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大学最終日 [仕事風景]

めぎはこの週末から夏休み。高校も大学も同時に夏休みに入るという珍しい年で、何年かぶりに6週間まるまる夏休み。いつも6月末や7月はじめに高校のほうが休みに入り、その後2~3週間大学の授業が続くという感じだったのだが、今年は同時に休みに入るので、もう何年も前から楽しみにしていた。
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どうしてそんな事が起こるのかと言えば、大学の夏休みはほぼ一定して同じ時期(7月中旬~10月上旬)なのに対し、小中高の夏休みは毎年時期が違うから。ドイツでは州ごとに学校の夏休みの時期をずらしていて(渋滞や観光地・避暑地の混雑を避けるため、そして経済的にもドイツ中が何週間もの長期休みに入ってしまうのを避けるため)、例えば今年はめぎの住むノルトライン・ヴェストファーレン州は7月15日からだが、ベルリンは6月20日から、ハンブルクは6月27日から、北ドイツの義妹の家のあるニーダーザクセン州は7月4日から、義母の住むザクセン州は7月8日から、そしてミュンヘンのあるバイエルン州は7月29日からで、つまりバイエルン州が夏休みに入ったと思ったらベルリンは8月2日で夏休みを終えるのである。これはローテーションするので、ノルトライン・ヴェストファーレン州が6月20日頃に夏休みに入る年には、めぎは大学の終わる7月中旬まで仕事があり、夏休みは実質7月後半の2週間だけということになるわけだ。

これは7月2週目、めぎの大学最終日朝の撮影。
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夏休みに限らず、めぎは春休みも秋休みも高校が休みに入るとともにそれまで休みだった大学が始まってしまうというズレに悩まされてきた。日本のみなさまの休みの少なさに比べたらそれでもずいぶん休みが多いわけで贅沢は言えないが、郷に入れば郷に従うというか郷に慣れるわけで、春と秋にもそれぞれ2週間の休みを謳歌してリフレッシュする同僚たちに対し、めぎはずっと仕事していて頭の切り替えができず、それでも5連休くらいはあるのだけどなかなか芯からリフレッシュできないもどかしさを感じていた。外国人としては安定して仕事があるだけで幸せなことだし、若いときは休みがなくても大した問題ではなかったが、年をとるとともにどんどんしんどく感じるようになっていた。ここ数年は高校の方で毎年毎年授業時間数が増え、生徒数も増え、仕事量が膨大になり、やりがいも増えたがストレスも増え、めぎはいっぱいいっぱいになっていた。
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休みのことに加え、高校のどうしても外せない行事や試験のために大学の授業日程をやりくりするのも大変で、いつまでこんな二足のわらじを続けられるかな、と思うようになってもう数年。一応めぎなりに目処としていた年が合ったのだが、そこまであと3年ほどという今年、急に節目を迎えることとなった。来年度から高校の方で立場が変わり、簡単に言えば昇格し、それとともに高校の方でする仕事もさらに増えることとなり、時間的に大学の仕事が続けられなくなったのである。
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めぎはデュッセルドルフ大学に17年間勤め続けてきた。勤めると言っても非常勤だったのだけど、ずっと8時間の授業を担当し続けてきたのである。17年間冬学期と夏学期、冬学期と夏学期・・・の繰り返しを続けてきた今、それをやめるというのはめぎ的にかなり大きな決断であった。だって、ドイツに来てからずっとずっと大学にいたのであって、大学はめぎの拠り所のようなところだったのだもの。
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数年前からデュッセルドルフ大学は大掛かりな工事をしているのだけど、その完成を見届けることなく終わるなんて、今学期の始めには思ってもいなかったんだけど。
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大学にいると、歳をとってもまだ学生でいるかのような独特の雰囲気がある。たとえ教授でも研究をしているときは新鮮な気持ちで新しい発見や自分の思いつきにウキウキしているわけで、いつまでも若い学生のような面があるのだ。でも、高校の世界では教師は生徒たちと一線を画し、先生は決して学生的な側面を持たない。こちらは大人、そちらは子供、というハッキリと境界のある世界なのだ。大学での学生との関係は大人の関係で非常に快適で、その上ずっと学生でいられるような、歳をとっても何か許されている雰囲気から卒業するのは正直寂しいけれど、やっと大人になるというか、やっと一人前に独り立ちすると言うか、大人にならなきゃなと言うか、そんな気分でもある。
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高校の方で責任ある立場になってその仕事だけで生きていけるなんて、夢のようなことでとても嬉しい。だから、寂しさはあるもののこの決断をしたあとは清々しく、とても嬉しく大学を引退した。これは最後の担当授業が終わって帰るときに写したもの。デュッセルドルフに住んでいる以上もうここに来ることが無いというわけではないけれど、また冬学期にね、と言わないで帰るのはなんだかまだ不思議。
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夏休みが終わると、めぎのドイツ生活は18年目に入る。ドイツでは成人の年だ。そんな節目に大学を去ることになったこともなにかの巡り合わせのような気がする。無事にドイツで成人できるように育ててくれた大学と大学の同僚と学生たちに心から感謝。
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