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森の幼稚園 その4 ~幼稚園で教えること・体験できること~ [北ドイツの森の幼稚園]

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現在、北ドイツの森の幼稚園の話を連載中。
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気持ちい~~~い!
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そうそう、ここで義妹が取り出して手や腕などにつけていたもの・・・ティーツリーというオーストラリアの木のエキス。義妹によれば、虫除けと虫さされ後の腫れを止めるのにいいとのことだったが、Wikipediaによると殺菌作用があると書かれている。虫除けではないようだ。この手はお連れした研究者さん。
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自由時間とのことだったので、ちょっとめぎも森の中を一人で散歩してみた。
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大きな木ねえ。
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木漏れ日が美しい。
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5月末の北ドイツはまだまだ春が始まったところ。この日の気温は14~15℃だった。裸足になったりできるのは6月か7月のホンの1~2週間であろうと思う。ようやく暑くなったと思ったら夏休みに入ってしまうだろう。
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この小さな小さな芽が、いつかはあんな大きな木に育つのね。
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森の幼稚園の元々の発祥はスカンジナビア。ドイツ初の森の幼稚園は1968年ヴィースバーデンにて。90年代から急激に増え、現在国内に1000以上あるそうだ。森の幼稚園は、農家の幼稚園やらモンテソーリ、シュタイナーなどと並び、特別な思想に基づいて特別な教育をしている幼稚園なのであって、教育という観点から言えば普通の幼稚園とは一線を画しているようだ。とは言え、保育の場所が森であって、したがって玩具が天然の森の恵みであるだけで、それ以外は普通の幼稚園と大差ない。一緒にここへ行った研究者さんは以前ドイツの普通の幼稚園も見学したことがあったが、ここよりももっと「自由」で保育士さんたちは「何もしていなかった」そうだ。研究者さんがこの森の幼稚園が外国語でおはようの歌を歌ったり日直が色々な仕事をしたり数を数えたりすることを「意外に教育的なのね~」と驚いていたほど、普通の幼稚園では何もせずただ勝手に好きに遊ばせていただけだったという。ちなみに小学校前の段階として幼稚園に求められていることは、身体、知覚、言語(言いたいことが言えるということ)、思考、感情、共感、そして価値観や宗教観の各能力を身につけさせることであって、「協調性」を身につけさせるということは全く目標としていない。小学校以降でも「協調性」はどちらかといえばネガティブに評価され、自分の意見を持ち、ハッキリ伝えることこそなにより評価して良い評点を与えるのだから。
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今の時期の森は、生が満ちあふれていた。でも、雨の日や風の日、冬のどんよりとしたくらい日々には、ここは全く違って見えるのだろうな。
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雨足が極端に強いときや極端に気温が下がった冬の日などは、あのプレハブの事務所の中で朝食をとったり、工作をしたりするのだそう。ただ、北ドイツは基本的にいつも曇り時々雨で、雨が断続的に強く降り続くということは一年に1~2回あるだけだ。冬は氷点下になるのが普通の気候でもあるので、極端に気温が下がるというのはマイナス10℃以下になった場合のことであろう。オルカーンという台風のような暴風雨が天気予報で予め予測できるときは、近くのユースホステルでの保育となるそうだ。それも一年に1回あるかないかのようである。北ドイツは冬が長く、曇りがちで低温ではあるが、極端な天候不順のない、非常に落ち着いた気候なのだ。
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さて、森というのは古くなった枝が落ち、枯れた木が倒れ、それがそのままになってごろごろしているところ。
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そんな中を子どもが駆け回っている・・・
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こんな足下の危ないところ、斜面になってて落ち葉やら木の芽やら蔓やら古い切り株が草に隠れているのやら腐っている幹やら枝やらがぐちゃぐちゃに積もり重なっている地面のところを子どもたちは走り回っている。安全面という意味では、かなり危険が多い。しかしその反面、ここを毎日走り回れば、足腰鍛えられるのだろうな。雨の日には滑るだろうし、相当な運動になりそう。そして、天気の悪い日も凍える冬も毎日毎日ここで数時間を過ごし続けたら、確かに免疫力が高まって風邪を引きにくい体質になるのだろうな。
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この日、子どもたちの一番人気はこの倒れた木で遊ぶこと。
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お弁当休みの時に、子どもたちが「食べ終わったらあの木のところに行ってもいい?」と聞いていた。先生は「あの木は古くなって腐ったかひどい天気かで折れて倒れたものだから、遊んでいるうちにまた折れるかも知れない。先生が行くまであの木で遊んではいけません。」と。なるほど、一応ある程度の安全配慮はしているのね。

