SSブログ

富士山:下山 [2010年夏 日本の旅]

ax.jpg

現在、7月30~31日の富士登山の話を連載中。

山頂でのご来光に拘らないめぎたちは、須走七合目の山小屋で一夜を明かし、4時50分頃だという日の出の時間に会わせて4時半頃起床。まずは7月31日が誕生日のドイツ人の友人に「おめでとう」のご挨拶。ご来光が誕生祝いになるはずだったんだけど・・・
a1.jpg


曇ってますわ・・・
a2.jpg


がっかりした空気の流れる七合目の人々。
a3.jpg


山頂は??
a4.jpg


あらら、八合目までは辛うじて見えるけど、その上は雲の中・・・
a5.jpg


この日山頂でのご来光を目指していった方々は残念な結果となったようだ(こちらにもその話が載っている)。昨日の夜はあんなに見渡せたのに、なんてことでしょ。ホント、山の天気は分からないものね。

一筋でも光が見えないかな~と頑張ってみたけど、残念ながらご来光には恵まれなかった。
a6.jpg


大人3人で畳2畳分あるかないかといったスペースで雑魚寝して、それも身体の大きいドイツ人には相当応えたようだったのだが、その辛抱が報われず残念。富士山は、登れば素晴らしい景色が見られる、と約束できるものでもなく、天気予報も当てにならず、運を祈るのみ。

さ、気を取り直して朝ごはん♪ 
a7.jpg


高野豆腐と麩が初めてだったドイツ人たちにこれは何かと聞かれたけれど、空気の薄い富士山の七合目でそんなこと聞かれても頭まわんないわ・・・いちいち色々聞かずにとにかく食べてくだされ・・・(ドイツには、出された物を黙って食べる、という躾は全くない。)

食べ終わるとすっかり夜が明けてて、どんより感がたちこめていた。
a8.jpg


ところで、めぎは富士登山に際し、七合目まではぜひ行ってご来光を見てみたかったけど、正直なところそれ以上登ることにはそれほどの意欲はなかった。事前にスポーツをして鍛えておくといった準備も全くしてなかったし、何も事前準備をしないでは登頂は相当しんどいだろうな、とも思っていた。だから、うちのドイツ人がぜひ一緒に登頂したい、と言っていたのがかなりのプレッシャーになっていた。さて、七合目で朝を迎えたとき、意外にも特に筋肉痛は感じなかったので、ゆっくりなら行けそうだな、でも相当ゆっくりになっちゃって帰りの予定に支障が出そうだな・・・と思っていた。登山は登るだけじゃなくて下山もしなきゃならないわけだし、この前日に普通の人の標準時間の2倍近くかけて登っているので、そのペースだと下山が午後遅くなって真っ暗になっちゃうな、下手すると山頂か下山途中でもう一泊しなきゃならないんじゃないかという感じなのだ・・・でも、今晩の宿もその後の旅の予定も立ってるし、どうしても夕方までには五合目に下山しなければならない。うむむむ・・・ところが、八合目以上が雲に隠れているのを見たうちのドイツ人が、Wollen wir faul sein? (ぼくたち、faulでいることにしない?)ですって!

faul(ファウル)というのは、ドイツ語の辞書を引くとまず「腐った」という意味が出てくる。その他「もろい」「いかがわしい」といった意味が続くのだが、もっと日常生活でよく使われるのが「怠けている」という意味。うちのドイツ人は「ナマケモノにならない?」と聞いているのだ・・・つまり、頑張らないでここで登山やめようよ、と。

彼は、山頂から海を見下ろしてみたい、と夢見ていたのだが、雲に隠れた山頂を見てその気が萎えてしまったらしいのだ。なんでも靴擦れが結構痛いので、これ以上登れるかな、と内心危惧していたところに雲にかかった山頂を見て、無理してでも行きたいと思うモチベーションを失ってしまったらしい。あら、頂上に行かなくてもいいの?それじゃめぎも喜んでfaulしちゃうわよ♪ めぎ、怠けるの、大好きよ~♡

