら。めぎが最も重要だと思うのは、英語の教師たちが英語をきっちり話せるようになるべきだという点である。英語だけで授業ができるくらいに。英語教育を変えるのはまずはそこからだ。そのために英語教師になるには英語圏への留学を義務付けるくらいの勢いでないといけない。しかしそのためには相当な努力とお金がかかるわねえ…ヨーロッパみたいに外国にサクッと行けるわけじゃないものね。
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