部屋の絵とバレエ [パリ]

現在、4月16~19日のパリ小旅行記を連載中。
昨日のご質問だが、めぎ家の旅行滞在先は、どちらの希望というわけでもなくいつも自動的に決まる。行きたいところは色々あるが、たいていそこへ行く機会が降ってくるのだ。例えばルーマニアやハワイやアルザスはめぎの仕事がきっかけで旅をそれにくっつけた形、チェコとポーランドはザクセンの母親を訪ねたあとに旅をくっつけた形。北ドイツはうちのドイツ人の故郷だし海だからめぎは喜んでついていく。今回のパリのような純粋な旅のみのパターンはめぎ家の旅の4分の1くらいかも。
めぎ家は基本的に旅に機能性を求めていない。居心地がいいのは自宅であって、旅に出ると不具合だらけ、居心地悪いことこの上ない。でも、この居心地の悪さ、不具合こそが旅の良さ。古くてあちこちまともに機能しない方が非常に面白く、その土地らしさが感じられ、味わい深い。だから、新しいアメリカンタイプの均一的水準の機能的ホテルを一番最初に避ける(これはめぎ家双方の一致した趣味)。旅に求めるもの、人それぞれですわね♪
ここはル・グランのめぎ家が泊まった部屋。

ベッドに置かれた黄色と水色のはめぎたちのパジャマ。パジャマが起きっぱなしでも綺麗にたたんでくれてて(写真はもううちのドイツ人が壊してしまったあとなのだが)、ベッドメイキングも過不足無く丁寧で気持ちがよかった。向こうに見えているスリッパは、ベランダに出て一服するためにうちのドイツ人が置いたもの。
今日は部屋に掛かっていた絵をご紹介。ドゥガの絵は後回しにして、まずは右側のから。

この絵は、夜に電気を消すと月明かりですーっと浮かび上がる不思議な絵。あら、こんなところで密会?とのぞき見している気分。うちのドイツ人は、たぶんオペラや演劇の舞台上を描いたものじゃないか、と言う。

その昔、ミシンがなかった頃の縫い方がそのまま描かれている。

今でいえば仮縫いのような、仮止めのような。

この絵は油絵の絵の具が触ると感じられ、オリジナルと思われる。


とっても残念なのは、そのオリジナルの絵の具が、誰かがひっかいて破がされていたこと。ほら、女の人の目の部分。

ベッドの向かいにはミューズの絵。

なかなか力強そうなミューズ。

サンダル履きの足も力強そう。

ドアの近く、タンスやセイフティボックスがあってスーツケースを置く台がある空間には、蝶々夫人のオペラのポスターが。オペラ座隣のホテルっていう感じがしますねえ。

さて、いよいよメインのドゥガ。

未来のプリマたち、顔はずいぶんいい加減に描かれているのだけど・・・

脚は非常にリアル。

脚・脚・脚♪


トゥシューズも非常に詳細。

ドゥガは脚が大好きだったのね。そういえば、下の方の席からオーケストラ団員を描いた絵もあるけれど、それにも舞台の脚がちゃんと描かれているものね。
子供の頃から40歳くらいまでオペラ座のバレエやオペラ公演の舞台に関わった、つまりこういう稽古場に居合わせたうちのドイツ人には、この絵を見ただけで独特のにおいまで思い出されるとか。


もちろんこの絵ははコピー。オリジナルは、あとから調べてみたらワシントンのCorcoran Gallery of Artにあるみたい。ル・グランの所有かと思ったけど、違ったのね。

話は逸れるが、めぎたちは今回のメインイベントとして、パリでバレエを見に行った。それは、先日ご紹介したこちらのガルニエ宮の方ではなくて・・・

バスティーユの方。

なかはガラスで開放的。


外の建物のガラスに、七月革命記念柱が映っていた。

先日もちらっと書いたように、この日の演目は数ヶ月前から売り切れ状態。ル・グランのコンシェルジュに聞いても、ものすごいウェイティングリストがあるとかで、全く無理と首を振られてしまった。で、当日券求めて並んでみたら、なんと30分くらいで順番が!手に入ったのは、10ユーロの桟敷席。つまり、横の天井近くのとってもお安い席。

もともと上の方の席を希望だったうちのドイツ人は大喜び。彼は、バレエでもオペラでも決していい席を取らない。理由は、1.自分が何百回と舞台に出て、オペラもバレエも内側からよく知っていて、いい席で見たいと思わないから(この日の演目にも花売りの役で何度も舞台に立ったらしい。振付によっては踊らない花売りもあるってことね)。2.上からの方が舞台全体がよく見えるから。3.音響が上の方がいいから。4.オーケストラを眺めたいから。
オーケストラを真上から楽しめる席。

あ、そうそう、うちのドイツ人によると、下の前の方の席の唯一の、でもとても大きなメリットは、バレリーナの脚をチュチュのしたから堪能できること、ですって。でもその場合は舞台や音楽などどうでもよくなって、脚ばっかりに心を奪われてしまう危険があるとか♪
演目はヌレエフ版のロミオとジュリエット。この日は初日と同じキャスト。ジュリエットはめぎ的にもうちのドイツ人的にもイマイチで、申し訳ないがコマネズミさんみたいね~って感じだったが、このロミオがあまりにも素晴らしくて感激。Mathieu Ganioというエトワール。

