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両親の家での食事 [2014年夏 日本の旅]

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ここ数日のテーマの食事つながりで、今日はこの夏の実家での食事のお話を。

札幌を訪ねためぎたちを待っていたのは、母の手作りの料理。
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手作りの料理が待っている幸せって、本当に貴重なことね。うちのドイツ人の母親を訪ねても、冷凍食品の解凍しか出てこないのだから。まあ歳をとれば仕方のないこともあるだろうけれど、だからこそ、親が元気で手作りの料理でもてなしてもらえる有り難さが胸にしみる。

蛸とエビを使ったサラダはさっぱりとしていて絶品。
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そして、赤い鉢の中にはお赤飯。
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そう、今回の訪問はお祝い事・・・めぎの父の会社は65歳定年なのだが、父はその後も仕事を任され、70歳で第2の定年を迎えた。それは既に2年くらい前のことなのだが、その間めぎはうちのドイツ人の家族のことで色々あって日本に行く精神的余裕はなく、父が特別な祝いを望まなかったこともあり、改まって何をすることもなく時が過ぎ、今回ようやく訪ねてみんなでお祝いすることになっていた。

ところが今回の日本旅の出発直前、父が突然の病で緊急入院、手術。それはそんな大病ではないが、放っておけるものでもなかった。その知らせを聞いたとき、全ての旅行の予定をキャンセルしてまっすぐ札幌に行かなきゃならないかな、とも思ったが、予定の変更の必要は無し、とのこと。妹も行かないというので、結局入院中の父を見舞うこともなくめぎは東京で友人たちと賑やかに楽しく飲み食いしたという訳だ。

訪ねてから詳細を聞いたところ、最初は4~5日様子を見てから手術するかどうか決めると言った主治医に対し、それじゃ退院がめぎの訪問に間に合わないからすぐに手術をしてくれ、と父の方から頼み込んだのだそうだ。めぎの来る一週間前には退院し、すっかり体調を整えて待っていた父。こういう料理も普通に食べられて、お酒も飲めて、なによりのこと。
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そんなダブルお祝いを、母の優しい味付けの料理をつまみながら家族みんなでおしゃべりできて、めぎにとってもとても嬉しい時間だった。
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8年前に訪ねたときは魚魚魚刺身刺身刺身魚魚・・・と魚介のオンパレードだったが、今回は生ハムやチーズも用意されていた。色々気遣ってくれたのだろうな。うーん、正直なところ、めぎは飽きるほど浴びるほどアザラシになるほど魚を食べたいな、あと5日もしたらこういうのがどっさり安く手に入るところに戻るんだけどな・・・と思いつつ、久々のチーズの味は格別。
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うちのドイツ人が、ちょっとふざけてチーズを箸で♪
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それからデザートの桃。日本の桃は絶品で、ほっぺたが落ちそうというのはこのこと。まさにケーキ代わりのデザートだわね。
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母が用意していたのはワイン。家族6人で(しかも病み上がりでセーブしながら飲んだ人が約1名いたのに)、これだけのお酒を全部空けてしまった。こんな遠くの日本まで来て、ヨーロッパでも滅多に飲まない格のワインをこんなに大量にいただくとはねえ。これ、日本では相当なお値段になるのだろうな。ちなみにワインのセレクションは義弟。めぎの実家には冷蔵庫みたいなワインセラーがあって、母はいいワインを集めて楽しんでいるらしい。そこから義弟が吟味して飲む順番も考えて選んで出してくれたのだった。義弟と妹もワイン好きで自宅に同様のワインセラーを持ち、ワイン会などをやって勉強しているようだ。
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↑一番右端のトカイワインは、長く寝かせたので瓶に色が染みついているが、空っぽ。

