アルブレヒト城 [ザクセン&ザクセン・アンハルト]
現在、マイセン磁器300周年を記念して、2005年7月のマイセン旅行記を連載中。
ようやく城の大聖堂までやってきた。
城の名前はアルブレヒト城。マイセン磁器が完成した1710年から1864年までこの城の中にマイセン磁器工場があった。それは、マイセン磁器の製法を外部に漏らさないようにするため。そんな歴史をこの城の中で見学いたしましょ。
中に入るとまずは大きな壁画。描かれているのは中世の騎士たちの騎馬戦。
昔の騎士たちは、こういう騎馬戦で勝てればその身の潔白を証明できたり、貴婦人にふさわしいかどうかを証明できたりしたのだった・・・なぜなら、正しい騎士こそ神が助けてくれるから。
中にはこんな人魚像があったり。
お目々が青と緑色・・・!
そして、昔のストーブ。使って見せて欲しいですねえ。
この城を有名にした持ち主は、アウグスト強健王。ドイツ語でAugust der Starkeという。ドレスデンに生まれたザクセン選帝侯で、かつポーランド国王になった人。ザクセン人だから敬虔なプロテスタントだったが、ポーランドの国王になりたくてカトリックに改宗したとか。それだけじゃなくて、政治の世界には今も古も等しく資金が必要・・・アウグスト強健王はなんとしてもお金を儲けたくて、錬金術師に白金を作らせようとしたり、そこから転じて白磁を作らせようとした。その任務を仰せつかって幽閉されたのが錬金術師ベトガー。
この苦悩の表情・・・
こちらがアウグスト強健王とベトガー。
ベトガーの作り出したマイセン磁器のおかげで潤ったアウグスト強健王は、その製法が外部に漏れるのを畏れてマイセン磁器工場をアルブレヒト城の中に作り、ベトガーを軟禁したのだという・・・ベトガーはそのストレスで37歳の若さでこの世を去った。このベトガーの顔、37歳前にしてはすっかり老け込んだ表情で、なんだか痛々しい。その後アウグスト強健王とその子孫は、マイセン磁器で得た財力でドレスデンにバロック芸術の花を咲かせた。ドレスデンがあれほど美しく立派なのは、マイセン磁器のおかげなのだ・・・
ベトカー(1719年没)とアウグスト強健王(1733年没)の時代が終わったあともマイセン磁器は試行錯誤と発展を続け、絵付けなどより完成され、また小さな磁器人形が作られるようになっていった。これは1760年の作品で、「日本の魚売り」という名前のもの。実際の魚売りさんたちはこんな美しい着物を着てはいなかったと思うし、着物のスタイルも違うけど・・・当時のマイセンの人たちは、遠い日本をこんな風に思い描いていたのね。
このアルブレヒト城の中は、古いマイセンの磁器がちらちらと展示されているが、その数はそれほど多くはなく、何となくがらんとした印象。城自体は建てられたのは15世紀で、フランスの宮殿風の城が流行る前の城砦的な、質実剛健な雰囲気が残っている。でも、こんなに細かい装飾が施され、広々と大きく、中世とは違う繁栄の証としての城の機能も。
下の写真は左が上へ向かって、右が下へ向かって写した階段。なんとなく、塔に閉じこめられたお姫様を救いに騎士が駆け上っていきそうなイメージですねえ。
2010-01-29 02:00
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コメント(26)
ザクセン、というとアングロサクソンのルーツでしょうか。中部・北部ドイツもゆっくり旅行してみたい今日この頃です^^。
by Krause (2010-01-29 02:09)
青い目が神秘的ですね!
by piano (2010-01-29 04:03)
暫くオッドアイとストーブに釘付け。またあらためてお邪魔します。
by もんとれ (2010-01-29 05:00)
大きな塔に、控えめについた時計がなんとも可愛いなぁ。
建築、壁画、磁器、どれをとっても昔の人が生み出したデザインって、
すごく凝ってますね~。
壁に書かれた文字や装飾、とっても素敵♪
床のモザイク柄もおしゃれ♪
by Inatimy (2010-01-29 07:02)
こんなところに幽閉されていたら・・・
ああ、恐ろしい。
by manamana (2010-01-29 07:04)
人魚像の目は、ヒスイかターコイズか何かでしょうか。
この像に、命が吹き込まれているかのようです。
by YAP (2010-01-29 07:30)
立派なお城。装飾がまた凝っていて美しいです。
by luces (2010-01-29 08:20)
人魚さんの後ろにいるのは誰ですか?ちょっと怖いです。
by どらっち (2010-01-29 09:30)
良いところですねえ。
わたしも一度いってみたい、と思うのですが、マイセンで衝動買い...
