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ヴィッテンベルク [ザクセン&ザクセン・アンハルト]

今日からようやくこの夏の東欧・中欧旅行記を開始。
今回の旅の目的は、バカンスをゆっくり楽しむと言うよりも、EUの現実を見てドイツの置かれている現状を再認識しよう、というもの。東欧系の学生や同僚をもっと理解したいという気持ちもあったし。
想像以上にすごかった物価の上昇、整備されていないひどい状態の幹線道路、規則などどこにもないように見える恐ろしい運転マナー、どこまでも続く化学肥料いっぱいの農地、陸の孤島のように浮かび上がる素晴らしく美しい観光の町・・・
帰りにドイツ(フランケン地方)に入ったときには、なんて秩序のある豊かな国なんだろう、と感動。そんな旅行におつきあいしてみたいという方は、ぜひどうぞ。

さて、デュッセルドルフを朝6時に出発して一路東へ。最初の目的地は、この方の町。
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この方が1517年にカトリックの免罪符に抗議してラテン語で95箇条の論題を掲示したのが、以前にもお見せしたこちらの・・・
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このドア。
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と言っても、当時の木製のドアは18世紀の七年戦争で消失してしまい、これは19世紀にブロンズで再現されたもの。

ドアにはラテン語バージョンの論題が刻まれている。最後のmとかjとかのアルファベットはラテン語の1517という数字。
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1518年にはドイツ語訳され民衆に広まり、宗教改革の発端となったのだとか。

そんなヴィッテンベルクは、旧東ドイツ側、現在のドイツ、ザクセン・アンハルト州に位置する。ザクセン・アンハルトにいらしたことがある方はきっとよくお分かりのように、この州は悲しくなるくらい寂れている。うちのドイツ人は「鬱」状態と呼んでいる。生気ややる気や活力が何かに吸い込まれたかのように感じられないのだ。虚ろな感じがするというか、一応建物は建っているのだが空っぽのような感じというか。ヴィッテンベルクも町の中心のマルクト広場はこうしてとても綺麗だけど・・・
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目抜き通りにさえ空き家になって放置された家があちこちに。つまり、実際に空っぽなのだ。
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通りもパッと見は綺麗だけど・・・
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これ、土曜日のお昼近くの目抜き通りなんですよ・・・土曜日といえば、日曜日にはお店が閉まっちゃうから、みんな買い物に走る日のはずなんですよ・・・
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ヴィッテンベルクはそれでも崩れた家が少なかった。中世にこの辺りの中心的都市として栄えたマクデブルクは、ど真ん中の巨大な大聖堂の存在が悲しいくらい、何もない寂れた町だった。

マクデブルクと違ってヴィッテンベルクは、ルターがいたからこそ観光客も呼べるわけだが、95箇条の論題所縁のこの城教会はなかなかのもの。
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教会内は、1.5ユーロを払えば写真撮影OKという仕組み。内部は19世紀に作り替えられたもので、とても綺麗だけどどうも16世紀の歴史とちぐはぐ。撮影しなかった。


その代わり、暑い中頑張って歩いてルターアイヒェという樫の木を見に行ってきた。
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これもルターが植えたものじゃなく、19世紀のものらしかったけど。

ここはいわばプロテスタントの聖地でも言うべきところなんだろうけど、プロテスタントというのは教会の権威を否定し、カトリックのように司祭や法王を通して神に祈るのではなく、人間は誰でもどこででも直接神に祈ることができる、という教えなので、ルター詣でに来る人は特にいない。
とは言え、ここが宗教改革の発端となったのね、と思うと、やっぱり興味深い。それがなかったら、世界は今頃全く違っていただろうし。ザビエルさんも日本へは来なかっただろうし。

クロウタドリさんのおじいさんのおじいさんの・・・おじいさんは、宗教改革の頃を見たのかな。
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もんとれ

めぎちゃん、非常に興味深いよぉ~。続編楽しみ。
by もんとれ (2008-08-13 02:35) 

めぎ

はーい、少し字を多くして頑張りまーす♪
by めぎ (2008-08-13 04:34) 

