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100万ドルの夜景の中で感じたこと [2011-2012年 香港]

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現在年末年始の旅行記を連載中。

昨日までのコメント中のいくつかの質問について・・・亀ゼリーはまだ食べていない。ペニンシュラの窓から見えた白い球体は、香港太空館という宇宙博物館。YMCAはユースホステルようなもので、普通は6人部屋などのドミトリーに泊まることになるのだが、香港のYMCAは普通のホテルのような部屋を用意しているところが結構多いようだ。誰でも予約できるが、お安いためか予約がいっぱいのことが多い。

そして、空港で福岡や成田という言葉を見たときの気持ち。実は、意外なほど全く揺れなかった。自分でも、日本以外のアジアへ日本に寄らずに行くというのは一つの実験だったのだけど。日本へ行くと色々とめぎなりに義務やらなにやらあるのだけど、今回はそれから完全に開放されて休暇に徹することができて大満足だった。日本って、友人に会えたり美味しい和食が食べられたり温泉があったりして本当に楽しいところなのだけど、その反面しがらみもいっぱいあるし、様々な意味で「らしさ」を求められる・・・姉らしく、娘らしく、中年の女性らしく、奥さんらしく、職業を持つ既婚女性らしく、先生らしく、外国に住んでいる日本人らしく、そしてなんといってもきちんと日本人らしく、と。この休暇は、そういうものから完全に解き放されたかったし、それに本当に成功することができたのは、敢えて日本へ行かなかったからなのだ。

今日の写真はYMCAから一歩も出られなくなった夕方から夜にかけて。だって、こんなに美しい夕焼けが見えたから。
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ドイツに来てからよくドイツ人に聞かれたのが、アジアではどこの国に行ったことがあるか、どこがお奨めか、という質問。でもめぎは、日本以外のアジアに一度も足を踏み入れたことがなかった。日本にいた頃はヨーロッパにしか興味が無く、時間とお金ができればすぐにヨーロッパに飛んでいた。ドイツに住み始めてからも、長い休暇があればもちろんヨーロッパの他の国を見に行きたかったし、アジアに飛ぶなら当然日本へ行っていた。日本へ行くなら直接飛んで、できるだけ長い間日本に滞在したくて、他のアジアの国にストップオーバーしようなどとは微塵も考えなかった。
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それが、他のアジアの国にも行ってみたいなあと思うようになったのは、めぎの教える学生・生徒たちのほぼ10%ほどが毎年アジア系であったからかも知れない。中国、韓国、台湾、マレーシア、タイ・・・と、毎年数人のアジア系の学生・生徒がめぎのクラスにいる。そして、たいてい、同じアジアに縁があるということでめぎにある程度の親近感を抱いているのが感じられる。彼らの多くはドイツ生まれでドイツのパスポートを持っているが、夏休みなどに片親もしくは両親の生まれ故郷を訪ねた話を聞くことも多い。彼らの故郷ってどんなところなのかな・・・と少しずつ少しずつ興味が膨らんだ10年間だった。
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非常に面白かったのが、月。緯度が低いとこんなに下の方だけが見えるのね。お月様、寝ているみたい。ドイツではいつも立っているのに。
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また、うちのドイツ人には中国とタイに友人がいて、そこを訪ねに行こうという案がもう数年前から何度も持ち上がっていた。実は今回も、もともとは香港からタイを訪ねようという話だった。タイ行きの便よりも香港行きの方がずっと安かったので、まずはその便を昨年の初め頃に押さえた。それから香港からタイへ安い便を探そうと思っていたところ、タイの友人の都合が悪くなり、中国の友人の都合もつかず、結局我々は二人だけでどこかで休暇を過ごすことになったのだった。
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では、どこへ行くか。ずいぶん前から、めぎ家では冬に是非熱帯地方へ行きたいという願望が強かった。歳をとってくると肌が乾燥し、うちのドイツ人は毎年かなり辛そうなのだが、数年前のハワイが非常に気持ちよく、あの年は肌の乾燥にあまり悩まずに済んだという記憶もあって、真冬にはぜひ蒸し暑いところへ行きたかったのだ。
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でも、ぎりぎりまで、香港からどこへ行くかは決めていなかった。そして、香港で旅行会社を訪ねてラストミニッツでどこかに行こう、と話していた。それが、冬になって義父の不幸もあって冒険する気力をすっかり無くしてしまい、直前にマレーシアのペナン島にホテルと航空券の手配をした。はっきり言えばタイでもミャンマーでもラオスでもヴェトナムでもどこでもよかったのだけど(めぎは最後までヴェトナムと迷ったのだけど)、うちのドイツ人が行ったことのない国で、二人ともビザの手続きの必要がないところを選んだのだった。
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休みに入る直前に、ブログでも紹介したが大学の日本人スタッフとの鍋パーティーがあって、そこで3人もの先生方が年末年始に日本へ行くという話をした・・・でも、そのとき、不思議と心が揺れなかった。いいなあ、という気持ちがわかなかったのだ。日本には2010年夏に行ったきりなのだが、その夏に日本でやりたいことをやりきってしまったという気分。買いたいものはいっぱいあるのだが、このユーロ安ではどっちみちそれほど買い物はできない。それでも、実際に香港というきわめて日本の近くまで来てみたら、もしかしたらすごく望郷の念がわくかも、と想像していたのだが、香港空港で札幌行きの飛行機を見ても、羽田行きの飛行機を見ても、あ、ここからまっすぐ飛ぶのね、などと思っただけで、行きたいという気持ちが生まれなかった。それよりは、特に帰りには、ああもう十分、早くうちへ(ドイツへ)帰りたい、と心底思った。とうとうめぎは、ドイツと日本との間で揺れた長い長い時期を乗り越えて、本当にドイツに根付いたのかも知れない。
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香港でたくさんの光を見て、アジアの勢いと活気を感じた。
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この光の分だけ人の営みがあるんだな、と感慨深かった。
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こういう高いビル群とネオンを見ると、日本の東京や大阪を思い出す。ドイツには全くない景色。ああ、アジアだなあ。
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香港はイギリス領であった所為か、常識的な基準が日本と近くて非常に東京に似た雰囲気があったし、こういう飾り付けやビル群やネオンがとっても日本的で、まるで故郷にいるような錯覚を感じたり、日本もアジアの一員なんだという当たり前なことを実感したりする日々だった。
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でも、やっぱり外国だから、しがらみがなくて、それらしさも要求されなくて、気ままに歩ける。今回は、とにかくなんの義務もなんのしがらみを感じずにただただゆっくり気ままに過ごしたかった。たぶん、それほど疲れていたのだろう。この100万ドルの夜景の中に身を置いて、何も考えずぼんやりとネオンとレーザー光線を楽しんで、無邪気に「ひょ~すごいね~」などと声を上げ、単純に楽しかった。
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今日、カード支払いの明細が来て、改めてペニンシュラの額を見て、それこそ「ひょ~」という気分。
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しばらくは経済して、仕事頑張らなくちゃ。
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YMCAの全体像はこんな感じ。右側前方に海があって、めぎ家が泊まったのは右端の上から2つめの窓のところ(写真では真っ暗)。左側奥にペニンシュラのタワーが写っている。こうして見ると、YMCAの海側の方がペニンシュラのタワーより前方にあって、YMCAが本当に悪くない立地であることが分かる。昔はこのYMCAとペニンシュラの前はすぐに海だったそうで(うちのドイツ人が最後に香港を訪れた16~17年前はまだ海だったという記憶)、こう埋め立てられちゃって、この辺りのホテル群にとってはとっても残念な都市開発なんだろうな。
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なんだかとりとめもなくなってしまったけど・・・香港のホテルの話はこれでお仕舞い。明日はちらっとデュッセルドルフの話をして、その後香港の食事編に突入する予定。
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Baldhead1010