そのトカイワイン、飲む前にもっと若いトカイワインと並べて色の違いを写した。寝かせるとこんな色に熟成するのね。母の妹(めぎの叔母)がその昔お土産に買ってきてくれたものだというこの古いトカイワイン、みんなで美味しくいただいた。
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本場ヨーロッパから来たワイン歴40年以上のうちのドイツ人は(ドイツでは16歳からワインが飲めるので、文字通り本当にワイン歴40年以上)、久々のヨーロッパの香りと味に一気にホームシックに。香りというのは本当に残酷だ。同時にそこには醤油味の香りもあり、箸が置かれ、日本の果物が並び、お茶も出される・・・それと共に味わう上質なヨーロッパのワイン。このときどれほどうちのドイツ人が故郷を遠く離れていることを実感したことか、ドイツでそのちょうど反対の経験をしているめぎにはよく分かる。

次の日の朝食には、うちのドイツ人のためにドイツパンが用意されていた。札幌のどこかでかなり本格的なドイツパンが売られているらしい。
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バターが↑こうして切ってあるのは、料理に使いやすいようになのかな。ドイツではバターって冷蔵庫で出しやすい手前に置かれてどっかりと存在感を示しているけど、実家では奥深くに埋もれていたなあ・・・きっとあまりバターを使わないのね。めぎも日本にいた頃はバターなんてほとんど買わなかったものなあ。それはともかく、父や妹夫婦が食べる普通の朝ご飯の他にエキストラにうちのドイツ人用の朝食を用意してくれた母の手間と心遣いにうちのドイツ人は非常に感動し、大喜びでドイツパンを食べた。この朝食のことをドイツに帰国してから家族や友人たちに何度も何度も話していることからも、どれほどこれが印象に残ったかが伺える。食べながら、あと数日でドイツに戻れる・・・と心躍らせてもいたようだ。

めぎはもちろん朝から和食をいただいた。このお味噌汁のにおいが朝は殊の外敏感なうちのドイツ人には辛いだろうな、と知りつつも。(夜なら喜んで食べるのだけどね。)めぎは本物の和食が食べられるあと数日しかない貴重なチャンスを逃したくはないのだ。
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うちのドイツ人がどれほどの日本通になろうとも、朝のお味噌汁のにおいや大根やネギを切るまな板の音から日本人なら誰もが心に描く温かくも切ない懐かしい風景は思い描けない。背景を説明しても、心では理解できない。うちのドイツ人は、今回の旅を通して自分は日本では暮らせないとハッキリ悟ったそうだ。それは、ドイツの味が懐かしいとか文化の違いを感じたとかそういうことではなく、これほどの日本通になり、これほど日本と日本人が大好きだけど、如何に自分が日本のことを決して理解し得ないかをようやく悟ったからなのだとか。それだけ日本通になったということでもあろうか。

次の日の夜は温泉で、その次の日は外の居酒屋で夕食を食べ、早くも最終日の晩。めぎも買い物についていって、目についた出来合いのものも追加して食べたいものを用意してもらった。出来合いのは、鰹のたたきとなまこ酢。イカは釣りたてという感じの透き通った黒々とした生きのいいのを買ってきて母が刺身にしてくれた。(あのドイツに持ち帰ったイカのゴロはこのイカのもの♪)
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この日のメインは和牛。義弟の実家からお中元に贈られた物だとか。ああ、そうだ、日本にはお中元とかお歳暮とかもあったのよね・・・こちらからはアスパラやらメロンやら贈ったという話で、どうやら両親は義弟の実家とよく贈り物をしあっているようだ。霜降りの和牛、柔らかいわねえ!お肉がこんなに薄切りで、ああ日本だわねえ。今年の最後のものだという北海道のアスパラも、う~ん懐かしい味。ドイツの牛肉は霜降りじゃないし、ドイツでアスパラと言えば白で、グリーンのはほとんど食べない。
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鰻の蒲焼きで作ったこのチラシ寿司、とっても美味しかった。蒲焼きは出来合いのを買ってきたのだが、こんな美味しい調理品が手軽に売ってるのが日本の良さね。
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この日のお酒は妹がワインセラーからセレクトしたこちら。義弟が仕事のため先に仙台に帰り、残った5人だけで飲んだとは言え、ちょっとおとなしかったわねえ。
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デザートは葡萄。この種なしで皮の厚い葡萄はうちのドイツ人の印象に残ったものの一つ。ドイツでは皮ごと葡萄を食べるし(だから皮が薄く、皮から実がぽろっと剥がれるような品種改良がされていない)、甘さはドイツのもとても甘いが、甘みの方向が日本とどうも違うように思う。
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そして、お茶。食後にお茶を入れるのって、そういえばドイツでは全くしないこと。
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この器はめぎも覚えのあるもの・・・めぎが高校生くらいの頃、この器に恋した母が買ったもの。懐かしいなあ・・・日本のお茶、美味しかった。
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それにしてもなんて美味しい食事だったことかしら・・・めぎにもうちのドイツ人にも気を遣って色々と用意してくれて、父と母に感謝。