出てきた瞬間から、その手の美しくエレガントな動きに魅了され、あまりにも美しくて3回も泣いてしまっためぎ。美しさに感動して泣く・・・なんと久しぶりの感覚だろう。芸術の美しさに泣ける自分がいる。ああ、私は生きているんだな。ああ、この世は美しいな。
胸とか脚とかは力強いのに、腕から手先まではプリマより美しい。別の演目の写真だけど、雰囲気をこちらの引用でどうぞ。

ロミオじゃないけど、踊っている様子に興味がある方はこちらやこちらの映像をどうぞ。
オーケストラの演奏も、多少のミスがあったとはいえ情感あふれて素晴らしく、プロコフィエフの音楽(めぎはクラシックではプロコフィエフが一番好きな作曲家)とバレエを心ゆくまで味わった。ああ、この音楽を生で聴いただけでも、このバレエを見ただけでも、このダンサーに巡り会っただけでも、パリに行ってよかったわ♡

明日もホテルのお話を。
2011-04-27 02:00
nice!(55)
コメント(19)
こちらではおはようさん^^
いつも煎餅蒲団で寝てるので、外国でのベッドは疲れます。
腰に来るんですよ。
by Baldhead1010 (2011-04-27 05:11)
わー本物のバレエですね。うちはヤッシーがバレエを始めたこともあり、先日バレエ教室の発表会に誘われたんですよ。
プロはさすが!写真でもかっこいい、と思いますが、子供たちのもそれなりに・・・楽しかったです。
いちどでいいから美しいバレエを見に行きたいなあ。
by ちばおハム (2011-04-27 05:46)
いい舞台に出会えて、行った甲斐がありましたね。
上の方の席にもメリットがあるのですね。
by manamana (2011-04-27 07:08)
ほんとうに芸術に詳しくていらっしゃるのね~
by mimimomo (2011-04-27 07:55)
仮止めの衣装、小さな劇団の衣装見たいですね。
by laf (2011-04-27 08:55)
優れたものに出会えた感動、それは本当に大切なことと思います。
それを経験するとしないとの差は、ずいぶん大きいと思いますねえ。
もちろん、各人の感受性が大切なんですが、その感受性を養うためにも、
優れたもの...ジャンルを問わず...に接することは大切と思います。
by ナツパパ (2011-04-27 09:00)
ホテルの部屋は美術館の中のようですね。生絵もかかっているとは、さすがですね。パリ・オペラ座の本場のオペラを、その会場で一度は観たいと夢見ている私です。
by たいちさん (2011-04-27 12:03)
バレエは、言葉が無いだけに所作の美しさが一層際立ちますよね☆
あまりに美しくて泣ける。本物に出遭ったのですね。
言葉に出来ない、至福の時を過ごされたのだと思います。
めぎさんとこのドイツ人さんは、舞台に出てはったのですね~(・o・)φ
私も、高い席から眺めるのが大好きです(^^*)
あ、ホテルの絵!素晴らしいですね♪ これぞ本物の贅沢だな~(〃▽〃)
by ひろころ (2011-04-27 12:32)
素晴らしいバレエに感激ですね、
ドイツ人さんはすごい経歴をお持ちですね。
by やよい (2011-04-27 14:56)
いいものに出会うと、もっと知りたくなりますね。
by nachic (2011-04-27 15:10)
居心地がいい自宅っていうのに憧れるかも。
工夫しても何かと不具合多くって、そのうち引越になっちゃうし。
また新たな不具合に対面・・・。
確かに、本当に美しいロミオさまですね♪ いつか、バレエも観てみようかしら。
by Inatimy (2011-04-27 16:48)
「すげー、本物の名画が飾ってあるんだ~」って思いました。(笑)
あかえびはバイクに乗ると涙腺が緩くなります。^^;
by あかえび (2011-04-27 17:36)
ヌレエフ版のロミオとジュリエットはルグリのを見た事があります。
Mathieu Ganio素晴らしいですね。
ドンキを見てみたいです。
by miffy (2011-04-27 21:59)
私はバレエを見たことがないのですが
バレエ歴の長い友人は、ロシアに留学して桟敷席でばかり見てるみたいです。やはり、全体を見れるのがいいと言っていました。(あと、安いから気にせずいっぱい見に行けるのだそう。)
たくさん絵が飾られているお部屋、いいですねぇ♪
明日の記事も楽しみです☆
by ネム (2011-04-27 22:41)
お部屋の絵もやはりパリならではですね。いいなぁ~バレー本物見たことないですが、雰囲気は分かります。めぎさんの感動が伝わってきます。こういうの大好きです。
by マリエ (2011-04-27 22:48)
>この居心地の悪さ、不具合こそが旅の良さ
んだんだ(笑)。
今日の記事は面白いねぇ。面白い。水スポンジを思い出すよ。
by もんとれ (2011-04-27 23:16)
いい感じのホテルですね〜。
by taniyan (2011-04-28 09:15)
洋裁に関する知識がないと書けないコメントですねえ。着眼点が面白いです。絵の構図でしか、絵を見ていなかったことに気づきました
by デブデブ (2011-04-28 21:00)
歴史あるホテルですね。内装がおフランスしています。素敵なフランス旅行!羨ましい限りです。
by ぽりぽり (2011-04-28 21:41)