天然平均台になっていた・・・ちょっと高いところから飛び降りる勇気のある(ちょっと無茶をしがちでもある)子どももいれば、とっても慎重で怖くなるとしゃがんでしまう子どもも。
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この子はここからも飛び降りていた・・・先生が直前に止めたけど、やっぱり飛び降りた。なんでもなかったけど、結構危険と隣り合わせね。きっと彼女は、自分が色々できることをいっぱいアピールしたいんだろうな。つまり、自分を認めて欲しいんだろうな。危ないことをやって注意を惹きたいんだろうな。でもその気持ちは他ならぬ親が埋めてくれない限り満たされないのであって、たぶん一生この傾向が続くのだろう。
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年少さんたちの遊ぶ様子はとってもほほえましかった。遊具など無くても、子どもたちはこれほどまでに楽しそうに遊べるのだな。いや、たぶん、落ち葉だけでも遊べるし、この古い倒木が無くても元気いっぱい遊び回るのだろう。
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そんな中、子どもたちが拾った木の枝でなにやら作り始めた。(女の子の方は集めた木の芽を毛糸で結んでいる。これは何かの飾りになったらしい。)
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見ると、道具箱があって(先生が大荷物の中に入れて運んできたもの)、なんと本物のナイフを使っている。
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年少さんも、本物を使っている。
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この他、鋸やトンカチなど、全て本物が用意されていた。こんな幼いときから本物の使い方を習い、しっかり扱う・・・ドイツ人たちがDIYできる理由がよく分かる。子供用の安全ナイフとか、そういうものを使おうという発想すらない。怪我をするリスクを背負ってでも、本物を使わせることに意義があると考えている。
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これは帰るときに写したものだが、できあがった竿を見せる誇らしげな顔・・・そういえば、早朝に幼稚園の事務所でも、子どもたちが自分で枝と鳥の羽を拾い、自分でナイフで削って作ったという万年筆のようなペンを見せてくれたが、ここの幼稚園の工作は自分で見つけた天然素材と本物の工具で行っているのね。創造性が養われるんだろうな。
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森の中には可能性がいっぱい。
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つづく。
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Baldhead1010

野生は個の自由と個々の協調性がうまく調和してますね。
by Baldhead1010 (2013-06-15 05:46) 

ちばおハム

鋭い視点、さすがめぎさんです。
日本で小学校から幼児教育に求められているものはありません。分断されているのです。そこが今の問題点でもあります。
幼児期があっての学童期なのに、子ども時代のことは置き去りです。
子ども時代は大人がいかにあずけられるか、ということにばかり注目され、子どもの育ちは全く保障されていません。今の政権も同じ。親の利点ばかりが注目されているのです。
もっと子どもの育ちを中心に考えてほしいなあ、といつも思うのです。
by ちばおハム (2013-06-15 06:11) 

Inatimy

危ないからさせないでは、子供が大人になった時に自分だけで乗り越えるのは難しいでしょうね。 世の中には危ないことがいっぱいだもの。 いざという時にどう考えて対処すべきか自分で考える力を幼い頃から培っていくのって大事ですね。 その子が将来を生き抜いていくためにさまざまな体験が役立つのかも・・・と読んでいて思いました。
私も、子供の頃から本物の工具類や包丁で育ててもらったので両親に感謝です。
by Inatimy (2013-06-15 06:24) 