もしかしたらうちのドイツ人は、それまでの20日間以上にわたるドイツ人引率で疲れがかなり溜まっていためぎが、この前日あまりにもゆっくり歩いたので、登頂の体力はないだろうと気遣って降りようと提案してくれたのかも知れない。でもまあ、彼は自分が登りたかったらそのことで頭いっぱい胸いっぱい夢いっぱいで私の状態など目に入らなくなるタイプだから、本人もぜひfaulでいたいと望んだのであろう。というわけで、へたれ夫婦のめぎとうちのドイツ人は朝食後下山することにしたのだった。ええ~ここまで登ったのに勿体ない!と普通は思いそうだが、前日の登山中に美しい景色を堪能しためぎは、充分満足であった。これ以上登らなくてもいい、と思うとウキウキしてくるくらいだった♪ 誕生日記念にぜひ登頂したい友人夫婦と、登頂ではなく念願のお鉢まわりを目標にしている妹夫婦は、元気に出発していった。それをゆっくり見送って、下山開始。
a9.jpg

↑結構な斜面でしょ。

しばらく降りていくと、太陽の光の筋が美しく見えた。
a12.jpg


ちょっとフリードリヒの絵の世界のようね。絵と違うのは、鳥の声が聞こえること。ホーホケキョ♪という美しい鳴き声が響き渡っていた。
a10.jpg


須走口の下山道は、こんな風に一直線な砂走り。雨のあとだったので砂埃は全然たたず、コンタクトの目でも裸眼で問題なしだった。かんかん照りの下山ピーク時だったらサングラスかゴーグル必須じゃないかしら。
a11.jpg


振り返ると富士山はどんより雲の中。みんなあの中を歩いているのね。がんばれ~!
a13.jpg


めぎは砂走りでもかなりゆっくりで、途中自衛隊のみなさまにどんどん抜かれていった。このみなさまは演習中なのかな。それとも遠足中なのかな。
a14.jpg


下山中に、山頂が見えてきたときもあった。ホント、山の天気は変わりやすいのね。無事登頂した友人夫婦と妹夫婦の話では、彼らが登頂した頃は山頂はちょうど雲の上で素晴らしい晴天だったそうだ。よかったよかった♪
a15.jpg


めぎたちは体力を十二分に残したまま下山したので、着々と砂払い五合目まで楽に辿り着き、ちょっと一休み。
そこのワンちゃんが可愛かった。
a17.jpga2.jpg


このあとスタート地点の五合目までは樹林帯となり、疲れた足にはなかなかキツイ山道となる。つまり、根っこやら岩やら段差やらで、それまでの砂地をずずっと滑り降りるのとは全く違う筋肉を使うのだ。もし山頂まで行ってたら、めぎは疲れ切っててここで歩くのにすごく苦労しただろうな。
a1.jpg


そして、めでたく五合目に到着。
a18.jpg


6時前に七合目を出発して、ここに着いたのは8時頃だっただろうか。それから9時頃までゆっくりして、その間晴れたり曇ったり雨が降ったりの目まぐるしい山の天気を再度経験し、キノコうどん食べて暖をとったりお土産やさんを覗いたりしてからバスに乗って御殿場へ。土曜日とあって、あの急勾配の道路の片側にずらーっと登山客の車が路駐してあり、車が通れるのは片側一車線のみという状況で、バスが通る間は20分くらい通行止めになるという有様だった。富士登山の人気、恐るべし。

この日の夜は登山前に泊まった宿に下山後もう一泊することにしていて(めぎたちは日本では「海外」旅行中なんで、一ヶ月分の荷物の入った大きなスーツケースを持ち歩きながら日本旅行をしていたわけで、富士山登山中その宿に預けておいていた)、めぎたちはそこで一足早く温泉入ったりお茶したりしてまったりのんびり、まさにナマケモノな怠惰な一日を満喫したのであった。友人夫婦と妹夫婦は登頂後無事下山し、ホテルに到着したのは午後4時半頃だった。それから一風呂浴びて、飲み放題付きのバイキングですっかり盛り上がり、7時頃生バンドの演奏とともに舞っているドイツ人たち。ホント、あなたたちは体力が違うわね。
a1.jpg


この次の日から2~3日間、登頂した4人は相当な筋肉痛に苦しんだそうだった。特に階段の下りがきつかったらしい。動作がロボットみたいだった。めぎは一日ちょっと違和感を感じた程度。うちのドイツ人は筋肉痛無し。faul作戦は、その後の旅行の日程に支障を来さずに済んだというおまけ付き。

七合目までの富士登山を終え、登ってよかったな~としみじみ感じている。今のめぎが、そして今のうちのドイツ人が、どの程度の体力があるかもよく分かったし(これは人生の折り返し地点を過ぎた我々にとってはかなり重要な出来事だった)、富士山の景色には、いい天気の時もよくないときも自然への畏怖を感じさせる神々しさがあった。めぎのような途中まで行くので充分と思う者にも富士山はその魅力を余すことなく伝えてくれるし、登った甲斐を感じさせてくれる山だった。安易に登頂できないという意味でも、その険しさは荘厳で、美しかった。