私もまだアジアの国々はシンガポールを経由しただけで、行ったことないです。
by Baldhead1010 (2012-01-15 06:26) 

YAP

そうか、東京の夜景はアジアの夜景か。
そう考えると納得です。
日本って、アジアの中では群を抜いてモダンな国で、なんとなく欧米に近い文化が入ってきているかと考えていますが、やっぱりアジアなんですよね。
道路事情とかもやはり欧米の洗練されたものには追いつけていないし。
いろいろと納得させられました。
by YAP (2012-01-15 06:40) 

hatsu

日本もアジアの一員、そうですょね^^
香港に行くことがあったら、YMCAにも泊まってみたいです♪
by hatsu (2012-01-15 06:50) 

Inatimy

日本に一時帰国して実家に行っても、私、結局、家事に追われてしまうから、
身も心も心も休めるなら、やっぱり欧州の地方の村あたりがいいなぁ。
100万ドルじゃなく、1ユーロくらいの夜景の暗い夜があるところ。
by Inatimy (2012-01-15 07:10) 

manamana

念願のヨーロッパでお仕事をされるようになって、
アジアに関心が向かったというのが面白いですね。
それこそ日本に居てはわからない普通の国際化ですね。
by manamana (2012-01-15 07:41) 

のの

一週間分読んできました!いやぁ♪読み応えあったわぁ♪(^^)
モスクワの一泊はホントお疲れ様でした・・という感じだけど
香港のホテル素敵ですねぇ。リピーターが多いのもわかる気がします。
それにしても、せっかく行ったのだから観光しなきゃ;と
つい日本人なら思ってしまうけど、
ゆったりのんびりと長期休暇をホテルで過ごす・・っていううのも有りなんだなぁ・・とつくづく感じました*
早くドイツの我が家に帰りたいと思っためぎさん、
きっと昨年のご不幸などを乗り越えたからこその思いだったんじゃないかな・・と思いました。
仕事先のアルバイト君(大学生)が今月で仕事を辞め
試験の後、なんとも羨ましいことに1ヶ月間のヨーロッパ放浪の旅に友達と2人で出るそうです。
ドイツも行くようなので、もしそれらしい日本人見かけたらよろしくお願いしますね(笑)
私も若いときに行っときゃよかったーー(++;)
by のの (2012-01-15 07:58) 