出発の朝は、コーヒーと桃を。桃の甘さはもちろん、このコーヒーが美味しかったとうちのドイツ人は今でも思い出しては言っている。
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芸術作品のような桃・・・夏に行くことがなければもう食べられないわねえ。日本にいつ行くかによって、食べられるものも全く異なる。この桃の味は一生忘れないだろう。
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撮影: D600 + 24-70mm(F2.8)
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Baldhead1010

お袋の味、いですね^^

そうそう、昨年オクトーバフェストで高校生ぐらいの子がビールをラッパ飲みしてたのには驚きました^^
by Baldhead1010 (2014-10-11 05:02) 

Inatimy

お父さまのこと、心配だったでしょうね。順調に回復されて本当に良かったです。 
料理を作って温かく迎えてくれる家族が待っているのって、いいですね♪
何が食べたいかしら、純和食かな、欧州のものも恋しいかしら、
そのお料理だったらワインはこれを・・・と
皆であれこれ考えて用意してくださったのを思うと、胸にジーンと来ます。
そんな風に心遣いできるおもてなし、出来るようになりたいなぁ。
どれも思い出の詰まった特別の味ですね^^。
by Inatimy (2014-10-11 07:15) 

ちばおハム

実家に帰って親の味を食べるとホッとするけど、ちょっとお客様になるのが、さみしいんですよね。

沖縄、台風が接近中です。強風域から暴風域に入りました。
by ちばおハム (2014-10-11 07:19) 

ぽりぽり

お赤飯にお母様の気持ちが現れていますね。日本の桃は本当に最高品質だと思います。
by ぽりぽり (2014-10-11 08:51) 

krause

全部おいしそうです!!因みに私の母親は、祖母を驚愕させたくらい料理下手なので、羨ましいです^^。
by krause (2014-10-11 16:09) 

YAP

やはり故郷はいいものでしょう。
遠くにいるとご両親のことも心配になることありますね。
お父様の具合が大変なものではなかったとのことで、ほっとされたのではないでしょうか。
我が家も夫婦ともども実家が遠いので、年老いてきた親の体は気になります。
今のところ、元気なのですが。
by YAP (2014-10-11 16:27) 

engrid

ご実家の心遣い、育ったおうちの味
懐かしさを通り過ごして、愛をかんじます
相方のドイツ人さまの、悟りのお話、考え深いものがあります
by engrid (2014-10-11 18:11) 

のび太

朝の味噌汁の話を読んだ時、その通り、、と感じました。
私も実家の母の手料理を楽しみにしています。
by のび太 (2014-10-11 21:46) 

テリー

おいしそうなお母さんの手料理がたくさん出て、よかったですね。
お父さん、お母さんが、優しくて、本当にいいですね。
by テリー (2014-10-11 22:31) 

miffy

お母様の心づくしのお料理の数々素晴らしいですね。
by miffy (2014-10-11 23:47) 

mimimomo

ご両親がご健在って素晴らしいですね。お父様がうちの夫と似たような年齢^^
by mimimomo (2014-10-13 06:38) 

もんとれ

ひええええ、お母様の食事もすごいけれど、
夕飯に特級畑レ・クロとサンテミリオンで、腰抜けて笑いました。
義弟さんがお開けよと仰ったのかもしれないけれど、妹さんの気持ちも分かりますね。
果物は、ここ近年はとくに糖度の高さに重きをおいた競争性になっていますが、
基本的に日本人の果実の好みは酸味と、鼻に抜ける香味のバランスだと思う。
by もんとれ (2014-10-15 04:44)