以上、めぎの富士登山の話はこれでお仕舞い。美しい夕焼けの景色、今もめぎの目に焼き付いている。日本一の富士山、聖なる富士山、登らせてくれてありがとう。
a1.jpg
nice!(55)  コメント(26) 

nice! 55

コメント 26

manamana

山を甘く見て無理をすると、しっぺ返しが来ます。
充分に富士山の魅力を満喫されて、
その点、勇気ある撤退だったのではないでしょうか。
5合目の自動車はもっと下界でプールさせて、
後は電気を使った公共交通にするべきだと思うのですが・・・
by manamana (2010-08-20 06:03) 

ぽりぽり

素晴らしい登山記ですね。砂走りの下山は、楽しそう。ここまで、沢山のことを伝えてくれる記事をみたことないです。家内も来年めぎさんと同じ七合目付近まで登れるかなぁと言っています。自分は一回目の富士登山は、本当辛かったですが、二回目登った時は、あら不思議!楽だったです。また登りたくなってしまいました。
by ぽりぽり (2010-08-20 07:34) 

きこじじ

私もいつか登ってみたいです。
by きこじじ (2010-08-20 07:57) 

YAP

富士山に限らないのですが、登山のしんどさは体力の面以外にも、気圧変化に体が対応できるかということもあるようです。
同僚で、スポーツバリバリで体力のある人なんだけど、富士登山は途中で気持ち悪くなって何度か途中断念されている人もいます。
めぎさんたちは、そんなことがなかったみたいなので、気圧変化は大丈夫だったんですね。
こういうこともありますので、途中でやめて下りるということに関しては、ご自身のことを冷静に判断できるということで、もったいないということはないと思います。
それまでの道ですばらしさもたくさん実感されたみたいですし、実りのある登山だったのではないでしょうか。
by YAP (2010-08-20 07:59) 

くりっぴ

私も富士山登ってみたいです。ちょっとその前に体をしぼらないとえらいことになりそうですが・・・私は屋久島で限界かもしれないです。

でも、楽しくのぼりたいですものね。(*^_^*)
by くりっぴ (2010-08-20 08:19) 

mimimomo

山のお天気は変わりやすいですものね~
無理して登らなくても十分に富士山を満喫されたご様子
良かったですね^^v
by mimimomo (2010-08-20 09:01) 

ひろころ

体調・気力とも万全の態勢でなければ登頂は相当なダメージになった筈ですよ。
無理せず下山されたのは正解だったのではないでしょうか(^^*)
山のお天気は本当にコロコロ変わりますよね(笑)
富士山の麓を通過する事がよくありますけど
全くお目にかかれないこともしばしば。。。
その分、美しいお姿を拝見できた時の感動はひとしおなのです(人´ー`*)

ハイテンションなドイツ人たちの様子が微笑ましいです(>v<*)
by ひろころ (2010-08-20 09:06) 

もんとれ

素晴らしいね。深くてあったまる述懐ね。素晴らしい。
またいらっしゃい、また万全の状態で帰っておいでなさい、と云われたんですよ。
それにしても、ゲルマンだラテンだと一括りにはできないけれど、彼らは自分の身体能力ラインをよく把握してますよね。彼らとの合同のたびに痛感します。皆同じ睡眠不足で痛飲翌朝でも、移動バス中の仮眠で彼らはさくっと復活、淡々とタフに長持ちする。あのエネルギーのオンオフ、温存のボディシステムは真似できません。それでもご縁で七合目の連れ合い、チェダーと黒パンもある富士山、一緒に腐る、これいいねぇ。筆舌に出せないご苦労も多分にあるでしょうが、ブラウザのこちらから覗く七合目はとても清んでいてきれいです。何回も読んじゃいました。ありがと。
by もんとれ (2010-08-20 09:22) 

ナツパパ

時に引き返すことも、わたしのように50を遙かに超えた人間には必要ですね。
無理をすると、結構長く残る自分を思いますと、大切なことと思います。
faul、良い言葉を知りました。

by ナツパパ (2010-08-20 09:55) 

あかえび

最高の登山ですね(笑)

めぎさんのブログは面白すぎる!!(^。^)
by あかえび (2010-08-20 10:27) 