たろちぅ

町はこんなにキレイなのに。空っぽなのね。
ブラジリアみたい。リオのが活気があるの。
by たろちぅ (2008-08-13 05:21) 

たろちぅ

浮浪者さんもおらんのかしら?
by たろちぅ (2008-08-13 05:21) 

Inatimy

ドイツの運転マナーは、うれしくて涙が出るほど、きちっとしてますね。
横断歩道を渡ろうかなという時点で、察知して止まろうとしてくれるし♪
隣国なのに、こちらでは、止まってくれると思ってると、
危うくひかれそうに・・・。
by Inatimy (2008-08-13 05:22) 

Baldhead1010

やっぱりドイツ民族は優秀か・・・。
by Baldhead1010 (2008-08-13 06:12) 

ララアント

おはようございます!

めぎさん!めぎさん!と 勝手にめぎさんを作ってしまっていますので
ちょっと反省方々 もう一度 出直します。
(ちょっと勉強してから!?)
by ララアント (2008-08-13 08:15) 

やよい

俗に言う「シャッター通り」ですね、原因は違うかも知れませんが。
きれいな街がゴーストタウンのようでは、寂しいですね。
by やよい (2008-08-13 08:47) 

bonheur

綺麗な町なのに、人が少ないのですね。思わず自分のガイドブックをめくってしまいました。人口4万数千人で、他にももっと小さい村もあるのに、どうしたんでしょう。夏休みだから?ここまで人がいないと、ちょっと怖い感じもしますね~。
by bonheur (2008-08-13 09:11) 

てんとら

なんだかとっても勉強になりました。
こんなにステキな街に見えるのに寂しい状態というのが不思議だなぁ~・・・
外観も好きな人が沢山いそうな感じがするのですが^^;
by てんとら (2008-08-13 09:17) 

いとお

ホント見た目は素敵なのになぁ~
とっても不思議な感じです。
by いとお (2008-08-13 10:02) 

アヨアン・イゴカー

>と言っても、当時の木製のドアは18世紀の七年戦争で消失してしまい、これは19世紀にブロンズで再現されたもの。

この写真は、なぜかとても淋しく、悲しい気分になりました。あれだけの有名人であるのに。ルターは最早、人気がないのでしょうか?どのような位置づけになっているのでしょう。日本で言ったら、法然、親鸞、日蓮と言った人物なのでしょうに。日本人には無宗教の人口が多いと思いますが、ドイツでも同じ状況なのでしょうか。
by アヨアン・イゴカー (2008-08-13 11:33) 

hatsu

時代や人の流れ、感じますね。
ずっと住んでいる人はやっぱり、
この町を愛して、誇りに思っているのかな^^
by hatsu (2008-08-13 12:51) 

miffy

東欧諸国の物価上昇率はスゴイみたいですね。
こんなに綺麗な街なのに人が少なくなっていくなんて寂しいですね。
by miffy (2008-08-13 13:35) 

Niki Matsushita

初めまして。ドイツ生活に憧れている大学生です。
ベルリンやミュンヘンなど大都市には行ったことがあるのですが、小さい村もちょこちょこ解説されている貴ブログ、見入ってしまいました。夏休み中にもっと読ませていただきます。
ところで、めぎさまにちょっとメールにて質問させていただきたいのですが、メールは受け付けていらっしゃいますか?
by Niki Matsushita (2008-08-13 13:45) 

luces

世界史に名を残すような街が寂れていってしまうのは寂しいことですね。
それでもゴミ一つ無く、花が飾ってある通りには、街を美しく維持しようという気持ちが現れているのではないでしょうか。
by luces (2008-08-13 14:03) 

チバップリン&マリエ

歴史の街並みを見るといろいろ考えさせられます。でも人気がないのはやはり不思議です。とても綺麗なところなのに・・・・
by チバップリン&マリエ (2008-08-13 14:50) 

