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台所を自分で取り付け [文化の違い]

ドイツに来て一番驚いたこと・・・それは、部屋を借りるとき、一般的に台所がついていないこと。
この事実って、ドイツ留学をテーマに楽しげな会話が繰り広げられるドイツ語の教科書を読んでも、ドイツ事情の本なんかを読んでも、あまり出てこない。
私は、ドイツに来る前にドイツ文化を専門として大学で何年もドイツについて学んだけれど、そんなことは一度も聞いたことが無かった。
それはなぜか。
一般に、ドイツ語の教科書を作ったりドイツ事情について本を出したりするような大学の先生方は、みんな大学やドイツ学術振興会から援助を受けて滞在するからお金の余裕があるし(月々キチンと決まった額のお給料が入るだけで生活力は全く違う)、半年からせいぜい2年程度までの滞在というニーズに合わせ、受け入れ先がそれに見合った台所&家具付きの部屋を用意して待っていてくれる、または研究滞在者用の家具付きフラットを紹介してくれるらしい。自分で探すとしても家具付きの部屋を探すようだし、机やベッドなどが予め用意された部屋を借りるとなると当然台所も付いているのだ。
また、駐在員のご家族は、会社が数年の滞在というニーズに合わせて日本人用にちゃんと台所や立派な家具まで揃えられたお部屋を用意して待っていてくれるらしく、やっぱり台所を買うなんてことがあんまり発生しないで済んでしまうらしい。
だから、ドイツの住宅に台所が付いていない、というのは日本ではあまり知られていないのだけど、これは正真正銘の事実なのである。

で、留学の奨学金が切れたのにドイツに残ることを決めた貧乏人の私のような人間は、一般のドイツ人と同様に台所の付いていないアパートに住むわけだ。
じゃ、ドイツ人は台所を買うの?
そう、システムキッチンを買うのである。机やベッドや本棚やテレビなどと同様に、システムキッチンはドイツ人個人の持ち物で、引越しするときには台所もろとも引越しするのだ。
どうして?
だって、台所も机やベッドと同様、個人の趣味があるじゃない?コンロだってガスがいいか、電気がいいか、いくつ欲しいか千差万別だし、作業台の広さやシンクの数、蛇口の形に至るまで、個人のニーズで台所の形は全く変わってくる。

私は当初ドイツ人学生と部屋をシェアして住んでいたのだが、相方と知り合って1年半経ったところで、彼の隣の部屋に引越しした。今はお隣さん同士である。
そんなわけで、私は中古のシステムキッチンを400ユーロで購入し(もとは1500ユーロくらい)、古い安アパートに取り付けた。取り付けも自分でやるのがドイツ流。とは言え、取り付けるための大工道具なんて持っていないし、生まれてこのかた云十年大工仕事なんてしたことが無いから、自分一人ではもちろんできない。ドイツ人の相方がいたからこそ、可能だった。ま、相方に出会わなければ私はさっさと日本に帰っていたはずなのだから、そのくらいは手伝ってもらおう。

取り付け前の様子はこんな感じだった。
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左端の大き目の箱の中には冷凍冷蔵庫が入り、その右隣の空間にはオーブンとコンロが入り、その隣に収納、食器洗浄器、シンクと続く。上にも収納が取り付けられる。これ全部で400ユーロ(約5万円)はお買い得でしょ?
ちなみに明かりも自分で取り付ける。線がぶら下がっている状況のところにドリルで穴を開けて自分の電灯を取り付けるのだ。
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少しずつ組み立てていった。
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これらを取り付けるために様々な道具を使ったのだが、その一部がこれら。この他、ドリルはもちろん水平かどうかを見る道具や、化粧板を必要に応じて切る電動鋸など、相方は地下室からいろんなものを持ち出してきて作業に当たった。ドイツ人は各家庭にこういう道具を揃えている。たとえ持っていなくても、知り合い2~3人に電話すれば、すぐに持っている人が見つかって借りることができる。
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そして出来上がった台所がこれ。こんなシステムキッチン持ちになって、いつか日本に帰国するとしたらどうしましょ。
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ちなみに隣の相方の部屋の台所はこんな感じ。彼は私のようにシステムキッチンを購入することすらせず、手持ちのコンロやオーブン、冷蔵庫を組み合わせ、自分で台所を作ったそうだ。つまり、私のシステムキッチンの外枠の部分を彼は持っておらず、木を買ってきて自分で作ったのである。このカーブの形には誰もが目を見張る。
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我々のキッチンの最大の違いは、高さである。私の台所は私に合わせて低く設置したのに対し、身長185センチで手の長い彼にあわせて自分のためだけに作った相方の台所は、身長156センチで手の短い私には高すぎ、料理していると腕が疲れるし、調理器具を取るのにいちいち背伸びしなければならず、背伸びしても取れないものが多い。そういえば、先日同僚のドイツ人研究者のホームパーティーに招かれたけど、背の高い彼の家の台所も、彼に合わせて高く設置されていた。もちろん、自分で設置したという。まさに、ドイツ人は個人の趣味で台所を作るのだ、と実感するところだ。
いつか相方と二人で一つの部屋に引越ししよう、という話もあるのだけど、台所の趣味の違いをどう克服するかが、最大の問題のような気がする。

♪ 2012年11月追記 ♪

ちなみにこのキッチンを取り付ける前の改装中の状態はこんな感じだった。
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キッチンの部分はこの青い板。
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その裏には配管があって、そこはバスルーム。
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めぎの住んでいるアパートは築130年くらい。こういう古い建物をこんな風に直して・・・
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こうやって人が住んでいるということね。
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それにしても、この約8年間になんてものが増えたんでしょ。

キッチンを取り外して引っ越ししていく様子を納めた写真も発見したので、例として載せておく。
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みほ

そうでしたか。
私は二人の子供が、修行に行くときには、
いろいろな道具を持たせてあげました。
国(故郷)に帰ってくるときには、エアコンも自分ではずさせて、
こちらに送り返させました。
ドイツのヨウマン層のような生き方がいいと思っておりますので。
20キロほどのところに、騎射を奉納する際も、
馬で乗り付けました。
ドイツはさすがですね。
by みほ (2006-10-10 14:59) 

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