それはさすがに恐ろしい(...ブルブル)
by ナツパパ (2010-01-29 09:34)
美しい磁器のストーブ☆
見ているだけであったかい気分になれそうです(笑)
細かな内装の装飾も素晴らしいですねー。
これは、行ってみたいです。螺旋階段は脅威ですが(≧▽≦)ノ
by ひろころ (2010-01-29 09:42)
ストーブまでもが・・・!
素晴らしい色使いです
さすがマイセンの国ですね
ウエッジウッドの会社は破綻したと以前報道されていましたが
そのごどうなちゃったのですか?
by Ranger (2010-01-29 10:39)
このストーブ、どの程度温まるのでしょう?
お城のあちらこちらに設置してあったのかしら?
螺旋階段はさざえ堂を思い出しました(造りは違うけどw)
by ゆゆ (2010-01-29 11:27)
アルブレヒト城の歴史と見学とっても分かりやすくて楽しめました。
こういうところを見るのは大好きです。ストーブ、この時代にもあったんですね。錬金術師は大変でしたね。普通の人間なのにね。
螺旋階段目が回りそう、でもちょっぴりロマンティックです。
by マリエ (2010-01-29 13:26)
螺旋階段はニガテ…。くらくらします。
ストーブはけっこう新しいもの…?それとも、この地方だから?
このタイプのは知りませんでした。ほんと、使ってみて欲しい。
by おじゃまま (2010-01-29 15:46)
立派なお城ですね~
その当時はいろんな悪しきドラマもあったでしょうが
そのおかげで今これが残されているのですよね~
複雑な気持ちですね~
by mimimomo (2010-01-29 18:52)
『日本の魚売り』、おもしろいですね♪
昔のストーブ、私も使っているところを見てみたいです^^
by hatsu (2010-01-29 21:11)
読みながら歴史を感じました。
マイセンの位置を地図で確認しました。
by のび太 (2010-01-29 21:13)
素晴らしい壁画ですね!
マイセンも300年ですかぁ。
by ふくちょ〜 (2010-01-29 21:42)
でかいストーブですねぇ。普通の家に置いたら部屋中ストーブで焼けどしそう。。 マイセンは、奥深さを感じますねぇ。
by ぽりぽり (2010-01-29 22:30)
螺旋階段面白そうですね~
by miffy (2010-01-29 23:10)
ああ何度も読んじゃうな。ベトガーの錬成。めぎちゃん、眼福です。ありがと。
by もんとれ (2010-01-30 02:23)
>みなさま
マイセンのアルブレヒト城の話にコメントとniceをありがとうございました。
めぎは近代以降の宮殿といわれるお城の調度品にはほとんど興味が無くて、中世の要塞を兼ねていた頃の城の造りや機能に興味があります。だから、このアルブレヒト城は非常に興味深いところでした。
この人魚の後ろにはなにかくっついてますね。これは小人だそうです。この人魚に森の秘密をささやこうとしていると説明が書かれてました。19世紀の作品ですが、この頃にはまだこびとのイメージがこういう怖ろしい感じだったことが伺えますね。
ストーブは広い空間にパラパラとある感じで、一つの部屋には一つしかなかったように記憶してます。大きいけれど、部屋も大きいですからたいして暖かくなかったのではないかしら。この辺りは非常に冷える地域ですしね。ちなみにこのストーブの歴史は、なにしろマイセン磁器で作られてますから300年に満たないですね。同じようなストーブはウィーンのシェーンブルン宮殿にもありましたよ。それはきっとアウガルテンで創ったんじゃないかしら。
そういえばウェッジウッドはどうなっちゃったんでしょうかねえ。イギリスのことはめぎはよく分かりません。マイセンも潰れずに頑張って欲しいものです。まあ、マイセン工場は国立の機関ですから潰れはしないかな。
by めぎ (2010-01-30 05:11)
マイセン焼きのことが分かり面白いです。
螺旋階段も、とても気に入りました。
by アヨアン・イゴカー (2010-01-30 13:10)
立派なストーブですね。このようなストーブをどこかの宮殿(城)でも見た記憶ありますね。人魚の瞳に吸い込まれそうです。
by たいちさん (2010-01-30 15:52)
こういうストーブ、「ハイジ」に出てきますよね!
クララのお家にあった記憶があります。
by のの (2010-01-30 17:23)
>みなさま
こういうストーブがクララのおうちにあったとは!それは今度チェックしてみます。
by めぎ (2010-02-01 05:43)