やよい

体調・体力に合わせて楽しめば 充分幸せですよね。
私はめぎさんのブログで満足している 「ファウル」主婦です。
by やよい (2010-08-20 10:31) 

piano

ご来光見れなくて残念でしたね。
でも引き返す勇気も必要なんですね^^
by piano (2010-08-20 10:33) 

くっさん。

僕も、七合目まで行ったら、山頂まで登らないともったいないと思ってしまう一人です(^^;
でも、めぎさんの記事を読んでいると、山頂を目標にするだけじゃなくて、
自分が楽しめる範囲を見極めるのも大切だなと気付かされますね。
登った皆さんに、晴間が見れて良かったです。
by くっさん。 (2010-08-20 11:21) 

マリエ

富士山に登った日はそんな具合だったんですか~(^コ^)V 十分満足したという気持ちが伝わってきましたよ、人生の折り返し地点なんてとっくに過ぎているのでとてもよくわかります(^_^;)皆さん無事で良かった。最後の写真本物を見ためぎさんたちが羨ましいです♪
by マリエ (2010-08-20 12:55) 

krause

私も、すっかり富士山に登ってみたくなってきています。
by krause (2010-08-20 13:25) 

たいちさん

山頂でのご来光は滅多に見られないそうですね。8合目位でご来光を見てから、山頂へ登るのが普通らしいですね。私は8合目半で、ご来光を拝めましたね。
by たいちさん (2010-08-20 14:18) 

Ranger

子供の時に富士山登ったっきり、登ってないなぁ
読んでいて、すごく登りたくなりました^^

あっ自衛官
かれらは、きっと新隊員教育隊かな^^
演習じゃなく、遠足的なもんだと思うよ
by Ranger (2010-08-20 16:11) 

HIROMI

めぎさんの気持ち、わかります。私も怠け専門です。
スキーに行ってもお茶タイムばっかりとるし。
でも、無理しないというのは大事なんですよ。スキーでは、あと一回で終わろうというときに骨折することが多いのですから。
by HIROMI (2010-08-20 17:55) 

Baldhead1010

富士山は
一度も登らないバカ
二度登るバカ
と言うらしいです^^
by Baldhead1010 (2010-08-20 17:59) 

Inatimy

2時間あまりでも、山の斜面を歩くのって、かなり体力いりますよね。
私も今の運動不足状態だったら、登頂せず引き返すかも。
観光地の塔ですら、ウェブサイトで見て、満足してるくらいです・・・。
by Inatimy (2010-08-20 19:51) 

テリー

お疲れ様、富士山の登山は大変です。私も、昔、一度しかしていません。軽い高山病になったこともあり、その後、挑戦してはいません。
by テリー (2010-08-20 21:59) 

夢空

いちいち色々聞かずにとにかく・・・わかるわ~その気持ち。
与作どんも日本人なのにいちいちうるさいっっ(~_~;)
登山、怠けていいんです、登山家じゃないですし、引き返したり、
やめる勇気も必要ですよね(*^。^*)
与作どんたちが出動~ってことになることありますから~こちら。
by 夢空 (2010-08-20 22:12) 

hideyuki2007y

つい登頂したくなりそうですが、ドイツ人さんと気が合った訳ですね(笑)。こういう登り方、楽しみ方もあるんだなあと思いました。私も真似してしまいそう。
by hideyuki2007y (2010-08-21 07:45) 

Jalana

20代の頃に登りました。
頂上では高山病による頭痛に苦しみ、急いで駆け下りたのを覚えてます。
三日月形の山中湖がきれいに見えてますね。
by Jalana (2010-08-22 22:49) 

rino

体力や体調考えて、登らない勇気、判断、必要なんですね。
日本は中高年の登山、もちろん富士登山も大人気です。わたし、登山やったことないですが、富士7合目、いつか登れるといいな。私の場合その前にトレーニング必要ですけどね(^^;)
faul・・って単語思い出しました。「勤勉」の反対語として覚えたっけ。
わたしもfaul・・だいすきなんですよね~~

by rino (2010-08-23 18:08) 

あっち

バイキングで踊るドイツ人たちに爆笑しました。白人さんてなんだかすごい体力ありますよね~。

富士山8合目付近で上下長袖でも寒いし、高山病の気持ち悪さと疲れで震えながら休憩する私の横を、半袖短パンで歌を歌いながら、スキップしかねない勢いで楽しそうに通りすぎていったアメリカ人と思われる人たちがいたのを思い出しました。
by あっち (2010-08-24 07:04)