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新しい旅立ちの前に [仕事風景]

8月末から9月中旬にかけて、めぎ家は食卓への花を買わなかった。と言うのは、プレゼントされた花があったから。
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数日後、綺麗に百合の花が咲いたのをパチリ。
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プレゼントしてくれたのは、高校のこの夏の卒業生たちである。日本語を選択科目として履修していた生徒たちの一部が、8月の終わり頃のある日突然学校を訪ねてきてくれて、花を始めこんなプレゼントを持ってきてくれたのだった。
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自分で描いた絵やら、幸運をもたらす石や、なぜかお顔のパックが贈られたのだが(めぎ、疲れて見えるのかも)、左下に写っているメモリーブックがめぎの心を打った。日本語のクラスだったのに英語の表紙になっているのはなぜ?ということなどはまあさておき、中身は本当に手作りで、3年間の思い出がギュギュっと詰まっていたのだった。作ったのは2人の生徒で、思い出が手書きの絵とともに綴られている。そして最後に他の生徒たちのメッセージも入っていた。

その手書き部分が凄いのだ。彼らが授業をどう捉え、めぎをどんな風に見ていたかがよくわかる。ひらがなを容赦ないスピードでバンバン教えるめぎの様子、ほぼ毎週やった単語や漢字のテスト、ロールプレイで迫真の演技をした生徒のこと等々、数々の思い出が綴られていた。そんなに色々覚えているようなのに肝心の日本語が間違っているが、まあそれはご愛敬。文章はドイツ語である。
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たくさんの思い出の中でハイライトとして綴られていたのが、日本人の学生との交流の日のことである。大学の協力を得て日本から一か月のドイツ語の語学研修に来ている学生さんを招いて、2時間ほど日本語とドイツ語でインタビューをさせたのだが、その様子がとっても面白い。いろんなことをしたけど、やっぱり生の日本人と触れ合うことって、そんなに貴重でそんなに嬉しいことだったのだな…
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日本語の授業は夕方遅く、3時ごろには授業を終えて帰宅する他の生徒たちはなんで?とからかい、半ば呆れられていたようだが、彼らは喜んで学校に残り、一つのクラスのようにまとまり励まし合い、遅いことも気にならないほど楽しかったのだと言うようなことが書かれていて、ホント、こちらこそ「ありがとう」と言う気持ちになった。
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さて、そんな心のこもったプレゼントを胸に涙するめぎを見て、うちのドイツ人が彼らをうちに招こうと言い出した。コロナで授業が突然打ち切りになり、最後のお別れの場を設けないまま終わってしまった彼らと、ちゃんとお別れパーティーをすべきだというのだ。こんな素敵なプレゼントをもらいっぱなしはよくない、お返ししなきゃ、とも。でも、このコロナ体制の中、33人もの卒業生を招いてもしもクラスターになってしまったら…しかしうちのドイツ人は、この暖かい今のうちなら窓も全開でできるし、ドイツ全体の新規感染者数は日々常に1400人前後だった頃なのだが、10万人当たりの一週間の感染者数は非常に低く、自宅でパーティーをやるのも全くお咎めのない時期で、今だ、と言うのだ。それもそうかもしれない…で、思い切って、グループを半分にして時間差で2回やることとし、マスク着用義務とし、9月最初の日曜日、決行した。

リビングのちょうど板を張り始めたばかりの床のところにこういう長い作業台を置き…
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大きな白い布で覆えば、あらま結構素敵に。うちのドイツ人が色々と料理を作ってくれて、めぎはご飯を炊いて各自自分でおにぎりを作るコーナーとした。感染と言う観点から見るとバイキングは危ないという話も読んだけど、数人の招待じゃないので妥協しなければできないし。
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飲み物は健全にリンゴジュースと炭酸水と、写ってないけどほうじ茶とした。イスラム系の生徒も多いしね。
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そして、リビングでピクニックをするというような趣向。窓は全開で、バルコニーに座っても良し。
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余談だが、このパーティーをすると聞いたうちのドイツ人の母親が、卒業生たちに小さなジョークのナプキンを、と送ってきた。この右の文房具の入った傘のようなのは、小学校入学時にドイツの生徒たちがもらうもの。こういう心遣いが彼女の気の利くところ。間に合って良かったわ。
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そして、生徒たちには何か一品、自分のルーツの文化圏の食べ物を持ってくるようにと言ったのだが、それでも多くはチョコレートや花などを持って来たけど、自分で作ったりお母さんに頼んだりしたというポーランド、クロアチア、コソボ、アルバニア、モロッコ、トルコ、インド、韓国、中華…と様々な料理が並んだ。それだけドイツが多様化しているという証拠である。
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33人のうち来るのは半分ぐらいかな、と思いきや、1グループ目には10人、2グループ目には11人がやってきた。この写真にはインド・エジプト・トルコ・韓国系の卒業生。日本食レストランの多いデュッセルドルフ育ちの彼らは、箸も普通に使える。うちのドイツ人は、これがドイツの今の姿なんだなあとしみじみしていた。なにしろ彼らは、ドイツの高校の最高峰である大学進学資格のとれる高校の卒業生たちなのだ。公立の学校で、インターナショナルスクールでもないし、全員がドイツ語を母語または第一言語としているのである。
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みんな、卒業してから今までの間に次の進学先を決めていて、ミュンヘン大学やらアーヘン大学やら、医学やら経済学やら、大学に入る前に介護系や小学校で実習やら。ドイツは高校卒業即大学入学か浪人ではなく、実習をして経験を積んでから大学に行くという若者も多く、本当に様々だ。そんな次の道の話も聞けて、ちょっぴり大人になった卒業生たちの将来が垣間見えて、とても楽しかった。普通はさらに一年ほど外国を旅してまわるとか、外国で実習をするとかと言うのも多いのだが、そういうのがないのがコロナの今。大学もまず一学期目はオンライン授業なので引越ししない、と言う話も多かった。