Ranger

凄く素敵な街並みですねー
でも、ホント、人がいないですね^^;
by Ranger (2008-08-13 16:01) 

yukitan

綺麗な街なのに空き家になって放置された家・・・不思議です。
by yukitan (2008-08-13 17:55) 

blume

目抜き通りに空っぽのお家、なんだか寂しいですよね。
。・゜゜・(>_<;)・゜゜・。
by blume (2008-08-13 20:28) 

ララアント

少し 検索してみて 1989年以来 州の人口が減少の一途・・・と。

めぎさんの画像と記事を読んでいると いつものめぎさんの画像とは
違う 何かを感じます。

整然としたドイツらしい町並みが 人がいないということで こんなにも
活気なくなってしまうのですね!?
怖いように思います。
胸苦しささえ 覚えます。
by ララアント (2008-08-13 20:46) 

どらっち

せっかくのすてきな町並みも、人が住まないと家が傷みますもんね。
おうちが死んじゃうと、町も引きずられちゃいますよね。
土曜日に寂しい町って、ホント寂しいっていうか、怖いですよね。
by どらっち (2008-08-13 21:37) 

たいちさん

宗教改革のルターの町という観光地なのに、観光客がほとんどいませんね。
by たいちさん (2008-08-13 21:57) 

ぽりぽり

中世のまま変わらない街という感じ。。 建物が痛んでいますね。でも行ってみたいなぁ~。 
by ぽりぽり (2008-08-13 22:42) 

えらん

土曜日なのにこんなに人けがないのは寂しいですね。
町だけではなくて州自体が寂れているのですか・・・うーん。ドイツにも過疎という
言葉があるのかしら。


by えらん (2008-08-13 23:20) 

ada

ここなんですね、宗教改革の発端の地は! 文字の発明、紙の発明、印刷機の発明、そしてインターネット革命とコミュニケーション手段の革命は世の中を変えてきた、というはなしが大好きですが、印刷機の発明は、プロテスタントの教義を大量に印刷して配布することができたので、宗教革命が起きた、ということでとりわけ気に入っています。風が吹くと桶屋がもうかるたぐい。インターネットの講義をするときに必ず宗教改革のはなしもするのです。
by ada (2008-08-14 00:20) 

chercher

今まで綺麗な部分しかみていなかった自分を反省しました。
厳しい現状ですね・・・(/_;)
by chercher (2008-08-14 00:24) 

Mimosa

美しい街(通り)なのに、だ~れも居なくて寂しい感じですね。
マルクト広場にも素敵な建物が並び、訪れてみたくなったのですが・・・。観光客くらいしか居ないのかしら・・・!?
by Mimosa (2008-08-14 07:17) 