ぽりぽり

めぎさんもドイツにしっかり根をおろした感じでしょうか? 長く住んでいるところが良くなりますね。うちの兄なんかすでに40年近くアメリカ生活です。自分は中国に居ると何時も帰りたいと思ってしまいます。日本に帰るとホットするのですが、残した仕事が怖い毎日です。
by ぽりぽり (2012-01-15 09:34) 

夢空

めぎさんの、日本とドイツとは程遠いですが・・・
私も、実家よりも嫁ぎ先の方が居心地が良くなりました(^_^;)
年月の経過とは、そういうものなんでしょうか。
そうして、「女」は強くなっていくのでしょうね~~。
by 夢空 (2012-01-15 10:22) 

春分

ドイツの人になっちゃったのかー。と、少し淋しげに書いておこう。
そして、月は面白いですね。
赤道近くは衛星放送のパラボラアンテナも真上向きでした。
ちょっとした、こんなのが面白いです。
by 春分 (2012-01-15 12:15) 

uminokajin

今、京都の全国女子駅伝のスタートです。
by uminokajin (2012-01-15 12:28) 

ちばおハム

私は逆にヨーロッパには目が向かず、アジアばかりを巡っていたほうです。香港、シンガポール、韓国はプチ留学するほどだったし、中国もいったし。でもリゾートめぐりはしたことないんですよね。
アジアはエネルギーがとても似ていて、滞在すると元気が湧いてきていたような気がします。ヨーロッパはどんなところなのかな。(一度も行ったことないので)
by ちばおハム (2012-01-15 12:51) 

luces

香港の正月は派手ですね。
夜景も月も美しいです。
by luces (2012-01-15 13:12) 

HIROMI

夜景も電飾もスバラシイですが、今日の記事でわたしが一番気になった言葉。それは…「しばらくは経済して」という言葉。
「経済して」という言葉を辞書でしらべてみたんですが、「経済する」というふうに動詞では使いませんよね。たぶん、共通語では。ということはこれ、方言ですよね?青森県でも使うんですよ~。辛抱するとか節約するとかっていう意味ですよね。
by HIROMI (2012-01-15 14:06) 

マリエ

年末・年始の旅行記沢山の写真に記事アップア疲れ様でした。
とっても楽しめましたよ、最後の夜景もキレイだし、異文化をしるのは面白いです。ありがとうございました。(*^_^*)また一年頑張ってお仕事してドイツ人さんといろんな人生経験を共有して記事に書いて下さいネ、私も参考になる事ばかりですし、でもめぎさんが日本から自立してドイツの人になっちゃったのかぁって思ったら、そう思える事がうらやましいです。なかなか日本への未練とかホームシックとかありますもんね、素敵な一年でありますようにd(^_^o) ネッ
by マリエ (2012-01-15 15:32) 

ネム

お部屋の窓からこれだけの夕焼け、夜景が観られるなんて、素晴らしい♪確かにこれでは出掛けられないかも。
何の柵もないバカンス…憧れるけど、猫を連れては行けないのでやっぱりくつろげないかも(^^;
by ネム (2012-01-15 15:51) 

あかえび

香港の夜景はブレードランナーのワンシーンみたいだ。( ̄∇ ̄)
亀ゼリーは癖も無いし美味しいよ。(*´∀`*)
by あかえび (2012-01-15 16:08) 

mimimomo

面白いですね。日本人の中にはアジアしか行ったことがない、と言う方と
アジアは行ったことがないと言う方が大きく分かれるような気がします。わたくしの
場合は、若いうちは遠いところ、歳をとったら近いところ・・・大まかに言ってですが。
by mimimomo (2012-01-15 16:24) 

たいちさん

香港の夕焼けと夜景は素晴らしいですね。私も見たいです。
めぎさんの心情がよく理解出来ました。
by たいちさん (2012-01-15 18:27) 

もとこさん。

拝見していて、なんだかめぎさんにとって一つの大きな区切りの旅だった様に思えました。
夜の光がどれもきれい。旦那様からのプレゼントでですね。
by もとこさん。 (2012-01-15 20:30) 

stellaria

めぎさんの心の変化が印象に残りました。めぎさんにとって居心地よい場所、ほんとうに家だと思えるところは、もうドイツなのですよね。これまでの10年間、日本とドイツとの間で、いろいろな出来事や思いを重ねてこられたのでしょう。一つの節目を経て、これからの10年が、より深みを増した、彩り豊かな充実した日々となりますように。
by stellaria (2012-01-15 23:58) 

hideyuki2007y

旅行の疑問が分かってスッキリです。
やっぱり家族が居るところがホームタウンではと感じます。
by hideyuki2007y (2012-01-18 19:00)