そして、プレゼントの数々…立派な花やたくさんのチョコレートの他、作った料理のレシピやら、自分で描いた絵やら、長い手紙やら、その場でノートの切れ端に書いた手紙やら、ホント様々。みんなありがとう。
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で、ちょうど8月末にもらった花が終わったところで再び花束をもらい、9月前半のめぎ家の食卓を飾っていた。
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この頃ものすごく忙しかったけど、頑張って何枚か撮影した。どうしてもこの思い出を撮っておきたくて。
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この花は今も窓辺で美しく咲いている。
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こうしてようやく昨年度が終わった。みんな、楽しい時間をありがとう。そして、それからもう3週間経つが、誰もコロナにかからずに元気にいてくれて、ありがとう。
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コメント 11

Baldhead1010

楽しい思い出になりましたね^^

自分たちが使う英語もネイティブからみたらおかしなものでしょうが、意味はなんとか分かってもらえると思います^^
by Baldhead1010 (2020-09-27 04:25) 

YAP

ああ、これは感激して涙してしまうやつですね。
めぎさんの授業、楽しかったんだろうな。
学校生活の中で、多くの先生と接しますが、大人になってからも記憶に残って感謝の気持ちが続く先生って、ほんの一部です。
きっと彼らにとってめぎさんは、ずっと忘れられない先生なのでしょう。

by YAP (2020-09-27 06:46) 

(。・_・。)2k

教師冥利に尽きますね
これは嬉しい出来事ですね

by (。・_・。)2k (2020-09-27 13:32) 

テリー

ドイツ人さんの協力もあり、たのしい思い出ができましたね。
by テリー (2020-09-27 16:24) 

Inatimy

感謝の気持ちのいっぱい詰まった贈り物、嬉しいですね。
コロナ禍で授業をするのも用意をするのも大変だったでしょうけれど、
こんな風に受け止めてくれてたとわかると、実を結んだと実感できますよね^^。
by Inatimy (2020-09-27 17:52) 

mika

素敵ですね。
思い出をプレゼントしてくれるって本当に嬉しい
ですね(^-^)
by mika (2020-09-27 20:10) 

miffy

気持ちのいっぱい詰まった素敵なプレゼントですね。
今年のお別れパーティはより一層心に残るものになりますね。
by miffy (2020-09-27 21:27) 

stellaria

素敵なお話。素敵な生徒さんたち。本当に素敵なパーティーでしたね。学生さんが描いためぎさんのイラストがとても可愛いです。
by stellaria (2020-09-27 23:50) 

KittyKai

生徒さんたちと楽しい時間が過ごせてよかったですね。
朝顔は秋の花なのですね?初夏に種を植えたら枯れちゃいました。
今から植えてみようかな。
ハワイは今日は30度以上の夏日です。。。
by KittyKai (2020-09-28 09:38) 

momo

読んでて私も泣けました。゚(゚´Д`゚)゚。
めぎ先生の人柄も垣間見えて、ドイツ人さんやお母様の気遣いとか、とても嬉しくなります。
by momo (2020-09-29 09:43) 

engrid

素晴らしいです
こころが豊に、暖かになります
学生さん達と、記憶にいつまでも残るパーティーになりましたのね、ドイツ人さんの提案、ナイス、ドイツの今を見る思い、、そうして広がって、世界が一つになっていくといいなって思いました
by engrid (2020-09-30 01:55)