YAP

日本のぬくぬくとした環境から考えると危険極まりないということになるのでしょうが、自分が子供の頃を思い返すと、幼稚園ではなくても、日常の遊びの中で(保護者の目の届かないところで)、同じようなことをして遊んでいた記憶があります。
こういうところで遊んで危ない目にあって、時には怪我もしたりして(骨折したことがあります)、いろいろと体でおぼえるということが大切なんだと思います。
by YAP (2013-06-15 06:33) 

coo

かんがえさせられます。子供はいずれ大人になり社会の一員になるから、いまの子供を育てるということは未来の社会を育てることにつながるんだなぁと感じます。失敗する、自分で考える、解決する、また新しいことをさがすという成長のサイクルがなければ、楽しいことを経験する機会も少なくなってしまうのかもしれません。
倒れた木にまたがる子供たちもそれぞれ自由に遊びながら同じ肌触りを体験しています。個性と協調性が同時にはぐくまれていくんですね。 写真、色合いとかとっても素敵です。 森の幼稚園好きです!!
by coo (2013-06-15 07:46) 

駅員3

写真からあふれ出したフィトンチットをたくさん浴びて、私も清々しい気持ちになりました(^^)
子供たちがうらやましいです。
ドイツの子供たちが、どこもこんな環境で育つのでしょうか?

ドイツ恐るべし(^^)!!
by 駅員3 (2013-06-15 09:09) 

HIROMI

そうですねぇ。日本では、協調(互いに協力し合うこと)を大事にしますね。でもそれが行き過ぎて、同調(他に調子を合わせること。他人の意見・主張などに賛同すること)にまでなることがあります。これは良くないと思います。
日本は子どもの遊ぶ場所の危険な物を取り除かなければならないという考えが横行しすぎていると思います。ひたすら安全な環境というのは、こどもの危険回避の能力を育てませんからそれも問題です。
by HIROMI (2013-06-15 09:40) 

ぽりぽり

木漏れ日がテーマですね。苔むした切り株やシダ類に木漏れ日が当たって、奇麗ですねぇ。 森とこのように親しむことって良いですね。
by ぽりぽり (2013-06-15 09:59) 

krause

木陰と緑色の色合いがきれいですね^^。
by krause (2013-06-15 10:27) 

テリー

協調性と自己主張、難しいところですが、会社に入って、自分の意見が、全て、通るわけでもないので、会社によっては、自己主張の強い人は、採用しませんという新人採用係の話も聞きました。結局の所、自分の意見を強く言える立場で、人生を行きるかどうか何でしょうね。

by テリー (2013-06-15 15:24) 

mimimomo

昔の日本と変わりませんね^^ わたくしが小学校低学年の頃は
時々外に出て《授業時間ですよ》遊んでいましたよ。屋外授業ね^^
外では沢山学ぶことがありますものね。特に物理的なことって、
教科書より実体験だわ。
by mimimomo (2013-06-15 15:51) 

もんとれ

子供は遊びを発見する天才だから、水たまりや枝ひとつでいくらでも遊べますものね。刃物も今は子供用のセラミック包丁や軽量ペティ・・なんでもありますが、昔は重い三徳包丁や菜切り包丁しかなく、最終的に行き着くところは同じなので、手や指の置き方を考えないとこれだけ痛い思いをすると早いうちに学習できて良かったと思っています。
日本の協調性は3.11に美点として感じ入りました。しかしディベートや個性アピールの訓練、差異を認め合う文化がないから、海外の短期留学や編入で同年代と一緒に学ぶと、言語力の背景のなさも相まって倍以上苦労します。大きな違いを感じたのは2+2を出す日本と、4を出すためのやり方を考えさせることの差。柔和な脳、観点、発想の自由さはこういうところからも来るのかなと思ったのでした。
by もんとれ (2013-06-15 16:58) 

のび太

読みながらいろいろと参考に
なりました。また続きを楽しみにしています。
by のび太 (2013-06-15 19:45) 

のの

以前、この幼稚園についてチラと書かれていましたよね。
とっても楽しそうな幼稚園(^^)♪
たぶん、自分に子供が生まれる前はこういう幼稚園に子供を入れたいと思うと思うけど
実際生まれて入園の時期になったら、入れないと思う。w
日本式とドイツ式、どっちがいいかはわかりませんが
いいとこ取りでできたら一番いいんでしょうけどねw

キャラ弁作って見せてあげたいわぁ♪
by のの (2013-06-15 22:29) 

miffy

最近の日本は公園でボール遊びも出来ない所が多いんですよ。
汚いから砂遊びはしてはいけないし、ちょっとでも危険なものは
学校や公園から排除されるし・・・
あまりに過保護すぎると大人になってから大変なのにな~
by miffy (2013-06-15 22:35)