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節分のデュッセルドルフにて [小さな出来事]

節分のこの日曜日、デュッセルドルフは冷え込みとともに青空が広がった。
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こんな光のある日は散歩も楽しい。雨で雪が消えちゃったけど、雪があった頃と同じくらい空気は冷たいのだが。
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今日は、昨日のYAPさんのご質問から思いついたことを書こうと思う。そのための撮影はしていないので、写真は話と全く関係ない。

デュッセルドルフ市は人口63.5万人ほどの中都市だが(2016年統計=こちら)、ドイツで一二を争う経済の中心地である。国内総生産ならぬ州内総生産がドイツ第一位のノルトライン・ヴェストファーレン州の州都であり、多くの企業が本社を置いている街。パリやブリュッセルにも近くて日帰りで出張しやすいという地の利もある。日本企業が多く拠点としているのもそのためであろう。
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日本人が多いと言われるデュッセルドルフだが、日本人の人口は5600人ほどで1割に満たない。いや、こう書くと、1割程度もいるの?と結構多く感じるかも知れないが、デュッセルドルフには外国人が14万人以上、約22%をしめており、日本人は他にもたくさんいる外国人の一部という感じである。ちなみに最も多数を占めているのはもちろんヨーロッパ人で9万4千人ちょっと、そのうち最も多いのはトルコ人で約1万3千人(これをヨーロッパに含めているのはデュッセルドルフの統計に拠る)、2番めはギリシャ人で約1万人、3番めはポーランド人で9千人強、4番めはイタリア人で8千人近く、5番目はセルビア&モンテネグロ人で6600人ほど、それにルーマニア、ロシア、スペインなどがそれぞれ4千人台で続く。アジア人は全部で3万人以上で、日本人はその中で一番多く、次にシリア人が5400人ほどとほぼ同じくらい(これまた日本人的には日本がシリアと同じカテゴリーというのがへええと感じてしまうかしら・・・)。中国人は4千人弱だが、今後どんどん増えるのかも知れないな。アフリカ人は全部で1万人ちょっとでそのうち4600人がモロッコ人。アメリカは大陸全部で4000人ほどでそのうちUSAは1700人ほど。これはすべて外国籍を持ちながらデュッセルドルフに住民登録している人の数で、その子供などがドイツ国籍を持っていてこの数に入っていないと考えると、外国系はもっともっと多いことが伺える。
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まあそんなわけで、デュッセルドルフには世界各地の食材店があって、最も目につくのはトルコ系・ギリシャ系・アラブ系なのだが、日系もめぎが知るだけでも4店ある(そのうち少なくとも2店は経営は韓国系)。もっとあるのかも知れない。その店の中に入ると、ハッキリ言えばなんでもある。日本から取り寄せなくとも日本食材はほぼ何でも揃う。米・主な麺類・味噌・醤油・お茶等はもちろん、めんつゆ、だしの素、漬物の素、ポン酢、焼肉のタレ、チューブ入りのわさびや辛子、七味などの調味料や、豆腐、納豆、こんにゃくやしらたき類、冷凍食品、昆布や海苔やワカメやヒジキなど海藻類もあるし、なめたけとか海苔の佃煮とかもあるし、餅もあれば大福もあるし、おかきや日本のチョコレート菓子などの主なお菓子もあるし、ドイツのスーパーにはない春菊やエノキやニラやもやしや大葉などの野菜もあるし、日本人向けにサクの魚や薄切り肉も売られてて、そこで毎日買い物して日本食だけを作り続けることも可能だろう。めぎはドイツの他の都市では日本食材店に入ったことがないので比較できないが、デュッセルドルフの品揃えは簡単に言えば日本のコンビニ以上で不自由はなく、お値段も日本のコンビニ程度かちょっと毛が生えたくらいで、つまり安くはないが高すぎて買えないというものでもない。
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そんなわけで、以前は例えばバイエルンから定期的にデュッセルドルフへ日本食材の買い出しに来ていたと言う話を聞いたし、今は店によってはネットで注文すればドイツ国内どこにでもお届けしてくれるようだ。買いに来る人はもちろん日本人が多いが、日本食は健康食としてドイツ人にかなり人気なので日本食を作ってみようとするドイツ人も結構買いに来ている。めぎの高校の生徒たちも一週間に1~2回は日本食材店に行って出来合いの寿司やおにぎりを買ったりお菓子を買ったりしているようだ。品物は、上にも書いたようにほぼ何でもある。ただ、北海道の筋子、たらこ、ウニの塩漬け、ハタハタの飯寿司といったものはない。めぎの好物はそういう「無いもの」なので、それに限って送ってもらっているのだ。言い換えれば、それら以外にめぎがどうしても食べたいものはあまりなく、だからあまり日本食材店へ買い物に行かず、日々うちのドイツ人の作るドイツ食を食べていられるのだ。めぎの場合、無くなるとお米と麺類と調味料を買い、2ヶ月に1回くらい食べたくなって豆腐と納豆を買い、5~6ヶ月に一回くらいマグロやタイなどのお刺身を買い、うちのドイツ人が好きなすき焼きを作るときにしらたきやエノキなどを買っているかな。そんなふうにあまり買わないとは言え、買いたいと思ったらすぐに行けるところにお店があるというのはこの上なく便利で、いつでも食べられると思うからこそ食べずにいられるのかも知れないと思う。