めぎ

>みなさま
ヴィッテンベルクの話にコメントとniceをありがとうございました。
東欧旅行は、あまりまだ知られていない地方を発見できるという楽しみがある一方で、発展途上中の様々な問題点があちこちに見あたるという、あまり楽しくはない部分がたくさんありました。観光地として綺麗に表を飾っている部分と、実際に住んでいる人たちの暮らしは、ずいぶんイメージの違うものであると感じます。ドイツ国内にさえ、統一後15年以上も経っているのに、相当な差があります。しかし、ドイツ(西側)は相当なお金を東側の復興に支払ってきており、私が払っている膨大な税金も東へ行っているはず。それが、いったいどこへ消えたんでしょう。
浮浪者さんはいますけど、ドイツは失業保険制度がかなり手厚いので、路上生活者はほとんどいないですね。それに、冬は東側は北海道並みに寒くなりますし、地下街があまりない国なので、路上で生活することは無理じゃないかな・・・
宗教改革の発祥の地ヴィッテンベルク、と言われても、世界史好きでなければなかなかピンと来ないですよね。カトリックとプロテスタントの違いがハッキリ説明できる人はなかなかいないでしょう。私も、ドイツに来るまでイマイチよく分かりませんでした。
無宗教のドイツ人は都市部で確実に増えてきています。でも、キリスト教信者の場合、カトリックでもプロテスタントでも宗教税を払うんですが、わざわざ税金を多めに払うのにもかかわらず、やっぱり信者でいる人も多いですよ。宗教はお金ではないんだなあ、と感じます。また、無宗教としている人は、キリスト教信者でないだけで、トルコ系のドイツ人には当然ムスリムもいますし、仏教信者もちらほら。それに、神道でお宮参りしてキリスト教で結婚式して仏教でお葬式、というような形の無宗教の人はほとんどいないと思います。たぶん一貫して、役所への届けだけでしょう。
ルターは宗教改革の発端となったということだけでなく、何と言っても聖書をドイツ語訳したことで、その功績はドイツで非常に認められています。ドイツ人なら誰でもルターの顔を知っているでしょう。ルター訳の聖書は一家に一冊、今でもベストセラーです。彼の聖書のドイツ語訳がなければ、今のドイツ語という言語が存在しなかったのです。と言うのは、今でも州ごとに方言がかなり違うんですが、そのまま表記するとまるで外国語。しっかりとした書き言葉の統一規則がなかったんです。ルターの聖書のドイツ語が、ドイツ語標準化の元となりました。ですから、ルターの聖書は、今のドイツ語を勉強すればだいたい読むことができます。それ以前のドイツ語文学作品は、中世語を勉強しなければ全く読めません。ドイツ人でも、解読が難しいんですよ。
過疎はドイツ語でEntvölkerungといいますが、それは文字通り訳すと人口減少という意味です。人気がないのは夏休み期間でみなさん休暇に出かけていたからかも知れrません。でも、観光客の数もずいぶん少なかったということですよね。まあ、ここに泊まる人はあまりいないのかも知れません。みなさん、東側を旅行するならドレスデンやライプツィヒに行くでしょうから。ルターの住んでいた家などが公開されてましたが、そこには観光バスも横付けされて結構人が集まってました。見終わったらすぐに次へ移動しちゃうんでしょうね。
Niki Matsushitaさま、大変申し訳ないですが、現在のところはメールを直接受け付けておりません。So-netのブログ・クルーザー機能でのみメッセージを受け付けています。無料でユーザーID取得ができるようなので、そちらからご連絡をお願いいたします。大学でドイツ語を習っていらっしゃるのかしら。お金貯めてぜひドイツへいらしてみてくださいね。ゲーテやDAADなどの奨学金制度もありますし、やる気があればドイツへの道はどんどん広がりますよ。
by めぎ (2008-08-14 08:00) 

bonheur

めぎさんのコメントを拝見してまた勉強になりました!ありがとうございます。めぎさん本当に色々とよくご存知ですね~。
by bonheur (2008-08-14 11:26) 

ケイクス

本当に勉強になるブログですね。(^^
小学生の頃、プロテスタントの教会に通って
ルターのことを劇で学習したことを思い出しました。
by ケイクス (2008-08-14 23:47) 

くりっぴ

世界を回っている兄が、ドイツの人と仕事をすると楽しいと言っていました。
とても真面目で誠実なんだとか。(*^_^*)
by くりっぴ (2008-08-15 17:20) 

YAP

最初の一節が衝撃的でした。
東欧って、共産主義から脱却してEUに加盟して、って感じで、もっとエネルギッシュに活気づいているのかと思っていましたが、現実はそうでもないのですね。
by YAP (2008-08-15 17:47) 

mustitem

現地での生のレポート,とっても参考になります。ありがとうございます。
by mustitem (2008-08-15 23:04) 

めぎ

>みなさま
ドイツの人にも、不真面目で適当な人もいますよ~ほんと、人それぞれです。でも、ヨーロッパの中では、やはり先進の文明国家であるというか、国民としてきちんと国の決まりを守っていきましょう、という教育がなされているように思います。旧共産圏は、もちろんエネルギッシュな面もあるのですが、その政策を見ると、ロシアとアメリカとEUを常に天秤にかけているという感じもします。その点、ドイツを初めフランスやイギリスなどは、ヨーロッパ共同体を長年かけて築いてきただけあって、あまり日和見的ではないですね。そのあたりが、長い間どこかに支配されてきた国と、常に独立した国であったところとの違いかも知れません。
by めぎ (2008-08-16 04:48)