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さて、食べ物以外のことに目を向けてみると、デュッセルドルフにはもう一つ極めて特徴的な日本人向け施設がある。子供を持つ日本人にとって多分最も重要な点は、デュッセルドルフに日本人学校があることではないかと思う。まず、駐在員の子供はほとんどその学校へ通う。数年で日本帰国または別の外国へ移るわけだから、将来の受験のためにも日本人学校で日本と同じ教育を受けておくことが非常に大事なのだ(日本人学校は文科省から派遣された日本人の日本の教員免許を持つ先生方が日本の教科書を使って日本と全く同じように教えている)。または、英語圏から移ってきてまた英語圏へ移る可能性の高い人は、また高校生以上の子供を持つ人は、インターナショナルスクールに通わせている(デュッセルの日本人学校は小・中学校までなので)。それに対し、昨日ご紹介しためぎの友人はドイツ人と結婚した人で日本帰国の予定は全く無いし、おそらく現地校に通わせるのだろうと思うが、将来子供に何らかの形で日本語を習わせたい、日本語に触れさせる機会を持ちたいという希望があるのだろう。デュッセルドルフには現地校に通う日系の子供向けの日本語教室が複数あって(一つだけではないのだ!)、ニーズに合わせて教室を選べるし(日本と全く同じペースで同じ国語を教えるとか、ペースダウンしてゆっくり学ぶとか、週末だけとか平日とか色々)、そういう教室に通うことで他の日系の子供を持つ親と情報交換できるというのも、外国で子育てする人にとっては心強いことなのではと想像する。
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また、ドイツ人と結婚した日本人やドイツに移住した日本人にとっては、働く場を見つけやすいという点においてもデュッセルドルフは非常に便利なところ。何しろ日系企業がいっぱいあって、現地職員として日本語とドイツ語ができるという能力を生かして仕事ができるのだ。ハッキリ言えばめぎのケースだって、日本人が多い街だからこそその影響で高校で日本語を第3~第4外国語として選択する生徒も多いわけで(アニメやマンガが好きで日本語を選択する若者も多いが、日系の友だちがいるから興味が湧いて日本語を選択したと話す生徒も実際結構多い)、だからこそめぎの高校は日本語の教師が必要で、めぎを雇ってくれたわけである。それがバイエルンとかザクセンとかの田舎だったら話は全く違っただろう。ハンブルクだって、以前は日本語を選択できる高校があったのに、その先生の定年退職とともに消失してしまったのだ。
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以上のように、日系人には非常に便利なデュッセルドルフだが、外国人として暮らすという意味でもデュッセルドルフは非常に住心地が良い。上に書いたように人口の22%も外国人なので、街の人が外国人慣れしている。誰かと知り合うと、ドイツ人かと思ったらポーランド系だったりチェコ系だったりウクライナ系だったりすることが多いし、だからみんなオープンなのだ。移民も多いけれど、デュッセルドルフには企業が求めるブレインも集まるわけで、みんなそこそこの教養レベル。バイエルンや旧東の排他主義的傾向とは一線を画していて、みんなグローバル。この開放的な空気は本当に気持ちが良い。
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デュッセルドルフには世界遺産もないし、街も比較的新しくて特別な建物はないし、大都会としては小規模すぎるし、買い物するならパリやローマに行くし、文化に触れるならドイツ国内ならハンブルクやベルリンに行くだろう。日本人が多いと聞けば、せっかくドイツに観光に来るのなら日本人のいないところに行きたいと思うのが普通だろう。それが正しいと思う。一年程度の交換留学ならぜひデュッセルドルフを避けてほしいとめぎは思う。ここは、ドイツに長く生活するなら便利でおすすめの街。
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以上、今の時点でめぎの感じるデュッセルドルフの住みやすさを綴ったが、歳とったときにどう感じるかは、めぎはまだ体験していないのでわからない。めぎが定年する頃には歳とった日系人向けの何らかのサービスができているかもしれないと思う。そう言えば去年、カトリック系の老人ホームに日本人が入居し、そのために日本語のできる介護スタッフを雇ったという話を聞いた。そのうちには日本食を出す老人ホームや、日本人専用の老人ホームもできるのかも知れないな。いや、今もう既にあるのかも知れない。
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